VIRGIN HARLEY | FLSTC ヘリテイジ ソフテイル クラシック 試乗インプレ

FLSTC ヘリテイジ ソフテイル クラシックの画像
HARLEY-DAVIDSON FLSTC(2015)

FLSTC ヘリテイジ ソフテイル クラシック

“遺産”の呼び名にふさわしい
伝統を具現化したモデル

111年という歴史を積み重ねてきたハーレーダビッドソンは、その年月のなかでさまざまなモデル開発に挑戦してきた。はてしない月日が生み出したハーレーの伝統と言えば、VツインエンジンとFLスタイルだろう。他メーカーのエンジンでは奏でられない特有の鼓動と、前後16インチホイールを装着したリジッドフレーム採用のフォルムは、ハーレーのアイデンティティとも言えるもの。2003年のVロッドや2015年のストリート750といった水冷モデルを手がけるなど、ハーレーも新しい時代へと突入したのだと感じさせられる面を持ちつつも、「これぞハーレー」というスタイルを忘れていないモデルがいくつも存在する。なかでも最たる存在が、今回紹介するFLSTC ヘリテイジ ソフテイル クラシック(以下 ヘリテイジ)だろう。“遺産”と名づけられた伝統の語り部には、カンパニーのどんな想いが込められているのか。インプレッションとともに、ハーレーの歴史を紐解いていってみよう。

FLSTC ヘリテイジ ソフテイル クラシックの特徴

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歴史を感じさせる伝統の語り部
ミレニアムでのその味わいは変わらず

ただそこに佇んでいるだけで、何も説明せずとも「ハーレーダビッドソンだ」と感じ取らせるオーラを放っているのが、このヘリテイジというモデルだ。リジッドフレームを模したソフテイルフレームに前後16インチのスポークホイール、ホワイトリボンタイヤ、大きなヘッドライトとナセル、油圧式フロントフォーク、馬の鞍のようなサドルシート、アメリカの伝統工芸を感じさせるレザーのサドルバッグと、ディテールのひとつひとつが主張しすぎることなくヘリテイジを形成しており、デビューから変わらぬ姿で今なおリリースされている。

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ヘリテイジのデビューはというと、遡ること1986年とされる。当時は現モデルと同じネーミングの限定モデルとしての登場で、翌年に量産型としてFLSTヘリテイジソフテイル(1987~1990)がラインナップ。1992年、一年のブランクを経てFLSTC ヘリテイジ ソフテイル クラシックとして再デビュー。同じ年に登場したFLSTN ヘリテイジ ソフテイル ノスタルジア(1992~1993)はその後、幾度かのリニューアルを経てFLSTN ソフテイルデラックスとなり、現在に至る。

限定版ヘリテイジがデビューした前年の1985年と言えば、1966年代からハーレーの屋台骨として活躍してきたショベルヘッドに変わる最新エンジン「エボリューション」が世に送り出された年だ。また同年、往年のリジッド型フレームを復活させるべく開発が進められていた「ソフテイルフレーム」を持つFXST ソフテイルが登場。翌年に登場したヘリテイジは、当時最新のソフテイルフレームを備えた前後16インチのFLモデルの復刻第一号だったのである。

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1992年以降、ツインカムエンジンへの移行やいくつかの変更が加わったものの、基本的にヘリテイジとしてのスタイルを変えることなく現代に至る。数えて20年以上におよぶという、ハーレーダビッドソンのラインナップ中でもっとも息が長いモデルなのだ。これほど長くファンに愛され続ける理由は、1940年代から脈々と受け継がれる伝統のFLスタイルをおいて他にあるまい。基本形そのものはFLS ソフテイルスリムやFLSTN ソフテイルデラックスと同じながら、オリジナルの装備によってノスタルジックな雰囲気を醸し出すヘリテイジ。乗っていれば「あ、ハーレーだ」と気づいてもらえる存在感に、試乗前からワクワクしてしまう。いよいよライドオンだ。

FLSTC ヘリテイジ ソフテイル クラシックの試乗インプレッション

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装備の分の重さはあるが
安定感抜群の走行性能は言うことなし

ウインドシールドにサドルバッグといったヘリテイジ特有の装備を除けば、ベースそのものはFLSTN ソフテイルデラックスとほぼ同じ。大きな違いは持ち上がったエイプハンガーだろう。シンプルなFLスタイルとされるデラックスのライディング能力の高さは以前体感したところなので、デラックスと比べてのヘリテイジの特徴がどこにあるのかがポイントとなる。

まずは跨がり、ハンドルを握って腰の力で車体を起こす。シートポジションに関しては、身長174センチの私にとっては申し分なし。大柄なサドルシートはしっかりと体を受け止めてくれ、ステップボードもちょうどいい位置にある。リジッド型のソフテイルフレームとシートのシルエットのおかげで、足着きに不安は一切ない。車両重量は、デラックスの330kgに対してヘリテイジは341kgと、特別装備の分は重くなっている。この11kg差に関して、足着きの良さもあってか私自身は大きな差とは思えなかったが、デラックスと乗り比べた女性から見ると小さくない不安でもあるよう。気になる方は、ディーラーにて車体を起こしてみるところまで体験してみてほしい。

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発進してすぐに意識するのがハンドリングだ。押さえ込むようなニュートラルなハンドル位置のデラックスやFLS ソフテイルスリムに対し、ヘリテイジのそれは肩からまっすぐ腕を前に伸ばして掴むポジション。違いが如実に出るのは車体を旋回させるときで、車体そのものを傾けて曲がっていく動きに変わりはないが、ハンドル位置の高さから腕の押し引きで取り回す動きが求められる。そう、デラックスやスリムよりも力で取り回している印象がある。車体そのものの雰囲気の違いからか、デラックスは女性ファンが、ヘリテイジは男性ファンが多いと聞くが、このハンドリングもそうした層の違いに影響しているように思える。

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都心部を走り出す。ちょっと道が空いたら4速まであげられるが、すぐに信号にかかってしまうので大体3速パーシャルで引っ張る感じ。このあたりはスポーツスターともあまり変わりはないが、重量級のビッグツインモデルなのでかなり気を使ったハンドリングを要する。そのスタイルを見れば一目瞭然ではあるが、やはりストリートは得意分野ではないようだ。

ちょっと気になるのは、ウインドシールドの位置だ。発進して前方に目をやると、ちょうどウインドシールドのトップが目線の先にあり、微妙に風景を歪んで見せるのである。身長の高いアメリカ人なら気にならないのかもしれないが、ウインドシールドを境に走行風景が見切れてしまうのはあまり気持ちがいいものではない。もし自分がオーナーとなるなら、風防効果を犠牲にしてでもスクリーンを短く切ってしまうかもしれない。

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その大きな理由は、日本用のセッティングにある。車両そのものはアメリカも日本も同じなのだが、日本の排ガス規制値がアメリカよりも厳しい設定のため、輸入時に現行モデルの頭脳であるECU(エンジンコントロールユニット)のプログラムが書き換えられ、なおかつマフラーも抜けを抑えた仕様になっているのだ。そのため、本国では本来の性能を最大限に発揮させられているものが、半分ほどしか引き出せていないセッティングとなっている。逆に言えば、マフラーとセッティング(インジェクションチューン)を変えてやれば、本国で発揮しているパワーを引き出してやれるのである。これはヘリテイジに限った話ではなく、日本に輸入されている新型ハーレーすべてに言えることなので、これから新車購入を考えている方には知っておいていただきたい。

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ハイウェイをパワフルに走れるようになれば、ヘリテイジの魅力はさらに引き出される。そしてハーレーらしい走りを味わえるようになることで、ノスタルジックな雰囲気を持つヘリテイジに乗る楽しみがさらに広がることは間違いない。アメリカとは違った日本の牧歌的な風景にも似合うヘリテイジは、オートバイとして見ても、初心者に優しい快適なツーリングバイクだと言える。

FLSTC ヘリテイジ ソフテイル クラシック の詳細写真

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FLSTN ソフテイルデラックスと共通の大型ヘッドライト&スポットランプに、ヘリテイジオリジナルの大型ウインカーが備わる。
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ヘリテイジの表情を決定づけているデタッチャブル(脱着)ウインドシールドは標準装備。
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同型のデラックスと比べるとうずたかい仕様とされるエイプハンガー。腕のポジションも肩ぐらいの位置まであがる。
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ナセルカバーの裏側にスポットランプのスイッチが。
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フューエルタンクの容量は18.9リットルとラインナップ最大。燃費を考えれば一番のツーリング向けモデルとなるだろう。
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ヘリテイジの隠れたポイントと言えるキャッツアイコンソールは今なお健在。コックピットの雰囲気はここで決まっていると言っても過言ではない。
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乗馬用の鞍をイメージさせるサドルシートは、ライダーとパッセンジャーの体を覆うかのような大柄な仕様。また背もたれ用のシッシーバーはパッセンジャーにとって心強い存在だ。
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トゥームストーン(墓石)型を採用するデラックスとは異なり、フロントと同じデザインのウインカー&ステーを備えるシンプルなテールランプのヘリテイジ。リアエンドの印象は好みが分かれるところか。
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FLの代名詞とも言える油圧式フロントフォークは健在。見た目こそビンテージモデルのそれだが、しなやかな動きは現代の道路事情に合わせて大きくグレードアップしている。
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同じくFLスタイルを主張する16インチスポークホイール&ホワイトリボンタイヤという組み合わせのフロント。ブレーキはシングルディスク仕様に。
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2011年モデルからソフテイルファミリーの全モデルに採用されているABS(アンチロック・ブレーキ・システム)。制御等の機能はすべてECUに集約されるシステムに。
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排気量1,584cc/空冷4ストロークV型2気筒OHV2バルブエンジン『ツインカム96B』がヘリテイジの心臓だ。
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ソフテイルと言えばフットボード。しっかりと踏み込める大きなブレーキペダルも存在感十分。
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左側にはハーレーらしさの象徴たるシーソーペダルが備わる。ブーツが痛まない仕様であるところが嬉しい。
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ヘリテイジの特徴でもある大きなレザー製サドルバッグ。プラスチック製のバックルでホールドできるので、走行中にカバーが空く心配は無用。

こんな方にオススメ

何をおいてもハーレーらしい雰囲気!
快適なツーリングも味わいたい欲張りなあなたに

最新のツインカム96Bエンジンを心臓としつつ、リジッド型のソフテイルフレームに前後16インチ、油圧式フロントフォーク、大きなヘッドライト&ナセルと、ハーレーの伝統すべてを兼ね備えたヘリテイジ。アメリカのルート66に佇んだら、これほど似合うモデルは他にあるまい。そうしたノスタルジックな雰囲気を味わうために、ビンテージハーレーに進む人もいるだろうが、やはり故障の心配が少なく快適にツーリングが楽しめることが現行モデルの魅力。ヘリテイジは、そんなハーレー特有の“いいとこ取り”をしたお得な一台と言えるのだ。タンデムシートもしっかりしているので、パッセンジャーとも同じ世界観を共有できることだろう。北海道や九州を走ったら、ばっちりと雰囲気を作ってくれるモデルである。

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