VIRGIN HARLEY | 第5回 楽しさとは? その2 ツーリング・ゼミナール 上山 力

第5回 楽しさとは? その2

  • 掲載日/2012年03月07日【ツーリング・ゼミナール 上山 力】
  • 執筆/K&H 上山 力

最初に言ってしまうと、前回コラム の最後に触れた楽しさの要因のひとつ『とある部分』とは、ホイールの重さのことだ。と言っても、重さだけの問題ではないのだが……。

K&H 上山 力さんの画像

今まで単気筒エンジンで軽い車体を好んで乗り継いでいた自分にとって、初めてハーレーに乗ってその重さに面食らったのを覚えている。これまでのバイクに比べ、車重しかり、クラッチやシフトと何もかもが重たかった( 90年代の車両は、現行モデルよりもクラッチレバーを握るのに力を要した)。と言いながらも、そこそこ体力的に自信がある自分にとって、取り回しの重さやクラッチの重さに然程苦労することなく走り出すことができた。スポーツスターがハーレーのなかで軽量級であったことも助けになったのかもしれない。それまでは、「バイクなんて軽けりゃ軽い方が良いに決まってる!」と思っていた自分だ。だから、操縦するにあたって何かしら弊害が出てくるだろうと予測していた。

走り出してすぐに「何だろう? この重ったるいエンジンの回り方は!?」 と思ったり、信号で停まって発進する度に「動き出しの際に感じるこの重厚感は何?」と、疑問でいっぱいになった。重さによる弊害部分を探すことよりも、何だか分からないうちにその重さが興味の対象になってしまったのだ。とは言え、かなり変(特徴的?)な乗り物だということも認識したのを覚えている。

なかでも、舵 (ステアリング) の切れ方には驚いた。唐突で力強く、一瞬車体を倒してしまうんじゃないかと当て舵をしてしまった。ところが、慣れてくると舵が切れたその後、ピタッと蛇角が安定しているのに気が付き始める。下半身が車体と結び付いてさえいれば、速度 (コーナーのアール) に応じて、きれいにフロントホイール (タイヤ) を内側へと向けてくれる。逆に、下半身が安定していないときは、おっかなくて仕方がなかった。思うよりフロントタイヤが少しだけ外側へ逃げて行こうとするのだが、それをホイールが内側に向かって倒れ込もうとする力で均整を保っているのが良く分かる。ジャイロ効果だ (※次の機会に説明予定)。

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そして、リアタイヤよりも外側をフロントタイヤがスルスルと回っているのだと意識させられた。リアタイヤは、ときにはそれを追従したり、ときには力強くステアリングヘッドを前上方へ押し出したり引き戻したりして蛇角を調整する。小径のリアホイールは、フロントに比べジャイロが弱く、車体を巻き込むような変な癖を見せず従順だ。もちろん、それを調整するのは自分自身のアクセル操作。

蛇角の付き方加減や舵の取り方が実に塩梅良い。いや、『良い』と言うのは間違いかもしれない。今でこそこんな話ができるのだけれど、実際、当時の自分には塩梅良く操作する事ができていなかった。とにかく、最初は難儀した蛇角の付き (付け) 方を、自分の内で制御するべく試行錯誤した。陳腐な話だが、そうこうするうちに、このハーレーという乗り物に乗るのが堪らなく楽しくなっていたのである。

自分のステップ操作やアクセルワークによって、乗りやすくも乗りにくくも如何様にもなってしまう。そんなことはバイクという乗り物では当たり前の話なのだけれど、今まで乗ったどのバイクより、それらが顕著に操作している自分に返ってくるのだ。

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対して乗りやすさは、大きなクランクから安定して発せられる力 (トラクションの掛かりの良さ) と、重くて太い小径ホイールから来る安定感だったのだと思う。リアホイールは、フロントホイールの強いジャイロを助長することなく、上手に車体 (フレーム) を通してときには反発、ときにはいなし追従して行く (本来は、リアホイールが押し出し側なのでフロントホイールが追従か?)。

前後異なる幅で、異径のホイールから発生したジャイロ効果の均整を取ることができると、コーナーリング中で舵が切れた状態でもしっかりとした安定感を得られた。バンクしている最中、直進時と同じようなおかしな感覚のまま走ることもあったほどだ。この安定感は、タイヤの絶対的なグリップとは別の話である。

重さの話とは少し反れるが、駆動系にベルトドライブを採用しているというのも見逃せない。ベルトの伸びによるダンパー効果は、同じ二次減速側のクラッチ周りやホイールハブに付くダンパーとも特性が異なり、アクセルが開けやすくなる。ハーレーは、ライダーの操作に対していつも一瞬の 『間』 があり、その 『間』 で心に少しの余裕ができる。こういった積み重ねも楽しさに繋がっていく。特に、ハーレーが得意な長距離でその有り難味を実感するものだ。ただし、全般的にステアリングの切れは割りとシャープだ。

動き出しの重厚感は、車体の重さだけではなく、ホイールから発する力によるところが大きいということにも気が付いた。前回 大きな弾み車の話をしたが、クランク以外にも大きな弾み車があったのだ。動き出しの際の少しの間と動き出してから慣性力で、あの何とも粘っこい発進の仕方をしているようだ。ここらも、速度に関わらず楽しさを感じる大きな肝なのだと思う。それは、愛車のスポーツスターだけではなくハーレーのさまざまな車種や、ある意味ハーレーと対極に位置する BMW などを長い距離走らせていくうちに気付かされたことでもあった。特に、フロントホイールとリアホイールのジャイロ効果による内向力の強弱は絶妙だ。

後に、このことに大きく気が付く事件―― モデルチェンジ に出くわすのだった。

つづく

プロフィール
K&H
上山 力

ハーレーのみでなくBMWや国産車用シートの開発も手掛けるが、自分が乗りたいバイクだけしか開発しないという、メーカーの開発としては痛い人間。愛車は、’97 スポーツスター XL1200Sを筆頭に、’60 トライアンフ TR-6、 ’76 ヤマハXT500、’70 ホンダCB90×2台 割りと雑食。兎に角バイクが好き。最近愛車XT500でモトクロスを始めてみた。

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