VIRGIN HARLEY | XL1200X フォーティーエイト 試乗インプレ

XL1200X フォーティーエイトの画像
HARLEY-DAVIDSON XL1200X Forty-Eight(2014)

XL1200X フォーティーエイト

不動の人気モデルとして君臨する
フォーティーエイトを改めて検証

2011年、鮮烈なデビューとともに第一線に踊り出し、以降不動の人気モデルとしてハーレーダビッドソンの顔となったXL1200X フォーティーエイト。ファクトリーカスタムモデル全盛期とも言える昨今のハーレーダビッドソンにおいて、同モデルの出現に前後してさまざまなカスタムモデルがドロップしているが、いずれもその地位を脅かせずにいる。一般誌の広告にも必ず登場するフォーティーエイトには、バイクを知らない人をも惹きつける魅力が秘められているのだが、実際のライディングフィールはいかがなものか。改めて、フォーティーエイトの人気の秘密に迫ってみよう。

XL1200X フォーティーエイトの特徴

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ロー&ロングのスタイルを手に入れた
カンパニー渾身のカスタムモデル

容量7.9リットルというフューエルタンクに前後16インチホイール&ファットタイヤ、小振りなそら豆シート、チョップドリアフェンダー、フォワードコントロール、ワイドなハンドルバーにアンダーマウントされたミラー……。ディテールに目を向けるだけでもこれだけのカスタムポイントが発見できるのだが、このフォーティーエイトというモデルの最大の魅力は、そうした個性的なディテールがたくさん詰め込まれているにもかかわらず、パッと見たときのスタイリングが美しく、どこにも違和感が存在しないことだろう。いわゆる“眺めてカッコいい”と言われる完成度の高いスタイルで、これをメーカーが出したこと自体が驚きと言える。

同モデルがデビューした2011年当時、メーカーが推奨するカスタムモデル、いわゆるファクトリーカスタムモデルはいくつか存在した。代表格としては、2008年のXL1200N ナイトスター、2009年のXL883N アイアン、2010年のFLSTFB ファットボーイローなどが挙げられる。これらの共通点は、当時の流行でもあった“ダークカスタムモデル”で、いずれもブラックアウトされたカラーリングが大きな支持を得ていた。しかしながら、毎年ダークカスタムを出してくるメーカーに対してマンネリ化を指摘する声があったのもまた事実。フォーティーエイトは、そんな閉塞感を打破する意味で市場に投じられた渾身の一台だったのだ。

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お披露目の場となったのは2010年2月、米フロリダ州で開催された世界最大級のモーターサイクルイベント『デイトナバイクウィーク』。ここのカンパニーのブースに展示されたフォーティーエイトは、瞬く間に人々の関心を集めた。それ以前から、インターネット上で写真の一部が出回っていたこともあり、日本でのニューモデル発表&販売まで半年以上あったにもかかわらず、「いつ販売されるのか」と、デビュー前から話題の中心になっていた。

満を持して登場したフォーティーエイトは、噂に違わぬ車両であった。特に、そのペットネームの由来ともなったピーナッツタンク(このサイズのフューエルタンクをカンパニーが初めて採用したのが1948年だったこと)の採用は大きな反響を呼び、ストリートバイクとしてのスポーツスターを強烈に印象づけたポイントでもあった。

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フォーティーエイトの魅力を何より雄弁の語るのは、前述したそのスタイリングに他ならない。往年のFLモデルに見られた前後16インチのスポークホイールに同モデルオリジナルのファットタイヤを備え、足下のインパクトを一気に強めた。またコンパクトなフューエルタンクにシート、チョップドリアフェンダーが形成するラインは実に流麗で、ミラーをアンダーマウントとしたのは「ハンドル上部にポコッとミラーだけ出っ張っていたらカッコ悪い」という理由からだと思われる。真横からご覧いただければ分かるとおり、ハンドルからリアエンドにかけて、美しいラインができがあっている。そこにパンチのある足まわりが加わり、全体をして迫力ある“ロー&ロング”のスタイルを手に入れている、というわけだ。工芸品、芸術作品として評価を受けるカスタムバイクの流儀に則ったスタイリングゆえ、日頃バイクに関わることがない方でさえフォーティーエイトに惹きつけられるのは、そうした理由があってこそ。まさしくカンパニーが威信をかけて世に送り出したモデルである、と断言できよう。

XL1200X フォーティーエイトの試乗インプレッション

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フォーティーエイトは毒をもつ美女?
内に秘めたる危険な薫りを知る

数年振りとなるフォーティーエイトのインプレッション、久しぶりに乗車してみると、またがった段階でまず足着きの良さに感心させられる。近年のスポーツスターモデルがこぞってローダウン傾向にあるという側面はもちろんだが、現行スポーツスターファミリーのラインナップにおいて3番めに低い加重時シート高(710ミリ)であることから、小柄な方でも安心できるポジションであることは間違いない。フラットなラインが印象的なそら豆シートも優しい座り心地で、ハーレーダビッドソンのシートにありがちな幅の広さも気にするほどではない。股間部分の幅が広いと、またがった際に足がガニ股になってしまい、つま先が外に向くため自然とポジションが悪くなってしまうものだが、このシートは細身に設計されているので、そのままストンと足が地に着く。残念なのはそのシートの真下に位置するサイドカバーが出っ張っていること。これにより太ももが外に押し出されるのだが、これは現行スポーツスター(ラバーマウント)の設計上どうしようもないことで、オーナーは許容するしかない。

ドドドドッ……という鼓動感はないが、スポーツスターの名のとおりシャープに走り出したフォーティーエイト。気になるところは多々あるが、まずはエンジンフィーリングに物足りなさを感じる。インジェクションチューニングを施した私の愛車であるラバーマウント スポーツスター XL1200R (2008)と比較すると、本当に排気量1,201ccか? と訝しんでしまうほど、その数値に似合うパワフルさはない。日本の排ガス検査とアメリカのインジェクション設定の数値に大きな開きがあるため、かなりパワーセーブをかけられた状態で輸入されているという事実からも致し方ない点だとは思うが、ハーレーダビッドソン本来のパワーや乗り味を考えれば、ここは実に残念なところ。

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ただ、これも使い分け次第だと言える。「主に街乗り(ストリート)で使うなら、排気量1,000cc以上もいらない」と言われることがあるが、フォーティーエイトをはじめとする1,201ccモデルがその力を出し切っているかと言われれば、答えはノーだろう。個人的には正規ディーラーなどでインジェクションチューンを施した方が本来のパワーを引き出してやれるし、エンジンそのものにも良いこと尽くしだとは思うが、ノーマルセッティングのまま街を流しても、その排気量どおりのパワーが出るわけではないので、小柄な人でも十分コントロール可能だと思う。その考え方で街を流してみると、なるほど中排気量クラスの感覚で取り回してやれる楽しさに気付かされた。ただし、チューニングをしていないと燃費はあまり良くなく、フューエルタンク容量も7.9リットルと少量のため、100キロほど走るとガソリンゲージが点灯してしまう。やはり長距離走行には不向きのモデルと言えよう。

そうした乗り方をしていると、改めて気になるのが全体的なポジションだ。ライディングポジションを整えるにあたってポイントとなるのは、[ハンドル位置][ステップ位置][着座位置]の3点である。まずハンドル位置だが、かなりワイドなハンドルバーが採用されており、比較的取り回しやすい印象だ。しかし、身長174センチの私の感想で、小柄な方だとハンドルを回す際、片方の手が遠くに持っていかれる感じになるのでは、とも思った。ここは実際に跨がるか、試乗する際に確認していただきたい。

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続いてステップ位置だが、このフォーティーエイトはフォワードコントロールとされる。バイクに着座した際、ステップ位置というのは一般的に足を降ろしたちょうど真下、またはやや後方についているものなのだが、その名のとおり両足を前方に突き出したところに取り付けられている。いわゆるアメリカらしいポジション設定で、XL1200C カスタムやXL1200Vセブンティーツー、FXDWG ワイドグライド、FXSB ブレイクアウトなど、ファクトリーカスタムモデルと呼ばれる多くのモデルに採用されている。ただこのポジション、前方に足が投げ出されているため足で体を支えることはかなわず、ライダーの体重を支えるのはシート部分のみとなってしまう。つまり、“体を支える”という負担がすべて臀部に集中するため、長距離走行の際にお尻が痛くなるなどの現象が起こりやすい。

その着座位置についてだが、前述したとおりシート自体はフラットなポジションで股間部分も細身の設計なので、素直に足が地に着く。一方で、このフラットな座面はハイウェイなどでの高速走行時、風圧で後ろに流される体を支えてはくれないのだ。ワイドなハンドルバーに足を投げ出すフォワードコントロールという組み合わせから、ライディングポジションは両手と両足を広げた“大の字”のようなものになる。高速道路を走ればその風圧を体全体で受け止めるわけだが、シートが流れる体をホールドしてくれないので、ズルズルとポジションが後ろにずれていく。そうなるまいとポジション修正をはかるも、足は前方に向いているので、両手でハンドルを鷲掴みせねばならなくなり、この時点でハンドリングやコントロールといったものにさまざまな影響をおよぼすこととなる。スタイルそのものがストリート仕様だから、と言えばそれまでだが、ハイウェイに乗るオーナーも少なくないことを考えると、この点は大いに憂慮したいところ。 

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また、街中を流している際に気になったのが、ハンドルの切れ込みだ。交差点での左折時、状況を見ながら低速でまわっていこうとしたら、クン! とハンドルが内側に切れ込むような奇妙な挙動に見舞われた。転倒することはなかったが、一瞬の出来事にかなり肝を冷やした。同じフロント16インチ/リア16インチのファットタイヤを備えたFLS ソフテイルスリムにも試乗したことがあるが、こうした切れ込みがないのはもちろん、ビッグツインとは思えないほどコントローラブルで心地良い乗り味が好印象だった。足まわりが同じ仕様ながらこの違いはなんだろうと考えるに、おそらくフォーティーエイトのキャスター角とホイール&タイヤサイズの相性が良くないのでは、と思われた。

全体感で言えば、こと試乗インプレッションの項目においてフォーティーエイトの粗が目立った印象が否めない。デザインと機能性は両立しないという言葉があるが、今回その言葉の意味を実感した次第である。それでも、このモデルのスタイリングは申し分のない美しさを有しているし、バイクという存在が日常的ではない人が見ても惹きつけられるその存在感は、やはりハーレーダビッドソンだからこそ生み出せたものだろう。「美しい花には毒がある」。フォーティーエイトは、そんな危険な薫りがする美女と言える一台なのかもしれない。

XL1200X フォーティーエイト の詳細写真

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他のスポーツスターモデルと比べると珍しい部類に入るアンダーマウントのヘッドライト。
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ミラーがアンダーマウントされたややワイドなハンドルバー。ミラーの視認性はやや難あり。
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ライザーに刻まれた「MILWAUKEE, USA」の文字。こうしたところにハーレーダビッドソンとしての誇りが垣間見える。
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容量が7.9リットルというフューエルタンク。フォーティーエイトのディテールでもっとも注目を集める、通称”ピーナッツタンク”だ。
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平らなラインが印象的なそら豆型のソロシート。XL1200V セブンティーツーにも採用されている人気のシートだ。
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ウインカーと一体型のテールランプ。今やハーレーのラインナップでは標準的となりつつある仕様だ。
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【左】フロント16インチ径のホイールとファットタイヤという組み合わせが初めてスポーツスターに採用されたのがこのモデルなのだ。 【右】ブラックとクロームのコントラストが鮮やかな排気量1,201cc のエヴォリューションエンジン。
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ステップ位置は、両足を突き出したポジションになるフォワードコントロール仕様とされる。

こんな方にオススメ

妖艶な美女を扱いやすくすれば
永遠なる愛を育める……はず

ここまで酷評しておいて、オススメもへったくれもないと思われるかもしれないが、それでも「この美女と一生お付き合いをしたい!」という方に、フォーティーエイトを乗りやすくするためのポイントをご紹介したい。前述した3つのポイント[ハンドル位置][ステップ位置][着座位置]を、カスタムによって改善するのである。まずハンドルだが、小柄な人ならプルバックライザーでハンドルポジションを手前に持ってくる方法がある。そこにドラッグバーを組み合わせて(メーターはサイドマウント)ショベル時代のFX ローライダーのようなスタイルにしても面白いかもしれない。シートは細身で臀部をホールドしてくれるものが社外メーカーでたくさん出ているからいろいろ探してみよう。ステップ位置はオーナーの好み次第だが、ミッドコントロール化するキットは純正・社外ともに存在する。ただ、これらはあくまで“日本人としてフォーティーエイトを楽しむうえで私がオススメしたいポイント”であって、「じゃじゃ馬なままの彼女でいてほしい」と、ソウルフルに付き合い続けるのもまた一興。つまりは、「フォーティーエイトと付き合うのが難しい」のではなく、「接し方次第でフォーティーエイトはいろんな顔を見せてくれる」ということ。試乗の機会がある際は、こんなところを考えながら楽しんでみてはいかがだろうか。

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