VIRGIN HARLEY | XL883N アイアン883 試乗インプレ

XL883N アイアン883の画像
HARLEY-DAVIDSON XL883N Iron 883(2014)

XL883N アイアン883

流行の先陣を切った
ブラックスポーツモデル

ブラックアウトされたボディにローダウン仕様、ウインカー一体型テールランプなど、今では珍しくなくなったスタイルを有して2010年に鮮烈デビューを果たしたXL883N アイアン。以降、XL1200X フォーティーエイトやXL883L スーパーロー、XL1200V セブンティーツーなど、スポーツスターの基本スタイルをも大きく変えたファクトリーカスタムモデル時代となった現代から振り返ると、ひとつのターニングポイントともなったモデルと言えるのかもしれない。今やスポーツスターラインナップのスタンダードモデルとしての風格すら漂わせるアイアンの魅力に迫ってみた。

XL883N アイアン883の特徴

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大きな話題を呼んだデビュー
ファクトリーカスタム時代の幕開け

2010年冬、中間期モデルとして2009年モデルラインナップに加わったアイアン。それまでのスポーツスターと言えば、XL883などの「標準モデル」に、XL883LやXL1200Lといった「ローダウンモデル」、XL883RやXL1200Rなどの「レーサーorロードスターモデル」の3タイプという、分かりやすくカテゴライズされていた。前年(2008年)に目を向けると、ハーレーダビッドソン創業105周年ということもあってアニバーサリーグラフィックのモデルの他、ソフテイルファミリーではFLSTSB クロスボーンズにFXCW ロッカーとFXCWC ロッカーCという衝撃的なモデルが、そしてスポーツスターではXL1200N ナイトスターが登場するなど、大いに話題を呼んだアニバーサリーイヤーだった。翌2009年にはXR1200という問題児が表れ、スポーツスターのラインナップは計9台に。アイアンは、史上最多となる10モデルラインナップの最後の刺客として送り込まれた。

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真っ先に比較されたのはXL883Lだった。当時のスペックを見比べると、全長/全幅/全高ほかホイールベースや加重時シート高などは数ミリ程度の誤差で、車両重量はともに260キロとまったく同じ。もちろんエンジン性能も同様とされる。それでいて価格(2010年当時)はアイアンが115万円、XL883Lが93万5000円と、なんと20万円ものひらきが。大きな理由は“ダークカスタムモデル”であることで、タンクやフェンダーはもちろんのこと、エンジンに前後ホイール、トリプルツリーまで真っ黒、フォークブーツというおまけまで付いてくる徹底ぶりに脱帽させられた。特にメーカーによるブラックアウトされたホイールはスポーツスターファンのあいだでも話題となり、前後で何十万円もする同製品を単品で買い求める人が多く存在したほど。今やダークカスタムモデルは珍しくなくなったが、アイアンは今日のダークスタイルの幕開けを告げたモデルと言える存在なのである。

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以降、タンクおよびフェンダーがブラック一辺倒ではなくなり、グラフィックもバリエーションが増えるなどの変化があったアイアンだが、基本的なスタイルは変わらぬまま。XL883L以上に幅が短いハンドルバーやシャープなシルエットのソロシート、現ラインナップでアイアンだけというフォークブーツなど、そのアイデンティティを維持し続けている。

そんなアイアンも、今やXL883Rと並んでスポーツスターモデルの古株に数えられるようになった。現在人気ナンバーワンの地位を欲しいままにするフォーティーエイトやセブンティーツーの台頭、そしてXL883LやXL1200Cは現代の流行に合わせてリバイバルされ、2014年にはツアラー仕様のXL1200T スーパーローというモデルが登場。そのラインナップ歴の長さはもちろんながら、かつてのスポーツスターの基本軸であったフロント19インチ/リア16インチというスタイルを持ち続けているのがXL883Rとアイアンだけになっていることも、往年の歴史を紡ぐ貴重なモデルとして見られている所以であろう。振り返ってもわずか5年ほどのラインナップ歴なのだが、それほどまでに昨今のスポーツスターモデルがめまぐるしく変化をしていることの表れと言えよう。

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アイアンに関する逸話と言えば、そのネーミングにもある。ハーレーダビッドソンの世界で“アイアン”と言えば、ショベルヘッド時代のスポーツスターモデル(ショベルスポーツ)の通称である。カンパニーがこの名称をXL883Nに用いたのは、そのダークなスタイルに鋼(はがね)のイメージを抱いたからと推測するが、ビンテージモデルに造詣の深い方と話すときに会話がちぐはぐになることも。「何に乗っているの?」「アイアン(XL883N)です」「え? アイアン(ショベルスポーツ)!? スゴいのに乗ってるねぇ!」「(そんなにスゴいの?)ええ、まぁ……」なんてやり取りに出くわしたことが何度かある。ショベルスポーツじゃないと知ったときの相手のガッカリ度といったらないが、なんとも紛らわしいペットネームだと苦笑してしまうところだ。

XL883N アイアン883の試乗インプレッション

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バンクさせる必要はない
ありのままを楽しむのが一番

実際に乗るにあたり、やはり気になるのはローダウン仕様であること。またがってみると身長174cmの私でベタ足、しかもヒザにゆとりがある。平均的な女性でもカカトが浮く程度のものだろう。296ミリという短いリアサスペンションはもちろん、深い着座位置とされるソロシートの恩恵と言える。とりわけシートは股間部分が比較的細くつくられているので、足がそのままストンと下に降りてくれる。ハンドルポジションは遠くもなく近くもなく、幅はかつてのXL883と同じ仕様か、肩幅ほども広がらないコンパクトなものとされる。アメリカ人にとっては相当窮屈だろうが、アジア人にとっては有り難いコックピットだ。

走り出してまず気づくのは、ローダウン仕様ゆえの景色の低さだ。ヒザにゆとりがある着座位置なわけだから、普段立っている状態よりも低い目線になるのは当然と言えよう。これはフォーティーエイトやXL883L スーパーロー、XL1200T スーパーローにも共通する点だ。エンジンセッティングは日本仕様とされるので、883ccという排気量を考えるとなんとも面映いところ。ただ、ノーマル状態で見れば積載能力もなく長距離航続に向いているとは言い難いアイアンの性質を考えれば、ことストリートシーンでのライドなら、まるで中排気量モデルのような抑えめのトルクはいい方向に作用しているように思える。

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ストリートにおいて、大排気量のパワーをめいっぱい活用するシーンというのは皆無と言っていい。チューニングをかけたリッターバイクでも、3速で引っ張って伸ばせるところで4速という使い方がせいぜいではないだろうか。それを考えると、“引き出しきれていない”というネガティブな見方より、低速域で引っ張りつつブレーキングをしながら操るところに楽しさを見出すのがベストだと思う。もっとも、フューエルインジェクションのセッティングを変えないままだと、エンジンそのものにとってはあまりよろしくないわけだが……。

以前アイアンに試乗した際は、そのローダウン仕様に辟易したものだった。マンホールや道路の継ぎ目といった大きな段差に乗り上げると、一般的なバイク以上の衝撃に襲われて降りたときに疲弊した覚えがある。コンビニの駐車場に入る際の段差でフレーム下部をしたたかに打ち付けたときの衝撃といったらなかった。足着きに関しては、オートバイに乗っているうち停車している時間なんてたかが知れているので、身長に恵まれていることもありあまり気にしなかった。それゆえ、ローダウンというものに対してあまり良いイメージを抱いていなかった。

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今回の試乗では、以前のようなネガティブなイメージがほとんどなかったことが印象的だった。もちろん段差での衝撃の大きさに変化はなかったが、コーナーに飛び込む際も、必要以上にスピードを出さなければステップ下部に備えられたバンクセンサーを擦ることはないし、逆に軽やかに曲がらせてやれるのでこちらの方が安全と言える。要するに、乗り方次第で“飛ばさない快感”を味わわせてくれるのがアイアンの魅力と言えるのかもしれない。加えて、フロント19インチ/リア16インチという組み合わせは、往年のスポーツスターらしい雰囲気を備えていることはもちろん、今の流行であるファットタイヤ仕様よりも操りやすくバランスが良い印象だ。

本来であれば、スポーツスターのスタンダードモデルは2009年を最後に姿を消したXL883であるべきなのだが、同モデルなき後のスタンダードを継承しているのはXL883Rとこのアイアンとなる。ファクトリーカスタム全盛期という今、フォーティーエイトやセブンティーツーに興味を示している方がいたら、一度XL883Rかアイアンのいずれかに試乗することをオススメしたい。スポーツスターの原点を知ることで、モデルの選び方も変わってくるはずだから。

XL883N アイアン883 の詳細写真

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フロントマスクの種類が増えた現スポーツスターラインナップだが、アイアンのそれは往年のスタイルそのまま。
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アイアンの伝統となりつつあるフォークブーツも健在。「お洒落は足下から」とでも言いたげなポイントだ。
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コンパクトなポジションを形成するハンドルバー。すべてがブラックアウト仕様というこだわりよう。
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このハードキャンディーパープルのほか、3色のモノトーンモデルが用意されるなどカラーバリエーションも増えた。
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昨年から引き続いている好評なタンクグラフィック。アイアンの新しいアイデンティティとなりつつある。
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かつてのXL883Lから続くシャープなシルエットが印象的なソロシート。着座位置がかなり深い仕様。
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チョップドリアフェンダーにストップランプ一体型ターンシグナル(LED仕様)という組み合わせも変わらぬまま。
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今も買い求める人がいるというブラックアウト キャストホイール。メーカー塗装ならではの完成度が高い仕上がりである。
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排気量883cc / 空冷4ストロークV型2気筒OHV2バルブエンジン『エボリューション』(フューエルインジェクション仕様)もブラックアウト。
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スポーツスターのステップと言えば、大きく丸いゴムという印象だったが、アイアンだけこのシャープなステップを採用している。
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2本出しのノーマルマフラー。エキゾーストカバーやマフラーそのものをブラックアウトするオーナーも少なくない。
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296mmというローダウン仕様のリアサスペンション。ここの長さが、乗り味はもとよりリアタイヤとリアフェンダーのクリアランスを決定づける。

こんな方にオススメ

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時代に左右されない
オンリーワンを目指すあなたに

現スポーツスターラインナップに目をやれば、そのほとんどがメーカー提案型カスタムモデル“ファクトリーカスタムモデル”であることに気づかれるだろう。例えばこのアイアンをベースにフォーティーエイトへとカスタムしようとすれば、あの販売価格内で予算がおさまることはない。そういう意味ではファクトリーカスタムモデルはお買い得なわけだが、一方でメーカーが手がけている以上大量生産モデルでもあるので、オンリーワンとは決して言い難い。このアイアンは現ラインナップから見ればオーソドックスなスタイルではあるが、だからこそカスタムのし甲斐があるモデルでもある。オーナーのイメージ次第でどんな姿にも変えられるし、ベースがダークカスタムモデルだからどんなグラフィックにしてもバランスを崩すことはない。「この世に一台だけのハーレーが欲しい」という想像力豊かな方にオススメしたいモデルと言える。

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