VIRGIN HARLEY |  VRSCDX ナイトロッド スペシャル試乗インプレ

VRSCDX ナイトロッド スペシャルの画像
HARLEY-DAVIDSON VRSCDX Night Rod Special(2014)

VRSCDX ナイトロッド スペシャル

そのダークなスタイリングで
根強い人気を誇るモデル

新型の水冷エンジン『レボリューションX』を搭載したニューモデル ストリート750の登場は大きな話題を呼んだが、やはりVロッドを抜きにして“水冷ハーレー”は語れない。初代Vロッドがデビューしたのは2003年と、今から約11年前のこと。ちょうど100周年を迎えたハーレーダビッドソンが新時代に向けて開発を進めてきたニューカマーは、世界に大きな衝撃を与えた。今回紹介するナイトロッドスペシャルは2007年に登場して以来、一度もカタログ落ちをしたことがないVロッドファミリー屈指の人気を誇るモデルだが、このナイトロッド スペシャルのインプレッションを機に、改めてVロッドの成り立ちについても振り返ってみたい。

VRSCDX ナイトロッド スペシャルの特徴

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ハーレーのレーシングDNAを継承する
新時代を見据えたVロッド

Vロッドのデビューは2003年、水冷60°VツインDOHC4バルブの『レボリューションエンジン』という新型エンジンを搭載したモデル VRSCA V-RODから。1994年、デイトナ200マイルレースにワークスレーサーとして登場したハーレーダビッドソン初の水冷エンジン搭載モデル VR1000 のエンジンをベースに、独ポルシェ社の協力のもと市販用モデルとして開発したものだ。Vロッドファミリー全モデルの正式名称につく“VRSC”は、Vツイン・レーシング・ストリート・カスタムの略称である。

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ナイトロッド スペシャルの原点をたどると、2006年にデビューしたVRSCD ナイトロッドにたどり着く。当時のファミリー仲間であるVRSCA VロッドとVRSCR ストリートロッドとは異なるダークカスタムモデルとして世に送り出された。その翌年、VRSCDX ナイトロッド スペシャルと名を改め、以前よりもひと回りサイズ感がアップして登場。特に注目されたのは180mmから240mmへと大幅にサイズアップしたリアタイヤで、その後のハーレーの大型化を示唆するような先駆者的存在だったと言えるかもしれない。

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2007年のリバイバル以降、一度もカタログ落ちをしたことがなく、Vロッドファミリー屈指の人気モデルとして君臨しているナイトロッド スペシャル。2012年にVRSCDX 10th ANVとともに再び仕様変更を実施、デザイン面の変更はもちろん、サイズ感も以前よりややコンパクトになった。

ご覧のとおり、その特徴はと言えばアメリカで高い人気を誇るモータースポーツ『ドラッグレース』に登場するドラッグレーサーとしてのスタイルだ。直線コースでのスピードを競い合うこの競技では“バイクで曲がる”ことがないため、直進安定性のみが追求された極端なスタイリングとなっている。Vロッドファミリー全モデルに共通するもので、このナイトロッド スペシャルも同様にバイクにしがみつくライディングポジションが印象的だ。またステップ位置もフォワードコントロールとされているので、決してコントローラブルとは言えないが、これこそがハーレーダビッドソンのレーシングDNAを継承していると言われる所以でもある。

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2012年の仕様変更時、それまでのナイトロッド スペシャルの代名詞だったビキニカウルはバイザーへと変更されてしまったが、ダークにまとめられたマシンのベースと攻撃的なスタイルはそのままに、エポックメイキングな存在として人気を集めている。

VRSCDX ナイトロッド スペシャルの試乗インプレッション

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2012年の仕様変更により
親しみやすくなった印象大

Vロッドのアイデンティティはドラッグレーサーとしてのスタイルとパワフルな走行性能なわけだが、一方でストップ&ゴーが多い日本の道路事情やアメリカ人から見れば小柄な日本人(成人男子の平均身長は170cmほど)を考えると、お世辞にも“扱いやすいバイク”とは言い難い仕様ではある。日本では馴染みが薄いドラッグレースというモータースポーツの象徴的モデルであることも、扱いにくさを印象づけている感は否めない。

ポジションが酷似するモデルとして、FXSB ブレイクアウトとFXDWG ワイドグライドを挙げたい。どちらもこのナイトロッド スペシャル同様にホイールベースが長く(VRSCDX:1,705mm/FXSB:1,710mm/FXDWG:1,730mm)、ステップ位置もフォワードコントロールとされる。大柄なアメリカ人並みに体格に恵まれていれば別だが、この設計はジャパニーズスタンダードとは言い難い。もちろんそれぞれのモデルにはハーレーダビッドソンとしてのカルチャーが備わっており、モデルそのものの魅力を阻害するものではないが、こと“乗りやすいか、乗りにくいか”という点で問うならば、後者と言わざるを得ない。

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ところが、このナイトロッド スペシャルに乗って走り出した最初の印象は「思いのほか乗りやすい」だった。とりわけ遠いと思い込んでいたフォワードコントロールのステップが、思っていたほど遠くない。身長174cmの私でも、十分ヒザが曲がる余裕がある。以前試乗したときとずいぶん印象が異なるところだが、スペック表を見て納得した。リバイバルされた2012年を境に、前後のモデルスペックを見比べてみると、全体的に小型化しているのだ。全長が200mm、ホイールベースも10mm短縮されている。フレーム設計は変わっていないので、ステップ位置がそのままだとすると、シートポジションが前部に押しやられたということだろう。“足が伸び切った状態”と“ヒザに余裕がある状態”とでは、当然ステップにかける力は大きく変わってくる。操るという点で見れば、これは正常進化だと言っていいだろう。ハンドルは広すぎず狭すぎず、意外にも(?)ニュートラルなのでしっかりとカーブを意識したコントロールを心がければ、難なくクリアしていける。

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ライディングのなかで魅力的なポイントと言えば、直進走行時に感じるレボリューションエンジンの伸びやかなライドフィールだ。キレのあるシフトチェンジで加速させていくと、空冷45°Vツインエンジンとはまったく異なるシャープなスピード感を楽しませてくれる。また、速度をあげるごとにワイドな240mmリアタイヤが路面を踏みしめている感覚も味わえるので、空気を切り裂くような走りを求める人には最適なモデルと言えよう。

VRSCDX ナイトロッド スペシャル の詳細写真

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Vロッドファミリー専用の倒立フロントフォークを採用。ナイトロッドの代名詞たるビキニカウルもデザイン変更された。
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広すぎず狭すぎず、ニュートラルなポジションのハンドルバーのおかげで思いのほかコントローラブルな印象。
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回転計と燃料計が両サイドに備わる一体型スピードメーター。
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従来のバイクならフューエルタンクであるところだが、このなかにはエアクリーナーボックスと冷却水リザーバータンクが内蔵されている。
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臀部をすっぽりと覆ってしまうほどワイドなシート。タンデムシートも備えられているが、あくまでシルエットを重視したデザインのよう。
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フューエルタンクはシート下に内蔵されている。容量は18.9Lと、初期モデル(14.38L)よりも大幅にアップしている。
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LED型テールランプが内蔵されたリアエンドは、2012年のリバイバルから採用されたデザイン。
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レーサーとしてのアイデンティティを示す10キャストホイールとダブルディスクという装備。赤いピンラインがアクセントだ。
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水冷エンジンに不可欠なラジエターも、車体に合わせたデザインとされる。
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水冷60°VツインDOHC4バルブエンジン『レボリューション』。他ファミリーのモデルとはまったく異なるシャープでパワフルな走りを生み出す。
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ステップ位置はフォワードコントロールに。FXDWGやFXSBと比べると、やや手前にある印象のポジションだ。
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イグニッションは車体左側のフレーム脇に設置されている。構造はビッグツインモデルと同様。
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専用のスイングアームはフレームとエンジンで支えられている。
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機関銃をほうふつさせる2本出しのサイレンサーは専用パーツ。
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2007年のリバイバル以降、標準装備とされている240mmリアタイヤ。この迫力のリアエンドこそナイトロッド スペシャルの証か。

こんな方にオススメ

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闇夜を切り裂く“夜の矢”には
魔的な何かが秘められている

ナイトロッド スペシャルはVロッドファミリーのなかでもグンを抜いた人気を誇るモデルだが、日本人のイメージにあるハーレーダビッドソン本来の姿は他ファミリーが色濃く継承していることもあり、なかなか一般受けしないところがある。そんなVロッドを実際に所有しているオーナーに話を聞くと、「このスタイルが気に入ったから」と、ハーレーダビッドソンという希有なブランドとはかけ離れた“モデルのスタイルそのもの”に惹かれた方が圧倒的に多いことに気づかされる。それだけ、ブランドに寄りかからず自らのキャラクターのみでオーナーを惹きつける何かを持ち合わせているということだろう。なかでもダークな印象が強いナイトロッド スペシャルには、魔的な何かを感じずにはいられない。もしもあなたがこのモデルに釘付けになってしまったら、そのファーストインプレッションに従って試乗してみることをオススメしたい。

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