VIRGIN HARLEY |  オイルの劣化パパコーポレーション佐藤のオイルコラム

オイルの劣化

  • 掲載日/ 2008年09月30日【パパコーポレーション佐藤のオイルコラム】
  • 執筆/佐藤 博之 取材協力/パパコーポレーション

オイルはなぜ劣化するの?
劣化したまま走るとどうなるの?

こんにちは、パパコーポレーションの佐藤です。前回はオイル品質についてお話させていただきましたが、今回のテーマは「オイルの劣化」について。走行距離や時間によって、オイルの劣化が進むことは皆さんご存知かと思いますが、どのような原因で劣化は進むのでしょうか。これを理解することで、オイル交換の意味をさらに深く知ることができ、愛車を労わりながら乗ることができるようになるでしょう。過酷な環境でオイルはどのようなダメージを受けるのか、それではご説明いたします。

なぜオイルは劣化するのか
その要因を紹介します

まずはオイルの劣化がなぜ起こるのか、について。オイル劣化が起こる代表的な要因を挙げると。

【1】エンジン内部で発生する熱にさらされることによる劣化
【2】走行の有無に関わらず、空気にさらされ酸化が進むことによる劣化
【3】季節の変わり目など気温の寒暖によりエンジン内部に結露が発生し、オイルに水分が混ざることによる劣化
【4】ミッションなど、金属同士の圧力を受けることによるせん断性能の低下
【5】磨耗によって生じた金属粉なや燃料の未燃焼分を取り込みオイルが汚れること

オイルコラムの画像

以上になります。上記1,2,3は化学反応による劣化、4,5は物理的要因による劣化となります。1~5についてもう少し具体的にお話すると、オイル品質によって耐熱性に違いはありますが、オイルは熱にさらされることで酸化が進んだり、含有する添加剤が消耗したりとダメージを受けます。オイルの酸化が進むと、オイル粘度が下がり(サラサラになる)適切な油膜を張ることができなくなりますし、添加剤の消耗が進めば、オイルに求められる防錆や冷却、密閉作用が低下して、エンジンが受けるダメージが大きくなってくるのです。オイルの酸化は熱だけではなく、空気にさらされたり、水分や金属粉などの異物を取り込むことによっても進行します。また、ミッション部分など、強い圧力がかかる場所での緩衝作用を担うオイルは、物理的に強い力がかかることで、含有成分が徐々に破壊されます。オイルにはポリマーなど粘度を保つ成分が含まれており、このポリマーは糸状の物質なのですが、強い力が加わることで糸が断たれ(せん断される)、粘度を維持することができなくなってくるのです。このように、オイル劣化が進む要素にはさまざまな要因があることはおわかりいただけましたでしょうか。

劣化したオイルを使うと
どんなダメージがあるのか?

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では、劣化したオイルを使い続けたら、どのようなデメリットがあるのかをお話しましょう。オイルが洗浄作用も担っていることは以前(第一回「オイルの役割」で)紹介しました。エンジン各部で発生したガム質やスラッジ、金属粉などを取り込んだオイルは、距離を重ねることで次第に汚れが強くなってきます。オイルがしっかりと仕事をしてくれているのはいいことなのですが、汚れたオイルがエンジン内部を循環することで、各部の磨耗が進むこともありますから注意が必要です。また、オイルが水分を含むことで劣化が進むことは上で紹介しましたが、水分を含んだオイルが循環することで、エンジン内部に錆や腐食が発生することもあります。適切なサイクルでオイル交換が推奨されているのは、劣化してオイルが本来の役割を果たさなくなることと、汚れたオイルが循環することでエンジンにダメージを与えることがあるという2つの理由があるからなのです。

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次にオイルの汚れやすさ、についてお話しましょう。渋滞の多い都心を走ったり、短い距離の通勤などにバイクを使ったりするライダーのオイルは汚れやすい、と言う話を聞いたことはないでしょうか。渋滞の中ノロノロと走っていると走行風が当たらず、油温がグングン上昇してきます。適度な油温で走行するのならいいのですが、オーバーヒート一歩手前のような油温が続くと、オイルの劣化が速くなります。オーバーヒートしてしまったオイルは粘度が下がり、シャバシャバなオイルになってしまうので交換が必要になるのですが、それに近いことが渋滞路を頻繁に走るユーザーには起こり得るのです。また、短い距離を通勤で走るユーザーの場合はその逆のことが起こっています。オイルは高温でもダメージを受けますが、低温すぎても同様にダメージを受けるのです。高温時は熱によるダメージですが、低温時のダメージの原因となるのは空気中に含まれる水分。水分は熱と並んでオイルを劣化させる要因であり、暖気が終わるか終わらないかの低速走行を繰り返すと、水分が蒸発せずにオイルに取り込まれ、エンジンを傷めます。なお、低いギアで高回転を多用する場合もオイルの傷みは早くなります。大きな力が恒常的にオイルにかかるのですから、せん断性能が低下するのです。ちなみに、当社のスーパーゾイルはこういったダメージを受けたエンジン内部の金属表面を回復させ、それ以上の磨耗を防いだり、オイルの酸化を防止したりする役割を担っています。詳細については、別の回にご説明いたしますので、お待ちください。

オイル交換サイクルには意味があり
愛車寿命はオイル交換頻度で変化します

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最後にオイルの交換サイクルについてお話します。ハーレーの場合、エンジンオイルは「3000kmごと。距離を走っていない車両でも半年ごとに」、「ミッション・プライマリーオイルは6000kmごと。距離を走っていない車両でも1年ごとに」とされています。純正化学合成油を使用する場合は推奨交換サイクルが長いものもありますが、できれば上記サイクルに従った方がいいでしょう。エンジンオイルの3000kmや、ミッション・プライマリーオイルの6000kmというのは、距離が伸びるに従って汚れていくオイル交換の目安となる距離。これ以上走行すると、オイルの汚れがひどくなり、適切な役割を果たさなくなってきます(この距離はオイル品質にもよるので、あくまで目安です)。それでは、半年もしくは1年ごととは何なのでしょうか。これは距離を走らなくても劣化してしまうオイルの特性から推奨されている期間です。エンジンをかけていなくても空気に触れればオイルが劣化することは先ほど紹介しました。それに加え、距離を走っていなくても夏や冬などオイルに過酷な季節を経たオイルは劣化がひどくなります。そういうこともあり、季節の変わり目、特に夏や冬の終わりのオイル交換が推奨されているのです。オイル交換を怠っても、すぐに体感できるトラブルにはなりません。しかし、見えないところでエンジンやミッションへのダメージが蓄積されるため、長く愛車に乗りたいと考える人は、オイルの交換サイクルを守ってください。

プロフィール
佐藤 博之

パパコーポレーション代表。クルマ・バイク好きが高じて、自らエンジンオイルに対する疑問を解決した金属表面改質剤「スーパー・ゾイル」を生み出す。エンジンを長持ちさせ、環境にも優しい性能を持つSUPER ZOILは、佐藤氏のオイルに対する深い造詣の賜物。

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