VIRGIN HARLEY |  倉智 成典(マルチ・クリエイター)インタビュー

倉智 成典(マルチ・クリエイター)

  • 掲載日/ 2005年01月09日【インタビュー】

ハーレーインタビューの画像

自分のリズムで動きたい僕
僕のリズムで走らせてくれるスポーツスター

今回ご紹介するのは千葉県市川市在住のプロカメラマン、倉智 成典さんだ。スポーツスター乗りの方にはCozyさんというお名前の方がわかりやすいかもしれない。倉智さんは「Cozy Garage」というホームページを運営しており、そこにはスポーツスターの詳細なカスタム・整備記録が掲載されている。私を含め、スポーツスターに乗り始めた頃に「Cozy Garage」にお世話になった人は多いはずだ。そんな倉智さんは一体どんな方なのか? 非常に興味があったので、お会いしてきた。

Interview

ああ、ハーレーにもイギリスっぽい
カッコいいバイクがあるんだなぁ

ー倉智さんとスポーツスターとの出会いの馴れ初めを教えていただけますか?

倉智●スポーツスターを買うまでは、年に何度か昔からの仲間とツーリングに行くときぐらいしかオートバイには乗っていませんでした。ある時、そのツーリングに仲間が大型二輪に乗り換えてやってきたんですが、運転がうまくなっていたんですね。その理由を聞いてみたら「大型二輪を教習所で取って、オートバイの乗り方を勉強し直したから」って言うんです。僕も大型二輪には興味がありましたし、「もう一度オートバイの乗り方を学んで見るのもいいかな」と思って50歳を過ぎてから大型免許を取ったんですよ。それで大型免許を取って昔から気になっていたスポーツスターを2000年の春に買ったんです。

ーなぜスポーツスターが気になっていのでしょうか?

倉智●20年くらい前、街でスポーツスターを見かけたことがあって「ああ、ハーレーにも、こんなにイギリスっぽいカッコいいバイクがあるんだなぁ」と思って。当時の小さなタンクとスリムな車体が印象に残っていて「いつかは欲しいなぁ」と思っていたんですよ。

ーそれで、大型免許を取ったタイミングで買ってしまわれたんですね。

倉智●さすがに、ちょっとためらいましたよ。いざ欲しいな、と思っても「ハーレー=壊れやすい」というイメージを持っていたので、買っていいものか心配で。だから買う前にはインターネットで相当調べましたよ。いろいろなホームページを見てスポーツスター乗りの方の情報を集めて「僕が最初に抱いていたイメージと違って、意外に故障しないみたいだなぁ」と思って。

ー倉智さんのホームページ「Cozy Garage」はスポーツスターを買ってすぐ立ち上げられたのですか?

倉智●買ってちょっとしてから立ち上げました。当時、僕の周りには、スポーツスターや他のハーレーに乗っている人が一人もいなくて。自分の好きなバイクを誰にも自慢できなくて孤独だったんですよ(笑)。だから、ホームページを立ち上げようと思ったんです。自分のスポーツスターを自慢したい、それがページを立ち上げた動機だったんです(笑)。でも、せっかくだからスポーツスターをこれから買おうとする人、これからカスタムしようとしている人の参考になるようなページにしたいなぁ、と思って。自分がカスタムしたパーツのリストと価格、インプレッション、整備記録などを日記形式で付けはじめました。

ー私もスポーツスターを買う前後に、倉智さんのページは読み込みましたよ。私自身、マフラーやサスペンションを換えた時にも倉智さんのインプレッションを参考にしましたから。

倉智●「どんなパーツがあるのか、パーツを換えたらどうなったのか」は、やっぱりみんな知りたいみたいですね。欲しいパーツを売っているお店はネット検索すればすぐに見つかりますが、パーツを付けている人の生の意見はネットで検索してもなかなか見つからないですから。だから、僕のカスタム記録のページを見て掲示板に質問を書き込まれる人は結構多いですよ。

ーでも、倉智さんはもう相当カスタムをしていますから、これ以上はなかなか進まないでしょうね。

倉智●そうなんですよ(笑)。僕は結構いろいろと試すのは好きなんですが、さすがにもうやることがなくなってしまいました。あと興味があるのはフロントフォークスプリングくらいですね。まぁ、僕のスポーツスターの走行距離はもう5万キロを越えてしまいましたので、今後はカスタムの記録より整備や修理の記録の方が多くなってくるかもしれませんね(笑)。

ートラブルの記録も結構参考になっていますよ(笑)。しかし、あれだけの情報量があると多くの人がやってきて、面白い出会いもあるんじゃないでしょうか?

倉智●メールをいただいたり、掲示板に書き込んでくれたりして、たくさんのハーレー乗りの方との出会いがありますよ。単にスポーツスターに乗っているだけでも、たくさんの出会いがあると思いますが、自分のホームページを持っていると、さらに出会いの機会が増えますね。

昔のツーリングでは、必ずピースサインを送ってた。
ハーレーにはまだ、そんな雰囲気が残っている気がする

ー倉智さんは国井律子さんの本「放浪レディ」の写真を撮られていますが、ひょっとして国井さんともスポーツスターを通じて知り合われたんでしょうか?

倉智●いえ、最初は仕事を通じてお会いさせていただいたんです。もともとクラブハーレーで国井さんの連載は見ていて、「同じ色のスポーツスターに乗っているんだなぁ」と思って興味を持っていたんです。当時勤めていた会社で僕は広告デザイナーの仕事に就いていて、国井さんにピッタリな企画が挙がったときに彼女の事務所に電話をかけたことがありました。その電話がきっかけで国井さんとお会いすることになって。それが5年くらい前の話ですね。

ーお会いされていかがでしたか?

倉智●スゴク綺麗な方でしたね。しかもそれだけではなくて、当時から自分でホームページを運営していたり、自分で文章を書いていたり、と普通の女のコとは少し違う変わった部分があったんです。だから非常に興味深くて。僕からお願いをして、国井さんの写真を撮らせていただくことになったんです。その時に、撮影した写真がきっかけで、出版社の求龍堂さんから声をかけていただいて。「放浪レディ」の出版となったワケなんです。

ー国井さんはどんな方なのでしょう?

倉智●普段は男の子みたいな性格ですよ。話をしていても、かわいい顔をした男のバイク仲間と話しているような感覚になってしまいます。でも、写真を撮っているときには国井さんは「女性」になるんです。そのコントラストが非常に楽しいんです。

ー倉智さんがプロとして写真を撮り始めたのはいつ頃からでしょうか?

倉智●もともと僕はデザイナーだったんです。写真を撮らなければいけない企画のときには、プロのカメラマンにお願いしていました。でも、デジカメで撮影する企画を手がけているときに、カメラマンがいなかったんです。懇意にしているカメラマンに相談したら「倉智さんが撮ったらいいじゃないですか」って言われて(笑)。そのカメラマンに助けてもらいながら、自分で撮ることになったのがきっかけですね。

ーその人に撮影していただいたら良かったんじゃないですか(笑)。

倉智●「僕がどんな写真を撮るのか」が楽しみだったみたいで(笑)。

ー初めての撮影はどんなものだったのでしょう?

倉智●今思うと、ピントがなかなか合っていなかったですね。どうでもいいところにシャッターを合わせてしまっていて。自分が撮った写真なのに「こんな写真いらないよ」って思いましたから(笑)。その仕事は定期的にいただいていたので、何年か続けて僕が撮っていたら、「倉智さん、写真うまくなりましたね。写真を選ぶときにたくさん選べるようになってきましたよ。」って部下のデザイナーに褒められるようになってきたんです(笑)。

ーそのとき、カメラをやっていなければ、国井さんの本の撮影の話もなかったんですね。

倉智●そうですね。そう思うとカメラをやっていて良かったですね(笑)。でも、国井さんとのいい出会いは僕がスポーツスターに乗っていたことも大きかったですよ。国井さんと僕は年齢が25歳以上も違うのに、同じバイクに乗っていたのですぐに友達のようになれましたから。ハーレーに乗っていて、ハーレーが好きだ、という前提があると、驚くほどいろんな話ができるんですよね。

ー確かに、年齢や性別を越えて、普段知り合わない人と話せますからね。

倉智●昔のオートバイ乗りは、ツーリングで他のオートバイに出会うと必ずピースサインを送って、送り返していたんです。でも、最近ではそういうことも少なくなってきましたよね。でも、ハーレーにはまだそんな雰囲気が残っている気がするんです。「ハーレーっていう、すごく狭い世界に自分はいるんだ」そういう自覚が、みんなの連帯意識を産むんでしょうね。だから初対面のいろんな人とでも友達になりやすいんでしょう。ハーレーには、そういうオートバイの良さが残っている、そういうところが好きですね。

ー出会いが広がる魅力は確かにありますね。では、純粋にオートバイとしての魅力についてお聞きしたいのですが。

倉智●峠も楽しく走ることができ、高速でもそこそこ走ってくれる、そんなオートバイ像が僕の中にはあるんです。スポーツスターは、その理想像にぴたりとはまるオートバイだったんです。スポーツスターのあの英車っぽい雰囲気も好きでしたですし。

ー理想を越える一台だったと。

倉智●そうですね。スポーツスターは今の僕の人生に一番合っているオートバイなんですよ。スポーツスターに出会って、「自分のリズムで走れる楽しさ」に気づきました。オートバイに振り回されるのではなく、自分の思い通りに操作できる楽しさがあるんですよ。年齢を重ねてくると、どうしても相手のリズムで動くのはしんどくなってくるものなんです。調度スポーツスターに乗りはじめた時期に「もっと自分のことを考えて生きてみようかな」と思っていた頃で。最終的には会社を辞めて独立することになったんですが、そういう時期に出会ったのが僕のスポーツスターなんですよ。自分のリズムで動きたい僕と、僕のリズムで走らせてくれるスポーツスター。なんとなく、コイツは自分の分身のような気がします。だから、このスポーツスターは大切に乗ってあげたいですね。

プロフィール
倉智 成典
55歳。「Headroom」主宰。2000年式 XL1200Sを所有。あるときはプロカメラマン、またあるときはデザイナーと多彩な活躍を見せる才人。愛車の走行距離も5万キロを越えたと聞くが、ひとたび愛車に跨ると、誰よりも速く駆け抜ける。走りながら、作りながら生きる。そんな人だ。

Interviewer Column

倉智さんからお聞きした「スポーツスターはイギリスっぽいカッコいいバイクです」という言葉。実は同じ言葉を某ショップのオーナーの方からもお聞きしたことがある。スポーツスターはその成り立ちからして、60年代の英車のアメリカ進出に対抗して造られたものだと聞く。ビックツインのハーレーとは造られたコンセプトがそもそも違う、それがスポーツスターなのだということを、今回のインタビュー中にふと思い出した。スポーツスターに魅了されてしまう人が多い、その理由の1つがわかった気がする。(ターミー)

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