VIRGIN HARLEY | 誰にも壊せないロックを! Loop-d2 特集記事&最新情報

取材協力/有限会社 東永産業 写真・文/モリヤン 構成/Virgin-HARLEY.com 編集部
掲載日:2012年10月31日(水)

Developer interview

窃盗団と戦い続けるには
個人で製品を作るほうが良い

永井さんのファクトリーは、名古屋市の南に位置する東海市にある。ここはいわゆる工業地帯で、大小の工場がひしめく重工業のメッカだ。元々永井さんの家業も金属加工を得意とした歴史のある工場で、父親の代から作り出す製品のクオリティは折り紙つきである。だからこそ永井さんの設計製作したキタコロックはとても評判が高いのだ。今回は、新しくブランドを立ち上げた永井さんに、その真意をきくことになった。

 

PROFILE

永井康史

以前乗っていたヘリテイジソフテイルが盗難に遭って以来、最強のロックを作るという目的を掲げて戦うエンジニア。キタコロックの開発者である。現在の愛車はスポーツスター XL883N アイアン。

永井:簡単に言うと、どんなに優秀な製品を開発しても、それが商品になるかどうかは分からないということです。

―― 具体的に言うと?

永井:ファクトリーが大きくなるほど、採算の合わない商品は、当然商品化しにくい。たとえば絶対的な強度を誇るロックがハーレー1台分の価格と同じだったとしたら、誰か購入しますか? もしかすると少しは売れるかもしれないけれど。大きな会社の商品としては NG となってしまいます。

―― だからご自分のブランドとして独立された。

永井:そのとおりです。もちろん僕だって慈善事業で作るわけではないから難しい問題ですよ。でも窃盗団と戦うためのロックは、その効果が失われてしまったら、何の意味もありません。これで良いというものはないんですよ。だからさまざまなアイデアを盛り込んだ新製品が常に必要なんです。僕は窃盗団に戦いを挑んでいる。負けない自信がありますからね。現時点で「絶対に壊されないロック」を自分のブランドで世に出そうと考えたんです。

―― コストを度外視しているということですか。

永井:儲けるための製品ではない、ということは確かですね。だから、販売価格はぐっと抑えています。数字だけで判断されると高いのかもしれませんが、それだけ自信のあるロックということです。僕は実際にハーレーを盗難された被害者でもありますし、今でもハーレー乗りです。だから部外者が考えた製品とは絶対的に違うアドバンテージを持っていると自負しています。

―― さまざまな実験をされていますよね。

永井:以前のインタビューでもお答えしましたが、世間で言われている窃盗の方法はいろいろ検証してみました。その中には、理論的には可能でも盗難グル―プは実施しない事例も多く含まれていて、自分が作り出す製品のヒントになっています。無意味な製品をどれだけ作っても価値はありません。解ける問題を数多く用意するより、解けない問題を用意することが最も重要なんです。それを複数バイクに取り付ければ、窃盗団は去っていく。

―― アラーム機能について、どうお考えですか。

永井:大きな音のするアラームは、窃盗を防止する効果よりも迷惑レベルほうが高いですよね。大きな音がすると周りの人々は止めてくれと考える。もし泥棒が簡単にその音を止めてバイクに乗り、走り去ったらどうでしょう。周囲の人々は安心するだけですよ。ディスクロックにアラームが付いているものもありますが、簡単な方法で音量を半分以下にできる。だから僕は、アラームが防犯の決め手になると思ったことはありません。

 

永井さんの考えるロックは、基本がディスクロックにある。ローターを外されても効果が失われないディスクロック。そこに組み合わされるさまざまなアイテムで防犯効果を倍増していくという考え方だ。効果の大きい方法を二重三重にすることこそ、盗難防止に繋がることを誰よりも良く知っている人なのである。

新しいシステムやテクノロジーに
耳を傾けていくことが重要だ

盗難は、頻繁に起こる時期と、そうでもない時期がある。あまり事件が少ないと人々は安心して防御の姿勢が甘くなりがち。しかしそんな時こそ危ないと考えよう。

 

古いタイプの防犯システムは、もうあまり効果がないと判断して、買い換えることも重要だ。特にワイヤータイプの場合は、引っ張り強度は強いがカッターで切ることは容易い。そして、アラーム等は、気休めと考えたほうが良い。窃盗団が諦める方法をいろいろと想像して、ロックは選ぶべきなのである。

“loop-d2” Strengthening Point

ハーレーを守るための強化ポイントはここ!

永井さんが開発し、パテントも持っているディスクロックの特徴は、単にディスクローターを挟み込むだけではなく、太いロッドがホイールの中にまで食い込んでいるところにある。

 

旧タイプのローターでもピンの小型化で対応している。

従来のディスクロックは、ローターボルトをすべて外してしまえば、ロックを壊すこともなく容易にホイールが回転できる状態になり、そこが最大のウィークポイントだった。しかし、このロックは大丈夫。完全にローターがフリーになっても、ホイールにロックそのものが絡まって絶対に回転しないのである。こんなことを書くと、窃盗団にヒントを与えているようなものと思うかもしれないが、従来のディスクロックを無効にした盗難は数多く引き起こされているのだ。永井さんが言う、「最新のテクノロジーに耳を傾けろ」というのはここである。

 

さまざまなローターを設定したラインナップは、旧型ハーレーのディスクローターにも対応し、要の鍵は、世界でもっとも進んだ鍵メーカーであるフィンランドのアブロイ社の物を使用している。

常に狙われていることを意識して
最新の設備で備えることが大切だ

防犯ロックの製作は、どこか兵器の開発に似てはいないかと思った。効果がなくなれば無意味な存在だからだ。しかし、似てはいるもののまったく違うところは、防犯ロックは攻撃性を持たず、徹底的に守る性能を追求している点である。

 

大切なハーレーが盗難されるなど、絶対にあってはならない。窃盗団は、無防備なハーレーから順に番号を付けるようにして盗んでいくのである。その出鼻を挫く対応がどこでもできていれば、やつらは諦めざるを得ないのだ。そのためには、最新テクノロジーが注ぎ込まれた強力なロックが必要なのである。