VIRGIN HARLEY |  XL1200X フォーティーエイト試乗インプレ

XL1200X フォーティーエイトの画像
HARLEY-DAVIDSON XL1200X Forty-Eight(2011)

XL1200X フォーティーエイト

圧倒的なインパクトのスタイリング
注目を一身に浴びるモデルの真相に迫る

日本デビューよりも半年ほど前にアメリカ本国にて登場、XL1200N ナイトスターやXL883N アイアンといったモデルがライトカスタムと思えるほど手が加えられたファクトリーカスタムモデル、XL1200X FORTY-EIGHTがついに上陸した。ハーレーがこれまで歩んできた100年以上におよぶ歴史を紐解き、古き良き時代と現代のモダンテイストを見事に融合させたスタイリングの完成度は圧倒的で、見る者の目を釘付けにする。スポーツスターファミリーのなかでも飛び抜けたモデルと言っていいFORTY-EIGHTを、スタイリングと乗り味の両面から分析してみた。

XL1200X フォーティーエイトの画像
往年のスポーツスタータンクの生産ライン写真。当時のグラフィックが復活した。

XL1200X フォーティーエイトの特徴

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群を抜いた完成度を誇るフォルム
見た目の流麗さでは右に出る者なし

とにかくぱっと見たときの印象は、他のスポーツスターモデルの比ではない。XL1200N ナイトスターをベースに手が加えられているのだが、あらゆる部位にオリジナルパーツが配されており、“ロー&ロング”というカスタムテーマに則った唯一無二のフォルムを生み出している。まず目を引くのがフューエルタンクだろう。スポーツスターオーナーならカスタムの選択肢として一度は検討するであろう容量7.9リットルの“ピーナッツ”フューエルタンクを標準装備。これは1948年にハーレーが生み出した125cc単気筒モデル「S-125」に搭載されていたものが“復活した”という意味合いを持ち、このFORTY-EIGHTの名もその年号に由来する。タンクグラフィックも1970年代のXLHから続く“Sportster”のロゴが刻まれ、往年のデザインが現代でも映えることを証明している。ハンドルまわりに目をやると、新設計となるワイドなハンドルバーにオリジナルのメーターブラケットを装備。ライザー部分に刻まれた「MILWAUKIEE U.S.A」の刻印が心憎い演出だ。両サイドのミラーをアンダーマウントとすることで全体を低く見せ、リアエンドへと続く車体のアールを美しく形成している。その流れを崩さないよう設計されたオリジナルのダブルテクスチャードソロシートも注目のアイテムで、自分の車両に取り付けられるかどうか、気になるスポーツスターオーナーもいることだろう。リアに目をやると、ナイトスターやアイアンとお揃いとなるストップランプ一体型リアウインカーを装備。クラシカルな雰囲気が漂うタンクやシートの先に最新パーツが組み合わされ、それらが違和感なく融合しているところがFORTY-EIGHTの魅力のひとつと言える。

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さらに注目したいのが足周りだ。フロントには強烈な印象を与える幅130ミリ相当のダンロップ製ファットタイヤを採用。スタンダードなスポーツスターモデルと見比べるとタイヤ面積の違いは明白で、インパクトという点で言えばFORTY-EIGHTに軍配が上がる。このタイヤに16インチのブラックスチールレースホイールとフォークブレスマウントのチョップドフロントフェンダーが組み合わさり、さらに力強さを与えている。ファットタイヤを装着した影響からフロントフォーク間の幅が広がることとなるのだが、ここにはワイドトリプルクランプを装着してうまくバランスを整えている。真正面から見た面構えは、他のスポーツスターとは一風違うのでぜひ注目して欲しい。ヘッドライトは形状こそ違うが、イメージはFXDF ダイナ・ファットボブに似ている。そのヘッドライトには従来のスポーツスターが装備しているバイザー付きのタイプではなく、アンダーブラケットにマウントするダイナ型という点もFORTY-EIGHTならでは。ここまでオリジナルのパーツを散りばめながら絶妙のバランスで組み上げ、作り手が目指すスタイリングを具現化しているところは見事と言う他ない。今後FORTY-EIGHT以上の完成度を誇るスポーツスターは出てこないのではないか、そう思ってしまうほどである。

XL1200X フォーティーエイトの試乗インプレッション

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乗り心地よりも車両としての完成度
ある意味極端にシフトしたモデル

ここまでスタイリングにこだわったモデルだ、実際の乗り味はどのようなものか……。誰もがデビュー前から気になっていた点だと思うが、試乗をしてみた感想を率直に言い表すと、「非常に奇妙な乗り心地」という言葉になる。ハーレーのラインナップでもスポーツスターとダイナの2ファミリーに関しては、他モデル以上に走行性能を重視した調整がなされている。とりわけスポーツスターはビッグツイン系とは異なり、日本人でも取り回しやすいバランスの良さがポイントに挙げられるのだが、FORTY-EIGHT はベースこそスポーツスターであるものの、ビジュアルを重視したパーツを数多く取り入れたせいか、従来の走行バランスを損なってしまっている感が否めない。跨った際の座り心地だが、身長174センチのライダーなら余裕で膝が曲がるほどの足つき性である。シートの股間部がかなり細めに設計されているので足が真下にストンと降りる感じがするが、オイルタンクカバーの出っ張りが太ももに干渉してくるのが少々残念なところ。それでも足つき性が気になる人にとっては好印象と言える部分だろう。

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続いて街中へと走り出したのだが、気になったのはハンドリングだ。新設計というワイドハンドルバーは両腕にゆとりと快適な操作性を予感させてくれたのだが、コーナーに差し掛かった際、思ったほど車体を寝かせ切れない。恐らく接地面の大きいファットなフロントタイヤの影響だろう、ノーマルなスポーツスターなら違和感なく切れ込んでいくカーブでも、FORTY-EIGHT だとイメージしている以上に外に膨らんでしまう。実際に試乗される方は、車体を寝かせることを多少意識しながらハンドリングを調整せねばならないだろう。逆に直線道路では前後タイヤともしっかりと“地に足をつけている”から安定感には秀でているのだが、右左折が多いシティユースとなるとやはり少々手こずらされる。

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高速道路でのテスト走行で、FORTY-EIGHT はこの分野があまり得意ではないとも思わされた。特にライディングポジションに関しては、他のスポーツスターと比べてもかなり異質だと言っていい。前述したとおりストレート走行では安定感があるのだが、時速100キロ域の高速走行になると、ワイドなハンドルバーにより両手は大きく外に開かれ、またステップ位置がフォワードコントロールとされるため、ライダーの体が大きな「大」の字を描く形になり、前方からの強風が体全体を直撃する。結果、体は後ろへ後ろへとずれていこうとするのだが、そら豆型のダブルテクスチャードソロシートは平面型のデザインとなっているので、それを受け止めてはくれない。両足も前方に突き出ているため踏ん張ることができず、速度を抑え目にして何度も座り直しをせねばならなかった。もしもシート後端の立ち上がりが大きいガンファイター型だとしたら、フォワードコントロールによる踏ん張りの効かなさもさほど気にならなかったかもしれないが、そら豆シートだからこそ車体の美しさが引き立っていることを承知しているだけに、ビジュアルと機能性の両立の難しさを感じ入った次第である。実際、FORTY-EIGHT を試乗したディーラー関係者に感想を聞くと、「ビジュアルならFORTY-EIGHT だけど、乗りやすさという点で言えば XL883L Super Low の方が上」とのコメントを何度か耳にした。楽しみ方はオーナー次第なので良し悪しは述べられないが、FORTY-EIGHT は徹底的にスタイリングの完成度を追求した一台だと言っていい。

XL1200X フォーティーエイト の詳細写真

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過去に例を見ないファクトリーカスタムモデルとして登場した XL1200X FORTY-EIGHT。
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フロントフォーク幅が広がったことにより、バイザー無しのヘッドライトが装着されている。
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新設計とされるハンドルバー。その幅はかなり広く設けられている。
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オリジナルデザインとされるメーターブラケット。「 MILWAUKIEE U.S.A 」と刻印が入っている。
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本モデルの顔とも言える容量7.9リットルのピーナッツフューエルタンク。グラフィックも秀逸だ。
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いわゆる“そら豆”型に分類されるダブルテクスチャードソロシート。
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XL1200N ナイトスターとお揃いのストップランプ一体型リアウインカー。
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16インチのファットタイヤを採用。フロントから見た迫力を増すポイントだ。
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フロントフェンダーおよびブラケットもオリジナル設計。他モデルとの違いを見せ付ける。
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ステップ位置はフォワードコントロールとされる。
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ブラックアウトされたロワードリアサスペンション。カラーバランスに一役買っている。
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パンチアウトされたベルトガードも XL1200N ナイトスター同様。

こんな方にオススメ

大型バイクながらもスローライフがお得意?
徹底的に“魅せたい”オーナー向け

走行時のバランスという点で言えば、明らかに他のスポーツスターモデルが秀でている。しかし FORTY-EIGHT はご覧のとおり、ただそこに佇んでいるだけで他のモデルと一線を画すスタイリングであることを主張してくる。高層ビルが立ち並ぶ都会、牧歌的な雰囲気に溢れる山間部、港町の一角にある埠頭……きっとどの風景にもマッチしてしまうに違いない。そう、FORTY-EIGHT は最初から「速く走ること」や「快適に走ること」など一切気にしちゃいない、「そんなに急いでどこに行くんだ。慌てなくていいじゃないか、もっと人生を楽しもうぜ」とでも語りかけてくるような、ゆとりと優雅さを持った“チョイ悪オヤジ”風のモデルなのだ。基本的にメインとなる楽しみの場は街中ということになろうが、「多少不便でも乗りたい」、いや「ハーレーなんだから不便なのは当たり前。逆にその不便さと“魅せること”を楽しみたい」という、ハーレー特有の楽しみ方を味わえる人にこそオススメしたい。きっと FORTY-EIGHT 自身も、その期待に応えてくれるはずだ。

プロフェッショナル・コメント

独特の乗り味を許容できる
懐の深い方にこそオススメです

見た目のインパクトについては語るまでもありません、気になる方はぜひ最寄りの正規ディーラー店に足をお運びいただき、実車をご覧になってそのカッコよさを堪能していただきたいと思います。そこでディーラーとしてお伝えしておきたいのが、「とにかく試乗してみること」です。FOTY-EIGHT は少々クセのあるライディングバランスを有しており、例えば国産系バイクやスポーツスターモデルに乗り慣れた方が乗ると、「ん?」と違和感を覚えられると思います。その際に考えていただきたいのが、まず「ご自身がどんなバイクライフを楽しみたいのか」ということと、次いで「許容できる乗り心地かどうか」という点です。例えばツーリングをバイクライフの中心に考えられているのであれば、乗り続けていくうちに少なくない違和感が生じてくると思いますし、用途に合わせてカスタムを施していく……という流れになってきます。しかしスタイリングの完成度から、手の加え方次第ではビジュアルバランスを崩してしまいかねません。それでは FORTY-EIGHT 本来の良さが損なわれてしまいます。だからこそ、この独特の乗り味を許容した上で FORTY-EIGHT のビジュアルを楽しんでいただける方にオススメしたいですね。ある意味“オーナーを選ぶモデル”ではありますが、だからこそハーレーを代表するモデルとなるんだと思います。(ハーレーダビッドソン グッドウッド足立店 佐藤 博樹氏)

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