VIRGIN HARLEY | ハーレーのビレットパーツを世界に発信するケンジムラカミ 特集記事&最新情報

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ハーレーのビレットパーツを世界に発信するArt Of Aluminum Kenji Murakami
取材協力/Art Of Aluminum Kenji Murakami
写真・文/モリヤン
掲載日/2015年08月21日

拠点は、福岡北九州市
フェイスブックで世界に発信

ビレットパーツとは、アルミニウムを素材とした無垢材からの削りだしパーツのことである。特徴は、型に流し込んで量産できる鋳造パーツに比べて、高級感が有り構造物としての品質が均一。

そして、削りだしパーツ独特の美しい仕上がりが挙げられる。鋳造のように型を製作する必要がないことから、世界に一つだけのワンオフパーツの製作や、少量生産ができるというメリットも多いが、製作者の高い技術を求められる世界でもあり、以前は限られたものにしか採用されていなかった。特にバイクでは、超高級品とされるモデルや、特殊な条件で走らせるレーシングマシン等に取り付けるパーツとして採用されることが多く、ハーレーへの対応パーツが見られるようになったのは最近のことである。

Art Of Aluminum Kenji Murakamiは、そんなビレットパーツだけに特化したパーツ製造メーカーであり、代表の村上健治さんは、マシニングオペレーター&デザイナーでもあるのだ。今回は、村上さん本人に現在の活動の概要をお聞きすることにした。

独学でマシニングセンターの操作を習得し、5年前に起業した村上健治さん。日本人としてのデザインにこだわりを持って製品化することをポリシーにしているビレットパーツデザイナー。

オリジナルデザインへの拘りと
高品質なフィニッシュワーク

ファクトリーがあるのは北九州市の八幡である。ここは日本でも有数の工業都市であり、日本の鉄鋼業発祥の地でもあるが、村上さんの工房はそんな工業地帯ではなく、閑静な住宅地の中にある。一般的な工場を予想して行くと、驚くほど静かでシンプルな工房であり、看板にあるArt Of Aluminum Kenji Murakamiの文字を見つけ出さなければ、つい通り過ぎてしまうところだった。

小さな扉を開けて中に入ると、なんと人一人が行き来するのがやっとなほど、屋内のほぼすべてを占領する大型機械が目に飛び込んできた。そしてその奥にはコンピューターを操作するパネルやモニター。そしてもう一台、加工機械が設置されているのだ。

──この大きな機械は何ですか?
村上:これは5軸加工機というものです。DMG・MORIの精密機械ですね。ドイツのギルデマイスターグループと日本の森精機が技術提携して作り上げたもので、様々な金属加工ができる機械です。

──奥にも加工機械がありますが。
村上:あれは3軸加工機です。いわゆる従来型マシニングセンターです。きっとこれなら見たことがあると思いますが、今までのアルミビレットパーツは、この機械から生み出されてきたものがほとんどですね。

──5軸加工機の特徴を簡単に説明してください。
村上:従来型の3軸加工機「X・Y・Z軸」に加えて2つの旋回軸「A・C軸」を持っているのが大きな特徴です。3軸加工機だと加工素材に角度をつけて切削したり穴加工する場合、冶具が必要になりますが、5軸加工機の場合は、加工素材を取り付けたテーブルそのものが旋回したりスイングするので、かなり複雑な造形ができるようになりました。僕が手に持っているサンプルのスパイラル形状になっている方が5軸加工機で製作したものなんです。

──仕事を始められたきっかけは、どのようなことだったのですか?
村上:以前は、このような工作機械の運搬や設置という仕事をしていたのですが、元々こどもの頃から手先が器用で、模型のパーツを自作したりカスタムしたりしていました。模型メーカーのタミヤから出ているRC大型トラックやトラクターが牽引するトレーラー模型をオリジナルで製作してヤフオク等に出していたら、他の方からもオーダーが来るようになって、本格的にやってみようかと思いました。それにはまずイメージ通りに加工できる機械が必要なので、無理をして買いましたね。すると、開業間もなくして近くのハーレー専門店などからワンオフパーツの発注などもあって、ますます本格的にパーツ製作に乗り出すようになったんです。でもそれだけでは下請けの工房にすぎないから、僕のオリジナリティーを出そうと思いまして、自分のデザインで製作したハーレー用のパーツを以前から利用してたフェイスブックに掲載していきました。すると海外、特にアメリカやカナダのMCチームなどからオーダーをもらうようになったんです。

機械加工の刃物が作り上げる模様を、あえて磨くことなく生かす手法。美しく削ることもまたデザインのひとつであると考えるのである。

──どのような物の製作依頼ですか?
村上:彼らは唯一無二のパーツデザインを要求してきます。特にワンオフのフロアボードやダービーカバーといった個性を強調できるパーツが多いですね。カスタムパーツに関しては「こんなの作れる?」って問い合わせがよくあります。元のデザインと加工後の製品形状のバランスを取りながら設計して提示したデザインワークが受け入れられて、さらには1個からでも生産できるということが大きなメリットになりました。

──今後は、どのような展開を考えていますか?
村上:現在はバガーカスタム用のパーツを中心にラインナップしていて、ほとんどのパーツがノーマルからの取り替えでボルトオン装着できます。もちろんハーレー以外、国内外の車種問わず当店で加工できるものは何でも作ります。思い描いてるイメージとアイデアをmail@kenjimurakami.comまでメール頂ければ随時承りますのでお気軽にお問い合わせください。少ない工具で誰でも気軽に楽しめるカスタムパーツを作ることがウチの特徴で、そのラインナップは増やしたいですね。現在、オリジナルデザインのホイールにも着手しています。ビレットパーツはやはりアメリカのブランドが有名ですが、日本のオリジナルデザインでどこまで勝負できるか挑戦したいですね。今は、海外発信と同時に、取り扱いディーラー様も募集しています。

加工の幅を大きく飛躍させることになった最新型の5軸加工機。テーブルがスイングすることにより、加工可能な角度も様々。時間短縮の貢献も大きい。

村上さんは、完全に独学で加工機械の操作をマスターしたという。そして、元々の手先の器用さに加えて、オリジナルのデザインセンスも持ち味となっている。それは日本人としてのアイデンティティーを深く感じ取ることができて、その仕上がりは実に繊細な印象を与えるものである。村上さんの独特なオリジナリティーに、海外のハーレー乗りがいち早く反応したのもうなづけるところである。今年の3月に5軸加工機を導入して、ますますその製作物の範囲は広がった。起業して5年目の夏。今後はどのようなビレットパーツがここから生み出されていくのか、とても楽しみである。

日本人デザイナーのセンスが光る
オリジナルビレットパーツ一覧

日本の中でもバガーカスタムが熱い土地、それが九州でもある。村上さんが生み出すパーツのほとんどは、現代のツーリングモデルに適合するもの。デザインと機能性を両立させたオリジナリティーが高いものばかりである。

デザインは、ユーザーが考えたものでも製作可能で、1品だけのワンオフパーツももちろんOK。工房ならではのきめ細やかなサービスが特徴となっている。さらに9種類のメッキと同じく9色のアルマイト加工にもオプションで対応可能。自分の愛車をボルトオンパーツで気軽にドレスアップさせるのに、ちまたに溢れたカスタムパーツでは満足できないライダーなら、この工房の仕事に注目すべきではないだろうか。