VIRGIN HARLEY | FLS ソフテイル スリム 試乗インプレ

FLS ソフテイル スリムの画像
HARLEY-DAVIDSON Softail Slim(2017)

FLS ソフテイル スリム

  • 掲載日/2017年07月31日【試乗インプレ】
  • 取材・写真・文/田中 宏亮

1,689ccをむしゃぶり尽くせ!
ハイパーエンジンが唸りを上げるボバー

2016年よりエンジンがツインカム96Bから103Bへとパワーアップしたソフテイルファミリー。そのラインナップ中でもとりわけ走りに振った軽量型ソフテイル「ソフテイルスリム」は、ハイパワーエンジンの恩恵を大きく受けたモデルと言えるかもしれない。1950年代のワンシーンから復活したモダンボバーにこのツインカム103Bが掛け合わされると、どんな化学反応が起こるのだろうか。スリムが目指す速度域に迫ってみよう。

FLS ソフテイル スリムの特徴

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カスタムベースとしても重宝される
FLの良いところをすべて引き出したネイキッド

ソフテイルスリム(以下スリム)のデビューは2012年、中間期モデルとしての登場だった。同タイミングでスポーツスター XL1200V セブンティーツー(現在カタログ落ち)も現れ、「ボバー & チョッパー」というハーレーの伝統とも言えるカスタムスタイルを踏襲した2モデルのラインナップ入りは、カンパニーが推し進めるファクトリーカスタムモデルの強化を感じさせるものと言えた。

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前後16インチのスポークホイールに油圧式フロントフォーク、大きなヘッドライト & ナセル、ビッグタンクからリアエンドにかけて形成される無駄のないシルエットと、文句のつけようがない FL レーサー「ボバー」そのものを体現している。ヘリテイジソフテイルクラシック、ソフテイルクラシック、ファットボーイ & ファットボーイローと、どちらかと言えば重量級というイメージが強かった FL のラインナップに、まったく真逆のネイキッドスタイルで現れた新星がこのスリムなのだ。

その性質は数値にも表れている。装備が多いヘリテイジ(347kg)やディッシュホイールを備えるファットボーイ(333kg)はともかく、デラックスの333kgをはるかに下回る321kgという重量は特筆モノだ。

300kgオーバーのモデルでスポーツする……日本人にとってのベーシックなバイクライフには生まれ得ない価値観ではあるが、半世紀前から現代にかけてのアメリカでは至って当たり前のハーレーライフとして存在し続けてきたものでもある。そう、かつてはリジッドフレームにVツインエンジンを載せた FL モデル(前後16インチ & 油圧式フロントフォーク)でレースをしていたのだから。それがこのスリムが体現する「ボバー」なのだ。

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タンクグラフィックが単色ばかりなのも、ボバーの原点である1950年代の世界観を踏襲してのもの。1970年代チョッパーの再現とも言えるセブンティーツーなどに配されるハードキャンディーカスタムと比べるといささか地味にも見えるが、シンプルであるがゆえにカスタムグラフィックが映えようというもの。そう、スリムはオーナーに対してオリジナリティを求めてくるモデルとも言える。

2016年モデルより、ソフテイルモデルはすべてエンジンがツインカム96Bから103Bへとスープアップ。そこで気になるのが、「ツインカム103Bエンジンとソフテイルの既存構造との相性」だ。排気量は1,584ccから1,689ccへと変わり、そのパワーを各モデルがどう受け止めるのか。とりわけスリムはもっとも軽量なモデルなので、よりエンジンのパワーをダイレクトに反映させる存在と言えよう。

どちらかと言えばストリートユースを主眼に置くスリムのツインカム103Bについて、是か否か問うべく、実走を試みた。

FLS ソフテイル スリムの試乗インプレッション

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クルーザーなどと思うなかれ
その乗り味は凶暴なバッファローの如く

ソフテイルなのに、スポーティ。ツインカム96Bエンジンでデビューしたスリムの第一印象がこれだった。デラックスやファットボーイのイメージが強かったからか、ソフテイルモデルというだけで重量級と思い込んでいた先入観をあっさりと吹き飛ばしてくれた一台だった。

単に重量だけで見れば、スポーツスターはもちろんダイナモデルの方が断然軽い(それでも200kg台だが)。フレームだってスポーツライドに寄せたツインショック構造の2ファミリーに勝るわけがない。それでもスリムに乗って「スポーティだ」と思わせられたのは、オフロードバイクを思わせるハリウッドハンドルバーや前後16インチホイールから成る FL スタイルであることに加え、スポーツスターモデルと同じ150mmというリアタイヤ幅にも秘密があるだろう。

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同じ150mmのソフテイルデラックスを除いて、他のソフテイルモデルはいずれも180mm以上の幅を持つリアタイヤを備える。ひとえに直進安定性を狙ったもので、翻って150mmリアタイヤがスリムに採用されているわけは、ボバースタイルを忠実に再現しつつ、その軽量モデルの旋回性を味わってもらおうというカンパニーの意図とも言えよう。

そんなスポーツソフテイルに、ツインカム103Bエンジンがさらなるパワーをもたらすわけだ。いざ走り出してみたところ……「できればダブルディスクブレーキにして欲しかった」と思わずにはいられない、持て余すパワーを制御するのに苦労するモデルに仕上げられていた。

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スロットルをひねれば、ツインカム103Bエンジンが唸りを上げ、軽いといっても321kgもあるスリムの重さを微塵も感じさせないほどの勢いで吹っ飛ばしてゆく。3速で時速80kmを軽く超えていくので、タウンユースでここまで入れることはまずない。高速道路でも、最大6速まで入れると法定速度を軽く超えてしまうほどだ。これでインジェクションチューニングなんかかけたら、一体どうなることやら。かといってノーマルのままももったいない……などと思わされるマシンだ。

パワーが有り余っているがゆえ、制御も容易ではない。スピードに乗った状態でギアを落とし、エンジンブレーキをかけて制動しようとすると、そのストッピングパワーが大きすぎたのか行き場を失い、ホイールスピンを起こしてしまうことも。乗り手の感覚で言うと、ケツが振れるのである。決して安定感を失うほどの振れではないが、これが雨天時などのウェットコンディションでやると、ドキッとするだけでは済まないのでは、などと思ってしまう。

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我々日本人より体が大きい欧米人なら、このサイズ感とパワーであっても、ある程度コントロールすることは難しくないだろう。しかし、バイクに乗り慣れていない日本人という目線から見たツインカム103Bのスリムは、じゃじゃ馬以外の何物でもない。

ウルトラをはじめとするツーリングファミリーの重量級モデルを苦もなく走らせるためのエンジンとして生み出されたツインカム103(スリムにはバランサー付きのツインカム103Bを搭載)だが、スリムに搭載されたことで、その性能がどれほど凶暴なものか証明されたという印象だ。マシンそのものがコントローラブルであるだけに、このハイパワーエンジンとどう付き合っていくのか。スリム購入を検討するオーナーにもっとも考えて欲しいのはこの一点だ。

FLS ソフテイル スリム の詳細写真

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排気量1,689cc / 空冷4ストロークV型2気筒OHV2バルブエンジン『ツインカム103B』エンジン。カラーはポリッシュ & ブラックのツートーン仕様。
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FLモデルの表情とも言えるビッグヘッドライトとナセルはお馴染みの仕様。
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ハーレーの代名詞とも言える油圧式フロントフォーク。
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リンクルブラック仕様の16インチスポークホイールに極太タイヤが備わる FL モデルらしいシルエット。ショートフェンダーはスリム専用。
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両腕を大きく広げて掴むようなスリム専用ハンドル「ハリウッドハンドルバー」。走りを意識させるレーシーなシルエットも魅力的だ。
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キャッツアイコンソールが備わる容量18.9Lのフューエルタンク。カラーバリエーションはこのブラックデニムのほか、ビビッドブラック、オリーブゴールド、レッドアイアンデニムの単色に加え、チャコールデニム / ブラックデニムというツートーンの計5色が揃えられている。
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コンソール下部にはレザーベルトが。何気ないディテールだが、バー&シールドが刻まれたレザーをさりげなく備えているところにハーレーらしい味わいが潜んでいる。
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縦ステッチが印象的なタック&ロールのソロシート。車体のシルエットを美しく象りつつ、ボバースタイルの雰囲気を高めるデザインとなっているところが心憎い。
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チョップドリアフェンダーに組み合わされるのが、ストップランプ一体型ウインカー。そして150mmというリアタイヤとともに、クラシカルでスポーティなリアエンドを形成する。
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フレーム前部に備わるこの機器は「ABS」(アンチロック・ブレーキング・システム)。
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こちらもスリム専用とされるスラッシュカット型のショットガンエキゾースト。あえてセンターマウントにしているところがボバースタイルを高めるポイントでもある。
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乗り手のシューズを痛めないシーソーペダルはソフテイル & ツーリングファミリーの大きな特徴。
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フレーム下部に専用サスペンションを備えるリジッド型シルエットを描く「ソフテイルフレーム」。リアタイヤの中心を軸に描かれるこのトライアングルがソフテイル最大の特徴だ。

こんな方にオススメ

スポーツバイクに飽きてしまった
そんなあなたでも操れるかどうか

初ハーレーはもちろんのこと、それなりにハーレーに乗り慣れている人にとっても、ちょっと持て余してしまうかもしれないツインカム103Bのスリム。どちらかと言えば、段階を追ってレベルアップしてきた他メーカーのスポーツバイクを乗り継ぐライダーに、一度乗ってみてほしいとも思う。とりわけ「もう自分を刺激してくれるバイクなんてないんじゃないか」と思っている人にこそふさわしい、とも。正直言って、冗談みたいに凶暴なスリムは、バイクという非日常の壁をもう一枚破ってくれるに違いない。

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