VIRGIN HARLEY | 第1回 夢の閃き 官能エンジンU-TWIN開発秘話

第1回 夢の閃き

  • 掲載日/2005年04月05日【官能エンジンU-TWIN開発秘話】
  • 執筆/近藤 弘光
官能エンジンU-TWIN開発秘話の画像

心を鷲掴みにするようなバイクを
大の大人が本気で作る

はじめまして、モトスポーツの近藤と申します。今回は「Virgin Harley」さんから機会をいただいて白鷺貞夫さん、オーバーレーシングさんと共同で開発中の「可変位相角縦置2軸4サイクル2気筒OHVエンジンU-TWINエンジン」についてコラムを書かせていただくことになりました。皆様、是非お付き合いください。

官能エンジンU-TWIN開発秘話の画像

近年、モーターサイクル用として同形式のエンジンは開発されたことはありません。モーターサイクル用として現在まで存在した2気筒エンジンは、直立パラレル、前傾パラレル、狭角Vツイン、広角Vツイン、縦型Vツイン、Lツイン、ボクサーなど4気筒エンジンに比して実に多種多様でした。もちろん、それらが生み出された経緯にはそれぞれ理由があります。単気筒エンジンをパワーアップ、あるいは振動を軽減する手段、マルチシリンダーエンジンの操縦性確保のため(エンジン幅)、メーカーのアイデンティティ、果ては人気車種の模倣など…私たちは、過去に様々なエンジンと付き合ってきましたが、随分と楽しませていただきました。

某2輪車メーカーを退職された白鷺氏を中心に、歳だけとった40歳、50歳のバイク好きの若者? が年に2、3回集まって、上等な料理とバイク議論を肴に夜更けまで楽しむ白鷺塾で、「U-TWIN」のアイデアは生み出されました。仲間と集まっているうちに「自分たちで自分たちのためのバイクを作ろう」という、いわば自然な成り行きで生まれたのが「U-TWIN」構想です。私たちは、ハイスペックばかりが追求されていたモーターサイクルの将来を危惧し10年あまりの年月に議論を積み重ねてきました。その中で導きだされたひとつの答えがハイスペックではなく、テイストの追求です。 集まっているメンバーはバイクに携わって30~40年というバイクの生き字引みたいなツワモノ揃いのため、国産バイクの歴史を振り返り、どこで、いつ魅力を失ってしまったのか検証してみました。

手軽すぎた高性能

高性能を追求して世界を席捲したが、その路線の行き着いた所は非現実的なスピードだった。しかもそれを百数十万という安価で提供したため『300km/h』という超高性能を気軽に(価格、メンテナンスの容易性)手に入るという“夢”を叶えてしまった。そのために、ステータス性を喪失し『300km/h』があまり価値のないものになってしまい魅力が長続きしないものになってしまった。

機能美の喪失

古い話ですが、想像するに1970年ごろにデザイナーの手が入り始め、徐々に機能美が失われてデザイン先行になった。大量生産の宿命ですが、それに伴いコストダウンの追及もされ、薄っぺらな消費される商品になってしまった。

安易過ぎる商品作り

1970年代初頭のナナハンブーム、80年代のアメリカンブーム、80年代後半のレーサーレプリカブーム、90年代半ばのネイキッドバイクブーム、そして20世紀最後の大型免許解禁による大型バイクブーム。たくさんのブームがあった。それに乗っかり安易な商品作りがされたため、商品サイクルが短くなり、また過度の販売競争により、それらは自ら価値を落としてしまったのではないだろうか?

個性の喪失

一連のバイクブームより以前の原付ブームから、国内出荷は飛躍的に増大して、実用バイクはスポーツバイクの4倍以上の販売がされていたのですが、メーカー間でのシェア競争の激化の影響で、商品開発のレベルは横並びになってしまった。 規制緩和の波により、メーカーはとうとうスポーツバイクは趣味性の高いものだと認めるようになったのだが…。ユーザーの幅広い要求に答えられなくなると、「ベース車を供給しているのだ」と言い始め、完成車メーカーの立場を自ら否定するような事態になっている。

フィーリング無視の車両開発

主たるターゲットを20~30歳にずっとしていたため、1980年代にバイクに乗り始めて現在40~50歳になってしまった人達や、複数台を乗り換えたり所有するヘビーユーザを満足させ、欲するバイクがない。開発コンセプトは理解しやすい「動力性能の向上」とし続けてきたため、フィーリングを追求した「味のある大人のバイク」を開発できなかった(痕跡はあるのだが、結局あきらめた?)。

こうしたことは資本主義の経済展開のもとでは宿命であると受け入れざるを得ないのですが、それで諦めるわけにはいきません。いまや「化石燃料」、「レシプロエンジン」といったキーワードを持つバイクが走れる時間はそれ程残されていません。4輪車よりコンパクトな2輪車の形態は残るかもしれませんが、ガソリンが電気や水素、ソーラーエネルギーに取り変わられる時代はもうすぐではないでしょうか? 最後のチャンスと思われるこの現代に「U-TWIN」が考え出されたのは、決して偶発ではないのです。現代においてテイストを主眼に開発された量産エンジンはありません。私たちは、モーターサイクルの将来を危惧し10年あまりの年月に議論を積み重ねてきました。その中のひとつの答えがテイストの追求です。では、「U-TWIN」の開発コンセプトをいくつか挙げてみましょう。

他に例をみない独自性と自由なフィーリング設定

45°Vツインでは燃焼行程がクランク角で「315°→405°→315°」と不等間隔に行われるので、独特なフィーリングを醸し出すのですが、「U-TWIN」では2気筒それぞれの燃焼行程を任意に設定できるため、自由にフィーリングの設定・変更が可能。

ボア・ストロークの自由度拡大

45°Vツインでは互いのシリンダーが干渉するので、ボア、ストロークの設定に制約があるが、Uツインにおいては自由度が高い。

バランサーなしのエンジン

2気筒エンジンにおいては、振動はバランサーなしでは抑える事が困難であるが、上記2のように位相角を変化させることにより、複雑な構造のバランサーを設けることなく低減が可能。

従来にない形

クランクケースを繭形にするなど、従来存在しなかったカタチを表現できる。

以上がコンセプトになります。フリクションの増大は、承知の上です。むしろバランサーを組み込んで『味』を減少させてしまうものより、グッドバイブレーションを楽しめると確信しています。こういった思いで「U-TWIN」の開発をスタートさせることを決意したわけです。次回は、いよいよ開発についてお話させていただきます。では、今回はこの辺りで。

プロフィール
近藤 弘光

52歳。1979年「モトスポーツ」を創業。ショベルヘッドからツインカムまで確かな技術力には定評がある。二輪という乗り物を愛するが故に規制に対応するマフラー「ECCTOS」やオリジナルエンジン「U-TWIN」の開発に携わる情熱家。

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