VIRGIN HARLEY | XL883N アイアン 試乗インプレ

2017年式 XL883Nの画像
HARLEY-DAVIDSON XL883N(2017)

XL883N アイアン

ザ・スタンダードとして幅広いファンを持つ
ブラックアウト・スポーツクルーザー

フォーティーエイトを筆頭に、ロードスターや1200カスタム、883Lスーパーローなどファクトリーカスタムモデルが当たり前となったラインナップで異彩を放つのがこの「ザ・スタンダード」アイアン883だ。フロント19/リア16インチのホイールにスポーツスタータンク、39mmナローフォーク、そして流麗なシルエットから成るスポーツスター伝統のフォルムは、ハーレーに対する見識がない者の目すらも惹きつける。現行モデルであるアイアン883の魅力を改めて掘り起こしてみよう。

XL883N アイアンの特徴

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スポーツスターの源流としての
重責を担うアイアンの本質を暴く

ここ10年ほどのハーレーのラインナップに詳しい人ならばご存知であろう、このアイアン883は元々ファクトリーカスタムモデルとしてデビューした過去を持つ。かつてスタンダードモデルと呼ばれていたのはXL883というスポーツスター(2010年にカタログ落ち)で、そのXL883と入れ替わるように現れたのがアイアン883だった。

2017年式 XL883Nの画像

フロント19/リア16インチホイールにスポーツスタータンク、39mmナローフォークと、アイアン883と同じディテールを備えながら、単色カラーでスポーツバイクらしく前後サスペンションがしっかりとした長さを保っていたXL883。つまり、アイアン883は「ブラックアウト」「ロースタイル」を取り入れたXL883のファクトリーカスタムという位置付けだったのだ。

そのXL883に続いてXL883L(現在のスーパーローとは異なるモデル)、XL1200R、XL1200L、XL1200Nナイトスターなどが姿を消し、そして2014年を最後にXL883Rがカタログ落ち。気がつけば、スポーツスタータンクを有するモデルはアイアン883だけとなっていた。昔馴染みのハーレー乗りにしてみれば、アイアン883をスタンダードと呼ぶことに違和感を覚えるところだが、往年のスポーツスタースタイルを残すのはこのモデルをおいて他にない。

「ダークカスタム」をテーマに掲げるハーレーダビッドソンにおいて、アイアン883はその申し子とも言える存在だろう。メーカーが手をかけたファクトリーカスタムモデルではなく、無垢なモデルをどう自分色に染めていくかと夢想することが、ハーレーに乗るうえでの大きな愉しみである「カスタム」の本質が詰まっているからだ。最初からエンジンやディテールがブラックアウトしているアイアン883ならば、黒を基調に一層ダーティなスタイルへと昇華させられる最適なベースモデルでもある。

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そのアイアン883は、2016年式より大幅にバージョンアップした。フォーティーエイトもセットで手がけられたのだが、このアイアン883はハーレー本社に所属する日本人デザイナー ダイス・ナガオ氏が責任者となってプロデュースしたもの。「もっとファッショナブルに、もっとスポーツライドを楽しめるように」と、前後サスペンションをグレードアップ(フロントはシングルカートリッジ方式に、リアはプレミアムライドサスペンションに変更)し、さらにホイールもカッティングがキラリと光る9スポークに。さらにシートもタックロール型とし、タンクにはアメリカの象徴たるハクトウワシをあしらった。ヨーロッパ勢から「(XL883Rのように)ダブルディスクブレーキにしてほしい」との要望があったが、「ホイールの美しさを見せるため、シングルディスクのままとした」と打ち明けてくれた。

「このモデルは、スポーツスター本来のシルエットを継承する貴重なもの。先代デザイナーらに敬意を表するという意味でも、基本的なスタイルはそのままに、より楽しくハーレーを乗り回せるようにしたかった」(ダイス・ナガオ)

2017年モデルからはスプロケットもU.S.仕様のライトなタイプとなり、さらに走りへの期待値が高まったアイアン883。それでは改めて、試乗インプレッションへと挑んでみよう。

XL883N アイアンの試乗インプレッション

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バイクとしての本質はスポーツクルーザー
そこを軸とすれば見えざる魅力が浮き出てくる

タックロールシートの柔らかさに助けられてか、跨った際の足つきは恐ろしくいい。身長174cmの筆者だと、膝が大きく曲がってのベタ足である。ハンドルポジションも肘にゆとりがあり、反対側に切っても片腕が伸びきらない。もちろん身長差もあるかと思うので、気になる方は最寄りのディーラーで跨る際、ハンドルを思い切り反対側に切ってみたうえで、腕の突っ張り具合をチェックしてみてほしい。

一瞬鈍くはある出だしだが、エンジンの鼓動が逆に心地よさを味わわせてくれ、そのゆったりとした走り出しがむしろ気持ちいい。883ccという排気量もあってか、性能をめいっぱい高めている排気量1200ccエンジンのロードスターと比べると爆発力に欠けるが、そもそもそういった”ぶっ飛ばし”系バイクではないことを思えば、必要にして十分なパワーと言える。むしろ、排気量400cc以下の中型バイクから乗り換えたとなると、パワフルにさえ感じるだろう。

XL883N アイアンの画像

走っていて気になったのは2つ、エンジンのトルクが不安定なところと、シートの滑り具合だ。

まずエンジンだが、アイドリング状態から半クラッチでスタートする際、一瞬エンジンが途切れるような”間”が生まれるのだ。これは、コンピュータ制御によるフューエルインジェクションモデルゆえ、セッティングに個体差があるものと思われる。購入者はECMを変えずにカンタンなチューニングを施してやるのが良いだろう。その方がエンジンが長持ちし、結果的に愛車との付き合いが長く楽しいものとなるからだ。燃費だって良くなるので、このメニューは忘れず施したい。もちろん、マフラーやエアクリーナーを交換するならその組み合わせも考慮しておこう。

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シートについては、表皮の性質によるところが大きい。実際に街中を走っていると、加速時やブレーキング時で体が前後に滑るのだ。ライディングポジションが安定しないと、航続距離が長くなるほどに体への負担が増え、結果的に疲労が蓄積されてしまう。シートそのものを換えてもよし、また表皮だけ滑り止めタイプに交換するというのも方法のひとつだ。

サスペンションの仕事ぶりは及第点といったところ。もちろん、必要以上に負荷のかかるスポーツライドをしないことが前提ではある。前後サスペンションを短くしたロースタイルモデルなので、ハードなワインディングでコーナーを攻めるような走りをしたくとも、長さが足りないという物理的な点からサスペンションが対応しきれないからだ。あくまでロー&ロングというスタイルありきのモデルであることを忘れてはならない。

XL883N アイアンの画像

シティライドという点では過不足ない性能ではあるが、右左折の際に踏ん張ってしっかりバンクさせると、あっさりとバンクセンサーを擦ってしまう。これについては「アイアンはそういう乗り物」と認識し、仮にバンクセンサーを擦ってもいちいち慌ててはいけない。擦らないようなライディングテクニックを身につけることがベストではあるが、それよりも「むしろ擦った俺ってうまく走れてる?」ぐらいで流せる方がいいだろう。

“スポーツライドできるクルーザー”と見れば、アイアン883の立ち位置がしっくり来る。小柄な私たち日本人にとって883ccという排気量は大きな部類で、これだけあれば北海道ツーリングだって十分可能なのだ。積載能力が皆無なのはアメリカ人と日本人の意識の差というほかなく(アメリカ人はこれでツーリングをする気はあまりないらしい)、そこは純正パーツや社外パーツで対応すればいいこと。

積載能力を高め、チューニングで燃費も向上させてやれば、ハイウェイ中心のツーリングでも十分楽しさを見出せる。スポーツスターという呼び名に惑わされるなかれ、アイアン883のバイクとしての本質は「スポーツクルーザー」に他ならない。

XL883N アイアンの詳細写真

XL883N アイアンの画像
フルブラック仕様となった排気量883ccの空冷4ストロークV型2気筒OHV2バルブエンジン『エボリューション』。ラウンド型エアクリーナーはアイアン883専用とされる。
XL883N アイアンの画像
ヘッドライト上のバイザーにトリプルツリーもブラックアウト。さらにフォークブーツが加わり、フロントマスクまわりはかなりダークな印象に。
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ハンドルバーからレバーと、こちらもフルブラック仕様のコックピット。スピードメーター単体というのもスポーツスター伝統のもの。ハンドルはニュートラルで遠すぎないポジションに。
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2016年モデルから採用されたダイス・ナガオ氏デザインによるイーグルのグラフィック。容量12.5リットルのフューエルタンクには、キーキャップが備わる。タンクカラーはこのオリーブゴールドのほか、ブラックデニム、チャコールデニム、レッドアイアンデニム、ハードキャンディー ホットロッドレッドフレークの計5色が用意されている。
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こちらも2016年モデルから採用となったタックロールシート。長距離ライドでの負担を軽減すべく、柔らかい素材が中に用いられている。
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フォーティーエイトにも採用されているチョップドリアフェンダーとテールランプ一体型ウインカーという組み合わせはデフォルト。
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スラッシュカットが入った9スポークホイールも2016年モデルより採用。「汚れがそのまま味わいになるデニムのように楽しめつつ、ギラッと光るスラッシュカットを見どころとした」とはダイス・ナガオ氏の弁。
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2016年モデルよりフルブラック仕様となったエキゾースト&サイレンサー。パンチアウトされたカバーも見どころだ。
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2017年モデルより全スポーツスターモデルのスプロケットがU.S.仕様に。
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スポーツスターの走行性能向上のために開発された「プレミアムライド・エマルジョンサスペンション」も2016年モデルから標準装備に。

こんな方にオススメ

チューニングすれば航続距離アップ!
スタイルの美しさと実用性の両立を目指す人向けモデル

「ロングツーリングを楽しむなら、大きなフューエルタンクに越したことはない」とはよく言われるが、12.5リットルというのは見た目以上に十分な容量で、インジェクションチューニングしてやれば燃費は驚くほどに向上し、航続距離もグンと伸びる北海道ツーリングだって過不足なく楽しめるのだ。せっかく旅を満喫するなら、写真に収める愛機のスタイルだって美しくありたい。美しさと実用性という両方を手にしたいわがままなライダーに、このアイアン883はうってつけと言える。オーソドックスなスタイルにこそ、考え抜かれた性能が宿っているものなのだ。

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