VIRGIN HARLEY |  Ray(2008 FLHR)インタビュー

Ray(2008 FLHR)

  • 掲載日/ 2015年12月16日【インタビュー】
  • 写真/磯部孝夫 文/青木タカオ
    本記事は VIRGIN HARLEY vol.35にて掲載されたものです
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インタビュー:Ray(2008 FLHR)

取り回しに不安はありましたが、
どうせ買うならいちばん欲しいもの

押し引きしたときには男性でもずっしりとした重みを感じる、350kgに迫る車体。そんな重量級モデル、ロードキングを悠然と走らせるのが細身の女性だから、見る者はみな驚く。

フィッシュテールからは歯切れの良いVツインサウンドが聞こえる。ボア・ストローク95・3×101・16mmの空冷45度V型2気筒エンジンは、まだキャブレター仕様だったツインカム88。リアシリンダーから伸びるエキゾーストパイプは、ストック状態なら車体右側ミッションケースの後ろでフロントバンクからの排気管に連結されるはずだが、バンス&ハインズの独立管によって互いの排気には一切干渉していない。

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その排気音は決して爆音ではなく、住宅街を走り抜けても耳に障ることのない程良い音、そう言っていい。

なんたってロードキングだ。言葉を交わすまでは、ソロシートに跨るのはさぞかしパワフルな女性なんだろうと想像していたが、その読みは大きく外れた。

爽やかな秋の風が、優しく吹く日に相応しい薄手のライダースジャケットにデニムのジーンズ、そして膝を覆い隠すロングブーツ。164センチという身長以上にスラッと背が高く見えるのは、ブーツのヒールがきりっとした雰囲気をつくっているからなのか。ただ言えることは丁寧な物腰で、こういう人を気品に満ちた人と言うのだろう。

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「オートバイには10年ほど前から乗っています。ロードキングを買ったのは5年くらい前です。その前にはスポーツスター1200Sに乗っていました」

質問を投げかけると、透き通った声で要点をまとめた答えが帰ってくる。こちらの顔色を絶えず気にかけてくれ、言葉を発した後は、自分の答えが的を射たものだったかどうか、場の空気を読み取ろうとしてくれているのがわかる。

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彼女は東京・亀有で「サニーサイド」というネイルサロンを経営し、普段はお客さんと1対1のお付き合いをしている。ゆったりと寛げるグリーンとアートの癒しのプライベート空間で、丁寧な施術とカウンセリングによってクライアントと向き合っている。言わば接客のプロ、合点がいくが、この人当たりの柔らかさは天性のものだろう。

芸術系の学校を出て、何がしたいか自問したとき、アート、接客というキーワードが頭に浮かび、それならばとネイリストという道が見えた。いまは仕事もプライベートも充実している。

カワサキの250cc「エストレヤ」から始まったバイクライフは、8年前、スポーツスターに乗り換えたことで大きく様変わりした。ハーレーに乗っているだけでバイク仲間がどんどん増え、ツーリングにも行くようになる。

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「それまではひとりで近所を走る程度だったのですが、ツーリングに誘われ皆さんと一緒に走ると、ますますバイクが楽しくなりました」

ハーレーとの最初の出会いは教習所だった。大型二輪免許の教習で、1時間だけスポーツスターに乗ったのだ。

「ドッドッドという鼓動感がすごくて、いいなって思いました」

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そのとき乗ったのは、03年式までのリジッドマウントのXL883。カワサキのWやトライアンフのボンネビルも気になる存在だったが、最初のビッグバイクはXL1200Sに決めた。

仲間と行くバイクツーリングは、とくにキャンプが面白かった。だから荷物をたくさん積めるラゲッジケース付きのモデルが欲しくなっていく。

「もともとクラシックなスタイルが好きで、ヘリテイジやスプリンガーもいいなって思っていたのですが、ロードキングの集まりに参加するようになり、そこで『いつか自分もロードキングに』っていう気持ちになりました。もちろん取り回しは不安でしたが、どうせならイチバン乗りたいモデルを買おうって、思い切って乗り換えました」

問題は方向音痴なこと。グーグルマップを見て、ひとりでどこかへ行こうと考えることもあるが、大概は迷子になってしまう。

「なるべく曲がらなくていい行き方を考えます。大回りになっても、その方が確実ですからね。第一京浜(国道15号線)をずっと西へ行ってみようと走ったときは、多摩川を渡って神奈川県に入った途端、自分の力で違う世界に来たみたいで感動したのを覚えています」

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いつかは北海道や九州、四国にも行ってみたい。ただし、お店を長い間休むのはいまは無理。1泊程度のキャンプツーリングが楽しみだ。

「仲間たちと大勢で走るのがいいです。山奥で倒してしまったら、ひとりで起こせませんから……」

ロードキングには、体力的に不安を感じるようになるまで乗っていたいという。本来ならあるはずのフォグランプを備え、バックギアも欲しい。それから、女性の仲間ももっと増やしたい。お店はバイクで来ても大丈夫なので、ぜひ遊びに来て欲しいと願っている。

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