VIRGIN HARLEY |  第9回 CVキャブを再考察CVキャブレター講座

第9回 CVキャブを再考察

  • 掲載日/ 2005年11月17日【CVキャブレター講座】
  • 執筆/ジャイアン
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CVキャブレターを
改めて考える

9回渡って執筆してきました当コラム、最終回になります。
今回は、今までのコラムの総集編ということで「CVキャブレターとハーレー」という視点から、改めてCVキャブレターについて考えてみたいと思います。

スポーツスターと
ビッグツインのセッティングの違い

基本的にはスポーツスターもビッグツインも同じキャブレターがついているわけですが、各々のエンジンの特徴もあるため、セッティングではそこに留意し、なるべく個性が生きるようにオイラはセッティングします。これはオイラの主観ですが、スポーツスターは軽快に走り、加速が伸びるのが身上と考えています。そのため、比較的大き目のMJで中間加速と高速へのつながりを重視し、低速はあまり重視せず、回して乗るようなセッティングが好みです。逆にビッグツインは低速域の安定とダッシュを重視して、中速の巡航を目的とするため、高速域の伸びはあまり重視しません。

これはあくまでオイラの主観ですので、違う意見の方はたくさんいらっしゃるかと思います。オイラそれぞれに感じる「らしさ」を際立たせるためにこのようにセッティングしています。オイラの持っているハーレーは883とエボのビッグツインですが、MJの大きさにはほとんど違いがありません。これは求める方向性が違うためで、重要視するキャブレターのセッティングパーツの領域でこのようなことが起こります。単純にMJで言えば883は、#185前後5番、1340は#195前後5番で、それぞれのNJの選択幅にラップがあることが解ります。まったくのノーマル状態でも89年式883と91年式1340では、5番しか違いがありませんでした。

あとは自分が求める速度域や使用環境の違いによりますが、基本的にはそれぞれの特徴はエンジンにあるので、キャブセッティングはそれをどう活かすかにあり、セッティングでビッグツインがスポのように走ったり、スポがビッグツインのように走ったり、は基本的にはしないのです。ただ、使用者の走り方でそのような使われ方をすることがあるので、それに合わせてセッティングはすることができます。

これからの
CVキャブの可能性

2006年モデルの発売でダイナファミリーがインジェクション化され、一気にインジェクション化が進んでいるのがわかります。現在、ハーレーは環境問題に対応するべく、吸気系ではなく点火系でさまざまなアプローチをして対応しようとしています。キャブレターそのものではガスの絞り込みも限度がありますし、燃焼そのものに影響が出てしまうため、さまざまな電気的センサーを使い、点火時期や進角で燃焼のコントロールをして排ガスを制御しようとしています。

今後は騒音問題も含め、環境問題はバイク業界で大きなマージンを占めることになるでしょうからキャブレターからコンピューター制御のインジェクションへの変更は時代の流れといえるでしょう。4輪業界ではすでに30年も前に行われたことですが、2輪業界ではこれから始まる流れです。

現在のハーレーはまだその過渡期であり、変革の真っ最中です。近年のモデルにおける走行特性の変化や燃費の悪さは、電気的アプローチによるもので、環境的数値の計測範囲に合わせる為にちょっと偏向的な点火設定が与えられていると考えられます。そのため、良く耳にする「低速のもたつき」や「加速の遅さ」はキャブレターセッティングでは改善できず、かえって調子を崩すような話も聞いています。これらはほとんど電気的な問題なので、スクリーミンなどモジュールに交換することで改善できます。排気ガスの成分濃度や走行音規制などとの兼ね合いもあるので、モジュールの交換が環境的には適切かどうかは今後の課題ですが、エンジン的には適切な燃焼が与えられるので、今後はキャタライザー(触媒)の専用開発により、折り合いをつけていくことになるでしょう。

燃焼とその適切なコントロールと言う観点から見れば、ハーレーも例外なくインジェクション化の道を進むと思います。ただ、スポーツスターに関しては同型エンジンにビューエルがあることから、今までとは違ったアプローチによるスポーツ性の向上への道は残っているのでは、と思います。

これからの
キャブレターセッティングについて

オイラはキャブレターのセッティングを「ただ低速を走り易く」や「最高速を上げるため」、「トルクが欲しい」などの理由で行っているわけではありません。自分が求める走りにとって「もっとも適切な燃焼のために」どのようにセッティングがベストなのか、と考えセッティングを行っています。その結果、トルクや最高速はあがりますが、それはエンジン本来が持っていたポテンシャルが表面に出たに過ぎず、エンジンに与えられていない性能は出ませんから、今あるエンジンの実力を発揮させるためにキャブレターをいじっていると言えるでしょう。

「適切な燃焼」は「適切な出力」を発揮させてやることができますし、排ガスも適正な状態で排出されるとオイラは考えていますので、エンジンに無理なく仕事をさせるためには必要なことだと思っています。 エンジンの作業効率を最大限得るための最小限の燃料供給をセッティングで得ることができれば、これに越したことはないのですが、細かい範囲のセッティングにはキャブレターでは限界があるので、電子制御のインジェクションへの移行はいたし方ないとオイラは考えます。ただ、いきなりキャブ車が消えてなくなるわけではないので、適切なセッティングによる適切な燃焼は今後しばらく必要でしょう。それを快適にイージーにこなすことができるのが、CVキャブレターの大きな利点だと思います。どうかこれらを頭の片隅において、楽しいハーレーライフをお過ごしください。

最後に

長い間辛抱強く、このテキストを読んでいただいた皆さんには感謝いたします。そして、多くのアドバイスや具体例を示して参考にさせていただいた多くの方々にも感謝いたします。皆さんがこれからも楽しくハーレーに乗れますように一助とさせていただきます。ありがとうございました。

ジャイアン

プロフィール
メンテナンス番長 ジャイアン氏

XLH883とFLSTFを所有する。彼のハーレーへの造詣は深い。特にCVキャブレターには、仕組みはもとよりセッティングや最適化まで幅広い知識を持つ。最近は、ブログにてメカニズムを中心に執筆中。

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