VIRGIN HARLEY |  最終回 オーバーホールとその重要性サスペンション徹底解析

最終回 オーバーホールとその重要性

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ついに最終回を迎えた本コラム、集大成となるのはやはりオーバーホールでしょう。シンプルなものからハイスペックタイプまで、ひとくちにショックアブソーバーと言ってもさまざまなタイプがあります。リアだけでなくフロントフォーク同様、バイク本体に及ぶ衝撃を緩和する役割を担う重要な部分ゆえ、細やかなメンテナンスが必要なことはこれまでお話ししたとおりです。最後にここでリフレッシュさせてやり、新品の頃の乗り味を復活させましょう!

ちょっと早めのメンテナンス
それでも劣化具合は一目瞭然

まずは小瀧さんのリアショックを取り外し、早速オーバーホールの作業に……と行きたいところですが、その前にどれぐらい走ったのか走行距離をチェックします。装着時の走行距離が約23,000キロで、現在は……24,639キロ! おお、1500キロ近くも走りましたか、ライダーですね~(笑)。できれば3000キロぐらい走ってもらいたかったところですが、十分十分。ショックテスターについては後述するとして、まずはオイルの色を見比べてみましょう(下写真参照)。オイル交換時期の目安は約5000キロなので、ちょっと早すぎるチェックではありますが、ご覧のとおり1,500キロほどでこれだけ変わってしまうのです。

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右が新品のオイル、左が小瀧さんのショックのオイル。1,500キロ程度でこれだけオイルの色が変わるんです。

我妻店長のワンポイントアドバイス

オーバーホールの目安と重要性

オーリンズのリアショックを初めて装着された方は皆、「乗り心地が快適になった! 気持ち良く走れる!」と感激の声を口にされます。ところが先ほど使用前・使用後のオイルをお見せしたとおり、走行距離が伸びれば伸びるほど、また月日が経てば経つほどオイルやシールは劣化し、新品時の乗り味は徐々に損なわれていきます。ところがその微妙な乗り心地に慣れてしまい、メンテフリーの状態で乗り続ける方が少なくありません。特にハーレーの場合は独特の鼓動を生むエンジンを搭載していることから、その微細な変化になかなか気づけない側面があり、結果“新品時の乗り味”を思い出すことができなくなる――という状況に陥るのです。

オーバーホールの目的は、「新品のショックアブソーバーのような快適性を蘇らせること」にほかなりません。劣化に伴う快適性の損失は、無意識のうちに体に小さな衝撃を与え続け、負担を蓄積させていく要因となります。逆に小まめなメンテナンスとオーバーホールを施してやることで、ライダーはもちろんパッセンジャーが違和感を覚えることなくライディングを楽しみ続けられるわけです。ひいてはこれが、愛車との付き合いを長くすることに繋がります。

ではオーバーホールする目安とはどんなものか。私が推奨している数値を以下にまとめました。

オーバーホールを施す目安
  • ●  走行距離:約20,000キロ
  • ●  月日:約2年

「私はまだ20,000キロも乗っていないから」と仰る方もいらっしゃいますが、乗らずとも月日の経過により内部劣化は進みます。そう、所有しているだけでバイクは徐々に傷んでいくのです。なので20,000キロに及ばない走行距離の方でも、2年所有していればオーバーホールしてやりましょう。やっぱりバイクは“乗って楽しい”が一番。乗っても気持ち良くないバイクライフって、寂しいですもんね。

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バイクは快適に乗れてこそ。だから一定期間でのオーバーホールは重要なのです。

オーバーホールの作業手順

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【01】まずはテスターチェック

作業に入る前に、まずはショックテスターで現状の動きをチェックします。これを数値化し、オーバーホール後の動きと比較してその違いを見るのです。重要!
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【02】オーバーホール!

オーリンズ製品だと、一般の方ではオーバーホールは不可能(笑)。こうして完全にバラし、オイルはもちろんその他パーツにダメージがあれば新品に取り替えます。
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【03】再びテスターチェック

オーバーホール後、再びテスターでチェック。前述したとおり数値化し、グラフにて比較します。走行距離または年月が経てば経つほど、数値の開きは如実です。

ショックテスターを動画で見る

これはちょっとしたオマケみたいなものですが(笑)、なかなか見ることがないショックテスターの動きを動画にてご覧ください。一般のライダーに装着しているショックアブソーバーを計る際は大まかな数値を出したところでチェックしますが、例えばサーキットでのレースに用いる際には、さらに細かい動きを計って数値化し、ハードな動きでも柔軟に対応できる高性能ショックアブソーバーへと調整します。

計測グラフと解説

下の画像が、ショックテスターで弾き出した数値をまとめた計測グラフです。黒いラインがオーバーホール前、赤いラインがオーバーホール後。[伸長]とはショックが縮んだ後の伸び具合、[圧縮]はその逆で伸びきった後にグッと縮んだ際の動き方を指しています。この動きに対して徐々にパワーを掛けていき、動きの幅をチェックしていくのです。走行距離1,500キロほどなので一見大きな差がないように見えますが、力の掛かり具合が大きくなるほど動きに開きが出ているのが分かるでしょう。5,000キロ以上走ったバイクのリアショックだとさらに顕著です。これを見るだけでも、オーバーホールの重要性をご理解いただけるのではないでしょうか。

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気をつけたいポイント

ダンパーロッドのゴミは大敵!

メンテナンスという点でご注意いただきたいポイントをここでご紹介します。それはダンパーロッドにこびり付いた汚れやゴミ。リアショックはバイクを支える重要なパーツゆえ、繊細な取り扱いを必要とします。ここに汚れが溜まっていくとシールを傷つけることとなり、オイル漏れやダンパーロッドそのものを傷だらけにしてしまう恐れがあるのです。そうなると乗り心地のみならず、ショックそのものをダメにしてしまいます。皆さんも愛車のダンパーロッドをチェックしてみてください。もし下写真のような汚れがあれば、しっかり水洗いをしてから綺麗なウェスやタオルでしっかり拭き取ってやりましょう。

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ツーリングから帰ってきたら、まずはダンパーロッドのチェック。ここは常に綺麗に保ってあげてください。

約半年間、ありがとうございました!
皆さん、快適なバイクライフを送ってください!

我妻店長より

Virgin-Harleyをご覧の皆さん、約半年間でしたがショックアブソーバーに関する本コラムに足を運んでくださり、本当にありがとうございました。このコラムをスタートさせてから、製品はもちろんショックの性質やコラムの内容に関する問い合わせが増えました。我々ショックアブソーバーを扱う人間の使命は、「ライダーがより快適にバイクライフを送るための手助けをすること」ですから、皆さんのお声を聞かせていただき本当に嬉しく思っております。

サスペンション徹底解析は終わりますが、これまでの記事はここに残りますので、皆さんのバイクライフにぜひとも役立ててください。また分からないことがあれば、私はいつでもウノパーウノにおりますので、電話またはメールでのお問い合わせ、さらに直接お越しいただいても歓迎しますよ!

小瀧奈緒美さんより

半年間、お付き合いいただきましてありがとうございました! 私自身、以前までリアショックに悩まされていたのでVirgin-Harley編集部からの「リアショック講座に登場してみません?」という申し出は願ったり叶ったりで、楽しいロケとともにリアショックに関する勉強もできて、本当にタメになる半年間でした。またコラムをご覧になられた女性ライダーの方々が シティ川越店 までお越しくださり、いろんなお話をできたことも嬉しい体験でした。これからも当店のお客様をはじめ、多くのハーレー乗りに快適なバイクライフを提供できるよう頑張っていきたいと思います! では皆さん、またどこかでお会いしましょう~~~♪

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皆さん、快適なバイクライフをお送りくださいね!
プロフィール
ウノパーウノ 尾山台店 店長
我妻 修

若い頃からさまざまなバイクを乗り継いできた、根っからのバイク好き。現在はスウェーデンのサスペンション『オーリンズ』のアジア・ディストリビューションである『カロッツェリアジャパン』の社員として、同社が運営するオーリンズ・サスの販売店『ウノパーウノ』尾山台店の店長を務める。

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