VIRGIN HARLEY | FXDBC ストリートボブ スペシャル 試乗インプレ

FXDBC ストリートボブ スペシャルの画像
HARLEY-DAVIDSON FXDBC(2016)

FXDBC ストリートボブ スペシャル

ストリートボブをより尖らせた
ダイナ版ストリートドラッガー

バージョンアップしたXL883N アイアンとXL1200X フォーティーエイトの2つのスポーツスターに、CVO仕様の排気量1,801cc / スクリーミンイーグル・ツインカム110エンジンを搭載したSシリーズと、大いに話題を呼んだ2016年モデル群。その中で同じくニューモデルの一角としてラインナップを飾ったのが、いわゆるスペシャルエディションモデルであるこのFXDBC ストリートボブ スペシャル(以下 ボブスペシャル)だ。ストリートドラッガーというテーマのもと、オリジナルスタイルへとカスタマイズされたFXDB ストリートボブの限定特別モデルなのだが、このモデルが意図する狙いとライドフィールはどのようなものか。実際に乗ってみてわかったこと、それは「このモデルにはハーレーのDNAがしっかり受け継がれている」という事実だった。

FXDBC ストリートボブ スペシャルの特徴

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ダークカスタムというテーマに基づいた
ブラックアウト・レーサーモデル

ハーレーのラインナップを見慣れた方なら、パッと見た印象はストリートボブそのものだと思うだろう。それもそのはず、もっとも注目されるタンクグラフィックがストリートボブとまったく同じだからだ。

明確な違いは、スタイルそのもの。エイプハンガーにスポークホイール、無駄のないシルエットと、そのチョッパースタイルが魅力であるストリートボブとは対照的なストリートドラッガーにまとめられている。ドラッグバー&ストレートライザーに10スポークホイール、フォワードコントロールのステップ、ガンファイターシートと、ファクトリーカスタムモデルらしさ全開のフォルムが特徴的と言えよう。

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そんなボブスペシャルだが、2016年ラインナップの限定モデルという位置付けながら、その注目度は決して高くない。確かにバージョンアップをはたしたスポーツスター2モデルやCVOエンジンを搭載したSシリーズに比べたら話題性に欠けるという側面は否めないが、メディアでもあまり大きく取り上げられないのには理由がある。

それは、このボブスペシャル自体に目新しさがないからだ。すでにお分かりの方もいるやもしれないが、よくよく見ると昨年(2015年)にラインナップされた限定モデル FXDBB ストリートボブリミテッドとまったく同じモデルだからだ。唯一の違いはグラフィックだけで、オリジナルデザインだったボブリミテッドの方が映えて見えるほどである。「スタンダードなボブのグラフィックにしたのはダークカスタムというテーマ性から」と言われればわからなくもないが、それにしてもお手軽カスタムモデルな感は否めない。

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リミテッドと謳いながら、わずかなマイナーチェンジで2年連続のラインナップとなったボブスペシャル。タイトなライディングを要するストリートドラッガーは決して万人受けするスタイルとは言い難い仕様で、「ご好評につき」というわけでもなさそうだ。となると「なぜカンパニーがこの限定モデルへの着手に踏み切ったのか」が大きな疑問となろう。その答えはおそらく、アメリカでもっとも流行っているカスタムスタイルにあると思われる。

それは「クラブスタイル」だ。クラブスタイルとは、スポーツライドを楽しむビッグツインであるダイナモデルをベースに、ロングストレートライザーとドラッグバー、ビキニカウル、そしてハイパフォーマンスなフットワーク(サスペンション、ホイール、ブレーキングなど)を備えたハイスピードクルーザーのことを指す。近年のアメリカではこのスタイルが流行しており、ここ日本でもクラブスタイルのダイナが増えてきつつある。元々はFXRをベースにするのがマナーとも言われていたようだが、中古のタマ数の影響や、安定感のある現行ダイナに対する見方が変わってきたことから、「スポーツライドが楽しめるビッグツイン」が定義付けされ、ダイナカスタムにおける不動の人気を確立した。

その観点から見ると、このボブスペシャルはクラブスタイルにうってつけなベースモデルと言えよう。極端な話、ビキニカウルを取り付ければそれだけでクラブスタイルとして見ることができる。バガーカスタム全盛期にFLHX ストリートグライドを送り込んだように、このボブスペシャルやボブリミテッドはクラブスタイルへのカスタムを前提に組み上げられたモデルと思えてくるのだ。

そのスタイルからも分かるタイトなフォルムのボブスペシャル、改めて試乗してみることとしよう。

FXDBC ストリートボブ スペシャルの試乗インプレッション

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近年のハーレーの潮流に逆行する
古き良き伝統を体現するやんちゃ坊主

前述のとおり、スタイルそのものは昨年までのボブリミテッドとまったく一緒で、エンジンもツインカム96がそのまま使われるなどライディングそのものに一切の変更はない。それを踏まえると、ボブリミテッドに試乗した際の印象は決してポジティブとは言い難かったので、小さくないためらいがあった。

一言で言うなら「乗りづらい」、それがボブリミテッド試乗時の印象だった。それはこのボブスペシャルでも変わることはなかった。ストレートライザーにドラッグバーというハンドルはFXDF ファットボブと同じ仕様なので抵抗感はないが、そこにフォワードコントロールというステップ位置が組み合わさるので、当然ながらポジションは実にタイト。身長174センチの私でさえ、両腕と両足を前方に突き出す姿勢になり、これで走り出そうというのだから快適という言葉とは程遠い乗り心地であることは容易に察しがつく。

いよいよ走り出したボブスペシャルは、以前の印象と変わらず難しい操作を要求してきた。よく言えば直線番長なわけだが、「コーナリング性能?何それ?」と真顔で言ってきそうなほど旋回性を無視したディメンションとなっており、同モデルのためだけのライディングテクニックを求めてくるかのようだ。操作そのものを難しくしているのはフォワードコントロールというステップ位置にあろう。やや幅広な設計なので、ドラッグバーながら扱い次第では旋回性を損ねることはない。しかししっかり踏ん張れないフォワードコントロールゆえに荷重がすべて臀部に集中してしまい、腕の力と腰を使った体重移動だけでコーナリングをクリアしていくことを強いてくるのだ。しかも排気量1,548ccというビッグツインエンジンのパワーをコントロールして、というハードル付きで、である。

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ハイウェイにおける直進走行では、そのビッグエンジンが生み出すパワーと加速力から凶暴極まりないライドフィールを味わわせてくれるが、速度が上がれば上がるほど走行風が強くなり、体はどんどんと後方へ押しやられる。ガンファイターシートのホールド位置も浅く、投げ出された両足への走行風まで加わって、ハンドルにしがみついていないとポジションを安定させられないほどだ。

これが身長160センチ未満のライダーともなれば、まずステップに足が届かず、それでブレーキングなどのフットコントロール操作を行うというのは至難の技とも言える。コックピットの操作だけで操れるほど生易しいモデルではないので、この時点で体格的に可能性を否定される人が出てくる。日本人をはじめとする小柄なアジア圏の人には極めて不向きなモデルと言わざるを得ない。

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しかし、私の中で湧き上がってきたのは「なんてハーレーらしいモデルなんだ」という歓びそのものだった。ハイウェイを一時間以上走った後に休憩すると、かなりハードなライディングを強いられたことから、どっと疲れが押し寄せてきた。だがそれは決して不快なものではなく、「ハーレーに乗ってやった」という充実感を伴う心地よさだった。

サスペンションのグレードアップにローダウンモデルの充実など、近年のハーレーはアメリカのみならず”世界のあらゆる人に乗って楽しんでもらうための快適仕様”を模索し始めるようになった。それはそれで大いに歓迎されることだが、一方で乗りづらいハーレーを操ること、または自分仕様にカスタムして楽しむことにアイデンティティを見出してきた者にとっては、一抹の寂しさを覚える傾向でもあると言える。そう、「乗りやすいハーレーなんて、ハーレーじゃない」というように。

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そんな潮流に逆らうかのようなボブスペシャルは、「気に入らないヤツは乗らなくていい」というハーレーダビッドソンの古き良き伝統を感じさせるモデルと言えるかもしれない。他メーカーの開発者が見れば、「意味がわからない」と理解に苦しむスタイルだと思う。しかしハーレーのカスタムカルチャーにおいてストリートドラッガーは正統なルーツを持つスタイルであり、そこに100年を超えるハーレーの歴史と息吹が感じられるのだ。

快適な乗り心地を求めるなら、他メーカーのモデルの方が明らかに秀でている。同じアメリカンスタイルであっても、国産メーカー製の方が日本人の体格にフィットしており、気持ちのいいライドフィールを提供してくれることは間違いない。しかしこのボブスペシャルは、ハーレーダビッドソンでしか生み出せない高揚感を味わわせてくれる”らしい”モデルだ。

FXDBC ストリートボブ スペシャル の詳細写真

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ダイナモデル共通の49ミリフロントフォークを、ブラックアウトしたトリプルツリーがしっかり掴むフロントマスク。好みのビキニカウルを装着すれば、あっというまにクラブスタイルが完成する?
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FXDF ファットボブから取り入れたストレートライザー&ドラッグバーというハンドル周り。クラブスタイルを目指すのなら、ライザーは8インチ以上にし、ハンドルはさらにショート化したい。
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17.8リットルという容量のフューエルタンク、グラフィックはFXDB ストリートボブと共通だ。カラーはブラックデニムのみとなっている。
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ストリートドラッガーというスタイルにマッチするガンファイターシート。着座位置が肉厚で幅広いため、足が外に開き気味になって足つきは決していいとは言えない。身長が低くなるほどにタイトな足つきとなるだろう。
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ショートボブフェンダーにテールランプ一体型ウインカーという現代ハーレーの流れを踏襲。
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2013年までラインナップされていた一世代前のFXDL ローライダーに採用されていた10スポークホイール。レーシーなスタイルを目指していることを考えると、ダブルディスク仕様にして欲しかったところ。
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ステップ位置はカスタムモデルに多く見られるフォワードコントロール仕様に。身長170センチ未満となると、そのフットポジションはかなりシビアになるだろう。
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リンクルブラック塗装が施された排気量1,548cc / 空冷4ストロークV型2気筒OHV2バルブエンジン『ツインカム96』。前年のボブリミテッドとの違いはエアクリーナーカバーがブラックアウトされたことか。
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エンジン左側もしっかりとリンクルブラック塗装が施される。昨今のハーレーのテーマ「ダークカスタム」に則ったボディワークと言えよう。
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エキゾーストはノーマルモデル同様のシンプルな2本出しに。

こんな方にオススメ

太く短く生きる刹那的なオーナーこそ
ボブスペシャルを味わい尽くせるはず

乗りやすいハーレーが増えてきた現代において、このボブスペシャルは特異なキャラクターのモデルだ。言うなれば、予備校に通う生徒が増えてきたなかで「俺、勉強に興味ねーし」とツッパリスタイルを貫く不良のような存在か。ゆえに、いざ走り出せば素直に言うことを聞いてくれないし、だからこそ愛おしく感じさせる得体の知れない魅力を秘めている。実際に乗ると、とても長時間乗っていられるバイクではないが、わずかなライディングで「ああ、ハーレーに乗っているな」と実感させてくれる。そう、一期一会の出会いに運命を求める”太く短く”生きる方にこそふさわしいモデルだと言えよう。クラブスタイルにカスタムするもよし、期間限定でオーナーになるもよし。ボブスペシャルは、そんな要望に120%の力で応えてくれるだろう……ややツンデレ気味に。

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