VIRGIN HARLEY | ビッグツイン×北米マフラー 特集記事&最新情報

取材協力:パインバレー 写真:磯部孝夫 取材・文:バイクブロス・マガジンズ 渡辺

掲載日:2010年7月26日(月)

ビッグツインで北米マフラーを味わい尽くす

オリジナルの完成されたスタイルと音を活かす手軽なカスタムとして北米マフラーが人気となっている。

オリジナルの完成されたスタイルと音を活かす手軽なカスタムとして北米マフラーが人気となっている。

ハーレー本来の音と性能を覚醒 ビッグツイン×北米マフラー

マフラー交換はハーレーカスタムの定番メニューだが、全てのオーナーがオリジナルの完成されたスタイルと上品なサウンドを根底から変えてしまおうと考えているわけではないようだ。前回バージンハーレーで特集記事を掲載して以降、北米マフラー人気がさらにヒートアップしたというが、これはノーマルのデザインを維持したまま、程よい音量と抜けの良さを実現したいと考えていたオーナーがいかに多かったかを物語るエピソードだと言えるだろう。そこで今回は、前回のスポーツスターに引き続き2台のビッグツイン、FXDFダイナファットボブ(以下、FXDF)とFLHTCUウルトラクラシックエレクトラグライド(以下、FLHTCU)で北米マフラー徹底乗り比べを実施。その詳細をレポートしよう。なお、北米マフラーやパンチアウト加工については前回記事をご覧いただきたい。

FXDF × 北米マフラー

FXDFはスポーティなエンジンとハンドリングが魅力。ただしダイナらしい味わいに欠けるという一面も。

FXDFはスポーティなエンジンとハンドリングが魅力。
ただしダイナらしい味わいに欠けるという一面も。

日本仕様の特徴

FXDFはダイナファミリーの中でもとりわけスポーティなモデルだ。前後ワイドタイヤの強烈なビジュアルからクセがあると思われがちだが、実は非常にニュートラルかつシャープなハンドリングの持ち主。中間で一度集合され再び2本のサイレンサーへと分割される2-1-2デュアルマフラーによって、エンジンは「これがOHVか?!」と思うほどストレス無く高回転域まで吹け上がる。実際、ワインディングなどを走らせても想像以上の俊足であり、ヘタなロードスポーツを追い回せるほどのポテンシャルを秘めているのだ。しかし、その分エンジンの鼓動感や味わいはやや薄い傾向にあり、ダイナ系らしいワイルドなテイストを求めるとちょっと物足りなさを感じるかもしれない。果たして、北米マフラーの装着によりFXDFはどのように変貌するのだろうか…。

 

集合部のないオーソドックスな北米マフラーに改装されたFXDFはもはや別物。弾けるような鼓動感とワイルドな音が魅力。

集合部のないオーソドックスな北米マフラーに改装されたFXDFはもはや別物。弾けるような鼓動感とワイルドな音が魅力。

テスト車輌の仕様

今回のテストに使用した車輌は2009年型のFXDF。独特の2-1-2デュアルマフラーではなく、ダイナ系では一般的な集合部のないオーソドックスな北米マフラーに改装してある。さらに燃調をやや濃い目に調整できるダイヤル式エンリッチメントデバイス、スクリーミンイーグルのエアクリーナーエレメントも装着。一度に変更した要素が多いが、これが北米マフラーを最も楽しめるパッケージとのことなのでそれを尊重することにした。

 

 

 

 

 

乗り比べのトップバッターは北米マフラーのパンチアウト(穴あけ加工)なし。つまり、母国を走るハーレーそのままの状態からテストしたのだが、FXDFはアイドリング状態から驚くべき変貌ぶりを披露してくれた。エンジンを始動しても音量はノーマルと大差ないのだが、弾けるような鼓動感がとても強くクラッチをミートした瞬間からトルクがかなり増強されていることを実感。住宅街を静かに走りぬけ前方が開けたところでようやくワイドオープンとなったのだが、この段階では「もはやエンジンは別物!」と感じたほどFXDFは活き活きと走り始めたのだった。一発一発の燃焼音はクッキリと粒が立ち、エンジンの鼓動感もしっかりとシートを蹴り上げてくる。その音の良さは、米国で数え切れないほどのハーレーを撮影してきたカメラマン磯部孝夫さんをして「イイ音だねぇ」と言わしめたほど。また、乗り味自体にも大きな変化が。トルクの増強に伴いピックアップも鋭くなったのだが、タイヤが路面を掴む駆動力も強調されたのだ。この感触は実に2気筒らしいもので、時としてヒュンヒュンと回ってしまうノーマルにはないものだ。

 

パンチアウトなしの状態で試乗したとき、実はちょっと不思議な感覚にとらわれていた。というのも、スポーツスターに北米マフラーを装着するとトルクの立ち上がりがマイルドになる傾向にあったのだが、今回のFXDF+北米マフラーでは明らかにトルクが太っていたからだ。もちろん、集合部のないオーソドックスな排気系に改装されたのも大きな要因だと思われるが、パンチアウトありの状態で試乗を開始したとき、それがダイヤル式エンリッチメントデバイスとスクリーミンイーグルのエアクリーナーエレメントによるものだと悟った。スポーツスターではパンチアウトするとさらにトルクがマイルドになったが、今回のFXDFではその傾向がほぼない。そればかりか、音の輪郭が強調され開け閉めするのがより楽しくなったのだ。注意していると、やはり回転域によってトルクが僅かに薄くなったのを感じるのだが、その分ピックアップが鋭くなっているので上手くカバーされているという印象だ。アイドリングは相変わらず上品だが、ワイドオープンしたときの排気音は映画に登場するハーレーそのもの。スポーツスターでは迷ったが、FXDFとの組み合わせはこのパンチアウトありの北米マフラーがベストだと感じた。

FLHTCU × 北米マフラー

圧倒的な存在感を誇るFLHTCU。走行中の排気音があまりにも消音されていることと、駆動力の薄さが弱点。

圧倒的な存在感を誇るFLHTCU。走行中の排気音があまりにも消音されていることと、駆動力の薄さが弱点。

日本仕様の特徴

大柄なツーリングファミリーはライディングするのが大変だと思われがちだが、基本的には1メートルも走り出せば車体はビシッと安定し、走行中は平和そのもの。低い重心を活かした走りを意識すれば、巨体をゆったりとそして時には鞭を入れキビキビと乗りこなすこともとさして難しいことではない。しかし、日本仕様にはある種の弱点があることも事実だ。それは駆動力の薄さ。コーナーリング初期がもっとも分かりやすいのだが、大柄なフェアリングやサドルバッグなどを装備したヘビー級の車体を瞬時に安定させるだけのトラクションとレスポンスに欠け、時としてフラーッといやな倒れ方をしてしまう。また、消音の効いた日本仕様マフラーはあまりにも大人しく、走行中に聞こえてくるのはエンジンからのメカノイズがメイン。高めのギアでワイドオープンしても、辛うじて聞こえてくる排気音はパタパタという感じだ。北米マフラー装着により、これらの弱点が解消されるかが注目ポイント。

 

北米マフラーを装着したFLHTCUは瞬時に車体を安定させることが可能。排気音もダイレクトに聞こえてくる。

北米マフラーを装着したFLHTCUは瞬時に車体を安定させることが可能。排気音もダイレクトに聞こえてくる。

テスト車輌の仕様

今回のテストに使用した車輌は2008年型のFLHTCU。上記FXDFと同様、北米マフラーに加えダイヤル式エンリッチメントデバイス、スクリーミンイーグルのエアクリーナーエレメントも装着した状態でその違いを味わうことにした。ツーリングファミリーにおいてもこのパッケージが最も北米マフラーにマッチしているという。上記以外、ロムなどには全く手を加えていない状態である。

 

 

 

 


実は、アイドリング付近では日本仕様も不満は無かった。ユサユサとゆれるエンジンからは豊かな鼓動が伝わり、ハーレー独特の力強さが味わえたからだ。ところが、北米マフラーを装着してエンジンを始動すると、振動と音がより強調されたことが分かる。これに気を良くして走り出すと、もっと大きな変化が待っていた。日本仕様で感じられた駆動力不足がキレイに解消されてしまったのだ。コーナーリング中、丁度良いバンク角だと思った瞬間にアクセルを少し開けるだけでヘビー級の車体は路面に吸い付くように安定し、あのイヤなフラつき感がまったくない。また、日本仕様で鼓動感を楽しもうとすると、少なくとも3速以上のギアに入れる必要があったが、北米マフラー装着後はほぼ全てのギアで楽しめるようになった。低い回転域からワイドオープンすればドドドッという力強い蹴り出しと、マフラーが奏でるワイルドな排気音がダイレクトにライダーの耳に到達。回転が高まればそれらは連続的となるのだが、決して混ざりあうことはない。あくまでも一つ一つの鼓動と音は独立している理想的な味わいだ。また、レスポンスが良くなったためシフトダウンが気持ちよく決まる。この巨体を自由自在に操れる快感…。やはりこれが本来の排気系なのだと実感した。

 

 

さて、いよいよパンチアウトしたマフラーを装着しエンジンを始動。するとどうだろう、アイドリング付近は音量も上品でパンチアウトなしと大差ないのだが、明らかに鼓動の感触が硬質となっている。発進時のトルクは僅かに薄くなったのが感じられるが、1発1発の燃焼音がより明確となり、まるで空気の層を引っ叩いているかのように感じられる。鼓動はシートのクッションを少し薄くしたかのようにハッキリと伝わるようになり、ふたつのピストンが上下する様子も手に取るようにわかる。また、トルクがマイルドになった分バックトルクも弱まり、シフトダウンはより気持ちよく決まるようになった。この状態でも車体を安定させる駆動力は十分なのだから、パンチアウトの有無はやはりオーナーのお好み次第と言えそうだ。あくまでもトルクを重視するのであればパンチアウトなし、乗りやすさと音を重視するのであればパンチアウトありがオススメだ。ツーリングファミリーの場合、サドルバッグなどに遮られマフラーからの音が聞こえてこないというオーナーは多い。しかし、北米マフラーであればそういった不満とも無縁である。

オーナーには分かる北米マフラーの魅力

北米マフラーの開口部は日本仕様よりもかなり口径が大きい。しかし、開けない限りは静かなものだ。

北米マフラーの開口部は日本仕様よりもかなり口径が大きい。
しかし、開けない限りは静かなものだ。

完成されたFLHTCUのリアビューを一切崩すことなく、ハーレー本来の魅力を覚醒させてくれる北米マフラー。

完成されたFLHTCUのリアビューを一切崩すことなく、
ハーレー本来の魅力を覚醒させてくれる北米マフラー。

「あと少し…」を実現する北米マフラーその差がオーナーにとっては大きい

今回の試乗はメニューが多く2日間に渡る取材となったのだが、その間パインバレーには何人かのハーレーオーナーが訪れ、北米マフラーを装着した前後の様子を目撃することができた。作業が完了した愛車に跨りのエンジンを始動。すぐさまその変化を感じ取り、一瞬驚きとも喜びともつかない複雑な表情を浮かべた後、ニヤリとしながら帰っていく…。恐らく、郊外でワイドオープンした時には、さらに大きな違いに気付くことだろう。

 

前回の記事でも書いたが、北米マフラーを装着してもアイドリング時の変化は僅かだ。スロットルを開けない限り音量は日本仕様と大差なく、言われなければ気付かない場合も多いことだろう。しかしオーナーには分かるのだ、その違いが。北米マフラー装着前後の表情の変化はそれを物語っている。ほんの少し音量をアップしたい…。ほんの少し抜けを良くしたい…。ハーレーの完成されたスタイルと上品な排気音を維持しつつも、そんな願望を実現したいと考えるオーナーにとっては、北米マフラーは最良の選択肢と言えるだろう。

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取材協力:パインバレー
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FAX番号:045-305-4006
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アクセスも容易なベイタウン本牧5番街に移転を完了したパインバレー。北米マフラーなどを装着した試乗車もある。また、初心者向け交換作業マニュアルも完備するほか、希望者には必要な工具も廉価で販売してくれる。

「北米マフラーのことでしたら、フリーダイヤルで何でも気軽に問い合わせてください」と語るパインバレー・テクニカルマネージャーの秋山直輝さん。