VIRGIN HARLEY |  ソフテイル編ハーレーのファミリーとは?

ソフテイル編

  • 掲載日/ 2005年08月18日【ハーレーのファミリーとは?】
  • ナビゲーター/寺田モータース 寺田 史郎

ソフテイルファミリーの画像

リアサスペンションが
見えないスタイルが特徴的

ハーレーダビッドソンといえば、ツアラーと並んで思い出されるのがソフテイル・ファミリー。いかにもアメリカンといったそのイデタチで、ハーレーファミリーの中でも圧倒的な人気を誇ってます。このソフテイルの登場は1984年。現在のエンジン「ツインカム88B(※)」の前にあった「エボリューション」というエンジンの登場と同時にデビューしました。エボリューションエンジンは、それまでのハーレーの持っていた「遅い、重い、壊れる」というイメージを一新し、高い耐久性能と高速移動を実現したハーレー社の歴史的エンジン。その登場とともに華々しくデビューし、20年以上経過した今もなお人気を誇るこのモデルについて、今回はお話しましょう。

※ツインカムエンジンについて
?2007年モデルからはエンジンが従来の1450ccから1580ccにパワーアップしました。これによって、2000年からデビューした「ツインカム88」は「ツインカム96」という名前に変わっています。また2007年からは、5速ミッションが6速化されて低速トルクと高速走行での快適さがアップしたり、2006年式までのキャブレターモデルがなくなり、安定した始動性や出力を発揮する「インジェクション」が採用されるなど大幅な変更がありました。インジェクションの採用によって、一段と便利になり、シーンを問わず楽しめるようになっています。ちなみに、ツインカム88や96といった言葉は、エンジンの大きさを示します。単位はキュービックインチ。1ci(キュービックインチ)とは、約16.378cc(キュービックセンチメートル)のこと(1インチが約2.54cm。1立方インチは2.54cmの3乗)。1ci=16.4ccと覚えておけば、おおよそ間違いではありません。

ソフテイル?
名前の由来を教えて!

ソフテイルって良くわからない名前ですよね。「コードネーム」じゃありませんよ。実は、この「ソフテイル」にはちゃんと意味があるんです。ソフテイルとは「ソフト・テイル」をもじった名称のこと。どういうことかって? ご説明しましょう。昔のハーレーはサスペンションがないオートバイでした。このタイプを「リジッド(サスペンションがない状態 英語の「Rigid(=サスペンションがなく硬い)」に由来する)」というのですが、別称で「ハード・テイル(硬いフレーム後部)」とも言われていました。

近代になりハーレーにもサスペンションが搭載されるようになりましたが、80年代前半にサスペンションを取り払い、リジッド化するカスタムが大流行しました。サスペンションがないフレームは美しく見えるからでしょうね。この流行を知ったハーレー社は、このカスタムを取り入れようとしました。しかし、メーカーとしてサスペンションのないものを80年代にリリースするのはあまりにも芸がない。そこで、サスペンションを見えないよう取り付け、リジッド風に見えるスタイルを採用したのです。それはまさに、現代的な乗り味と古き良きスタイルの両立でした。ハーレー社が、この新フレームに付けた名前がソフテイルでした。そのワケは…。それまでのリジッド「ハード・テイル」に対して、サスペンションのあるソフトな乗り心地、つまり「ソフト・テイル」、「ソフテイル」というわけです。

他のビッグツインとは
エンジンが違う?

はい、違います。他のビッグツインが「ツインカム88(’07~は96)」なのに対して、ソフテイルは「ツインカム88B(’07~は96B)」というエンジンを搭載しています。違いは「B」という文字だけ…ではもちろん、ありません。「B」とは「バランサード・システム(エンジンが発生させる不愉快な振動を打ち消すシステム)」のこと。ソフテイルはより快適に走るためにこのバランサーがついたエンジンを搭載しているのです。「でも、なんでソフテイルだけ?」って思いませんか? それにはハーレー社の強いこだわりがあるからなのです。

ソフテイルの特徴の1つとして、エンジンをフレームに直接載せている「リジッド・マウント」があります。ダイナやツアラー、最新モデルのスポーツスターなんかはゴムを介してエンジンを載せる(ラバー・マウント)方式を採用しています。リジッド・マウントの利点はゴムを介さない分、フレームに美しくエンジンをマウントできること、乗り手にダイレクトな鼓動感(エンジンの脈動感)を伝えられることなど。リジッドマウントのおかげで、ソフテイルには他ファミリーにはない大きな魅力があるのです。ただ、エボリューション時代(ツインカムの1つ前のエンジンのことで、エボリューションというエンジンがありました)までは、このリジッドマウントにさほど大きな問題はありませんでした。しかし、エンジンがツインカムになり問題が発生したんです。それは不愉快な振動が、かなり増えたということ。ツインカムエンジンは強力なパワーを誇るエンジンで、リジッドマウントでは満足のいく快適性が実現できなかったんですね。

またソフテイルモデルは、他ファミリーの比較してクラシックなイメージのモデルとしてポジショニングされています(ヘリティジ・ソフテイルは49年に生産されていた「ハイドラグライド」というモデルを意識してあります。スプリンガークラシックはナックル時代の41年~46年モデルの匂いのするモデルですね)。ただ、当時のモデルよりソフテイルは一回り大きく、もしラバーマウントを採用した場合エンジンが揺れるぶん、フレームとのクリアランスが必要で、より車体の大きさが大きくなってしまう可能性があります。そのときに、オイルタンクとエンジンのクリアランスが広がり、当時のモデルの雰囲気から離れてしまうことを嫌ったということもあるかもしれません。そこでハーレー社は、エンジン内部にバランサーを搭載することで、余計な振動を打ち消すことにしたのです。ハーレー社の伝統、バイクとしての造形美、鼓動感へのこだわりを貫くために開発されたエンジン、それが「ツインカム88B(’07~は96B)」といえるのかもしれませんね。

FX…とFL…って
「X」と「L」で、なにが違うの?

FXは、主に21インチの大型フロントホイールにワイドフォークが特徴です。特にFXST(ソフテイル・スタンダード)は、チョッパースタイルを大きく取り入れたモデルとして注目されました。現在ではドラッガースタイルのFXSTB(ナイトトレイン)や未来的なシルエットを持つFXCWC(ソフテイル・ロッカーC)などラインアップも豊富。FXはカスタム色を取り入れたモデルと言えるでしょう。一方、FLは伝統的なモデルが多く見られます。FLSTC(ヘリテイジ・ソフテイル・クラシック)などは象徴的なモデルでしょう。16インチの太いフロントタイヤや深いフェンダーなどでヴィンテージモデルのルックス再現しています。映画「ターミネーター」でシュワルツネッガーが乗っていたFLSTF(ファットボーイ)などの人気が高いですね。

スプリンガーソフテイルってありますが
スプリンガーってなに?

スプリンガーフォークとはもともとは1948年まで採用されていたフロントフォークのこと。現代のフォーク(テレスコピック)とは違い、2本のフォークを上下に動かしてスプリングで衝撃を緩和するという仕組みをとっています。ソフテイルファミリーから出されているスプリンガーモデルはその復刻版なんですが、昔のものとは違い、コンピューター設計に加えてオイルダンパーを装備するなど格段にその性能はアップしているんですよ。

FX系のハーレーは
大柄の人じゃないと乗りづらい?

FX系は、フォワードコントロール(足を置くフットペグが、前方にある)は、平均的な日本人の方なら少し遠く感じるかも。でも、決して大柄の方だけのハーレーではありません。ステップを後ろに下げるためのパーツもありますから、諦めてしまう必要はまったくないです。ご安心を。また、ハンドルを少し手前に持ってくるようにセットアップすれば、さらに快適に走行することもできるんです。

プロフィール
寺田 史郎
みなさま、はじめまして。寺田モータースの寺田と申します。このたび、ハーレー入門のナビゲーターを任されました。みなさんの車両選びの一助となるようがんばりますので、よろしくお願いいたします。

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