VIRGIN HARLEY | 小林 正和(ハーレーを選んだリターンライダー) インタビュー

小林 正和(ハーレーを選んだリターンライダー)

  • 掲載日/2006年11月23日【インタビュー】

ハーレーインタビューの画像

世代を越えて人と繋がる
それが趣味の素晴らしさかな

今回ご紹介するのは、東京都在住の小林 正和さんだ。小林さんは30年というブランクを経てオートバイの世界にカムバックし、現在はハーレーに乗っている方。それ自体は最近では珍しいことではないが、小林さんが初めてのハーレーに選んだのは何とアイアンスポーツ(ショベルヘッド時代のスポーツスター)だという。「なぜいきなり旧車に?」はじめはそこに興味を持ち、インタビューにお邪魔させていただいた。しかし、話をお聞きしていくとサーフィン、釣りなどその多趣味ぶりに驚かされた。趣味を持たない大人がメディアに取りざたされる中で、仕事をきっちりこなしつつ、趣味も存分に満喫するその姿勢には感銘を受け、羨ましくもなった。「遊びは子供だけのものじゃない」。そんなことを感じさせる小林さんの魅力を、今回はお伝えしたいと思う。

Interview

乗ってみたらもう他のじゃダメ
アイアンスポーツの虜でしたね

ーはじめて、バイクに乗ったのはいつでしょう?

小林●16歳になってすぐでしたね。初めてのバイクはホンダの「ダックス」です。ちょうどその頃、映画の「イージー・ライダー」が流行っていてね。私の周囲はみんな、バイクのことばっかり考えていましたよ。「バイクに乗りたい!」って。だから、バイクの免許を取って、乗ること。これは特別なことじゃなく、私たちの中ではごく自然なことだったんです。

ー「イージー・ライダー」の影響で、当時は国産バイクをチョッパーにするのが流行ったと聞いています。

小林●何でもかんでもチョッパーにしていました。オフロードバイクのチョッパーもいたくらいですよ。僕のダックスも、無理やりチョッパーにカスタムして乗っていましたね。

ー当時のチョッパーというと、ネック角を変えずにフロントを長くしたり、無理矢理シーシーバーを付けたりするような、強烈で個性的なやつですよね。

小林●そうです。知識もないし、パーツだって今みたいに豊富にありませんでしたから、見よう見まねでカスタムしていました。フロントフォークなんて、水道管をベースに作っていましたよ(笑)。ワンオフですよ、水道管のワンオフ。今考えると、かなり危ないことをしていたと思います。

ーそれは危ないですね。ダックスはしばらく乗って、乗り換えられたと聞いていますが。

小林●大型二輪免許を取ってから、ヤマハの「XS650」を手に入れました。当時の仲間は、みんなホンダの「CB750」ばかりに乗っていたんですけどね。自分は天邪鬼なところがあったので、人とは違うものにしたくてXSを選んだんです。高性能なCBに負けないよう、必死になって走りましたよ。「性能で足りない部分は、根性でカバーする!」なんて思っていました(笑)。

ーXSで飛ばし屋ですか。XSならダックス以上にチョッパー向きだと思いますが。

小林●XSに乗り始めた頃は、チョッパーではなく「プレスライダー」に憧れていたんです。新聞社の原稿をバイクでかっ飛ばして運ぶプレスライダーにね。今もまだあるのかな。風防を付けてハンドルを少し絞り、フロントに社旗をはためかせて飛ばすあの姿が憧れで。地元にもプレスライダーがいたんですが、これがまた速かったんですよ。チョッパーもかっこよかったけど、その頃の僕はプレス仕様のほうがよかった。でもカッコだけじゃなく、飛ばすところまで真似して、何度も事故をしてしまいました。当時は飛ばすことに怖さを感じず、学ばないヤツでしたね。事故っても、懲りずにまた飛ばして事故をする。そんなバイクライフを送っていました。

ー事故続きのそんな状態では、XSには長く乗れなかったのでは?

小林●廃車になる前に親が「もういいかげんにしろ」って言ってくれて。今思うと、その言葉のお陰で五体満足でバイクを降りることができました。そのまま乗っていたらどうなったことか…。まあ、すんなりバイクを降りてしまったのは、他にも理由がありました。18歳で車の免許取ってから、車の方に興味が向いちゃったんです。ちょうど同じくらいの時期にサーフィンも始めて、これも面白くてどんどんのめり込んでしまいました。板を何枚も作って、時間があれば車に板を積んで海に向かう日々です。サーフィンって、自分が思い描いたように乗れると本当にスカッとするんですよ。車と波乗りに夢中で、あれほど好きだったバイクのことは忘れてしまいました。

ー今でもサーフィンはやっているんですよね。

小林●やりますよ。もう歳ですから、思い通りに波に乗れることは少なくなってきて、昔のようにスカッとすることは減りましたけどね。でも、今は違った楽しみもあります。もう何枚もの板がなくてもいい、1枚の板でどこの海に行っても充分楽しめる、とかね。昔は難しい波に挑戦してそれを征服する楽しみ方でしたけれど、最近はやってきた波に自然に乗って楽しむ、そんな感じでしょうか。波乗りってこんな楽しみもあるのかな、と気負いなく波乗りを楽しんでいます。

ーサーフィン熱も一段落して、バイクに戻ってきた、と。

小林●それもありますね。ただ妻の弟が、バイクに乗っていたのが大きな理由かな。中型のオフロードバイクと、大型の国産ツアラーを所有していて。気が向いたときに、たまに借りて乗っていたんです。大型ツアラーの方は速すぎて怖かったですけど、オフ車で走るのは気持ちよくて。まぁそこからは、じわじわと…ね。自分のバイクが欲しくなってきて、知り合いからボロボロの国産アメリカンを譲ってもらいました。でも、乗り始めて1週間くらいは楽しめたんですが、中型でしたから私には非力過ぎました。アクセルを開けても満足できる加速感があるわけでもなく、1年ほど乗っていましたが、だんだん物足りなくなってきて。結局、乗り換えることにしました。

ーアイアンを購入したんですよね。いきなりハーレーを選んだのには何か理由が?

小林●昔からお世話になっていた先輩が、ハーレーショップを経営しているんですよ。仕事柄、ショップの建て替えなどで仕事もさせてもらっていたから、ハーレーはいつも身近な存在でした。会うたびに先輩から「そろそろハーレーに乗りなよ」と、プレッシャーをかけられてもいましたしね(笑)。昔見た「イージー・ライダー」への憧れも残っていたんでしょう。「いつかはハーレーに乗りたい」。その気持ちは、消しがたくあったんだと思います。

ーハーレーと言っても、いろいろなモデルがあります。なぜいきなりアイアンだったんでしょう。

小林●先輩のお店は『イーストアーバン』というところなんですが、ここがスポーツスター、なかでもアイアンスポーツがメインで扱っていまして。当然ながら、アイアンを勧められるわけです。でも、実は「ハーレーに乗るならローライダーがいいな」と思っていたから、かなり迷いましたよ。イーストアーバンさんから勧められていた、アイアンのスタイルも気に入っていたから余計です。

ーで、結局はアイアンを選んだ。

小林●一度乗ってみたら「ああ、アイアンにしよう」と。買ってからは「これにして本当によかった」って、何度も思いましたよ。小さな車体なのに、パンチの効いた加速感がある。今まで乗ったどのバイクにもなかった力強いトルクがある。その魅力に完全にやられてしまいました。

ただ楽しいだけじゃない
そこから広がる出会いもある

ー遅咲きでハーレーに乗られたわけですが、それまでにハーレーを買おうと思ったことはなかったのでしょうか。

小林●結婚してすぐの頃、もう20年も前くらいにハーレーに乗るチャンスはありました。仕事関係の知り合いから「買わないか」という話があったんです。そのハーレーはエンジンがいじってあって、ウィリーするくらいに凄いという話でした(笑)。ただ、ノーマルではないことに不安もありましたし、結婚してすぐでタイミングがよくなかったので結局は買いませんでした。その後も何回か買えるチャンスはありましたが、なかなか踏み切れませんでしたね。

ーいざ買うとなれば、ご家族の反対はありませんでしたか。

小林●妻の親戚にフルドレスのウルトラに乗っている人がいて、彼は飛ばさずにドコドコと走るハーレー乗りでした。だから「ハーレーはああやってゆっくり走るものだから、危なくない」と納得させたんですよ。それでも乗って帰ってきたのがアイアンでしたから、見た目は全然違いますよね。「あれはお金かけて作ったハーレーで。俺のはそうじゃない」とか、でまかせを並べてうまく妻を誤魔化しました(笑)。

ー奥さんはそれで納得したのですか。後々バレたのでは(笑)?

小林●初めのうちは大丈夫だったんですけどね。仲間がウチに集まったときに「どこでアクセル開けて何キロ出した」だのという話になってしまい、全部バレました(笑)。今はもう勘弁してもらっていますけれど、最初から正直に言っとけばよかったですよ。

ートラブルなどを考えると、旧いモデルに乗ることに不安はありませんでしたか。

小林●信頼がおけるショップで購入しましたから、不安はありませんでした。「ハーレーはすぐに壊れる」という噂は聞いていましたけど、メンテナンスをしっかりしていればそれほど壊れません。ロングツーリングだろうがしっかりと走ってくれますよ。自分でメンテナンスなんてできませんが、マメに点検してもらっているので、安心して乗っていられます。旧いバイクでも乗りっ放しにしなければ、ちゃんと走ってくれますよ。

ーアイアンという珍しいハーレーに乗っていて、何か面白いことはありましたか?

小林●バイクとしての魅力はもちろんのこと、気の合う仲間との出会いがたくさんありました。昔はソロで飛ばして走っていましたが、今はショップを通じて出会った仲間と並んで走ることが多いです。仲間と走ると言っても、昔から抜かれるのは嫌いなので、つい飛ばしてしまいますけれど(笑)。同じアイアンに乗り、というだけで広がる出会いも多いですね。先日も、山中湖でアイアン乗りが集まるキャンプミーティングがあり、初めて参加したんです。年齢も仕事もバラバラのアイアン乗りに出会い、キャンプサイトでバイク話をしながら夜更けまで飲み明かしました。そんな出会いまでも楽しめるのがハーレーの、アイアンの魅力なんでしょうね。もちろん、楽しいのは出会いだけじゃないですよ。走ることだって最高に楽しい。何も考えずにただ走るだけでも楽しいですけれど、気が向いたときは昔に波乗りに行ったところまで仲間と走りに行くことがあります。当時、最高の波乗りのポイントだったところが今はヨットハーバーになっていたり、砂浜が無くなっていたり。バイクに乗っていなかったら、そんなところを走ることもなかったでしょう。懐かしい場所がなくなった淋しさとバイクに乗る楽しみを同時に感じ、なんとも不思議な気持ちになりました。深い理由はないけれど何となくあそこへ行ってみたい、そういう気持ちになれるのはバイクならではの面白さのような気がします。

ー何となくわかります。バイクって不思議な乗り物ですよね。

小林●バイクに限らず純粋な楽しみの趣味を持つと、年齢を越えたつながりが持てて面白いですよね。サーフィンでも最近は友達の息子と海に入ることもあります。歳の離れた若者と遊ぶなんて、ちょっと幸せなことのような気がします。サーフィンもバイクも年齢とか関係なく遊べて、それも面白いです。今、娘と息子がいるんですが、娘の友達が「後ろに乗せてください」と言ってきて近所を少しだけ走ったり、息子の友達が「お前のオヤジハーレーに乗っているんだろう」と見に来てくれたりします。娘はまったくバイクに興味がなさそうですが、息子は最近ハーレーを狙っている節があるので「これはお前のではなく親父のものである」と言い聞かせています。ちょっと嬉しいですけれど(笑)。

ー他にもまだ趣味があるとお聞きしましたが。

小林●昔から釣りが相当好きで、今もたまに楽しんでいます。昔はサーフィンの板と同じように竿もリールも何十種類も揃えていました。今は釣り物によって1本ずつの竿しか持っていませんが。

ーサーフィンも板は1枚で、と先ほど言っていましたよね。釣りでもたくさんの竿を持たなくなったのには理由があるのでしょうか。

小林●なぜだかはうまく説明できませんが、1つの趣味を長く続けていると道具に頼らなくなってくるんです。サーフィンも釣りも特別上手いわけじゃないんですが、いろんな道具を揃えなくても1つだけあれば充分楽しめちゃうんですね。バイクだってそう。「アイアンだけじゃ物足りないでしょう?」とたまに聞かれますが、どんな道を走るにしろ、僕はアイアン一台で充分楽しめます。街中も高速も山道も、どんな道もアイアンで楽しめるので他のバイクは欲しくなりません。趣味って突き詰めていくと、自分に合ったモノ1つあれば余計なものは要らなくなるのかもしれませんね。

ーサーフィン、バイク、釣り…それに趣味で繋がる仲間。そうやって充実した日々を過ごしているのは羨ましいですね。同年代の方と比べたら幸せな環境だと思いますよ。

小林●充実した日々に欠かせないのはもう1つあります。家族です。これが一番大事。何をするにしても家族が許してくれたからできたんです。ワガママも許してくれてね。これからも家族を大切にして、その上で僕のワガママを楽しませてもらいますよ(笑)。

プロフィール
小林 正和
51歳。東京都在住、工務店経営。78年式XLHを所有する。16歳でバイクに乗り始め、18歳でバイクから離れる。その後は車、サーフィン、釣りと他の趣味に夢中になるも、縁あってバイクの世界にリターン。

Interviewer Column

今回は随分と長い時間を割いていただき、話を聞かせていただいた。バイクだけではなく、サーフィン、釣りなど多彩なジャンルに夢中になり、それぞれの趣味を長く楽しんできている。ひとつの趣味に偏るわけではなく、たくさんの趣味を浅く楽しむわけでもない。バランス良くそれぞれの趣味をじっくり楽しむ小林さんの姿勢に、大人の人生の楽しみ方を感じた。趣味も仲間も家族も、そのすべてを愛する生き方を見ると、いずれ私もあんな大人になりたいな、と憧れを感じさせてくれた。(大森 茂幸)

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