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高品位車高調整機構付きスタリオンサスペンションの実力
掲載日/2018年07月11日
取材協力/ERJスポーツ・レーシング・デベロップメントハーレーダビッドソン相模原
取材、撮影、文/森下光紹  構成/バイクブロス・マガジンズ
※この記事は雑誌『バージンハーレー vol.39』(P.084-085)に掲載された内容を再編集したものです。
高品位車高調整機構付きスタリオンサスペンションの実力
クルマのサスペンションチューニングでは常識の車高調整機能。サスペンションユニットの全長を既定の範囲内で変更できる機構だ。バイク用ではノーマルは無論のこと、専用開発されたリプレイスメント用サスペンションでもこの機構を持つものはごく少数だ。

車高調節機能を持つスタリオンサスペンションの構造は、通常のツインショックサスペンションと同様、筒型のショックアブソーバーにコイルスプリングを組み合わせたものである。では、どの部分で車高調整するのか? フレームに取り付ける上部エンドアイ部分は従来と変わらぬ構造だが、スイングアームに取り付ける下部のアタッチメントはショックアブソーバーユニット本体に1ミリピッチのネジ溝が刻まれ、本体を下から掴むような構造のアタッチメントを回転させることで取り付け部分の距離を自由に可変できるようになっている。

サスペンションの取り付けは、ハーレーダビッドソン相模原で行った。スプリングプリロードの調整は、サスユニットを取り付けたままで可能だが、車高を変更する際は、ユニットを取り外すことになる。とはいえ、付属する専用工具で、リングナットを緩め、アタッチメントを回転させるだけという簡単な作業である。もちろん左右の長さは均等にすることが重要。ある程度のメンテナンススキルがあれば、ユーザーでも作業することが可能だ。

本体のネジ溝はスプリングのセットにも利用され、下部取付けアタッチメントの上にリングナットを装備して、スプリングを下側から固定する。1ミリピッチで圧縮(プリロード)を加減することができるので、車重や走行条件に応じて変更することが可能。つまりこのサスペンションは、クルマのストラットサスペンションに採用されている車高調整ユニットとほぼ同じ構造なのである。

「僕はFLHXに乗るんだけど、身長が低くてね。だからリアサスをローダウンしていたんだけど、これがどうも乗り心地は硬いし、高速走行での安定性も悪くて悩んでいたんだ。そんな時に、クルマのサスペンションを製作している所でこのサスの試作品を発見したんだよ」

ERJ代表の遠藤和久さん レーシングカー用サスペンションユニットをハーレー用に置き換えるという発想で生まれたのが、スタリオンサスペンションなのだ。身長が160cmを少し下回る遠藤社長が跨っても、左足のかかとが接地するという車高でも、乗り心地や高速ハンドリングは良好である。

自身の愛車をローダウンできる高性能なサスペンションを探していたERJ代表の遠藤和久さん。実際、比較的値段の安い今までのハーレー用ローダウンサスペンションは、短くなる分バネレートが高く、日本人の体格では動きが硬い傾向にある。車高が下がった状態でも重いアメリカ人が乗って底づきしないようなバネレートで仕上げてあることが大きな問題なのだ。ローダウンサスペンションが必要なのは、小柄なライダー。特に女性には必需品だが、ほとんどのケースで乗り心地を犠牲にすることになっているのが現状だ。

反面、乗り心地に優れたリプレイスメント用高級サスペンションの場合は、基本がレース用のユニットということもあって、早いサイクルでオーバーホールすることが前提となる。しかも繊細ゆえにセッティングの幅がせまく、汎用性が足らない。そうしたネガな部分を払拭するユニットとして登場したのがスタリオン。四輪用サスペンションで実績のあるファクトリーで生産されるため、基本的にクルマ用サスは5万キロ以上の性能確保が常識だから、耐久性も大いに期待できるところだ。

「クルマ用なら車高調は常識なのに、バイク用には設定がない。でもハーレーに乗るオーナーは車高を下げて乗る人が多いし、可変できれば、ワインディングを走る時とか、高速道路での長距離ツーリングとか、様々な条件で変更して楽しめるでしょ。ライダーは変わらないのだから、スプリングを強くする必要はないよね。スタリオンはそんな理想的なサスペンションユニットだと思いますよ」

ERJはクルマのGTカー選手権を走るモデルのレプリカをコンプリート販売している会社でもある。代表の遠藤さんは実際にレーシングカーを走らせていたドライバーで、長らくモータースポーツの世界に関わってきた人物。そして現在はFLHXを乗り回すツーリングライダー。だからこそ、ハーレーに足らない機能的なサスペンションの必要性が理解できるのだ。

エボリューション以降の、ほとんどのツ

インショックモデルに適合するスタリオンサスペンション。足つき性と快適な乗り心地を両立し、街乗りから高速クルージング、果てはワインディングロードまで、ライダーの体格や技量を問わない強い味方の登場だ。

サスペンションが最も長い状態で約14インチ。

取り付けアタッチメントを回転させることで、サス長を可変させる。最短では10.5インチ。

取り付けアタッチメントの固定はリングナットで行う。付属する専用工具を使って緩めれば、アタッチメントが回転。締めれば固定される。

スプリングのプリロード調整もリングナットで行うのだが、こちらの固定はこの専用工具の他に、六角レンチも使用する。

上部の取り付け部分に使用するカラーは2枚付属。

ショックアブソーバーの減衰力は、ダイヤルで15段階に調節できる。

下部の取り付けアタッチメントはセンターからオフセットされているので、上部取付用カラーとの組み合わせで、車体と垂直に取り付けることが可能だ。

付属パーツは4点。