

旧世代エンジンの最終進化系
ショベルヘッドの魅力とは?
ハーレーの、戦前からのエンジン進化の歴史はパンヘッドで熟成を極めつつあった。しかし、戦後のトライアンフなど英国車のアメリカでの隆盛にハーレーが危機感を抱いた時期に登場したのがショベルヘッド(以下、ショベル)だ。アメリカを含め、世界の道路網の整備が進み、さらなる高速巡航性や信頼性を高めたエンジンが求められはじめていたのだ。ショベルは登場から販売終了まで18年の間販売され、年式によって変更点が非常に多いエンジンだ。年式が高年式になるほど、電装系や吸気システム、排気量に至るまで時代に合わせた進化が進められており、ショベルを求めるユーザーの中には年式による違いの部分に大いにこだわりを見せる人もいる。一般にハーレーの旧車というとショベル以前を指すことが多く、旧世代のエンジンの最終進化系がショベルとも言える。
年代によって違う
ショベルの走行フィーリング
ショベルヘッドの開発には先行して開発・販売されていた「ショベルヘッドスポーツスター」で培ったノウハウが活かされている。ショベルヘッドの特徴的なヘッドデザインは従来以上に冷却性を狙った結果、ヘッドが“コ”の字型となった。初期のショベルヘッドはパンヘッドのクランクケースに新開発のシリンダーを載せた“アーリーショベル”と呼ばれるモデルで、いきなりすべてが新設計のエンジンとなったわけではない。70年に電装系が大きく見直されるまでは、パンヘッドと共通点を大きく持ったエンジンとなっていたのだ。そのため、すべての部品が新設計のモノとなったショベルヘッドは70年以降のモデルのこと。60年代のショベルヘッドはパンヘッドからの過渡期にあたると考えていい。ショベルヘッドの時代のハーレーは経営的にも激動の時代だった。1969年にハーレー
の株式をAMF社に譲渡し、1984年の株式買戻し(バイバック)に至るまで、モーターサイクルに縁のない企業が株主として君臨、経営陣はAMFから送り込まれた。しかし、AMFの資本参加によって、ハーレーの生産設備の近代化や社内の改革が図られた面があるのも確かだ。進化を遂げる他メーカーに対向して、ハーレーの伝統を保ちつつ、電装系や吸気システム、排気量に至るまで改善が続けられたのはこのAMF時代だったのだ。
ではショベルヘッドの走行フィーリングはいったいどのようなモノなのか。1200ccモデルと1340ccモデルで受ける印象は大きく違う。1977年まで続いた1200ccモデルでも、初期アーリショベルとキャブレターなどに変更が加えられた後期ではやや違いはあるものの、エボやツインカムに馴染んだ人からするとマイルドな印象を受けるだろう。ショベルヘッドに荒々しさ、体を持っていかれるような力強さを求めている人ならば1340ccになった最終型ショベルヘッドの方がイメージに合うかもしれない。1200ccモデルはパンヘッドなどにも通ずる、余裕を持ったパワーで落ち着いて走る“旧車らしい”フィーリングを持っているのだ。どちらのモデルにも魅力があり、それぞれに魅了されるユーザーが数多く存在する。ショベルヘッドと一言で言っても年式によって違った魅力があるのだ。また70年代に入り、従来はツーリングモデルしかなかったFLモデルだけでなく、これまでになかったスリムなデザインが人気のFXモデルも登場しはじめているので、モデル選択の幅が大きく広がっている。
車輌選びの注意点
気軽に買えるエンジンではありません
ショベルは現行モデルの新車と同じくらいの価格で流通しています。きっちり整備されている車輌が200万円以上の価格をつけるのも珍しいことではありません。発売から何十年も経っていて、部品の耐用年数を越えていて交換が必要なパーツもあり、販売までの基本整備の手がかかるので特別驚くことではないでしょう。ショップがお客さんの元に安心して納車できる状態まで整備しようとすると、皆さんが想像する以上の手間と時間がかかるのです。それでも、100%トラブルが起こらないとは言えないのが旧車の怖いところ。現行車を新車で買うのとは違い、どれほど気を遣っても購入後に何も起こらないとは限りません。そのため、できれば何かあったときに助けてもらいやすい、自宅から近いところに信頼できるショップを見つけてください。現車の状態を自分の眼で確認し、ショップの人とコミュニケーションをじっくり取った上で、購入して欲しいですね。新車のようにどこで購入しても、ほぼ同じというわけには行かないのが現実です。また「高い車輌は買えない」と個人売買に手を出すのも否定はしませんが、車輌の状態を見抜く眼力と、いざというときに何とかできる経験が必要になってきます。納車前にお金をかけるのか、安く買って後からトラブルを1つずつ潰していくのか。トータルでかかる費用は後者の方がかかることの方が多いかもしれません。
フルオリジナルの中古車はなかなか出てくることはないでしょう。ストックに近い車輌すら珍しくなってきていますので、こだわりがあって車輌を探すならば時間がかかることを覚悟しておいてください。次にカスタム車輌を購入する際の注意点を。ストックで状態がいい調子を知るのはなかなか難しいですけれど、カスタムされた車輌はそれぞれ違った方向に味つけがされています。購入を考えている車輌はどこがカスタムされていて、どういったフィーリングに変化しているのか、ショップに質問をして、その車輌があなたが求めているショベルに近いのか、疑問な点はあらかじめ質問しておいた方がいいでしょう。展示されている状態で、何もかも満足できる状態のショベルに出会うことはなかなか難しいでしょうけれど、そんなコミュニケーションの中から「納車までにどこをどうしてもらえればいいのか」が見えてきます。ショップ側もお客さんがどんなショベルに乗りたいのか、信頼してたくさん話してもらえれば応え方が見えてくるものです。どこで買っても同じなバイクではないのがショベルの難しいところですが、コミュニケーションを密にすることが、永く付き合えるいいショベルを見つける近道なのです。
最後に購入後のメンテナンスについてですが、自分のできる範囲で愛車のトラブルへの対処法は少しずつ学んで行った方がいいかもしれません。すべてをショップに任すのも間違ってはいませんが、出先でトラブルに遭い、電話などでサポートしてもらいながら自宅に帰ってこれるくらいの知識は身に着けておいた方が安心です。旧車に乗っていればいつかトラブルには遭います。そうやって距離を重ね、自信を深めて実感できるショベルの魅力も確かにあるのです。リスク部分ばかり書いてきましたが、リスク以上の魅力がショベルにはあります。不安に思う部分を覚悟しながらも、それでもショベルに乗りたいという方。不安を打ち消す方法は経験のあるショップが教えてくれます。距離を重ねれば不安は小さくなり、ショベルで走るほどに感動が大きくなってくるでしょう。安易な気持ちで「ショベルは素晴らしいバイクだよ」と私は言いませんが、じっくり悩んだ結果「ショベルこそが心に響くハーレーだ」と感じる方には他には代えられないバイクなのです。
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