

|
毎号が創刊号で、毎号が最終号
只野●基本はやはり「バイカー」であり「人間」です。たとえ、どんなにカッコいいチョッパーであっても、カッコ悪い人が乗っていると終わってしまいます。カッコいいバイカーがいて初めてカスタムが活きてくるわけです。人間の持っている鼓動(VIBES)とハーレーが持つ鼓動(VIBES)。その二つが一緒になって初めてカッコよくなる、と私は考えます。だからこそ、VIBESはバイカーの生き方、バイカーが何を考えているのか、バイカーのハーレーに対する・仲間に対する想い、を追い続けていきたい、と考えています。これは将来もきっと変わらない不変のテーマです。
最初は確かにブームだったかもしれません。でも私は「ブーム」で終わらせたくはなかった。じゃあどうすれば「流行」で終わらないのか、を考えてバイカーたちの姿を紹介して行こうと決めたんです。バイカーの人たちはいくら年月が経ち、時代がどれだけ変わろうとも、生き方は変わりません。そういう人たちの生き方をVIBESが伝えていくことで、ハーレーが時代に飲み込まれず、流行だけで終わらず、ハーレーが社会に定着していくだろうと考えたわけです。VIBESが不変のテーマを掲げ続けているのには意味があるんです。
只野●決して妥協せず誌面を創ること、ですね。編集の人間には「手を抜くな、毎号が創刊号で、毎号が最終号だと思って真剣に作れ」と嫌になるほど言い続けています。たった1ページであっても手を抜いてしまうと、もう読んでもらえなくなりますから。ずっと読んでくれていた方が一度VIBESを買わなくなってしまうと、なかなか戻ってきてもらえません。長く雑誌を読んでいると、そういう時期は当然出てくるものかもしれませんが、創り手の我々としては毎号を真剣勝負で創り、毎月読んでいただける本作りをしなければいけません。
只野●「偉大なるマンネリズム」と言われることがありますが、いつ戻ってきても「VIBESは変わってないね」と安心できる本でありたいと考えています。「VIBESは変わってしまった」と言われるのは寂しいですから。事情があってハーレーを降りてしまった人、乗らなくなってしまった人がいつハーレーに戻ってきても、VIBESは変わらずそこにある、いつ戻ってきても楽しんでもらえる、そういう雑誌でありたいですね。いい意味で変化する、進歩していくことは当然必要で、その努力はもちろん怠っていません。しかし変えてはいけない部分は変えない、そのポリシーはこれからも貫いていきます。
只野●そもそもVIBESミーティングを始めたのは、創刊してから1年が経ち、スタッフや協力してくれた方を集めて慰労会をしよう、それがきっかけでした。当時はこのままVIBESが続いていくのかもわかりませんでしたから「どうせだったら、VIBESを読んでくれている読者の人にも来ていただいて」と誌面で呼びかけました。そうしたら160人もの人が集まってくれて。集まってくれた方たちと一緒にお酒を酌み交わし、夜通し話をして「ああ、VIBESを創刊してよかった」と1年を振り返って見ることができました。来てくれた方も皆楽しんでくれていましたので「来年もやるぞ」と。そうやって毎年場所を変え、開催していったのがVIBESミーティングです。読者同士が知り合って、楽しくお酒を飲んでいる姿を見ると「続けてきてよかったなぁ」と毎年思います。
只野●ミーティングがすべてだとは思いませんし、肌に合わない人もいるでしょう。でも、ぜひ一度でいいですからミーティングには遊びにいって欲しいですね。「ハーレーがもっと楽しくなる場」がミーティングだと思いますから。もちろん、ただ遊びに行って遠目から眺めているのでは何も始まりません。積極的に周りの人に声をかけて欲しい、自分たちの仲間内で楽しむのではなく、例えば隣のテントの人に挨拶でいいから声をかけて、交流して欲しいと思っています。いろんなところで交わされる挨拶がつながって、仲間が広がっていくのがミーティングの素晴らしさですから。
只野●掲載されている人は怖そうに見える人もいるでしょう。しかし、雰囲気だけで判断せず、文章をちゃんと読んでみてください。タトゥーが入っていて、長い髪で髭も生えていて、外見はアウトローに見えるかもしれないけれど、人に迷惑はかけず、こんなにカッコよく生きているんだよ、実はこんな真面目なことを考えているんだよ、こんないいことを言っているんだよ、と紹介していますから。VIBESは読者の人に何かを押し付けているわけでもありません。こういう人がいる、こんな考え方の人がいる、VIBES編集部はこう思う、そこまでしか書いていません。記事を読んで感動するのか、自分とは違うと判断するのか、そこは皆さんに考えていただきたい、そう思っています。
只野●バイクに乗ること、旅をすることが仕事になってしまい、企画も浮かばず、何にもできなくなった時期はありました。遊ぶためならいろんなことも思いつくでしょうけれど、ずっとハーレーを仕事にしていると、何が楽しくて、何が楽しくないのかがわからなくなり行き詰まってしまうことがあったんです。一番好きなハーレーを仕事にしてしまったので、一番嫌なこともハーレーになってしまって。
只野●「今やめていいのか?」と自分に何度も自問自答し、仕事を続けました。親しいバイカーたちに相談したこともあります。あるバイカーから「オマエの悩みなんてちっぽけで、そんなことでVIBESをやめてしまうのか。そんなことを吹き飛ばすくらい大勢のバイカーがVIBESを愛して、VIBESが出るのを楽しみにしているんだぞ」と言われました。その言葉で答えが出ましたね「やめるわけにはいかない」と。克服したというより、結局はやめなかったというだけです。バイカーたちの笑顔と、気持ちよく走る姿を見ていたらやめられるわけがないですよね。私の苦しい思いを支えてくれたのは読者であり、やっぱりバイカーたちだったんですよ。支えられる度に私自身がVIBESという本にのめり込んでいったんです。
INTERVIEWER COLUMN 今回のインタビューは極めて個人的な興味で取材させていただいた。ハーレーに興味を持ち、私が最初に買ったハーレー誌はVIBESだった。VIBESを読みながら「いつかはハーレー」という気持ちを高ぶらせてきた。VIBESで紹介されるハーレーオーナーの記事や読者ページを読みながら、いつの間にか「いつかはハーレー」が「もうすぐハーレー」に変わり、気が付けば「今すぐハーレー」になりハーレーを買ってしまった。カスタムハーレーだけを見ていても「今すぐほしい」とはきっと思わなかっただろう。ハーレーオーナーの笑顔を見て、ハーレーの魅力を語る記事を読み、ハーレーの世界に飛び込んできた。なぜ私はこれほどハーレーに惹かれたのか、なぜVIBESを読み続けているのか、只野さんにお会いしてVIBESへのこだわりをお聞きすることで、その疑問が解けた。モノではなく人、そのこだわりに心を動かされて私はハーレーにたどり着いたのだろう。(ターミー) |
只野 利浩 44歳。幼少の頃から徒歩や自転車で旅を続け、もっと遠くまで、とバイクの旅に目覚める。旅に一番合うバイクということでハーレーに出会い、出会ったバイカーの魅力を伝えるためVIBESを創刊し、現在は発行人を務める。FXRS、FLT、FLHの3台のショヘルヘッドを所有。 |