VIRGIN HARLEY | 第1回 キャブの仕組 CVキャブレター講座

第1回 キャブの仕組

  • 掲載日/2005年04月14日【CVキャブレター講座】
  • 執筆/ジャイアン
CVキャブレター講座の画像

キャブレターとは、どんな役割で、どんな仕組みなのか
まずは、その基本的な仕組みを理解することが大切

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キャブレターの役割は、バイクの異なる走行状況(低速~高速時など)において、エンジンが求める混合気を「適切な状態」で「適切な量」を作り、制御することです。では一体、どのような仕組みで、キャブレターは動いているのでしょうか。ハーレー純正のCVキャブレターを例にご説明いたします。

まずは、左の写真をご覧ください。エアクリーナーを外すとキャブレターはこのような写真の状態で見ることができます。写真中心に丸い輪状の部分(※a)が見えますね。この部分はエンジン内部までつながる通路の入り口になっており、エアクリーナーを通った空気がここを流れていきます。その途中で、空気はガソリンと混ぜ合わされ、混合気となってエンジン内部に供給されます。キャブレターからエンジンへの混合気の流れは実はこれだけです。ただ、なぜ都合よくキャブレターの中へ空気が流れ、途中でガソリンと混合されるのでしょうか。

なぜキャブレター内を
空気が流れていくのか

では、なぜキャブレター内を空気が流れるのか説明します。それは、エンジン内部からの吸い込みが理由です。エンジンが動くとシリンダーの中でピストンが上下しますよね。吸気行程でピストンが下がるときはシリンダー内に外気が吸い込まれ空気の流れが発生するのです。簡単に言うと、注射器で空気を吸うところをイメージしてください。そんな仕組みで空気はエンジン内部に吸入されます。

この時、発生するエンジン内部に空気を吸い込もうとする力を「吸入負圧」と言います。そしてキャブレターにはこの空気の流れを制御する役割があり、CVキャブでは空気通路(メインボア)内につけられたフタ(スロットルバルブ)の開閉によって行われ、この開閉はスロットルによって行われます。

スロットルバルブの開閉の仕組み

※便宜上、指で操作していますが、本来はスロットルによって行われます

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なぜ適切な空気量が
キャブレター内を流れるのか?

エンジンを回したい時、私たちはスロットルを開けます。スロットルを開けると、通路内のフタが開き、より多くの混合気がエンジンに流れ込み回転があがるのです。この時に空気が流れ込む量をスロットルバルブ(空気通路内のフタ)が、フタの開き具合によって、適切な空気量(ガソリン量も)に制御します。また、エンジンの低回転時と高回転時では、エンジンの空気を吸い込む力(吸入負圧)が違います。当然ながら、回転数が低い時は弱く、高い時は強くなります。吸入負圧を発生させる空気の流れの強さ(流速)は空気通路(メインボア)の大きさに左右されます。CVキャブレターでは、この通路の大きさを負圧によって、自動で変化させることが可能となります。

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写真にある「b」と「c」を見て下さい。

空気量がスロットルバルブ(空気通路内のフタ)の開閉で変化すると、連動して、この「b(=スライドピストン)」が上下します。そして上下することで、通路の大きさを変化させます。「c」は最小時の通路の大きさで、スロットルバルブが開いていないか低回転時の吸入負圧の低い時の位置を示します。スロットルバルブが開かれていくと、それに従い一定以上に負圧が上がり、「b(=スライドピストン)」は空気通路の最大直径まで開きます。実は、空気はその通路を絞り込むと加速され、流速が上がるという性質があります。この性質を使って、キャブレターは、空気通路を通る空気量を増やしています。

スライドピストンがある空気通路部分は入り口の開口部から徐々に絞り込まれており、スライドピストンのある部分は一番狭い通路部分となっています。この絞り込まれた部分(bの外周部分の通路)を「ベンチェリー」と呼び通路が絞られることで空気が加速される作用を「ベンチェリー効果」と呼びます。

CVキャブレターでは、スロットルバルブ(空気通路内のフタ)が求める空気量に従い、そこで発生する吸入負圧の変化よってスライドピストンが上下します。その時に、適切なベンチェリー直径に変化して流速を制御するというわけです。これにより低回転時で負圧が低い時、狭い通路により安定した流速が得られ、一定以上に負圧が上がるとそれに従い空気通路(メインボア)を開き、より大量の空気を吸うことができます。この空気通路(メインボア)を変化させられる機構を「可変ベンチェリー」と言います。このように、エアクリーナーからエンジンに至る空気通路(メインボア)の空気の流れはキャブレターによって制御されるのです。

空気がどのようにキャブレター内を流れているのか、についてはお解かりになったかと思います。では、ガソリンはどのようにキャブレター内を流れ混合されるのでしょうか? 次にその部分についてご説明いたします。

ガソリンがキャブレター内に
いったいどう運ばれるか?

タンクから供給されるガソリンは、「フュ-エルインレット(右写真、オレンジ色の○部分)」よりキャブレター内に取り込まれ、キャブレター下部にあるフロートボールという部位に一時的に溜められます。では、キャブレターをバラしてフロートボールをお見せしましょう。

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上の写真の中のオレンジの○部分が「フロートボール」です。ここにガソリンが溜められ、必要に応じてキャブレター内の空気通路に吸い上げられる仕組みなのです。

一定量のガソリンでフロートボールが満たされると、その油面の高さによってフロート(浮き)が持ち上げられ、それ以上のガソリンが、供給されることを抑えます。また、ガソリンが使用されることで、フロートボールの中からガソリンが減少し、フロート(浮き)が下がると供給が再び開始されます。丁度、水洗トイレのタンクと同じ仕組みで常に一定のガソリン量を溜めて置きます。

さて、フロートボールの仕組みがわかったところで、今度はフロートボールからガソリンがどうやって空気通路に運ばれるかを見てみましょう。実は、フロート室からガソリンが吸い上げられる際のガソリンの通路は2通りあります。吸入負圧が『低い時』にガソリンが通るスロージェット系と、吸入負圧が『高い時』にガソリンが通るメインジェット系です。それぞれの2つの通り道にはメインジェット(右の写真の赤丸部分)とスロージェット(右の写真の青丸部分)と呼ばれる計量部品がありガソリン量を調整します。では、次にどのようにガソリンが空気通路(メインボア)に供給され混合気が作られるかCVキャブレターを例に説明しましょう。

混合気はいかに作られるか?

スロージェット系とメインジェット系はそれぞれ異なった太さの空気通路を持ち、各々の通路はキャブレター吸入口と空気通路内のポート(出口)につながっています。

スロージェット系

空気通路が細く、アイドリング~低回転時の負圧が低い時、ガスをミクスチャースクリューにより量が調整できるアイドルポートとメインボア中間にあるトランスファーポートの2ヶ所から供給する。

メインジェット系

太い通路を持ち、一定以上の吸入負圧がメインボア内に発生する時、ニードルジェットと呼ばれる大きなポート(吐出口)からガスを供給します。

メインジェット系のニードルジェットからのガスの供給は、空気の流れで説明したスライドピストンの開きと連動しています。スライドピストンにつけられたジェットニードル(テーパー状に次第に細くなる釘状の部品、以下「ニードル」)がニードルジェットに刺さっていて、ニードルジェットの内径と次第に細くなるニードルの外径が作る隙間がスライドピストンの開きに従い広くなり、スライドピストンの開度に応じたガス量を供給します。

ではなぜ、吸入負圧に応じてガスが出るのでしょう? 空気通路内にガスを供給するためには吸入負圧が必要で、低回転時と高回転時ではその強さが違うことは空気の流れで説明しました。スロットルバルブ(空気通路のフタ)が少しでも開くと(アイドリング状態でもスロットルバルブはアイドルスクリューによって開かれている)、メインボア内に空気の流れが起きて負圧が発生します。これを「ベルヌーイの法則」と言います。それぞれのガスの供給系は片側がキャブの入り口に開放されているために、大気圧です。メインボア内に負圧が生じると、大気圧より圧力が低いために、系(スロージェットやメインジェット系)の通路内に流れが生じます。系の通路はメインボアよりはるかに細く生じる負圧ははるかに低いのでフロートに通じるジェットの通路よりガスが吸い上げられメインボア内にガスが吸い出されていきます。

低回転時の吸入負圧が低い時は、より細い通路をもつスロー系にこの現象が発生し、より太いメインジェット系は圧が下がりきらずガスを吸い上げることができません。逆に一定以上の吸入負圧が高い時は細い通路は抵抗が大きすぎて、ガスを吸い上げることができず、より抵抗が少ないメイン系に現象が起こり、吸入負圧に応じるスライドピストンの動きと連動するニードルとニードルジェットによって、適切な量のガスがメインボア内に吸い出されていきます。つまりCVキャブレターでは空気の流れを制御することでガソリンの供給をもコントロールしているのです。

さて、ここで負圧が高くニードルとニードルジェットで、ガス量が調整されるならメイン系はジェットがいらないのではないか?と言う疑問が生じます。現にレース用の『レクトロン』のようにメインジェットを持たないキャブは存在します。しかし全ての調整をニードルのテーパー調整にゆだねる、このタイプのキャブは調整者の技量に大きく左右され、条件次第で変化しやすくセッティングが困難を極めるため、あらゆる状況に応じなければならない公道車両では一般的にはなりませんでした。

以上がCVキャブレターにおける機構とその役割です。キャブレターそのものはエンジンの作り出す吸入負圧によって作動する受動的な仕組みですが、これを制御するための能動的な仕組みでもあることがおわかりいただけたでしょうか?

【COLUMN】ジェット類の調節

今後「ジェット類の調節」という言葉をお聞きすることがあるでしょう。その時に思い出してください。スロージェット・メインジェットを調節・交換することで「フロートボールからガソリンを吸い出す入り口の大きさを調整し、その結果吸い出されるガソリンの量を調整できる」のです。ただ、この部分の調整は非常にデリケートですので、この部分の調整の際にはプロにお願いしましょう。

プロフィール
メンテナンス番長 ジャイアン氏

XLH883とFLSTFを所有する。彼のハーレーへの造詣は深い。特にCVキャブレターには、仕組みはもとよりセッティングや最適化まで幅広い知識を持つ。最近は、ブログにてメカニズムを中心に執筆中。

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