VIRGIN HARLEY | 第4回 楽しさとは? ツーリング・ゼミナール 上山 力

第4回 楽しさとは?

  • 掲載日/2012年01月26日【ツーリング・ゼミナール 上山 力】
  • 執筆/K&H 上山 力

「ハーレーって何が楽しいの?」

という質問に対して、「エンジンがドコドコする!」とか「振動が!」という話を良く耳にする。確かに言い得て妙だ。でも、ドコドコして振動の良いバイクは他にもある。いつも人を魅了してきたハーレーの中には、一体何が詰まっているのだろうか。

ハーレーには、どことなく効率の悪いバイクというイメージがある。実際に乗ってみると、確かに効率の悪いところが無くも無いか(汗)。でも、それはあくまで高効率で満遍なく行き渡っている、現代の国産車などグローバルスタンダード的車種と比較しての話なのだ。ハーレーは、加速力も製動力も必要にして充分程度にしか備わっていない。まんべんなく網羅しているわけではないのだが、どこかとある部分が特出していて、いつも人を惹き付ける。実際に自分が所有して長い距離を走ってみると、ふとそんなことに気が付いた。

K&H 上山 力さんの画像

走りに関しても、何もハーレーの効率が悪いとは思わない。これはオートバイが走る上で当たり前の話になるのだけれど、駆動輪であるリアタイヤにトラクションを与えたり、2本のタイヤで不安定な乗り物を真っ直ぐ走らせるという意味で考えれば、ハーレーは充分理に適っている二輪車だと思う。「ちゃんと真っ直ぐ走る!」なんて言うと馬鹿にしているように思うかもしれないが、曲がるということは、真っ直ぐ走るところからバランスを崩すことから始まるもの。それがしっかり備わっていないと、優れたオートバイとは呼べないとも言える。トラクションに関しては、また次の機会にしておこう。

ハーレーは、車重もある大排気量の2気筒だ。圧縮比こそ高くないが、ピストンサイズもクランクのストーク量も大きく、シリンダーの挟み角も45度と振動が出やすいレイアウト。これらを滑らかに (効率良く) 走らせるには、より慣性を発生させる重たく大きな弾み車が必要だ。ハーレーのエンジンには、その大きな弾み車がある。それがクランクだ。

ハーレーは、1つのクランクにコンロッドが2本とピストンが2個組み付けられ、2気筒なのに前後から見ても、まるで単気筒のように薄いクランクだ。大きなクランクは、回転 (クランク) 軸を安定させるジャイロ効果をより強く生み出すことができる。物理は得意ではないのだが、同じ重量ならジャイロ効果は外径が大きい方がより強くなるらしい。“同じ重量で外径を大きくする”ということは、必然的に薄い円盤になるわけだ。ハーレーのクランクはまさにこれ。回転数が高い方が強くジャイロを発生するのだが、外径の大きいハーレーのクランクは、低い回転でも強いジャイロを生み出すことができる。

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ハーレーの歴代Vツインにはさまざまな排気量やモデルがあり、エンジンに関して言えば、給排気のバルブがヘッド横にあったのが上になったり、1本のカムが2本になったりと (自分が乗っているスポーツスターは、カムが4本も?ある)、そのときどきで変革してきた。一部のモデルを除いたこのクランクの構成は、昔と変わらず今も強いジャイロを発生させている。大きいクランクから発生したジャイロは、クランク軸 (車体) を安定させ、重たい車体を前に押し出すことにも寄与している。キャスタートレールなど車体構成にまつわることだけではなく、エンジンも真っ直ぐ走ることに尽力しているのだ。

このクランクが寄与しているのは、何も物理的な部分だけではない。人の感性に対しても大きな影響を与えている。この薄くて大きく重たいクランクが、あのマッタリとした回転フィーリングと身体と車体を突き動かすような何とも言えないフィーリングを生み出しているのだ。これを読むあなたのそのハーレーにも、このクランクが入っている。人間の感覚は凄い。左右の足の真ん中辺りにゴーッと回るクランクの存在や、軸を保とうとする力を感じることができるはずだ。

ところが、自分が 『ハーレーは楽しい!』 と感じたのは、このクランクのジャイロがもたらす効果だけではなかったのだ。むしろ、ハーレーでこのことは語り種であるし、ビッグシングルに長く乗っていた (今も乗っている) 自分には、すでに心得ていたことなのだ。まー、それでもハーレーのクランクには、ほとほと参っているのだが。

その“とある部分”にも楽しさがあることに気が付くと、それが実に心地良く、走らせるたびに高揚感をもたらしてくれた。さらには、ハーレーで走るのが楽しくなっただけではなく、ハーレー以外のバイクに対しての考え方や感じ方にまで影響をおよぼすようになったのだ。

つづく

プロフィール
K&H
上山 力

ハーレーのみでなくBMWや国産車用シートの開発も手掛けるが、自分が乗りたいバイクだけしか開発しないという、メーカーの開発としては痛い人間。愛車は、’97 スポーツスター XL1200Sを筆頭に、’60 トライアンフ TR-6、 ’76 ヤマハXT500、’70 ホンダCB90×2台 割りと雑食。兎に角バイクが好き。最近愛車XT500でモトクロスを始めてみた。

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