VIRGIN HARLEY | FLHTCU TC エレクトラグライド ウルトラ クラシック 試乗インプレ

FLHTCU TC エレクトラグライド ウルトラ クラシックの画像
HARLEY-DAVIDSON FLHTCU TC(2015)

FLHTCU TC エレクトラグライド ウルトラ クラシック

永遠のロードをも走破する
ハーレーの頂点に君臨する王

“キング・オブ・ハーレーダビッドソン”。その呼び名にふさわしい存在、それがこのウルトラだ。現ラインナップではこのエレクトラグライドに加え、FLHTK TC ウルトラリミテッドがあるが、こちらは現代風にアレンジが加えられた2010年からの新顔。昔ながらのファンにとっては、「ウルトラクラシックこそ本家」というところだろう。そのウルトラが2013年、水冷機能を併せ持ったツインクールド仕様に進化したことは周知のとおりで、フェアリングをはじめとするデザインも流麗なものに一新された。「111年におよぶ自社の歴史をリスペクトしつつ、現代のロードシーンに対応した進化を遂げた」というカンパニーの発表にあるとおり、広大なアメリカを難なく走破するバージョンアップをはたしたのだ。とはいえ、私たちが実際に楽しむのはここ日本で、フューエルインジェクションのセッティングも本国とは大いに異なる。日本仕様のウルトラの真価を探るべく、ロングラン試乗を敢行した。

FLHTCU TC エレクトラグライド ウルトラ クラシックの特徴

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今年で半世紀を迎えたエレクトラグライドは
これからもハーレーの歴史を紡いでいく

“エレクトラグライド”という名称が生まれたのは1965年。それまでのハーレーダビッドソンでは、デュオグライドやハイドラグライドと呼ばれるクルーザーモデルがラインナップを飾り、スポーツスター初期のXLCHなどとともに、インディアンや英国メーカーらと米オートバイ市場での覇権争いを繰り広げていた。この1960年代は、ベトナム戦争(1960~1975年)やキューバ危機(1962年)の勃発など、アメリカという国が大きく揺れ動いた時代でもあった。

そんな1960年代前半に英モーターサイクルメーカー『ノートン』が電気式セルモーター付きモデルを世に送り出し、まったく新しいモーターサイクルの始動システムに火がついた。それまでキックスタート式のみだったハーレーもセルモーター付きモデルの開発に着手。そうして生まれたハーレー初のセルスターターモデルがこのエレクトラグライドで、デュオグライドやハイドラグライドの系譜を一手に引き継いだのである。

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この1965年はパンヘッドエンジンの最終年で、新機能であるセルスターターは一年寝かせ、新型エンジン ショベルヘッドとの併載とすればよかったのでは? とも思うところだが、さらにその翌1967年に目を向けると、大手機械メーカー『AMF』の傘下企業になるという大きな節目を迎えている。つまり、激化するアメリカのモーターサイクル業界においてハーレーダビッドソンは相当に苦戦を強いられており、一年でも早く出さねばならないほどセルスターター機能は市場でスタンダード化していたということだ。社運を背負って登場したエレクトラグライドも、この2015年で半世紀を迎えるなど稀代のベストセラーモデルという座を手に入れることになった。“キング・オブ・ハーレーダビッドソン”の名に恥じないモデルなのである。

この半世紀のあいだ、エンジンはショベルヘッドからエボリューション、ツインカムと進化し、Vロッドやストリート750といった水冷仕様モデルなど新しい機種を次々に輩出してきたハーレーダビッドソン。時代に合わせた進化が求められるのはメーカーとしての宿命ながら、最高位のモデルにだけエレクトラグライドという名が冠される伝統は今も続いている。111年のなかでハーレーが常に追い求めてきたのは、それぞれの時代における最高のエンジンと最高の性能、そして最高の装備を兼ね備えた究極のビッグツアラーを生み出すこと。はてしない国土を有するアメリカを難なく走破できるモーターサイクルこそ、ハーレーダビッドソンが理想とした姿であり、エレクトラグライドにはその信念が宿されているのだ。

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そして2013年、エレクトラグライド ウルトラはひとつの節目を迎えた。頑なに貫いてきた空冷Vツインエンジンの機能アップを果たすべく、水冷機能の搭載を断行したのだ。それが、『ツインクールド ツインカム103エンジン』である。ご覧のとおり、各ケース類や最新機能を備えたフェアリングなど、ウルトラには他モデルにない豪華な装備が付属している。当然重量は408キロとなり、ライダーとパッセンジャーが乗っても難なく走れるようエンジンを103キュービックインチ(排気量1,689cc)にまでパワーアップさせた。これによってそのハイパワーをカバーする冷却機能が必要となり、いわゆる空水冷というふたつの冷却機能を併せ持った『ツインクールド』の採用と相成ったのだ。

そんな『ツインクールド』の採用に注目が集まるところだが、フロントとリアが連動して機能する新型ブレーキングシステムに高剛性の新型フレームの採用を忘れてはならない。とりわけネック部分をはじめ要所要所が剛性アップしたフレームは、その重量だけで疲弊してしまいがちなウルトラから無駄な力を抜き去り、過去のものとは比べものにならないバランス感覚を生み出している。フロントフォークも41.3ミリから49ミリへと径が大きくなり、あらゆる装備が備わる重量級のフェアリングをしっかり支えてくれる。

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加えて、より高い走行性能を引き出すためにバッドウイングフェアリングやトップケース等の大幅なデザインチェンジを行った。以前のものと比べると格段に開けやすくなったサドルケースの採用、LED製ヘッドライトやパッセンジャーシートの構造変更など、快適性もグンとアップするなど、申し分ないバージョンアップをはたした。

ハーレーダビッドソンとしての伝統を重んじつつ、最新の技術を投じて正常進化を成し遂げたウルトラ。米デンバーで開催されたメディア向けツインクールド発表会で500キロ近く試乗したが、アメリカにおけるセッティングでアメリカを走るという、いわゆる“本国仕様”での試乗で、排ガス規制値が大きく異なる日本が舞台となるとライドフィールは大幅に変わるため、目安とはなり得ない。日本仕様のウルトラはいかほどのものか、それでは試乗インプレッションへと進んでいこう。

FLHTCU TC エレクトラグライド ウルトラ クラシックの試乗インプレッション

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バイク操作の基本に忠実であれば
重量級と思えない反応を見せてくれる

その巨体を目の前にすると、いつもと違う緊張感が走る。400キロを超える車重はやはり伊達ではない、初めて目にする人や女性だと「とても乗りこなす自信はない」と及び腰になってしまうだろう。そんなことを考えながら跨がり、ハンドルに手を添えつつ下半身の力で車体を引き起こす。確かに「よっ」と若干の力を要するが、思いのほかヒョイと車体が起きて若干拍子抜けした。もちろん平坦な道でのことで、傾いたところにバランス悪く停車させてしまうと引き起こしが困難になるだろうが、フレーム剛性のアップの恩恵からか、ツインクールド以前のモデルとは車体バランスそのものが違う印象を受ける。

イグニッションをひねってセルスタートすると、103キュービックインチのツインカムエンジンが巨体を震わせる。鈍重ながらも良い意味での重量感とともに、そろそろと走り出していく。一旦スタートしてしまえば、停車していたときの重々しさはどこへやら、しっかりとオートバイらしく駆け抜けていく。重量級ゆえのハイパワーエンジンなわけだが、走っているときのウルトラに操りづらさは欠片もない。

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混雑気味な都内を走っていくと、思いのほか楽しく走れるという新鮮な発見があった。もちろんストップ&ゴーが多くクルマの流れも鈍いため、バランスを取るのに気を使うことが多々あるが、流れに乗れば3速パーシャルで回しながらクイックに走らせてやることができる。その姿からメガクルーザーというイメージで固められているウルトラだが、『プロジェクト ラッシュモア』による大幅なマイナーチェンジのおかげで、オートバイとして大幅にバージョンアップしていることを感じさせられた。もちろん、他モデルに比べると街乗りは不得手なジャンルではあるが、見た目とは裏腹にコントローラブルなモデルに進化していた。これならば、得意のハイウェイの先にある入り組んだ街やワインディングなどでも、気を使うどころかむしろ楽しめるに違いない。

そんなツインクールドモデルで気になる点と言えば、「長距離走行時のエンジンの熱さはいかほどのものか」という点だろう。ツインクールド以前の空冷ツインカムだと、走行100キロを超えるとエンジンが尋常じゃない熱を発してきた。その点を改善すべく水冷機能を併載しているわけで、アメリカで試乗した際は走行300キロを超えてもエンジン熱に悩まされることがないという事実に感動を覚えた。しかし、日本仕様のセッティングはアメリカのそれと大きく異なる。実際に100キロを超えるテストをしてみるべく、東京~千葉~(アクアライン)~神奈川と約130キロを実走してみた。

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ハイウェイに入った途端、「さすがはウルトラ」とつい笑顔になるクルージング能力を披露してくれた。ストレートロードで流れるように走れば、車重に悩まされることなどまずない。時速80キロ強なら3速で引っ張れるし、100キロ巡航なら4速でも十分。ただ、5速、6速と上げていくにつれて、排気量1,689ccというエンジンが本来のパワーを発揮しきれていない印象が否めなかった。特に5速から6速にあげてからの肩透かし感がかなり大きかったのだ。以前同じウルトラでアメリカを走った者からすると、ここはかなり残念なところ。排ガス規制によるセッティングの違いが如実に表れているところで、3速パーシャルで街中を走っていたときもトルク感が抜けている印象を抱いた。

解消するにはチューニングによるECM内データの書き換えが必要で、なかには「マフラーを換えれば問題ないのでは」と言われる方がいらっしゃるが、フューエルインジェクション(EFI)モデルはそう単純なものではない。感覚頼りのキャブレターモデルと違い、エンジンの状態をすべて数値化しているため、マフラーやエアクリーナーを取り替えてもマシンの頭脳であるECMが交換パーツに合わせたセッティングに調整されていないと、ノーマル状態よりも悪い症状を引き起こしてしまう。購入を検討する方は、プロのチューナーによるセッティングをご検討いただきたい。最適なセッティングにしてやれれば、求めているハーレーらしいトルクを体感できること間違いなしである。

エンジン熱に関しては、こちらもセッティングによる影響からか、100キロ走行の後半あたりでかなりの熱量になっていた。我慢できないほどではないが、本国仕様を経験した者としてはこれまた残念なところ。しかしながら、セッティングを変えてやるという解消方法があるので、購入時または購入後にきちんとしたアドバイスを受ければ、難なくクリアできるものと言える。

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好感触だったのは、ライディングパフォーマンスの高さだ。前後が連動する新型ブレーキシステムだが、かなりのスピードのなかでフロントブレーキをグッと握り込むと、当然フロントに荷重がかかりつつも、リアがしっかり連動して車体がブレることなく減速していってくれた。以前だとその重量からリア滑りを起こすことがあったが、この新型ブレーキシステムと高剛性フレームとの組み合わせによる恩恵と言えるだろう。

ハンドリングのバージョンアップも見逃してはならない。街乗りはもちろん、ハイウェイクルージングでもバツグンの安定感を生み出し、ウルトラにふさわしい快適な走りを提供してくれる。今回の試乗では後ろにパッセンジャーを乗せていたのだが、難点を挙げるとすればリアサスペンションがやや硬いところぐらいで、「バイクの後ろでふんぞり返られるってすごい。あのままもっとハイウェイを走られていたら寝ていた」と言うほど。最強のタンデムクルーザーと形容して差し支えないだろう。

確かに400キロを超える重量級モデルながら、それを感じさせないほど好バランスのオートバイとして仕上げられたツインクールド ウルトラ。その見た目でつい怖じ気づいてしまいがちだが、それこそ教習所で習ったライディングの基本に立ち返って丁寧な操作を心がければ、素直な挙動で応えてくれることが分かった。特に展開の先読みを求められる街中などでは注意が必要だが、備わる最新の機能が助けとなることも実証された。アメリカほどの広さではない日本でも、十分楽しめるモデルへと進化したことは間違いない。

FLHTCU TC エレクトラグライド ウルトラ クラシック の詳細写真

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2013年の『プロジェクト ラッシュモア』から大幅にデザインチェンジしたバッドウイングフェアリング。
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ウインドシールドのすぐ下に、手動式のエアダクトが備わった。走行中でも難なく操作できる簡易なところが好印象。
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光量アップのみならず、投影距離をも大幅にアップさせたデイメーカーLEDヘッドランプ & LEDスポットランプ。
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点灯時はこんな感じ。通常はヘッドライト中央の上部レンズが光り、ハイビームにすると下段レンズに切り替わる。
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スピードメーター & タコメーターにガソリン残量計、バッテリー残量計が上部に並び、中央にはBoom!™ Box 4.3ラジオが設置。
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メーターやパネルはすべてこのように視認性の良いライティングとされている。
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パネル横にはスマートフォンをUSB接続できるジャックが備わっており、データ接続すればデバイス内の音楽を楽しむことも可能。
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22.7リットルという大容量のフューエルタンクもウルトラの魅力。EFIのセッティングを変えてやれば、燃費はさらに向上するだろう。
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コンソール上部の円盤を開けると、フューエルキャップが顔を覗かせる。ロック式なのでいたずらされる心配もない。
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電熱ウェアなどと接続できる電気供給コネクタ『高出力アクセサリーコネクタ』が、コンソール部分とパッセンジャーシート横の2ヶ所に備わる。
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同乗者の快適性をアップさせるべくデザインチェンジされたパッセンジャーシートとライダーシート。ラグジュアリーな乗り心地を提供するほどのグレードに。
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流麗なデザインとなったツアーパック。それでもヘルメット2個をカンタンに収納できる容量を誇る。
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ツアーパック内の広さはご覧のとおり。車検証などを収納できるレザーバッグが備わっている。
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最高の品質を誇る伊ブレンボ社製ブレーキングシステムをダブルディスク仕様で採用。超重量モデルを高い制動能力で支える。
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ロワフェアリング内には新型エンジンの水冷機能を支えるラジエターが搭載されている。ここにしかラジエターを投入できないため、2013年以降のツインクールド化はフェアリングを有するツーリングモデルに限定された。
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ロワフェアリング内側にはフィンの調整をするツマミが。
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空水冷機能を併せ持つ、排気量1,689cc/4ストロークV型2気筒OHV2バルブの新型エンジン『ツインクールド ツインカム103エンジン』。
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ハーレーのツアラー系モデルではお馴染みのシーソーペダル & フットボードも健在。
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パッセンジャー用フットボードはご覧の大きさ。足置きへの安心感はウルトラならでは。
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走行中でも開け閉め可能と言われる開閉機能を一新したサドルケースの容量は申し分ないもの。
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左右二本出しのエキゾースト。セッティングは日本仕様ながら、なかなかにハーレーらしいサウンドを奏でる。

こんな方にオススメ

ハーレーのアイデンティティを求めつつも
パッセンジャーへの愛を抑えきれない貴方に

メガクルーザーという点で見れば、ウルトラでなくてもストリートグライドやロードグライドの能力も十分すぎるものがあり、価格という査定ポイントが加わるとそれらモデルも比較対象となるだろう。だが、それらと違うウルトラの利点は“快適なパッセンジャー空間”という点に尽きる。思わず寝入ってしまうほどラグジュアリーなライディングを味わえるのはウルトラをおいて他になし。そして、ウルトラリミテッドにはないエレクトラグライドという栄光の冠を持つモデルに、ハーレーダビッドソンとしてのアイデンティティを見出すところ。他人が見ればほんのわずかな違いながら、オーナー自身の好みとこだわりで選ばれたモデルには魂が宿るし、その想いをパッセンジャーと共有できればこれ以上のものはあるまい。

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