VIRGIN HARLEY |  FLSTC ヘリテイジ ソフテイル クラシック試乗インプレ

FLSTC ヘリテイジ ソフテイル クラシックの画像
HARLEY-DAVIDSON FLSTC Heritage Softail Classic(2009)

FLSTC ヘリテイジ ソフテイル クラシック

オールドファンから愛される
現代に蘇った往年の名車

「遺産」を意味する言葉を冠した「ヘリテイジ・ソフテイル・クラシック」。その冠詞が表すとおり、数あるモデルの中でも古き時代のハーレーをほうふつさせる姿に目を惹かれる。ソフテイルだけに許されたリジッド風フレームに、存在感を示すヘッドライトまわり、圧倒的な重量感、パワフルな走行、そして車体が醸し出す雰囲気……。1951年に登場したFLハイドラグライドから始まるハーレー特有のスタイルは、今このヘリテイジに受け継がれている。2009年を迎え、タンクやフロントフェンダー、サドルバッグなど一部のデザインに手が加えられたものの、このモデルが放つオーラに一切かげりはない。もちろん魅力はその雰囲気だけでなく、快適な長距離クルージングが楽しめる仕様も人気のひとつだ。現代のテクノロジーを搭載した往年の名車、その乗り心地はいかがなものか。編集部が試乗してみた。

FLSTC ヘリテイジ ソフテイル クラシックの特徴

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100年以上におよぶ歴史を感じさせる
ハーレーだけに許された特別なフォルム

かつてのアメリカの大地を駆け抜けたであろうハーレーの姿を見事に復活させているヘリテイジ・ソフテイル・クラシック。その起源をたどると、1941年に登場したFLハイドラグライドに行き着く。もう60年以上も昔のモデルだ。時は第二次世界大戦の真っ只中、エンジンはオールドファンに馴染み深いナックルヘッドエンジン。大地を力強く踏みしめ、ハーレー特有の鼓動とともにアメリカの荒野を駆け抜けるこの車両は瞬く間に大人気となり、パンヘッドエンジンへ変更されてからもそのスタイルは受け継がれた。新たな車両開発に奔走したハーレーが再びこの姿を蘇らせるキッカケとなったのは1984年、新フレーム「ソフテイル」を発表したことだ。サスペンションを車体下部に搭載したリジッド風フレームは、オールドファンに古き良き時代の代名詞「ハードテイル」フレームを思い描かせ、ハイドラグライド復活の声へとつながっていった。そして1987年、FLSTヘリテイジ・ソフテイルが生まれ、その後、FXSTSスプリンガー・ソフテイル、FLSTSヘリテイジ・スプリンガーと姿を変え、このヘリテイジ・ソフテイル・クラシックに受け継がれている。言うなれば、100年以上におよぶハーレーダビッドソンの歴史を語り継ぐ伝統のモデルなのだ。

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そんなヘリテイジ、2009年モデルから一部の仕様が変更されている。特にフロントエンドのデザインが一新しており、ハンドルバーがFLSTSBソフテイル・クロスボーンズスタイルになってFXSTCライザーを採用。さらにコンソールパネルがハイドラグライドを思わせるキャッツアイスタイルに。このほかキングサイズデタッチャブルウインドシールドとクロームウインドシールドブラケット、クロームヘッドライトナセル、パッシングランプ、タンクグラフィックのデザインが新しくなった。足周りに目を向けると、オールドスクールフットボードとブレーキペダルが装着され、クロームロアトリムとフロントフェンダーネームプレートも変わっている。しかしながら、これほどの変更点がありつつも本来のスタイルを崩していないところはさすがヘリテイジといったところか。1940年代スタイルのサドルバッグもデザインやコンチョに工夫が加えられているが、基本はそのまま。むしろ前年までの同モデルとの差別化に成功しており、クラシカルな雰囲気を残しつつ現代モデルにアレンジされている点に魅力を感じてしまう。リジッド風にアレンジされたソフテイル・フレームとクラシカルな車体のデザインが描くフォルムは実に美しく、しばし眺めていても飽きない。ハーレーが自信を持って世に送り出したアメリカン・クルーザーの決定版、と言っては褒めすぎだろうか。

FLSTC ヘリテイジ ソフテイル クラシックの試乗インプレッション

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アスファルトを踏みしめながら
力強い走行が味わえるクルーザー

ヘリテイジに跨って、まず感じたのが「足付きの良さ」、「シートの座り心地の良さ」だ。いずれも「ハーレーなら当然」と言われてしまいそうだが、深々とお尻を受け止めてくれるヘリテイジオリジナルのシートと、重い車体でも安心してバランスが取れる足付きはうれしいもの。ツインカム96Bエンジンに火を入れると、「ゴゴン」という重量感のある音とともに振動が体を駆け抜ける。ソフテイルだけに搭載されたこのエンジンは、振動対策として開発されたバランサー機能を備えており、フレームに直接マウントされているものの不快な振動に悩まされることはない。シフトペダルは他のファミリーと違い、手前にもうひとつ付いている。本来ペダルがひとつしかないスタンダードなバイクだと、2速から先に上げるときはつま先で蹴り上げるようにシフトチェンジしていくが、ソフテイルやツーリングファミリーのほとんどは、2速から先はこの手前のペダルを踏む動作となっている。シューズの先が擦れたり削れたりするのが常というライダーにとって、有り難い仕様と言える。最初は若干戸惑うものの、慣れてくるとこれがクセづいてしまう。ハンドルの位置は、身長173センチの筆者が乗ると肩ぐらいの高さにくるが、シートに体を受け止めてもらいながら走る分には問題なかった。

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しばらく街中を走るも、重量級のヘリテイジは細かな取り回しがなかなか難しい。かなり車高が低くなっていることから、カーブを曲がるときに普段乗っているバイクの感覚で倒し込むと、ステップボードを擦ってしまう。見た目からして明らかなのだが、「小回り」という部分で言えば少々苦労を強いられるだろう。しかしヘリテイジの魅力は市街地走行にあらず。高速道路での走行テストを行って、ようやく真価を発揮し始めた。低い車高が重心を低く保っているので、前後のタイヤがべったりとアスファルトを踏みしめながら走ってくれる。試乗当日に走った湾岸線は潮風がかなり強かったのだが、それでも車体はびくともしない。そしてウインドスクリーンだが、ちょうどてっぺんが目の高さにきていることから視界が少々歪んで見えるものの、前方からの強風をすべてはねのけてくれる。着脱可能なところも大きなポイントだ。エンジンフィーリングはマイルドだが、本来長距離ツーリングモデルとして打ち出されたモデルであることから、長く走れば走るほどこのゆったり感は心地良さへと変わってくる。時速80キロから100キロ程度での巡航は特に快適だった。

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また今回はテストできなかったが、パッセンジャーにとってはうれしい柔らかなタンデムシートについても触れておこう。オリジナルのシーシーバーが標準装備されているので、長距離ツーリングも苦にならないゆとりがあり、快適なペアライドが楽しめる。そして絶対に触れておかねばならないこと――それはヘリテイジが放つノスタルジックな雰囲気だ。万人が知るハーレー本来の姿を再現したそのスタイルは、休憩場所でも注目を集め、料金所で支払いをする際には「カッコいいバイクだね、ハーレーかい?」と、年配の方々がたくさん声をかけてくれた。クルーザーとしての能力の高さはもちろん、旅情あふれるツーリングを約束してくれるモデル、それがこのヘリテイジ・ソフテイル・クラシックだ。

FLSTC ヘリテイジ ソフテイル クラシック の詳細写真

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2008年モデルより若干デザイン変更されたフロントフェンダー
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高速走行時に威力を発揮するウインドシールドは着脱が可能
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快適なタンデム走行が楽しめる専用シーシーバー付きシート
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新デザインのコンチョがあしらわれたサドルバッグは積載十分
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シューズを痛めずに使用できるクラッチとステップボード
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タンクコンソール&パネルをキャッツアイタイプに変更した
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その存在感を際立たせる3つのヘッドライトと大型ウインカー
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リア周りに独特のパーツが配されているのはソフテイルならでは
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タンクグラフィックも2009年モデルから新デザインになった

こんな方にオススメ

ノスタルジーを感じさせる伝統の一台
だからこそ乗り手のこだわりが問われる

長距離ツーリングに必要な要素を兼ね備え、なおかつノスタルジックな雰囲気を醸し出すヘリテイジは、車両そのものはもちろん、自身のスタイルにもこだわる方におすすめしたい。「乗り手を選ばない」という文句にはライダーの好みに捉われない自由さが存在するが、ヘリテイジにはその言葉で縛ることができない気高さがある。「伝統を受け継ぐ誇り高きフラッグシップモデル」と言っても差し支えないヘリテイジだからこそ、この一台を選ぶからには乗り手のこだわりも問われるのではないだろうか。ハーレーには100年以上におよぶ歴史と伝統が存在する。こだわりの表現法は千差万別だが、ライダー自身のスタイルとヘリテイジを融合させ、さらに昇華させる努力そのものが、ハーレーダビッドソンというメーカーと歴史に対する敬意の表し方ではないか、と感じた。

プロフェッショナル・コメント

ハーレーというブランドを体現したモデル
そのノスタルジーに浸ってほしいですね

さまざまなモデルを擁するハーレーの中でも、「これがハーレーです!」と言えるモデル、それがヘリテイジ・ソフテイル・クラシックです。風除けのウインドスクリーン、レザーのサドルバッグ、ソフテイル特有のリジッド風フレーム、幅の広いシートなど、誰もが抱く「ハーレーダビッドソン」というバイクのイメージをすべて兼ね備えているところが最大の魅力と言えます。走行性能に関しては、他のモデルと比べると秀でているとは言い難いですが、ゆったり走っても楽しめるところがヘリテイジの特徴ですね。車高が低く、全長が長いことから、スタンダードなバイクとはライディングフォームが違ってきますが、それも慣れ次第。我々ディーラーとしても、このモデルそのものがハーレーを体現しているので、もっと世に飛び出していってもらい、ヘリテイジを見てもらってハーレーの魅力を伝えていって欲しいのです。オープンフェイスのヘルメットにサングラスというスタイルが似合うよう、ウインドスクリーンが標準装備されているところも心憎いところ。当店のお客様を見ても、年配の方のみならず、30代の方などもヘリテイジに乗られています。“ハーレーらしいハーレー”と言えるこの一台、ぜひお近くのディーラーなどで、その魅力に触れてみてください。(ハーレーダビッドソンシティ中野店 清水氏)

バージンハーレー読者のカスタムハーレー【01】

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2007年式 FLSTC ヘリテイジ・ソフテイル・クラシック / 長谷川由喜男さん(東京都)

決め手は迫力あるワイドタイヤ!
一生の友として乗り続けていきたい

これまで国産メーカーのバイクに乗ってきたんですが、街で見かけるハーレーがカッコよくて、「ハーレーに乗りたい」と常々思っていたんです。それで昨年、生活が落ち着いてきたのを機に大型自動二輪免許を取得し、2009年2月よりハーレー乗りになりました。買うならビッグツイン!と決めていて、ヘリテイジかファットボーイで悩み、最終的にヘリテイジを選びました。決め手になったのは、200ミリというヘリテイジのリアタイヤに迫力を感じたところです。それとクラシカルな外観ですね。長く乗るんだから、ハーレーらしいモデルにしよう、と。本体のブラックをベースに、各所にメッキパーツを配したカスタムをしています。あとフレイムのデザインが好きなので、そうしたパーツを多用しています。乗り味については、やはり鼓動とパワーがいいですよね。中型とは比べ物になりません。これからも“一生の友”として、いろんなところに走りに行きたいと思っています。

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【1】クリアキン製のシートレールを装着してアクセントを付けている 【2】長谷川さんが「一番気に入っている」というS&Sのエアクリーナー【3】モーターステージ製のブラスマフラーをチョイス 【4】好みのデザインであるフレイムパーツがこんなところにも。このほかフットボードなどにも取り付けている

バージンハーレー読者のカスタムハーレー【02】

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2008年式 FLSTC ヘリテイジ・ソフテイル・クラシック / 小林照幸さん(東京都)

週末ツーリングはもはや習慣?
ハーレーらしいフォルムがお気に入り

10代の頃からバイクに乗っていました。それからしばらくバイクから離れていたんですが、5年ほど前にドラッグスター400に乗るようになり、ステップアップという形で「ハーレーに乗ろう!」と思いました。遠出をするのが好きなので、乗るなら積載量があるビッグツイン以外は考えていませんでした。それで、お店で見たヘリテイジにひと目惚れしちゃったんです(笑)。このハーレーらしいフォルムが素晴らしいですよね。妻もバイクに対して理解のある人なので、購入に理解を示してくれました。今ではほとんど一緒にツーリングに出かけています。2008年8月の購入以来、休日になるととにかく走りに行っています。遠出は、実家がある宮城県仙台市から石川県などですね。今年のゴールデンウィークには、信州を抜けて近畿北部に入り、そこから南下して紀伊半島をぐるっと走って、三重県、愛知県などを回るロングツーリングを予定しています。

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【1】コンパクトなミニエイプバーに変更。取り回しがしやすくなった 【2】「冬でも全然寒くないです」というH-D純正ヒートグリップ【3】キャンプツーリングをするため、H-D純正のキャリアを装着 【4】こちらもH-D純正のヘッドライトカバー。見た目にアクセントを加えている
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