VIRGIN HARLEY | XL883R 試乗インプレ

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HARLEY-DAVIDSON XL883R(2015)

XL883R

ハーレーダビッドソンのレーシングスピリットを
受け継ぐスポーツスターらしいモデル

圧倒的な人気を誇るXL1200X フォーティーエイトがデビューした2011年、華やかな話題の裏側でXR1200シリーズの2台が姿を消し、スポーツスターは一台を除いてすべてローダウンモデルへとスライドしてきた。今もその流れは変わらないが、そんな流行にあらがうように残り続けている例外的一台がこのXL883Rである。往年のファクトリーレーサー XR750のレーシングスピリッツを受け継ぐファクトリーカスタムモデルとしての扱いだったが、スタンダードなXL883が姿を消した今、スポーツスター本来のスタイルを残す唯一無二の存在として見られるように。今年、グラフィックを一新した883R(パパサンアール)を通して、スポーツスターのあり方を見つめ直してみたい。

XL883Rの特徴

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本来のスタイルを維持しつつも
実は変更点が多い2015年仕様

デビューは2002年、リジッドスポーツをベースに、ワイドなハンドルバーに2in1エキゾースト、ダブル仕様のフロントブレーキ、そして1980年代を風靡したハーレーダビッドソンのファクトリーレーサー XR750そのままのタンクグラフィックという、「メーカーが持つレーシングスピリットを未来へ伝える」というカンパニーのひとつの意思を感じさせるモデルとして登場した。ちなみに当時のスポーツスターファミリーは、ツインプラグ仕様のXL1200S、ファクトリーカスタムモデル XL1200CにXL883C、オーソドックスなXLH883およびXLH883 Hugger(ハガー)という顔ぶれで、レーサーグラフィックを持つ883RはXL1200Sと同じカテゴライズのレーシングモデルという位置づけだったと言える。2年後にはXL1200Rに食われる形でXL1200Sとともにラインナップから姿を消すが、2006年、ラバーマウント仕様として再デビュー。以降、スポーツスター共通の変更点は加えられつつも、883Rとしての変化はないまま現在に至る。

ブランク期間を持つ883Rだが、リジッドからラバーマウントへと移行しても、本来のスタイルに変わりはない。エキゾーストのみ他モデル同様の2本出しとなったが、ダートトラックレーサーらしさを匂わすワイドなハンドルバー、しっかりと高さを設けた車高、ダークにまとめられたボディまわり、そしてカンパニーカラーでもあるチェッカーデザイン入りのオレンジ×ブラックとするグラフィックと、XR750を知る人なら思わず唸ってしまうスタイリングである。特に、世界的にもスポーツスター人気が高い日本においても確固たる地位を持ち、XL1200X フォーティーエイトやXL1200V セブンティーツーといった派手めな後輩たちをラインナップの前面に出しつつも、自身は動じることがないといういぶし銀の存在感を放つまでに。

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実はこの883R、アメリカ本国では数年前からカタログ落ちしており、巷では「日本で在庫処分をしているだけ。ストックがなくなればカタログ落ちする」などという声も。特にローダウンモデルが増えた昨今の傾向から、往年のスポーツスターファンはニューモデル発表のたび、新しいモデルよりも“パパサンアールが生き残ったか否か”に注目するようになっていた。その観点から言えば、2015年仕様の883Rは生き残った以上の意味を示した。そう、タンクグラフィックを一新したのだ。

くどくて恐縮だが、883RのグラフィックはXR750の存在を語り継ぐ伝統的なものだったが、カンパニーはあえてここに手を加え、よりモダンなものとして進化させた。FXDL ローライダーに見られる、HARLEY-DAVIDSONというフォントサイズを大きくするのが今年の傾向のようで、その流れにならったのか、883Rの新グラフィックはそのロゴがより強調されるデザインに。883Rの存在意義という点から見れば、ここは大いに好みが分かれるところではあるが、一方で今回のグラフィックチェンジにより、少なくとも向こう数年はラインナップに残り続けることが確約されたと言える。本国ラインナップにこそ存在しないものの、ヨーロッパや南米、アジア諸国では人気の883Rなので日本だけ特別扱いというわけではなさそうだが、姿が変われど生き残ってくれたことはスポーツスターファンにとって朗報と言えるだろう。

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実は2015年版スポーツスターファミリーに関して、HDJからは「XL883RおよびXL883L スーパーローのタンクグラフィックの変更のみ」という発表なのだが、よく見てみると細かい仕様変更がいくつか見受けられた。オプションだったキー付きキャップを標準装備としたところは全モデル共通だが、実はスイッチボックスのデザインが若干変更されているのだ。このあとのディテール解説をご覧いただきたいが、昨年モデルと見比べると若干小さく、そして丸みを帯びたデザインになっている。また、ブレーキキャリパーもスポーツスター共通でデザイン変更がなされていた。さらに883Rのディスクローターも一新されるなど、タンクグラフィックだけではない専用設計のものが取り入れられているのだ。

XL883Rの試乗インプレッション

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スポーツスターのあるべき姿を教えてくれる
決してなくしてはいけない最後の灯火

その111年という歴史において、ハーレーダビッドソンはさまざまな試みを行ってきた。現代で言う原動機付き自転車の開発から始まり、広大なアメリカを走破するための大陸横断用モーターサイクルとして進化してきた一方で、1950年代に起こったヨーロッパ系スポーツバイクに対抗すべく生み出されたモデルK、そしてそこから始まったスポーツスターの系譜も、間違いなくハーレーダビッドソンの歩みである。その面影はすっかり消えてしまったが、かつてレースシーンを席巻した偉大な時代も、現在の系譜の礎として語り継がれており、この883Rはそんな想いが具現化したものと言えよう。

こと“スポーツバイク”というカテゴリーで議論すれば、この883R以上に軽快で乗りやすいオートバイは世界にごまんと存在する。それこそ日本の交通環境や民族性を熟知した日本人による日本人のための国産メーカー系オートバイの方が、私たちの生活そのものに違和感なくフィットするのは言うまでもない。MotoGPでトップを行くライダーが駆るレーサーのほとんどが和製モデルという点も日本の技術力の高さを証明するものであり、世界的に高評価を受けていることを忘れてはならない。そもそも、四つもの巨大オートバイメーカーを持つ国なんて日本以外に存在しない。オートバイ人気の低迷が嘆かれるようになって久しい昨今だが、世界のモーターサイクルシーンにおいて日本が担っている役割は、私たちが思っている以上に大きいのだ。

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そんなオートバイ大国にあって、あえてアメリカ人によるアメリカ人のためのオートバイ、ハーレーダビッドソンを選ぶ理由はさまざまあろう。ヨーロッパやアジア諸国以上にアメリカという国と密接な関係を持ってきた歴史がそうさせるのか、日本におけるハーレーダビッドソンに対するリスペクトの念は他国以上と言っていい。研究熱心な民族性も手伝って、アメリカのモーターサイクルシーンの歴史を再現しつつも日本独自のアレンジを加えたカスタムバイクは逆に世界からの注目を集め、ジャパンカスタムがひとつのマーケットを生み出すまでになった。私たちが思っている以上に、日本におけるハーレーダビッドソンの存在は大きい。

性能に関しては国産系モデルと比べるまでもないが、この883Rはハーレーダビッドソンらしい味わい深さを持つスポーツスターモデルである。リジッド時代と比べると20キロ以上も車重がアップし、どちらかと言えばクルーザー色が強まった感がある現883Rだが、フロント19/リア16インチというスポーツスター本来のスタイルにしっかりとした高さが設けられた車体は、フォーティーエイトやセブンティーツーといった他のスポーツスターモデルにはない軽快感をもたらし、若干鈍臭いところが逆に愛らしくさえある。小柄な人にとっては大きすぎるかもしれないワイドハンドルバーも、なぜこの設計とされたのかという背景を知れば、これも883Rの味わいとして楽しめよう。

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883ccという排気量も、日本人のサイズ感で見ればちょうど良いとも思う。アメリカ人にとっては中排気量モデルぐらいにしか見られていないようだが、私たちにとってはストリートシーンはもちろんツーリングにだって十分使える大きさだ。XL1200T スーパーローという例外はさておき、スポーツスターは本来ハーレーダビッドソンの解釈から生まれたスポーツモデルであることから積載能力は皆無だが、サードパーティ(社外メーカー)からさまざまなオプションパーツがリリースされているので、この883Rをベースとしつつもロングツーリングに使える仕様にカスタムするのは十分可能だ。ただ、あえて難点を挙げればやはりインジェクションの設定か。ストリートにおけるスタートダッシュ時のスカスカ感は正直いただけない。他モデルならいざ知らず、この883Rでトルクフルな走りを楽しみたいのであれば、インジェクションチューンは必須項目と言えよう。

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汎用性という点で見ると、大きなメリットとしてダブル仕様のフロントブレーキを挙げたい。現スポーツスターモデルにおいては883Rだけが持つポイントで、制動力は他モデルの比ではない。ハーレーの操作においてまず知るべきはリアでのブレーキングで、急制動時にいきなりフロントブレーキをかけてしまうとその大きなパワーを持て余して車体が滑ってしまい、転倒しかねないという危険性があるが、エマージェンシーという点からもダブルディスクが標準仕様というのは大きなアドバンテージである。ちなみに後付けでダブル仕様とすると、その費用が軽く二桁万円に到達してしまうことも付け加えておこう。

飛び抜けた性能を持つわけではないが、ハーレーダビッドソン伝統のスポーツモデルとして歴史を紡ぐ883R。ビッグツインにはない味わい深さを知ったとき、その歴史に埋もれつつあるハーレーダビッドソンの知られざる一面に触れることができるだろう。

XL883R の詳細写真

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前年モデルとのグラフィックを見比べてみる。フォントデザインは同じながら、単色ベースとなりロゴが強調された印象だ。
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XR750の姿をほうふつさせるワイドなハンドルバーは、このモデルを軽快に操らせるポイントのひとつ。
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昨年モデルと見比べるとコンパクトになった新設計のスイッチボックス。
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2011年仕様からブラックアウトされたトップブリッジおよびアンダーブラケット。ダークカスタムを検討する方は、この年式を基準に中古車選びをされると良いだろう。
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一新されたフューエルタンクのグラフィック。ベースカラーが一色に絞られ、HARLEY-DAVIDSONの文字がより強調されるように。
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2015年全モデル共通のキー付きキャップが備わる。バー&シールドのロゴが良いアクセントとなっている。
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こちらもデビュー以来変わらぬ姿を保つダブルシート。このまま愛用するオーナーも少なくない。
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テールランプ一体型ウインカーが主流となりつつある昨今において、クラシカルなままとされるリアエンドも883Rのアイデンティティか。
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未発表ながらディスクローターの設計も一新されている。883Rというモデルの特性を考えると、ここも車両選びの大きなポイントとなるだろう。
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ブレーキキャリパーも設計変更され、やや角が取れたデザインに。ブレーキラインも変更されている。
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車両選びのポイントでもあるリンクルブラック塗装のエンジン『エボリューション』。ここを抜きにカスタムを進めることはできまい。
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ミッドコントロールとされるステップもブラックアウト仕様。ステップのゴムが削れているのは広報車ゆえ、本来は丸い仕様である。
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二本出しのノーマルマフラーも特に変更なし。初期モデルの2in1エキゾーストを懐かしむ声も少なくない。

こんな方にオススメ

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本来のシルエットを持つカスタムベースに最適
ファクトリーカスタム以上のオリジナリティを手に入れる

「ラバーマウント スポーツスターのカスタムは難しい。元々の車格が大きいためコンパクトにしづらく、手間はもちろん費用も嵩む」。ユーザーはもちろん、ディーラーやカスタムショップからもこんな敬遠の声を耳にする。それでもサードパーティによるパーツ開発の充実から、最近ではそうしたアレルギー系の声は少なくなってきた。そんななか、フォーティーエイトやセブンティーツーといったファクトリーカスタムモデルの台頭から、古参である883Rは地味なモデルという位置づけに追いやられつつあったが、人気モデルが飽和状態となってきた近年、この883Rが再び注目を集めつつある。しっかりとした車高にフロント19/リア16インチという足まわり、そして容量12リットルのフューエルタンクと、スポーツスター本来のシルエットを持つ数少ないスタンダードモデルこそ、カスタムベースにふさわしい一台というわけだ。ハーレーダビッドソンのカスタムカルチャーからすれば、自分が理想とするカスタムスタイルから逆算してベースモデルを選ぶのが常道とされるのだから、ある意味ハーレー本来の魅力が復活しつつあると言えるのかもしれない。そう、出来合いのファクトリーカスタムモデルではなく、この世に一台の自分だけのハーレーダビッドソンを手に入れたいという個性派な人に、883Rをオススメしたい。

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