VIRGIN HARLEY | ショベル中古車事情 まつもと流ショベルヘッド入門

ショベル中古車事情

  • 掲載日/2008年04月06日【まつもと流ショベルヘッド入門】
  • 執筆/ハーレー屋まつもと 松本 雄二
まつもと流 ショベル入門コラムの画像

まつもと流 ショベル入門コラム 第7回

昔はブローカー、今はe-bay?
ショベルの中古車流通事情

こんにちは「ハーレー屋まつもと」の松本です。今回は、これからショベルヘッド(以下、ショベル)に乗ろうと考えているみなさんに気になる「ショベル中古車事情」をお話しましょう。新車の販売終了から20年以上が経ち、ショベルは中古車でしか手に入れることはできません。では、全国いろいろなショップで販売されているショベルはどういった流通経路で仕入れ、販売されているのでしょうか。

ショベルに限らず、ヴィンテージバイクやヴィンテージカーは海外のブローカーから仕入れるのが一般的でした。ブローカーにオーダーを出せばアメリカ国内から希望のバイクを探してきてくれるのですが、そのブローカーのハーレーに対する知識の差によって、たまにハズレを引かされてしまうことがあります。そのため、希望通りの車両を手に入れるためにどこのショップも信頼できるブローカーと長く付き合っています。しかし、最近ではe-bayなどアメリカ国内のオークションサイトから直接仕入れることも珍しくなくなってきました。たくさんの車両の中から選べ、簡単に入札できるのは確かに便利です。オークションで程度の良い車両を仕入れるのはなかなか難しいようです。

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アメリカのe-bay。日本からの利用者も増加中

オークションに流れる車両には、最高の状態のモノは案外少ないのです。ですから、良い車両をコンスタントに仕入れているショップは現地に信頼できる人脈を持っていることがほとんど。本当に良い車両はオークションにはあまり出回らず、仲間内で車両のやりとりをすることが多いのが現実です。そういったネットワークにツテがないと本当にいい車両に出会えることは少ないでしょう。これはアメリカに限った話ではなく、日本国内でも同じ。ハーレーや他のバイク、車の世界でもいいモノは一般にはなかなか出回らないものなのです。また、ショベルを海外に出すことに抵抗を感じる人が多いのも、良いショベルを探すのが難しい理由の1つです。例えば日本国内の美術品が海外にどんどん流出していたら、私たちも嫌な気分になるでしょう。それと同じ感覚なのかもしれません。海外に出すのはそれなりの程度。本当に良い車両は手元に置いておく、そういうことは確かにあります。悪質な例になると、「フルストック」と言いながら純正以外のパーツが組み込まれていたり、「エンジン絶好調」と言いながらしばらく走ると不調がでてくる車両を掴まされたりすることもあるので注意が必要です。ショップが仕入れる場合でも、現地で車両を確認できるわけではありませんのでハズレを引いてしまうことがあるのです。ただし、長い時間をかけて人間関係を築いてきたショップの中には、アメリカから出物を引っ張れるショップはあります。

調子が良いショベルとは…
見た目が綺麗とは限りません

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手を入れずに乗れるショベルはそうそうありません

「最近は良い車両が少なくなってきた」。業界関係者からそういう声を聞くことがたまにあります。ただ、何百台もショベルを触ってきて思うのは「今も昔も良い状態の車両は少ない」こと。本当に納得できる中古ショベルにはこれまでのメカニック人生でも片手で足りる回数ほどしか出会ったことがありません。見た目に綺麗な車両はいくらでも見ました。しかし、外観を綺麗にするのはそれほど手間のかかることではないのです。実際、私がこれまでに出会った中でもっとも調子が良い車両は、長年日本の納屋で放置されていた不動車。半分土に埋まったような状態でホコリまみれ。マフラーの中にはリスが持ち込んだのか、どんぐりが入っていました(笑)。そういう車両でも少し整備してやれば、見事に復活するのです。ショベルは部品の材質が良いため、長期間放置しておいても致命的なダメージは滅多に受けません。同じ時代の他メーカーのバイクだとこうはいかないでしょう。

また長期放置の車両であっても、どこのショップで整備をされていたのかわかれば不安要素が減ることがあります。ショベルが現役、もしくはエボに代わって間もない頃はショベルの整備に長けたメカニックが少なからず存在していました。クリアランスの管理など、マニュアルの数値だけでは調子を維持できないのがショベルです。確かな経験と技術で整備されていた車両がそのまま残っていれば…少々外観が傷んでいても問題ありません。長期間放置されていた車両を復活させる方が、怪しい車両を掴まされるより手がかからないこともあるのです。

海外から仕入れや長期放置の車両など、珍しい例ばかり紹介しましたが、それ以上の台数が流通しているのは日本国内で何人ものオーナーを経て販売されている車両でしょう。歴代オーナーがどんなメンテナンスをしてきたのか、どんなメカニックに整備をされてきたのか、それによって車両の状態は変わってきます。最近は純正のままで乗られている車両が増えていますが、フレームまで手を入れているようなカスタム車両もあるので、購入の際はカスタム内容について尋ねた方がいいでしょう。あまりにやり過ぎた車両だと車検が取れないこともあるようなので注意が必要です。また、見た目にはストックでもエンジン内部に社外パーツが組み込まれている車両も珍しくありません。すべてが純正パーツのままの車両を探すのは、最近では難しくなっていますが、エンジンパーツはできるだけ純正が望ましいでしょう。社外パーツだからと言って一概に否定はしませんが、丈夫な純正パーツと品質に劣る社外パーツがエンジン内部で一緒に使われていると…純正パーツ同士では起こりえない磨耗が進むこともあります。特に基幹パーツに関してはできるだけ純正にこだわった方が、少ないリスクでショベルを楽しむことができるでしょう。

誰に整備をしてもらうのか
調子よく乗るにはこれも重要です

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ショベルは他のエンジンと比べて、触るのが楽しい

流通しているショベルの中古車についてはイメージできたでしょうか。「どんな車両を選ぶのか」はこれからショベルに乗る人にとって重要なことですが、調子よく乗り続けていくためには「どんなメカニックに整備してもらうか」も重要になってきます。ショベルに長けていないメカニックが触わり、とんでもないことになっている車両の整備をする機会は多く、調子よく走っているショベルが日本にどのくらいあるのか、と心配になることがあります。「最近のメカニックはダメだ」と言いたいわけではありません。ツインカムが現行になった今、ショベルを触ったことがないメカニックが多いのは当然のこと。古いエンジンを触る機会は確実に少なくなってきています。もはやエボですら触る機会がなくなっているのではないでしょうか。旧車に触れる機会が多いカスタムショップでも、サービスマニュアルに見受けられる間違いを鵜呑みにして作業してしまうこともあるようです。現役でショベルを触った経験がある、もしくは経験あるメカニックから手ほどきを受けているなら、マニュアルのどこが間違っているのか、知る機会はあります。

しかし、独学で技術を習得しようとすると参考になるのはマニュアルだけ。注意深くマニュアルを見ていれば数値がおかしい点などに気づくかもしれませんが…。ショベルが現役の当時は、講習でマニュアルの間違いの指摘や記載されていない作業の際の注意点、仕様変更が行われた理由などの説明がありました。こういったことが次世代にどれだけ伝わっていくのか、少々心配です。独学で学んでいる人がいる昨今の状況を見ると、知識や技術の伝承が進んでいないように思えます。エボやツインカムはショベルに比べると学びやすいエンジンです。数値管理を徹底すれば調子を維持できるでしょう。しかし、ショベルは違います。試行錯誤の末に開発されたエンジンで、今のような精度の高い工作機械はありませんでした。ですから、メカニックに求められる経験や技術はエボ以降のエンジンとは違ったものが必要なのです。ショベルは何十年も前に設計されたエンジンです。オイルの流れる仕組みや冷却方法も古い技術が採用されています。そういったエンジンがどのような仕組みになっているのか、それぞれの部品がどのような役割を担っているのか、それを知った上で触ってやらないと、思いもよらぬトラブルが起こってしまうでしょう。

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ショベルの整備のことならご相談ください

ショベルはエボやツインカムに比べれば優秀なエンジンではありません。ただ、そういったエンジンだからこそ、触わるのも乗るのも面白い。熟練のメカニックの経験が車両に活きてくる、触る人の個性を出しやすいエンジンなのです。自分がショベルのエンジンを組みあげたときは、始動させる前につい手を合わせて拝んでしまいます。エボやツインカムではこういったことはしません。気をつけて間違いのない作業を行っていますが「ちゃんと動いてくれますように」と祈ってしまうのです。ショベルは他のエンジンと違い、なぜか触るものに愛着を持たせてくれます。ハーレーはどのモデルも心地よく、不思議なバイブレーションを持っていますが、ショベルは特に心を穏やかにするバイブレーションを持っています。バイブレーションもサウンドもうるさいのに後ろに乗る人はなぜか居眠りをすることがあります。快適ではないはずなのに、なぜ眠ってしまうのでしょうか。ショベルのバイブレーションは母親の胎内の中の鼓動と似ている、と聞いたことがあります。何十年も前のエンジンで手がかかる。優秀な工業製品ではありませんが、ショベルに惹きつけられる人が未だに多いのはきっとそういった理由もあるのではないでしょうか。

ショベルについてのコラムも7回目になりました。ショベルを現役当時から知る身として、一般にあまり知られていないエピソードを紹介しようとこのコラムをスタートさせました。しかし、そろそろネタ切れです(笑)。というわけで、今回でこのコラムを最終回とさせていただきます。このサイトでも雑誌でもなかなか語られることがない、ショベルについてのエピソードをお話させていただきましたが、参考になったでしょうか。現行車を否定し、「ショベル最高」と言うつもりはまったくありません。それぞれのエンジンに魅力はあります。もし、ショベルのフィーリングが合うと感じた人がいるならば…こちらの世界に是非おこしください。長らくありがとうございました。

プロフィール
松本 雄二

58歳。1971年よりハーレーに関わり“超マスターオブテクノロジー”と称されるほど、その技術力の評価は高い。複数のディーラーを経て「ハーレー屋まつもと」をオープンさせ、日々ハーレーの修理にいそしむ。なお不正改造車、マフラーのウルサイ車両は触ってくれないので注意!

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