VIRGIN HARLEY |  XL1200CX ロードスター試乗インプレ

XL1200CX ロードスターの画像
HARLEY-DAVIDSON XL1200CX(2017)

XL1200CX ロードスター

  • 掲載日/ 2017年08月25日【試乗インプレ】
  • 取材・写真・文/田中 宏亮

XL1200CX ロードスターの試乗インプレッション

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本当の能力はこんなものじゃない
奥底に秘められた性能をいかに引き出すか

またがった瞬間に、ロードスターがその個性を見せつけてくる。シート高の低いアイアン883(735mm)やフォーティーエイト(710mm)だと背筋を伸ばしたままシートに座り込み、フットポジションもやや前めに出る感じだが、シート高785mmのロードスターだと足は真下に伸びつつ、背筋はやや前屈気味に。ネイキッドバイク、いやスポーツバイクとしての匂いを漂わせるポジションが印象的だ。

そのポジションに対してのハンドル & ステップ位置は、ニュートラルな国産バイクに馴染む人にとっては違和感とも言えるもの。バーハンドルとはいえ両サイドが垂れ下がったコンチバーはセパレートハンドルを意識した設計ながら、ステップ位置はミッドコントロールとなっている。スポーツバイクの観点から見れば、ステップ位置はレーシーなバックステップになろうもの。実際のライディングポジションは、あたかもバイク(というよりタンクとエンジン)にしがみついているようなものである。

独特と言えば独特。フットポジションをミッドコントロール仕様とした点について、カンパニーは「ロードスターは基本的に攻める乗り方を楽しむバイク。だから、地面との接地をいち早くライダーに知らせられるよう、あえてミッドコントロール仕様にした」と述べる。その点を汲み取ると、確かにハーレーの伝統にバックステップというカルチャーは存在しない。乗り手はその意図を汲み取ったうえでロードスターに乗るべき、とも言える。

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いざ走り出すと、排気量1,201ccのエボリューションエンジンが小気味良いフィーリングとともに駆け出していく。低速からの吹け上がりは申し分なし、むしろ1,200ccオーバーとは思えないほど軽やかでスムーズだ。信号に捕まらなければ、3速パーシャルで気持ち良くシティクルーズを楽しめる。

この「軽やか」という感触は、良くも悪くも受け取れる。というのも、インジェクションチューニングの是非によって発揮されるパフォーマンスへの捉え方が変わるからだ。

このロードスターより、「EURO4」なる全世界共通の排気ガス規制基準にハーレーが対応することになった。つまり、アメリカ本土で走っているハーレーのパワーを大幅にセーブしたセッティングで日本に輸入されていた(日本の排ガス規制値がアメリカよりも厳しい設定なため)ものが、本国仕様と同様でOKになったというわけだ。

しかしながら、以前ハーレーダビッドソンジャパンの技術担当者に話を聞いたところ、「確かにEURO4対応モデルとはなったが、それでも日本に入ってくるハーレーのインジェクション設定値は以前と同じもの」とのことだった。市販車として販売する以上、国が設定する基準値を超えないモデルでなくてはならず、いくらカンパニーより「大丈夫」と太鼓判を押されたとはいえ、アメリカ基準のセッティングそのままで出してしまうのは、日本総代理店としてはリスキーというわけだ。

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筆者の愛車は、インジェクションチューナー「サンダーマックス」を投入した2008年式スポーツスターXL1200Rである。マフラーやエアクリーナーも換えているので一概に比較するのは難しくあるが、愛車のエンジンフィーリングと比べると、やはりロードスターのパフォーマンスにはやや物足りなさを覚える。エンジンの基本セッティングが上を行くモデルであるがゆえに、なおさらその想いは強くなる。

「軽やか」という表現は捉え方によって「相当にパワーセーブがかけられている」ことの裏返しでもある。1,200cc本来のパワーが無駄なく発揮されていれば「軽やか」ではなく「強烈」「持て余す」といった言葉が出てくるからだ。それも、スペック上で見れば、歴代スポーツスターの中でもハイエンドなエンジンを搭載しているロードスターである、チューニングでその足かせを取り除いてやればさらにパワフルなライディングが楽しめることになるだろう。

ロードスターらしさを演出しているディテールとして、シートは見逃せない。どちらかと言えば滑り気味な表皮のこのシート、後部が大きく盛り上がっているので走行時に臀部をしっかりホールドしてくれる。そして滑りやすい表皮はコーナリング時に姿勢をずらしての体重移動に最適でもある。そう、ワインディングやサーキットで攻めた走りを楽しみたいライダー向けなのだ。

1,505mmというホイールベースはスポーツバイクという観点から見たらちょっと長く、初めて乗る人には若干乗りづらさがあるやもしれないが、ロードスター特有の操り方に慣れてくれば違った味わいを楽しめるようになるだろう。そんなスポーツライドをサポートしてくれるのが18インチ径のリアホイールで、クルーザー色が残る16インチ・スポーツスターにはないスマートなコーナリング能力を発揮してくれる。ノーマルのリアタイヤ幅は150mmなのだが、これを細身の130mm仕様にすれば、さらにスポーツライドが楽しいバイクとなるだろう。

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クセがあるのは、やはり姿勢だ。ミッドコントロールというステップ位置とシート構造にもよるのか、垂れ下がったハンドルバーにどうしても体重がかかりがちになる。そうすると必要以上にフロントに荷重がかかってしまい、せっかくの倒立フォークが能力を発揮できない……という現象も。リアブレーキ(フットブレーキ)で制動させつつ、腰とステップワークでバイクの進むべき方向を決め、ハンドリングで味付けをする……というロードスターならではのスポーツライドをノーマル以上に楽しむなら、シートポジションとステップ位置は改めて検討したいところ。ここに軽量化という要素が加われば、その面白さはさらに増していくはず。

操るにはコツがいる。ただ求められる技術は決して高いものではなく、教習所で習った基本的な乗り方を思い出して操れば、ロードスターはしっかり答えてくれる。そのうえで、自分に合ったスポーツバイクへとカスタムしていく……。実に21世紀のXLCRと呼ぶにふさわしい一台だと言えよう。

ロードスターの詳細写真は次のページにて
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