VIRGIN HARLEY |  アメリカの環境規制02芦田 剛史のUSAディーラー・トレーニングダイアリー

アメリカの環境規制02

  • 掲載日/ 2006年12月09日【芦田 剛史のUSAディーラー・トレーニングダイアリー】
  • 執筆/芦田 剛史
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本場ディーラーでハーレーを学ぶ USA Training Diarys 第8回

趣味の世界では「何でもアリ」の国
ただし責任は個人が負っています

ヘビーな話題の後は少しライトな話題で盛り上がりましょう。アメリカは「自由の国」なんて呼ばれていますが、こちらで「外国人」として生きている私には生活面で色んな不自由があり「日本の方がよほど自由だなぁ」と感じます。しかし、バイクや車のカスタムについて見てみると自由奔放な規制です。カリフォルニア州の排ガス規制に関連しての給排気系のカスタムを除けば、その他は何でもあり(?)の恐ろしい国です。組み立てバイクはもちろん、組み立てカーなど技術とアイデアがあればどんな乗り物でも走らせることができます。安全に走らせることのできる車両であれば、DMV(Department of Motor Vehicles)もしくはMVDという日本の陸運局のようなところで検査と認可を得ることができ、自由に走らせることができるのです。ちょっと前にハンバーガーの形をした車を作ってドライブしている人をニュースで見ましたが「この人、ハンバーガーが相当好きだわ」と驚きました(笑)。身体障害者の方が、車椅子にエンジンを搭載し公道をノーヘルで爆走している姿も圧巻でした。ハーレーのエンジンを利用したキットバイクやハーレーのレプリカバイクを製作するショップはアメリカには無数にあります。その背景にはアメリカのこのような文化背景があるんですね。

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日本ではショーバイク扱いになってしまうような凄まじいハーレーであっても、こちらでは普通に街を走っている姿を見かけます。リジットフレームは当たり前、顔を吸い込まれてしまいそうな巨大なキャブレター、110Cuinchを越える巨大なエンジン、規制を気にせず触れるEFIマップセッティングなど、まさに何でもありです。アメリカは何をするにも自由であって、ホビー追求に関しては特にその傾向があります。リスクは個人が負う物という考えで、寛容なお国柄なのでしょう。ですから、リジットフレームや在り得ないような発想のチョッパーで街を爆走なんていうことも可能なのですね。しかしながら、その自由な発想の行為で他人を傷つけてしまうと、訴えられてとんでもないことになるかもしれず、そのリスクも個人が背負わなければなりません。日本のように規制でがんじがらめになってしまうのもどうかと思いますが、アメリカの自由は個人がリスクも負っていることは知っておくべきでしょう。

アメリカのハーレーショップって?
役割の違いについてご紹介します

日本ではバイクに対する法規制が厳しさを増し、以前はどこのショップで公然と行われていた給排気のカスタムも、近年式車については規制を越えるカスタムは、恐らくですが行われなくなってきています。一方アメリカではショップ側でカスタムを制限しているという状況は、私の見る限り見当たりません。どちらが良い悪いかは抜きにして、この現状の差は凄いものがあります。「同じ地球上にある国なのに、ここまでの差が生まれるなんて。考えてみればとっても不思議なことだなぁ」と私は感じるのです。

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ディーラーについて言うと、原型を留めない大幅なカスタムが行われないのは日本のディーラーもアメリカのディーラーも変わりはありません。理想的なチョッパースタイルやレーシングスタイルのカスタムを追求していくと、やはりその分野の専門店に限られてきます。これは私個人の考え方ですが、H-Dディーラーとはストック状態のハーレーを全ての基本に考え、新車や中古車の供給、整備、修理、ハーレーのスタイルを崩さない範囲のカスタムを高品質で行える場所であるべきと考えています。ストックの状態を崩すほど「ハーレーらしさ」は失われていってしまうと思うのです。ハーレー社が製作発表したいかなる時代のハーレーであっても、ノーマルの状態が一番ハーレーらしいのではないでしょうか? ハーレー社が作ったのですから。そこに個人的な「好み」でスタイルが付与されていくだけですよね。

こちらのカスタムショップ(主にチョッパーショップが多い)は、ストックルックでは満足できないお客さんのイメージを再現できる場所として認知されています。そのカスタムシーンは日本の皆様もご存知の通り、今も活気一杯です。活躍するフィールドは違いますが、無類の妥協無き作業でイメージを具現化する職人魂を持つ彼らのことは尊敬していて、一人のファンでもあります。ディーラーとカスタムショップ。どちらのショップもいい刺激を与え合い、いい関係で競争していけたらと思う私は八方美人なのかもしれませんね(笑)。

自由の国アメリカの
ヘルメットLAWについて

子供の頃の私は「アメリカは自由の国だからシートベルトはしなくて良いんだぁ!」なんて勝手に思い込んでいました。しかしながら、こちらに来てみると50州中49州にシートベルトの着用義務が課せられています! これは意外なことでした。残りの1州がどこなのかは分かりませんが、きっと頑固な人が多い州なのでしょう(笑)。また、ヘルメットの着用に関しても各州の規定があり、その対応は州ごとによってさまざまです。50州中20州に着用義務があり、州によっては「18歳以下のみ着用義務」というところもあります。「18歳以下」と「18歳以上」で事故した時の頭の保護に何の違いのあるのか疑問ですが(笑)。全米で最初にヘルメット着用義務を敷いたのは1992年のカリフォルニア州です(またカリフォルニアが最初です!)。「全ライダーがヘルメット着用」の州は西海岸と東海岸に集中しており、内陸には「18歳以下は着用」の地域が集中しています。「完全に着用義務なし」の州は4州だけ。

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しかしながら、アメリカ国内の調査では、バイクでの事故時の致死率がヘルメット無しの場合だとかなりの確立で高くなっています(当然ですね)。全州が着用義務化への姿勢を見せてはいるようですが、バイカーの力を持った団体が強力な反発を繰り返しています。「事故して頭を粉々にするのも俺たちの自由だ!」ということでしょうか? ちなみに私の住んでいるアリゾナ州では、18歳以下は着用義務があります。ただ、私は常にヘルメットを着用しています。髪をなびかせてかっこよく?事故って死んでも良いのですが、もう無責任に死ねる立場ではありませんから(独身ですけれど・笑)。でも、本音を言うとヘルメットをかぶっていて髪の毛が河童みたいになるのは嫌ですよねぇ。私なんか本当にリアル河童みたいになりますから(笑)。

おまけの話ですが、アメリカって本当に面白い国で、法規は勿論、州ごとの考え方がさまざまです。すり抜けが合法だったり、半ヘルの場合アイゴーグル着用義務があったり。日本から見てみると州の一つ一つが違う国のような感覚に陥ります。もしアメリカツーリングなんて機会があれば、一応ヘルメットはお忘れないように!

ハーレーに支えられている癖に環境について偉そうなことばかり書いている自分に、今回は少々苛立ちを覚えました。なぜなら私は職業上、ハーレーをどんどん走らせる立場にあり、温暖化促進に直接的に貢献している立場でもあるからです。また、環境保護を叫ぶには、余りにも日常から掛け離れた生活を強いられます、最新式のハイブリッド車に乗るにはお金もたくさん要ります。今すぐという訳はいきません。私がハーレーのインジェクションや水冷化、ハイブリッド化、電気モーター化(可能性の話として、ですよ)を肯定するのは、バイクの遠い未来を案じていることが理由です。一時の快楽に溺れたくはないのです。しかし、地球の気温が10℃上がったところで、地球にとってみれば大した問題ではないのかもしれません。人間にとって問題なだけで、気温を急いで下げようとすること自体人類の都合のいいエゴなのかも。最近そんなことを考えています。これから自分はどうすべきなのか? 私はずっとずっと考えています。それではまた次回をお楽しみに。

プロフィール
芦田 剛史

26歳。幼少からバイクと車に興味を持ち、メカニックになることを誓う。高校中退後、四輪メカニックとして4年の経験を積み、ハーレー界に飛び込む。「HD姫路」に6年間勤務、経験と技術を積み重ねたのち「思うところがあり」渡米を決意。現在はラスベガスHDに勤務。(※プロフィールは記事掲載時点の内容です)

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