VIRGIN HARLEY |  第5回 ライディングポジション①ツーリング・ゼミナール 中村 友彦

第5回 ライディングポジション①

  • 掲載日/ 2011年11月16日【ツーリング・ゼミナール 中村 友彦】
  • 執筆/中村 友彦

今回のテーマはライディングポジションである。このジャンルの話を書くとなると、 “○○のハンドルを付けたらグリップが手前に来て楽になった”、“△△製シートのおかげで足着きがよくなった”などという楽チン方向の話を期待している人がいるかもしれないが、僕が883のライディングポジションをいじるうえで意識したのは、マシンとのコミュニケーションを濃密にすることと、ツーリングにおける疲労を少なくすることだった。以下に各部をどういじったかを説明していこう。

シート

中村 友彦の画像

ハーレーらしからぬ?という声もあるジョッキー製504kmシート。

自分の883の面倒をいろいろと見てもらっているから言うわけではないけれど、ジョッキー 製504kmシートを初めて装着したときは、世界が変わった!と思った。まず座面が高くなることで重心位置が上がり、乗り手の操作に対する車体の反応がすこぶるよくなった。もちろん座面の高さは膝の曲がりの緩さにもつながり、ツーリング時の下半身の疲労は明らかに軽減した。その他にも、フラットな座面だからこそ得られる自由度の高さや、頑丈な FRP ベース特有のガッチリ感、高密度発砲ウレタンならではの衝撃吸収能力など、このシートにはさまざまなメリットがあるのだが……。

着座位置が高くなるせいなのだろう、これぞハーレー的な雰囲気は薄らいでしまったし、着座面の前後にストッパー的な盛り上がりがないから、自分で自分の体の面倒を見られない人は、もしかしたら加減速時に落ち着きの悪さを感じるかもしれない。しかしそのあたりは僕の中では些細な問題で、おそらくこのシートを装着していなかったら、僕の883の走行距離は今ほど伸びていなかったと思う(連載当初から4500km進んで、現在は7万8500km)。

ハンドルバー

ハンドルバーは長い間STDのまま使っていたのだが、乗り込むうちにもう少し幅が欲しくなってきた(883の純正は710mm)。そこで1200R用に変更しようと思ったものの、こちらは僕にとっては幅が広すぎたので(790mm)、883のSTDをベースに改造を施してみることにした。

最初に取った手法は、ハンドルバー両端へのカラーの追加。具体的には片側15mmずつのカラー(外径は25.4mm、素材はジュラコンで、装着は圧入式。製作は旧知のショップである オザワ R&D に依頼した)を追加して、ハンドルバー全幅を710+15×2=740mmとしたのだが、これがなかなかいい塩梅で、マシンに対する印象は格段によくなった(テコの原理によって、操作に対するマシンの反応が機敏になった)。

そしてこの改造に満足した僕が、次なる課題として取り組んだのがグリップとレバーの位置関係の補正。僕は基本的にフロントブレーキを人差し指と中指でかけるのだが、ハーレーでそれをやろうとすると、どうしてもグリップを握る位置が外端になってしまう(スイッチボックス寄りの内側を握ると、レバーの折り返し点とレバーピボットの間に人差し指がかかって感触が悪い)。と言うより、実際には外端どころか、手のひらの一部(小指の下)がグリップを握れず、空中に浮いているのである。実はこの問題は以前から薄々感じていたのだけれど、ハンドル幅が広がったことで、顕在化してしまったようだ。

その解決策として僕が取った手法が、さらなるジュラコン製カラーの追加。要はグリップの外側を延長して、その部分で手のひらをフォローしようというわけだ。このカラーの寸法は、外径がグリップと同じ34mmで、幅が15mm。結果的に883の純正ハンドルに対して+60mmの770mmとなり、そこまで広げるなら1200R用でよかったんじゃないかという気がしないでもないが、1200R用は883用より高さがあるうえに、そのまま使ったのでは前述したグリップとレバーが理想の位置関係にはならない。だからまあ、改造の効果は十分あったんじゃないかと思っている。

なお高さに関しては、後にライザーの下にワッシャー(ミリサイズでもイケる)を噛ませて、ハンドルバー全体を1~5mmほど持ち上げてみたものの、現在はワッシャーなしのノーマル状態に戻っている。

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【左】幅を広げるために圧入した最初のジュラコン製カラー。 【右】グリップとレバーの位置関係を補正するために追加したジュラコン製カラー。

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【左】この状態だと手のひらの一部が空中に浮いている。 【右】位置関係補正用のジュラコン製カラー追加後は、手のひらが浮かなくなった。

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ハンドルの高さはライザー下にワッシャーを入れて調整できる。

次回はレバーとステップ、ニーグリップ関連の話を書く予定です。なお今回と次回のテーマは、過去にクラブマン誌で展開した内容を基に再構築しています。

プロフィール
フリーライター
中村 友彦

1900年代初頭の旧車から最新スーパースポーツまで、あらゆるバイクに興味を示す業界16年目のフリーライター。最近のハーレーではFXCWC ロッカーCとVRSCF V-ROD マッスルがお気に入り。愛車は’06年型スポーツスター883、’76年型トライアンフT140V、’09年型スーパーカブ50など。

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