VIRGIN HARLEY |  第1回 タイヤの基礎タイヤ講座

第1回 タイヤの基礎

  • 掲載日/ 2006年01月28日【タイヤ講座】
  • 執筆/SPEEDSTAR 水口 和明
タイヤ講座の画像

タイヤは最も基本的なパーツ
その重要性を改めてご認識ください

今回「VIRGIN HARLEY.com」さんから「タイヤについて」解説して欲しい、という依頼をいただきました。タイヤはどんなオートバイにも装備されている、もっとも基本的なパーツであり、タイヤの選択、消耗具合はライディングに大きな影響を与えます。しかし、その割には他の部位に比べ、あまり注目されていないのがタイヤです。そこで、タイヤについて基本的なところからご紹介させていただき、タイヤの重要性を再認識していただければ幸いです。

「タイヤ」の歴史は
なんと5000年以上前から

まずはタイヤの歴史についてお話しましょう。意外なことに「タイヤ」は5000年以上前から存在していました。物品の輸送を円滑に行うため、半円状の木をつなぎ合わせた「タイヤ」が活躍していたのです。その後、丸い木枠の円周に動物の皮を張り合わせたタイヤが登場し、さらに紀元前のローマ帝国時代には円周に鉄の輪をはめ込んだタイヤなどが登場しました。このタイヤは、つい100年前まで一般的に使用されてきました。

ゴム製の空気入りタイヤが発明されたのは19世紀後半になってから、自転車のタイヤに使用されたのが最初。20世紀に入ると「カーボンブラック」という物質がゴムに配合されるようになり、耐久性が向上し、重量の重い乗り物に使用できるタイヤの生産が可能になりました。ちなみに、タイヤが黒いのは「カーボンブラック」がゴムに配合されているからであり、あの色にはきちんと理由があるのです。

タイヤの果たす役割を
改めて見てみましょう

では、次にタイヤが果たす役割についてご紹介しましょう。細かく挙げるときりがないですが、タイヤの重要な役割は以下の3点に絞られます。

「車両重量を支える」

オートバイの車重を支えているのはタイヤであり、コーナー時やブレーキング時にかかる強力なGを支えるのも、タイヤの役割なのです。タイヤにはそれぞれ、どのくらいの重量を支えられるのか「タイヤ荷重(ロードインデックス)」が定められており、車両重量に合わせたタイヤの選択が行われています。

「駆動力、制動力を路面に伝える」

バイクの場合、タイヤだけが路面との唯一の接点になっており、バイクの三大基本機能「走る」、「曲がる」、「止まる」は全て路面とタイヤとの力のやり取りで行われています。そのため、どれほど強力なブレーキを装備していても、タイヤがすぐに滑ってしまうようでは意味がありません。ブレーキ性能を最終的に決めているのはタイヤの役目だということをご理解ください。

「路面からの衝撃を和らげる」

タイヤは路面からの衝撃を吸収してくれる役割も担っています。もちろん、衝撃吸収は主にサスペンションが活躍しているのですが、路面からの衝撃は最初にタイヤに伝わり、タイヤが変形することでも衝撃を吸収、それから車体に衝撃を伝える構造になっているのです。衝撃の感じ方はタイヤの空気圧によって変化し、この空気圧を変えることによって、タイヤもサスペンションの一部となっているのです。実は、タイヤは最も手軽に乗り味を変化させることができるパーツともいえるでしょう。

空気圧の変化による
ライディングへの影響

空気圧を高くすると、以下のようなことが起こります。

  • ● 1. 車体の取り回しが軽くなる
  • ● 2. 車体の寝かしこみが軽くなる
  • ● 3. 剛性が上がる

そして極端に空気圧が高くなってくると…

  • ● 1. 車体がはねてしまう
  • ● 2. 路面からの衝撃で突き上げが大きくなる
  • ● 3. 車体がふらつきやすくなる

では、次に空気圧が低いとどうなるのでしょう。主に以下のような点があげられます。

  • ● 1. グリップ感が増える
  • ● 2. ハンドルの抵抗が増える
  • ● 3. タイヤの発熱が早く、クッションが良くなる

さらに空気圧が極端に低い場合は、次のような現象が発生します。

  • ● 1. ハンドルが極端に粘ってしまう
  • ● 2. 車体の取り回しが重くなる
  • ● 3. 発熱が多くバーストの危険性がある

空気圧が高すぎたり、低すぎたりすると大変危険です。空気圧を適性圧に保つことの重要性を改めてご認識いただけたのではないでしょうか。実は、タイヤの空気圧はバイクに乗っていなくても少しずつ下がってきます。ゴムは一見、水も空気も通さないように見えますが、分子レベルで見ると水は通しませんが空気は通しているのです。もちろんタイヤメーカーも努力しています。できるだけ空気の漏れを防ぐため、タイヤの内側に「インナーライナー」と言う、空気を通しにくい素材の物を貼り付けていますが、それでも少しずつ空気が漏れ、少しずつ空気圧が下がってしまうのです。そのため、空気圧の点検は最低でも1ヵ月に一回はチェックをしたほうが良いでしょう。

COLUMN – 窒素ガスの注入でタイヤを強化!? –

当店では、タイヤに空気を注入するのではなく、窒素ガスの注入をオススメしています。窒素ガスを注入することのメリットとは何なのでしょうか? それをご紹介いたしましょう。

1.空気圧が低下しにくくなる

一般的に窒素の分子は酸素より大きいと言われていますが、実際には分子の大きさはそれほど変わりません。しかし、気体が膜状の物質をどれぐらい通り抜けるかを示した「透過係数」というデータによると明らかに窒素の透過率が少ないため、空気より窒素ガスを充填したほうが、空気圧が下がりにくくなるのです。

2.温度上昇による空気圧の変化がなく、乗り心地が安定

空気中には水分が含まれています。空気を補充するコンプレッサーには 水分を除去する装置が付いているものもありますが、バイクショップ、タイヤショップでこれを所有しているところはあまりありません。そのため、空気を補充することによってタイヤの中に水分が混入し、それが熱によって気化します。水分は気化すると体積が1700倍にもなり、空気圧の変化を引き起こします。ボンベから充填される窒素には基本的に水分は含まれていませんので空気圧の変化が少なくなる、というわけです。

3.タイヤやホイルを腐食、酸化から防ぐ

ボンベから充填される窒素には水分は含みません。そのため、タイヤ内部のゴムやホイールに錆や腐食などの悪影響を与えることがなくなります。

 

このように窒素を充填することにおいてのメリットがたくさんありますので、まだ試したことが無い方がいらっしゃいましたらお勧めいたします。

プロフィール
水口 和明

35歳。東京都世田谷区にて二輪車タイヤの専門店「SPEEDSTAR」を運営。国産車からBMW、ハーレーのような輸入車まで、二輪のタイヤについては幅広い知識、豊富な在庫を持つ。

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