VIRGIN HARLEY |  第6回 ビッグツインFX編タイヤ講座

第6回 ビッグツインFX編

  • 掲載日/ 2006年05月25日【タイヤ講座】
  • 執筆/SPEEDSTAR 水口 和明
タイヤ講座の画像

リジッド風フレームが人気の
ソフテイルFXシリーズタイヤリスト

リジッド風「ソフテイルフレーム」に21インチのフロントホイールが特徴のソフテイルFXシリーズのタイヤを今回はご紹介いたします。モデル名称にXLの「X」が入っていることからわかるようにスポーツスターと共通するタイヤもあります。しかし、年式・モデルによって仕様は違ってきますので、ご自分の車両に対応するタイヤサイズは覚えておいた方がいいでしょう。

フロントは21インチで共通
リアは年式・モデルによって4種類にわかれます

フレーム下にサスペンションを配置したリジッド風のスタイルが人気のソフテイルファミリーは1984年に登場しました。そのソフテイルファミリーの中でも21インチの大口径タイヤを履かせた「FXシリーズ」はチョッパー風のカスタムスタイルが純正で採用されているとあって長く人気を誇ってきています。

FXシリーズのモデルは年式を問わずフロントは21インチのタイヤが採用されていますが、リアタイヤに関しては年式・車種によって4種類のタイヤが採用されています。具体的な年式を記載しますと…

  • ● 2002年までのFXシリーズ:16インチ・130mm(FXSTDのみ17インチ・160mm)
  • ● 2003年~2005年までは16インチ・150mm(FXSTDのみ17インチ・160mm)
  • ● 2006年から17インチ・200mm(FXSTDのみ17インチ・160mm)

とリアタイヤは2003年以降ワイド化が進んでいます。

前回の「ダイナ編」でも述べましたが、リアタイヤは太くなると…「車体が寝かしにくくなる」、「とり回しが重くなる」、「路面への抵抗が大きくなり加速が悪くなる」と、問題も多いのですが、ツインカムエンジンのパワフルな馬力を受け止めるには、広い路面接地面積を持ったワイドタイヤが必要となってきたのでしょう。今回採用された200mmのワイドタイヤの偏平率(※1)に目を向けてみると、ハーレーに採用されたタイヤは、スポーツバイクに要求される直進時の軽快さとコーナーでのグリップ力を両立できるように考えられたプロファイルではなく、偏平率を高くすることでタイヤのトレッド面を緩やかなものにしています。こうすることで、直進時のグリップ力や安定性を狙った最もハーレーに適しているタイヤになっています。

※1 扁平率
タイヤ幅に対するタイヤの高さの比率。タイヤの高さ÷タイヤ幅×100で表す。

また06年式のモデルから200mmサイズのリアタイヤを採用しているモデルには従来の「バイアスタイヤ」ではなく「ラジアルタイヤ」が指定されています。「200/55R17」という、とても太いサイズです。ワイドタイヤになってラジアルタイヤが採用された理由として、このサイズのタイヤをバイアス構造で作った場合、かなりの重量のあるタイヤになってしまうことが挙げられるでしょう。200mmのタイヤ幅だと、タイヤに十分な剛性を持たせるためには、かなりのコード層を互い違いに何枚も重ねる必要がでてくるため、重量が重くなるのです。タイヤが重くなると発熱が多くなり「転がり抵抗」が増え、タイヤの磨耗が早くなってしまいます。しかし、ラジアル構造の200mmタイヤだと、とてもシンプルな構造で非常に軽く作ることができ、発熱を低く抑えた転がり抵抗が少ない「対磨耗性」が高いタイヤが製作できるのです。 ただ、ラジアルタイヤが装着されることで、タイヤのグリップが良くなり、サスペンションやフレームに対しての負担は大きくなります。それにともない06年式のFXシリーズは車体剛性の全体のバランスが見直されていると考えられます。

さて、最後に16インチホイールが17インチに変更された(全ての年式のFXSTDと2006年からのFXシリーズ) メリットについてですが、17インチホイールに取り付けられるタイヤ外径を調べたところ、17インチの方が16インチに比べ10mmほど大きくなっています。これにより、リアタイヤがフロントタイヤの外径に近づき、アンダーステア(※2)な車両を、より旋回させやすいハンドリングに味付けをしたのかもしれません。もちろんタイヤ外径が大きくなることで、車高も上がるわけですから、バンク角も少しだけ稼げるようになっています。独特のアメリカンスタイルは崩す事無く走行性能は向上する狙いがあり、17インチ化されたのではと考えられます。

※2 アンダーステア
コーナーで外側にふくらむ特性を持つ車両のこと。この逆をオーバーステアという。
タイヤのちょっとマメ知識
一般的にバイアスよりラジアルのほうがエライという認識が有りますが、オートバイのハイパワー化や、特性に対してバランスがよいということであり、タイヤそのものの絶対性能を示すものではありません。

20種類のFXシリーズ用タイヤリスト。リアタイヤ幅の区別にご注意ください

さて、下記ではFXシリーズに装備可能なタイヤをメーカー別にご紹介しましょう。上記で記載した通り、130mm、150mm、160mm、200mmと年式・モデルによって4種類のリアタイヤがありますのでご注意ください。

なお、価格はすべてSPEEDSTARの2007年11月の参考価格になります。お店によって価格には違いがありますので、お気をつけください。また、価格には変更がある場合もありますのでご了承ください。

ダンロップ

商品名 サイズ 参考価格 特徴
D402 フロントのみ MT90-21 54H TL
MT90-16 74H TL
※幅130mm
10,800円
13,500円
ソフテイルに純正で採用されているタイヤです。401シリーズと同様、ハーレー純正だけあって、バランスのいい性能が約束されています。他のタイヤより若干高めですけれど、磨耗性に優れ、実は経済性のいいタイヤです。
D401 リア 130/90B16 MC 53H TL
150/80B16 MC 71H TL
14,900円
15,800円
スポーツスターなどに純正採用されているタイヤ。それだけに、磨耗性やグリップ性能はお墨付き。バランスのいい性能が期待できます。サイドにHarley-Davidsonのロゴも入っています。02以前と03以降のモデルではリアのタイヤ幅が違うのでお気をつけください。
K591 リア 130/90B16 MC 64V TL
150/80B16 MC 71V T
160/70B17
※デュース用純正タイヤ
14,400円
17,000円
19,100円
ハイグリップでスポーツ性が高いのが特徴で、スポーツスターの旧モデル「1200S」には純正採用されていた実績があります。そのスポーツ性を求め、ソフテイルでもこのタイヤを指定しオーダーされることも珍しくありません。ただ、ハイグリップモデルの宿命として、D401・402に比べると磨耗が早くなります。
K300GP フロント 130/90-16 MC 73H
150/80-16 MC 71V
12,300円
15,700円
1980年代に生産され、高い評判を得た旧「K300GP」の復刻モデルです。タイヤパターンは当時のものを忠実に再現されているものの、最新の技術でリメイクされているため性能は旧モデルより大幅にアップしています。ハイグリップなスポーツ性能で、リピーターのファンも多いモデルです。
D205 200/55VR-17 78V
※200mm純正タイヤ
28,800円 純正指定の06年~用200mmタイヤです。ツーリング寄りのタイヤ特性を持つものの、グリップ性もしっかりと持っています。純正採用されるタイヤなことからわかるよう、耐磨耗性にも優れています。
GPRα-10 リア 200/50ZR17 24,900円 レーシングタイヤに迫るポテンシャルと一般走行を考慮した高速安定性とウエット性能を兼ね備えたレースレプリカタイヤ。新配合されたGPRαコンパウンドが採用され、優れたグリップ持続性とコントロール性が実現されています。
Qualifier 200/50ZR17 75W 25,900円 サーキット走行にも対応したスポーツ性能を持ちながら一般道のアクシデンタルな路面にも衝撃吸収性にすぐれているタイヤですので不安なく安心してライディングを続けることが出来ます。

BRIDGESTONE・FIRESTONE

商品名 サイズ 参考価格 特徴
BT-45V リア 130/90-16
150/80-16
12,900円
14,400円
乗り心地、高速安定性、ライフ、ウエット性能などツーリングタイヤに要求される全ての絶対性能を高次元でクリアしているタイヤです。ロングツーリングを快適に楽しみたい方にオススメです。
BT-020 リア 160/70B17
200/50ZR17
19,500円
27,200円
乗り心地、高速安定性、ライフ、ウエット性能などツーリングタイヤに要求される全ての絶対性能を高次元でクリアしているタイヤです。ロングツーリングを快適に楽しみたい方にオススメです。
BT-014 200/50ZR17 28,500円 サイドウォールが適度な剛性(たわみ)感を保ちつつ、軽快なハンドリング特性(旋回力)と高いグリップ力の両立を実現しています。街乗りから峠のコーナーリングまでオールマイティな状況で、安心して走れるバランスのいいタイヤです。

MICHELIN

商品名 サイズ 参考価格 特徴
COMMANDER フロント MH90-21 56H TL/TT 10,000円 ハーレーを代表とするアメリカンバイク専用に設計されたデザイン性の高いタイヤです。特徴的なタイヤパターンはデザイン性だけではなく排水性にも優れており急な雨にも慌てずに済みます。また、非常に耐摩耗性に優れ、ロングライフなため非常に人気が高いタイヤです。
COMMANDER リア 130/90-16 73H REINF TL/TT
150/80-16 77H REINF TL/TT
9,400円br /> 10,900円
Pilot SPORT HPX リアのみ 200/50ZR17 26,400円 300km/1hrを誇るハイパワーマシンでも使用されているハイスペックタイヤです、卓越した高速安定性、高耐久性を実現し、すぐれた放熱性を持つ構造になっています。ハイパフォーマンスを求める方にオススメのタイヤです。

METZELER

商品名 サイズ 参考価格 特徴
ME880 フロント 90/90-21 M/C 54H T/L 8,200円 コーナーで車体を倒してもMBS(メッツラーベルトシステム)のおかげで一定の接地面積を確保でき、どのような道でも安定して走ることができます。まっすぐもよし、曲がってもよし、のオールラウンダーながら耐磨耗性も高く、リピーターが多い人気タイヤですね。
ME880 リア 130/90B16 M/C REINF 73H T/L 150/80B16 M/C REINF 71H T/L 160/70B17 16,900円 16,800円 22,600円
Lasertec フロント 90/90-21H 9,000円 最新テクノロジーを搭載したスポーツバイク用バイヤスタイヤ。速度域を問わない乗り心地としっかりとした接地感を乗り手に提供してくれるため、安心できるライディングが約束されます。
Lasertec リア 130/90-16
130/90-16V
150/80-16V
160/70-17V
10,800円
14,900円
16,400円
19,400円

AVON

商品名 サイズ 参考価格 特徴
AM20 RoadRunner フロント 90/90-21 54H T/L 15,900円 美しいタイヤパターンは人気が高く、スタイルから選ぶ人も多いタイヤです。しかし、スポーツ性も実は高いタイヤ。軽い切り返しができ、倒し込まなくても素直に曲がってくれる特性が人気です。若干値段は高めですが、ロングライフなため経済的なタイヤですよ。
AM21 RoadRunner リア MT90-16(130/90) 74H T/L 18,100円
AM41/42 Venom-X フロント MH90-21(80/90) 56H T/L
MH90-21(80/90) 56H WW T/L
15,100円
18,200円
独特のタイヤパターンから非常に人気が高いタイヤですが、グリップ性もなかなかのものです。ストックに比べるとしっとりとした乗り心地をしています。またロングライフな部分も人気の秘密で、永く使用していてもグリップ性が極端に悪くなることもありません。
AM41/42 Venom-X リア MT90B16(130/90) 74H T/L
MT90B16(130/90) 74H WW T/L
150/80-16 77V T/L
150/80-16 77V WW T/L
18,000円
21,600円
23,000円
27,500円

MAXIS

商品名 サイズ 参考価格 特徴
C175 FRONTRIB フロント 3.00-21F RIB T/T 8,900円 クラシックな縦溝が特徴的なC175とC200です。チョッパー乗りはもちろん、現行車両のオーナーまで、幅広い層に支持されています。C200にはホワイトウォールモデルもありますので、スタイルにこだわりたいオーナーに評判です。手頃な値段なのも嬉しいですね。
C200 CLASSIC リア 5.10-16BLK T/T(幅130mm) 5.10-16WW T/T(幅130mm) 15,500円 18,900円
Maxxis BLACK フロント MH90H21F T/L 11,200円 ワイドで大きめなパターンが特徴のMaxxisは、ハーレーとの相性が良く、ストリートからツーリングまで安定した走行性能を発揮します。ホワイトウォールはバイクのイメージを大きく変えるポイントになるので根強い人気があります。低価格なのもオススメです。
Maxxis BLACK リア 130/90H16R T/L(幅130mm)
MT90H16 T/L(幅130mm)
17,250円
15,800円

数種類まで絞込み
乗り比べて選ぶ理想のタイヤ

20種類もタイヤがあると、すべてを乗り比べることはできません。そこで簡単にタイヤの選び方をまとめてみましょう。まずタイヤ選ぶ際に考えて欲しいことは「グリップのいいタイヤ」なのか、「ロングライフのタイヤ」なのか、あなたがどちらを求めているのか。これを決めれば、グッとタイヤは絞りこまれます。

予算も大切です。これは上の表にある前後のタイヤの参考価格を見てください。ただ、タイヤによって寿命は違いますので一概に安いからと言って経済的というわけではありません。高いタイヤでも、ロングライフなものでしたら結果的に経済的になる場合もあります。こちらはお店に相談した方がいいでしょう。

最後にどのタイヤパターン(溝の模様)とカラーです。タイヤパターンのデザインで車両の雰囲気は変わります。皆さんの愛車のイメージに近いタイヤパターンはどれなのか、そこを考えてみるのも面白いでしょう。カラーでも、ホワイトウォールタイヤなどのカラーの入ったタイヤを選ぶと車両の雰囲気をガラリと変えてくれます。

以上の3点の中でどれが優先順位が高いのか、そこを考えた上でタイヤを選んでみてください。そうすれば永く付き合える理想のタイヤがきっと見つかるでしょう。

プロフィール
水口 和明

35歳。東京都世田谷区にて二輪車タイヤの専門店「SPEEDSTAR」を運営。国産車からBMW、ハーレーのような輸入車まで、二輪のタイヤについては幅広い知識、豊富な在庫を持つ。

ピックアップ情報