VIRGIN HARLEY | 安心して乗れるカスタムであるために 細部に宿るナセルの心づかい 特集記事&最新情報

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自分仕様に仕上げる
ベース車として

群馬県のナセルが生み出すカスタムは、金属の質感を敢えて表に出し、時間が経つにつれその質感が変化する味わい深い作りが特徴だ。車両持ち込みによるカスタムや修理も受け付けているが、得意とするのはこのナセルスタイルとでも言うべき、コンプリートカスタムである。ベース車輌に使用するのは主にツインカムとエボリューションで、ショベル以前の旧車系も扱うが、できれば納車後に手間のかからないTC&EVOを薦めている。その理由について代表の酒井氏に尋ねたところ、なんともユーザー目線な答えが返ってきた。

 

「手間がかからず、安心じゃないですか。旧車のカッコよさは僕も認めますし、大好きですが、それを愛車として扱う場合はやはり相応の知識や経験が必要だと思います。その点、TCやEVOならスタートもセルだし、ラクに楽しめますから」

 

“カッコいい”をキッカケに入ってくる人が多いハーレーカスタムの世界は、いまだ旧車の人気が根強いが、敢えてそちらを薦めないのがナセルである。興味深い酒井氏の考えについては後ほど詳細を紹介するとして、ここではそんなナセルが推しているカスタムとはどんな内容なのか、まずはじっくり見てみたい。

取材協力/デュアルワークス エンタープライズ 取材・撮影・文:高城一磨
掲載日:2012年4月1日

ツインカムやEVOをベースに、オリジナルのコンプリート車両をリリースしているナセル。
ショベル以前の旧車をベースにすることもあるが、その場合は県内在住者に限定。
その理由を聞けば、「ハーレーを永く好きでいてほしいから」。その意味するところは……。

ナセルが作るとミラーステーも凝った仕上がり。ブラス製でカーブを描くステーはハンドル周りのワンポイントに。ブラス製のストレートタイプもある。アーリーレバーとの組み合わせもGOOD。 ハンドルバーをマウント部には、ナセルオリジナルのコッパーコートライザーを使用。表面のブラックが経年変化で薄れると、下地の真鍮色が見える味のある作り。 クライムシーンのヘッドライトは、滑らかなRを描いた金属感たっぷりの仕上がりがポイント。ナセル・カスタムの方向性にぴったりのパーツだ。 ビレットステップにもドリルド加工を徹底。いっぽうでマウントボルトのワッシャーにわざわざカッパー(銅)製を使用し、オイルラインと合わせ見た目のマッチングも図る。 エンジン左側に再度マウントされるメーターは、オリジナルのブラケットキットにデイトナ製ミニメーターをセット。その前にはエマージェンシータンクキットが付く。 エンジンはTC88をベースに吸気にケーヒンのFCRキャブをセットする。エッジの効いたエアクリーナーカバーは、ナセルのシェイプエアクリーナー。 やはりサイドマウントとなるライセンスプレートの上には、オリジナルのアルミK壱型ランプをセット。シンプルだが質感は高く、独自のリアビューを作る。 シンプルながら丁寧な作りを持つレザーソロシートは、オールドコインカンパニーと提携製作のオリジナル品。シートボトムには対候性の高いステンレス製スプリングを使用。 レギュレーター上にはオイルクーラーを設置。大御所のロックハート製だ。ドリルド仕上げのウインカーステーはナセル製。この辺りの金属加工はお手の物。 リアに300サイズのタイヤを履かせるために、リックスのスイングアームキットを利用。ブレーキキャリパーはフロント同様ブレンボ製を使う。 オープンプライマリーはBDLの2インチ仕様。インナーシフトキットを利用することで、ポジションは日本人にも無理のないミッド仕様になっている。 マスターシリンダーをスプリンガーフォークのボトム部分にマウントし、レバーからワイヤー引きで操作。効きすぎない柔らかいタッチを生み出す。

VR300SP

最初に紹介するのは、酒井氏の愛車であるTCソフテイルをベースにしたファットタイヤ仕様のVR300SP。これはナセルのラインナップの中でもハイエンドな仕様で、メッツラーの300サイズを履かせるために、スイングアームから変更が入る大掛かりなカスタムである。フロントサスペンションはW&WのVLタイプスプリンガーキットを使いクラシカルな顔を持つ一方、リアは極太ラジアルと現代的で、TCやEVOユニットだからこそ違和感なく組み合わせのできる構成。ホイールは前後ともスポーク仕様。タイヤはリアのラジアルに合わせフロントも現代的なパターンを持つメッツラーを履かせ、金属感を敢えて前面に出したソリッドなフューエルタンクとのマッチングも良好だ。ポジションはミッドコントロールのおかげでリラックスして乗れ、ハンドルはオリジナルのロッダーバーでグリップ位置がやや高め。サドルシートは前後調整機能が付く優れものだから、体格によってポジション調整ができるのも嬉しい。エンジンは基本的にスタンダードのままで、この車輌は吸気をケーヒンFCRという高性能キャブに変更。もともと排気量のあるTCなら、吸排気だけの変更でもセットアップがしっかりしていれば、不足のない走りを堪能できる。プライマリーは2インチのオープン仕様で、前後プーリーの間にステップを設置するインナーシフトキットを使い、この辺りはメカニカルなアピールポイントだろう。ブレーキは前後とも油圧ディスクだが、ハンドル周りをスッキリさせるために、フロント用マスターシリンダーをリザーバータンクごとスプリンガーフォークのボトムアーム部分に移設。安心(=安全)できる仕様を維持しつつ、考え抜かれたスタイルが与えられている。

ソフテイル構造に対応したオリジナルシート。シートベースのストッパー部分裏側には、ETCユニット等薄いものなら収まるスペースも設けてある。 フューエルタンクはWWC製を加工したワンオフ品。フューエルコックは信頼性の高いピンゲル製を全車に装備する。ペイントはノマドコンセプトに依頼。 ハンドルはオーナーの要望でワンオフ製作。この車輌には時間をかけて、オーナー希望のデザインを具現化したパーツがいくつも散りばめられている。 オープンプライマリーはBDLの2インチ。シースルーのオリジナルベルトカバーがメカニカル且つシャープなデザインを生む。ステップはインナーシフトキットを組む。 エンジンは98年のEVOを使用。パンヘッド風ロッカーカバーは社外品を流用。STDのCVキャブに装着されるのは、オリジナルのラウンドエアクリーナーだ。 フォークはH-D純正スプリンガーを利用。ホイールはRSD、ブレーキパーツはPM製を組み合わせ、ソリッドな仕上がりにまとめている。 ホイールとデザインを合わせたディスクローターもRSD製。フラットフェンダーにドリルドステーはナセル製の定番パーツだ。キャリパーはPM製対向4ポッド。 リアタイヤ200サイズまではノーマルスイングアームで対応可能なため、リーズナブルにファット化を実現。チェーン化することでクリアランスの問題を解決している。 ベーシックなスプリンガーS.Bは200万円前後で製作可能だが、スプリンガーキットではなくノーマルのテレスコピックフォークを使えば、コストはさらに抑えられる。

ベーシックなスプリンガーS.Bは200万円前後で製作可能だが、スプリンガーキットではなくノーマルのテレスコピックフォークを使えば、コストはさらに抑えられる。

NR200SP

300等の極太タイヤ仕様はハイエンドモデルの一例で、もっとコストを抑えたベーシックなモデルでリーズナブルに楽しむこともできるし、またベースモデルに自分好みの変更を加えて特別仕様をアレンジしてもらう展開も可能だ。酒井氏が「ウチのバイクはベースモデル」と言うのは、予算や好みに応じ仕上がりを如何様にも変化させることが可能なシステムを持つからである。ナセルのカスタムにはいくつかパターンがあるため、ここで簡単に説明しておきたい。基本仕様は、前後タイヤに一般的なサイズのファイヤストーンを履かせたスプリンガーフォーク仕様で、C(カスタム)を中心に、パーツ構成がアップグレードされたS(スペシャル)と逆にパーツ構成を抑えたB(バッド、写真下の車両)の3バージョンを用意する。もっともベーシックなスプリンガーBなら、EVOユニット仕様で200万円前後の価格設定もある。要は構成パーツの相談を臨機応変に対応してくれるため、どんな仕様でも作ってもらえるセミオーダーシステムというワケだ。その上のグレードとして、リアタイヤに240/260サイズを履くVR-240/260SP、そして先のVR-300SPが用意されている。このワイドタイヤ仕様は240以上になるとスイングアームの変更が必要になるが、最近の流行は写真上で紹介しているような、スタンダードのスイングアームでいけるチョイ太仕様の200サイズ。この車輌も、オーナーの注文を細かに反映した1台である。

 

 

価格を抑えたカスタム入門編もあり

ソフテイルは本来ワイドグライドだが、ご覧のように純正フォーク利用のナローフォーク仕様も人気の仕様。フロントのルックスが、かなりスリムになる。 リアキャリパーとサポートにノーマルを使いコストを抑えた例。ブレーキタッチに影響してくるブレーキホースはメッシュタイプに変更している。この辺りはフレキシブルに対応してくれる。
  • 1台づつ全バラにし
    丁寧に組み上げる

    ナセルではカスタムを仕上げる大前提として、ベース車輌の全バラ確認及び整備を必ず行っている。程度にバラつきのある中古車輌をベースにする場合、耐久性を上げ、先々のトラブルを少なくし、オーナーが購入後も快適に乗り回せる時間をなるべく作るためには、必須の作業と言える。

  • TCとEVOが中心、その理由は……

    オーナーにとってなにが一番大切なのか? メンテナンスは必要最低限で済み、不意のトラブルも少なく、メカニズムの信頼性が高いユニットを使えば、快適な時間を極力長く取ることができる……それがTCやEVOユニットを好んで使う理由である。

酒井敏之 Toshiyuki Sakai

 

ネジが輝くバイクは美しい

外から見えるボルト/ナットをポリッシュ仕様に交換するのは当たり前。だが、見えない部分にまで同様の事を行うのは手間もコストもかかる。だがオーナーが大金を投入しているのに、細部がそれなりでは……そんな考えからナセルはパーツの裏側に隠れる見えないネジにも配慮を怠らない。

 

 

ワイドホイール化もお好み次第で

リアのワイドホイール化だが、ノーマルスイングアームでも200サイズまでなら装着可能。ワイドホイール化は、ベルトやチェーン、スプロケットのオフセット化も必要。ナセルはこの辺りのノウハウも豊富に持つ。写真は左から、ノーマルスイングアーム、240サイズ用、300サイズ用。

 

SHOP INFORMATION

ハーレー初心者でも
安心のカスタムショップ

群馬県高崎市にあるナセルは日本一円にお客を抱える、人気のカスタムショップ。TC、EVOに加え、旧車のカスタムも請け負う。ただし、オーナーのキャリアと居住地を考えサービスが行き届かないと判断した場合、信頼性の高いTC/EVOを極力薦めている。カスタムプランは、社長の酒井氏自身が豊富な経験をベースに相談にのってくれる。

 

所在地 〒370-0073 群馬県高崎市緑町2-7-8
電話 027-370-6616
FAX 027-370-6617
営業時間 10:00~19:00
定休日 毎週月曜 第1、3火曜
URL http://www.dualworks-e.com

見えないところこそ、
手を抜かず作り込む

信頼性、これは何にも増して大切な要素だと、酒井氏は考えている。とくにハーレーの世界に憧れ初めて入ってきた人ほど、この点を考えてほしいと言う。

 

「トラブルが起きた際にどう対処できるか。やはりバイクはメンテナンスフリーでは乗れませんから、その辺りを自分でどこまでできるか考えてほしいと思います。旧車は確かにカッコいいし、味わいもありますが、EVOやTCに比べればトラブルの可能性がどうしても高くなります。その手間を楽しめる度量があるか? 旧車は乗り手に求められる条件が多いんですね。それを理解した上で『好き』という気持ちが勝り、自分が努力しながら浅い経験をものともせずに乗り越えられる人もいらっしゃいますが、そうは行かない場合を多々見てきました。例えば出先でバイクの調子が悪くなり、原因が見当たらず電話連絡をもらうことがありました。こちらは兆候を聞き、調べる手順を説明しても、メカニズムの基本を理解できていなければ、やはり難しい。そこでイヤになってしまう人もいるのです。バイクなんだから、旧車なんだから当たり前という声もあるでしょうが、だからと言ってせっかく好きになってくれたその気持ちを萎めずにそのままというのも違う気がしたのです。それがTCとEVOを中心に扱うようになった理由です」

 

まずは存分に乗って楽しんでもらい、長く付き合う中で経験を積んでもらえればいい。そのためには、スタンダードのように安心して乗れるカスタムが必要。旧車も扱うが、なにかあったときに自分たちがすぐに出向ける距離を考えると、やはり同じ県内が限度。それらの思いが、冒頭の言葉につながっている。

 

「ウチのバイクは気を遣う必要が少ないから、コンビニへのチョイ乗りとかにも使えますよ。そこに眺めて楽しめる要素も加えている。もちろん信頼性は絶対です。どこか飛び抜けているワケではありませんが、1台でほとんどを楽しめるようなバランスの高い仕上がりを考えています。仕上げはなるべく美しくしたいから、手間がかかっても全バラにして、普段手の届かない場所にあるボルトナットやシャフト類をポリッシュ仕様にしたり、見えないところにこそ気を遣うようにしています。オーナーさんの満足感を考えると、どうしてもそうしないわけにはいかないですね」

 

カタログに載せている仕様はひとつの提案で、好みや金額に合わせて仕上がりはもちろん、パーツごとに相談に応じるという酒井氏。経験が浅くても、憧れだけでも、ハーレーのカスタムに乗って、まずその楽しさを体感してほしい。バックアップ体制はいつでもできている。終始ものごし柔らかな話し方だったが、会話の中にはそんな強い意志が込められていた。

 

細部への気遣いはボルト/ナットばかりではない。スポークは耐久性の高いステンレス製を採用、ソロシートもベースプレート、スプリング、ブラケットとステンレスを使い、オリジナルで製作する。全バラ後の車体組み立て時は可動パーツを新品にする等、抜かりはない。