VIRGIN HARLEY |  US 08モデルインプレ芦田 剛史のUSAディーラー・トレーニングダイアリー

US 08モデルインプレ

  • 掲載日/ 2007年10月13日【芦田 剛史のUSAディーラー・トレーニングダイアリー】
  • 執筆/芦田 剛史
芦田 剛史のUSAディーラー・トレーニングダイアリーの画像

本場ディーラーでハーレーを学ぶ USA Training Diarys 第18回

ついに登場
2008年モデル

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こんにちは、メカニック芦田です。
やっと10月になりましたね。こちらラスベガスでは、暑さも和らいできており、いよいよバイクシーズン到来といった感じです。個人的にも「待ってました!」という気がします。私は秋も大好きですが、その後に訪れる冬の方が大好きです。あのクリアな大気感や、雪や星空、少し儚さの漂う冬が来るかと思うと胸が躍ります。日本に帰る頃にはちょうど冬の始まりかと思うと待ちきれないのです。四季のある日本、日本人にとっては昔から当たり前のことでしょう。しかし、これが如何に素晴らしいことかを痛感するには余りにも長いアメリカ生活でした。失ってはいけない物が大抵は身近にあることを、たとえ知ってはいても心に満たして感じ取ることは容易ではないのかもしれません。さて、毎年この時期といえばハーレーファンにとって待ち遠しい季節になりますね。新モデルのデビュー時期です。昨年もやりましたが、今年も新モデルのUSAからのインプレッションをやってみたいと思います。今年もあっと驚く変更が沢山あるようですから、じっくりとお楽しみください。

排気量が1250ccへ
ABS搭載のV-ROD

いくら100人の内4人以上が盗まれると言っても、地域差があります。ここではアメリカのどの州が盗難被害に遭いやすいのかを書いてみたいと思います。先ずは、こちらの資料をご覧下さい。

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ハーレー唯一の水冷モデルとして人気を博しているV-RODファミリーですが、今年も大きく進化を見せてくれました。まず、変更の目玉として一番目を引くのがモーターの排気量アップでしょう。昨年まで1131ccだった排気量を今年は1250ccに引き上げています。この排気量はボアアップによる変更で(100mmから105mmへ)、昨年までのVRSCXモデルやCVOモデルに使用されていたシリンダーとヘッドが通常のモデルに採用されました。ストロークはそのままですので、ボアを広げ平均有効圧力を増やし、トルクの向上を果たしています。 圧縮比も11.3から11.5に上がっていますね。IN&EXバルブやポートも全モデルと比べてハイフローヘッドであり、充填効率の向上が期待できます。もとより理想的なDOHC型エンジンですし、1131ccモデルと比べて、体感出来る出力差を生み出してくれている筈です。興味がある方は是非試乗されては如何でしょうか?

他の大きな変化点としては、日本では標準装備のようですが、こちらではABSがオプションで装着できるようになりました。ABSは、雨天時や急停車時には大変効果的なブレーキ補助システムです。これがあるのと無いのでは、特に初心者ライダーの方には雲泥の差だと思われます。実際に、アメリカポリス車両(本物の白バイ)には全車標準装備です。特にパニックブレーキなどは、熟練されていない方には意識して回避する事が難しいものですから、重宝すると思います。アメリカのユーザーの興味としては、やはり1250ccのモーター、もう一つはスリッパークラッチに注目が集まっているようですね。スリッパークラッチは元々レーサーマシンの技術から来ているものだと思いますが、急激なダウンシフト時に、選択ギアとエンジンブレーキをかけた時点の車速の差(車輪の回転速度)が激しい場合にリアタイヤがロックしにくいように使われていたモノです。更にトランスミッションやその他駆動部位への急激なトルク変動負荷によるダメージを緩衝してくれます。これに興味深々とは、アメリカンユーザーもなかなかマニアックな人が多いのかもしれません。

独創的なデザインのXL1200N
新モデルが登場のスポーツスター

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昨年インジェクションが採用され大幅な変化を迎えたスポーツスターファミリー。今年は特に大幅な変更は無いようです。とは言えニューモデルの投入もあり、デザイン面からは大いに興味が湧く車両が登場しましたね。期待の「XL1200N」、こちらの車両は今までのスポーツスター概念から大きく抜きん出たデザインです。アメリカ仕様と日本仕様では若干(結構?)デザインに違いがあるようですが…日本の法規に合わせた物になっていますね。サイドマウントのナンバープレートはやはり日本では実現できなかった訳ですが、これはブレーキランプやターンシグナルランプの変更次第でクリア出来ない訳でもなかったとは思います。メーカーとしても苦渋の決断だったのでしょうか。でも逆にそこまでやろうとすると、サイドマウントに拘る理由も見つけづらいですね。

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他にはフロントフェンダーのブラケットやベルトカバーがドリルドされていることに驚きました。メーカー開発時点でなんとチョッパー思考の強い事でしょう。私は素晴らしいと思います。POP吉村氏のスペシャルドリルドスプロケットとは意味合いが違いますが、これはこれで既成概念を破っていますね。実はこのモデルをデザインしたデザイナーは随分お若い方だと聞いています(私もよりずっと若いのかな?ちょっと嫉妬です・笑)。若い方の斬新なアイデアがぎっしり詰まった車両ですね。パウダーコートされたブラックホイールリムやマットグレーのモーターケースとエアクリーナーカバーは今までにない新鮮さを覚えます。それにしても、ハーレーの塗装とコートの拘りは年々増しているような気がします。

ダイナシリーズに新型登場
賛否が分かれるFXDF

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このモデルにも新たな新型が投入されています、巷では噂で持ちきりなのではないでしょうか? 「FXDF」というモデルですが、アグレッシブツインヘッドランプを搭載しています。フロントタイヤには130mm16インチのタイヤを起用。今までのダイナモデル概念では有り得なかったチョイスですね。ダイナモデルは基本的にナローなイメージでしたから、これもまた既成概念を破ろうとしたのでしょうか。ダイナ版ファットボーイと言えるかもしれません。個性的なモデルですので、好きな方は好き、嫌いな方は嫌いとはっきり分かれてしまうかもしれませんが、先入観を持たない、初めてハーレーに触る方にとっては魅力的で目を引かれる車両でしょう。特に若いお兄さんライダーには。逆にずっとダイナモデルを長い間見てこられたライダーは抵抗を覚えてしまうかもしれませんね。

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ダイナモデルは他に新型のエアクリーナーカバーを採用している車両もあります。個人的にはシンプルなラウンドタイプのカバーが好きです(どうでも良かったですね…汗)。ダイナモデルのアメリカのユーザーの反応ですが、反響はやはり大きいです。「早く実車が見たい」との声が上がっていて、ネットでも結構話題に上がっているようですね。アメリカでもまだそれ程店頭には並んでいないので、益々興味をそそられる結果となっているようです。しかし、同じく近年発売されたばかりのFXDBモデルとどちらがお買い得?との話題も同時に多く、FXDFのライバルは強敵の人気車種FXDBとなるのでしょうか? これからが楽しみです。

日本での発売は少し先
カスタムルックのロッカー

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ソフテイルファミリーにも新たな刺客?が投入されていますね。その他の車両については大幅な変更はありません。さて、期待の新型は「FXCW」と「FXCWC」です。こちらの車両も、XL1200Nに引けを取らない、いや、それ以上の斬新ないでたちをしています。購入してそのまま乗っても十分に目立てるルックスでしょう。リアタイヤに240mmのワイドタイヤを起用。リアフォークと連動して可動するリアフェンダーはワイドタイヤをすっぽり包み込むようになっており、リアビューはなかなかの迫力です。フェンダーサポートというサブフレームが存在しないため、リア周りをすっきり見せる事が可能になっています。カスタムシーンのチョッパーでは定番のカスタムとなっていますが、これをまたメーカーレベルでやってしまうのは驚きでした。

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他にはビレットのライトハウジング、5本スポークホイール(渋いですね。)、新型メーターハウジング、ライザーなど。真新しいパーツが盛りだくさんですね! 一見よく見ないと気付かないのですが、実はこの車両、カラーマッチドフレーム(外装、フレームが同色に塗装されている仕様)です。通常、アメリカで販売(最近僅かに日本でも)されているCVOモデルに限って、この特別な仕様でした。通常モデルでもこれを施すとは思いもよりませんでしたね。カラーマッチドになると、全体的なフォルムに非常に煌びやかさと一体感が増します。鮮やかな色でない限りパッと見は気付かないこともある、地味なカスタムですが、これぞサブリミナル効果でしょうか(ちょっと違う?)。アメリカユーザーの反応ですが、やはりFXDF同様に、新型FXCWに対する期待感はかなり大きいようです。現在、出荷の遅れを生じているこの車両ですが、「まだ車両は来ないのか?」というお問い合わせは各地のディーラーに頂いています。日本には今しばらく入荷しないようですが、ラーメン屋の長い行列に並んだ気分で待つしかないのかもしれません(笑)。

見た目に変化は少ないが
新技術が多く採用

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新型の投入が無かったツーリングファミリーですが、実は様々な変更が施されています。それではその変更点について書いてみましょう。まずは、フューエルタンクが5ガロンから6ガロンに容量アップされています。相当な長距離を走る事が前提のこの車両にとってのプラス1ガロンはとても大きな変化です。同時にタンク前方にあったクロスオーバーホース(タンクの左右に残っているガスの量を均等且つ一定に保つ為の通路)が不要になりました。これはタンク後方のシート下でタンク同士が直接繋がっている構造になっています。整備性の面では、メカの方は密かに喜んで居られるのではないでしょうか(笑)。ハーレー純正では再使用不可のホースクランプを使用していたため、タンクを外す度にクランプを交換する必要性がありましたが、これでこの問題は無くなります。資源の面から見ても細かいところですが、有効ですね。現時点でもほぼそうなのですが、いずれは全てがコネクター化されて、無駄な資源が出なくなれば良いと感じます。

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他にはケーブルレススロットルボデーが搭載されています。グリップの方にはボリュームが内臓されており、グリップ側で設けられた可変抵抗にて電圧制御された信号をECMで送受信し、必要開度の電圧信号でスロットルボデーに設けられたアクチュエーターを駆動します。これにより、信号を送るハーネス以外は必要なくなり、ケーブルが不要となった次第です。この機構は既に他バイクメーカーでは採用されているバイクもチラホラ見かけます。頭では分かっていても、点検時にケーブルに給油しようとして「スロットルケーブルが無い!」と一瞬びっくりすることうけあいです、はは。ですが、ツーリング先でケーブルが切れて立ち往生なんて事も無くなるわけですから、便利になりましたよね。ケーブルレスのスロットルに関しては、「直ぐに慣れた」という反応が多いようです。最近は行く機会が無いですが、昔、ゲームセンターにバイクのゲームがあって、それのグリップには当然ケーブルがありませんでした。いざ遊ぼうとした当時は『うわ、なんか気持ち悪い!』と思ったのを思い出しました。ちょっとアブノーマルなコメントですが、綺麗にメンテナンスされたスロットルケーブル被服の内側を、ワイヤーが『グリリッ』と走る感触はたまらない物があります。私の技術は全く大した事いですが、メカニカルには完全に変態かもしれません(笑)。

そんなツーリングモデルのアメリカの反応ですが、相変わらず全モデルが人気を博しております。というのは、前回の07モデルの紹介でもお話した通り、ツーリングモデル(こちらではバガーと呼ばれています)はアメリカでは最も人気のあるモデルなのです。特に人気があるのが、キャンディーレッドのFLHTCU。私もこの色の実車を見ましたが、素晴らしい深みです。ルビーの様な深みのある赤にはPDI(新車を走行可能状態まで完璧に最終仕上げする作業)を施しながらうっとりしていました。しかもツーリングモデルにもABSがオプションで装着できます。クラッチレバーも変更されていますが、レバーが引きやすくなったという感想も聞いています。

ページの都合上、細かい部分を全て網羅する事は出来ませんでしたので、お楽しみいただけたかどうか心配です。ブレーキのキャリパーやホース等も変更されていますので、是非、実車をご覧になる事をお勧めします。ついこの間07’モデルがデビューしたと思っていたら、早1年が経っていたのですね…。『光陰矢の如し』とは使い古された言葉ですが、正にその通りです。1つ1つ新しいことを積み上げてきたH-D105年の偉業を時の流れに垣間見ることができているような気持ちになってきました。こんな風に、これからの人生で1年1年に起こる様々な経験を大切に積み上げていくことができればと、ふと思いました。近くて遠い未来、何十年後か、もっと早いのかもしれません。やがて嫌でも訪れる人生の幕切れですが、その時に私は、私自身が積み上げた物を、自分自身で納得できる形や、物、記憶に残せたら、これ以上望むことはないのだと思います。そして、少なくとも恵まれた環境に生きる道が用意されている私は、そんな風に考えること自体が既に高望みだと感じています。地球上には、そんな選択肢すら持たない国で生きる人々が沢山いるということを忘れないでおきたいからです。それを知った上で、これまで、そしてこらからの日本での生活環境を苦しいと思う時があるのならば、先に得ようとする幸福は一体何なのかと、自分に問いかけることもあります。「100年前にハーレーが生まれた時、100年後に海面が上がり、南の国の一つが海に沈もうとしているなんて誰が想像できただろうか? これからとてつもない時代が訪れるのかもしれない。でも、それでも、それを真っ直ぐに受け止めながら、日本に帰ったら笑って自分を信じて生きて行きたい」ラスベガスの夜景をぼんやりと見据えて、こんなことを考えています。ラスベガスでの、アメリカでの生活にもとうとう終わりが見えてきました。たった2年のごく普通の会社員のアメリカ冒険録ではありましたが、このコラムもあと残り2回。私の感性を総動員して「私が踏み出した1歩からゴールまでの気持ちの変化、そして、これからどうしたいのか?」感謝の気持ちを込めてお伝えします。それでは次回をお楽しみに。

プロフィール
芦田 剛史

26歳。幼少からバイクと車に興味を持ち、メカニックになることを誓う。高校中退後、四輪メカニックとして4年の経験を積み、ハーレー界に飛び込む。「HD姫路」に6年間勤務、経験と技術を積み重ねたのち「思うところがあり」渡米を決意。現在はラスベガスHDに勤務。(※プロフィールは記事掲載時点の内容です)

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