VIRGIN HARLEY |  長岡 守(Tramp)インタビュー

長岡 守(Tramp)

  • 掲載日/ 2004年09月20日【インタビュー】

ハーレーインタビューの画像

ハーレー、音楽、WEBデザイン…
そのクリエイターはすべてを求めていた

―――多才
それが彼を表現するのに最も適した言葉かもしれない。『Tramp』さんはカスタムショップであるばかりか、WEBデザイン業務、ショーやイベントの音源製作、音楽レーベルの立ち上げ、などと多彩な活躍をしている。一つのジャンルに収まらない長岡さんの感性がフィードバックされたカスタムハーレーとは一体どんなものなのか、今回のインタビューで是非堪能して欲しい。

Interview

『FXR』が初ハーレー
「思ったよりちゃんと走るんだな」とビックリした

ーカスタムショップだけでなく音楽関係のお仕事もされていますが、どういった経緯でやられることになったのですか?

長岡●特に大げさな経緯はないのですが、昔からギターが好きでして。趣味が高じてギター製作の仕事をしていたことがあったんですよ。バイクに熱中し始めてからはギターから遠ざかっていましたが、ずっと音楽に関わる仕事もしたいな、という思いは持っていました。ただ、このショップを立ち上げるときにはカスタムショップとWEBデザインの事業でスタートしたんですよ。

ですが、 『Tramp』の運営が落ち着いてきた頃に、ふと自分の音楽への想いを思い出しまして。不思議なことに、ちょうどそのときに音楽のお仕事の依頼も頂いたんですね。音楽への想いがメラメラと沸いてきました。それが音楽の仕事を始めるきっかけでした。私は、モノを作るのは好きですし、バイクも音楽も共通項はたくさんあると思って。でも実際のところ、僕はコンセプトワーク作りやレーベルの管理をしているくらいで、音源制作などはプロのミュージシャンでもあるうちの人間とその仲間たちに任せているんですけども。

ー普通は好きでも、ギター製作まではしないですよ(笑)。長岡さんはモノを創るのが好きだ、というのはそこからもわかりますね。ハーレーにはいつ頃から乗っていたのですか?

長岡●昔はずっと『ヤマハSR』に乗っていました。19歳のときに、ふとディーラーに遊びに行って、当時あったモデルの『FXR』を買ってしまいました。それが初めてのハーレーです。昔からハーレーへの憧れはありましたが、乗ってみて「思ったよりちゃんと走るんだな」とビックリしましたよ。ハーレーって言うと壊れて当然なんだろうと思っていましたから。でも、その意識がいい意味で変わった。「面白いバイクだな」という気持ちだけが残りました。そこからは、旧車にもハマって『パンヘッド』や『サイドバルブ』、『インディアン』などを次々と乗り継ぎ、研究しました。当時は、生活のすべてをバイクにつぎ込んでいましたね(笑)。

ースゴイ旧車遍歴ですね。バイクのメンテナンスの知識や技術は旧車を触っていて覚えたのですか?

長岡●いえ、バイクに関わる仕事もしたんです。ギター製作の仕事の後、「BABYFACE」というバイクのパーツメーカーでマフラーなどのオリジナルパーツ開発をする仕事に転職したんです。そこでメカや金属加工の基本的な技術を学びました。その知識をハーレーで、レースに参戦しながら色々自分で試して、勉強して身に着けていきました。

僕がプロデュースするモノは
すべて『人を引き立てるモノ』であって欲しい

ーTrampさんのカスタムについてお聞きしたいのですが、長岡さんの過去のレース経験やチタンマフラーの製作から想像すると、かなりレーシーなカスタムが多いのかな、と思いますが実際は違いますよね。

長岡●レースはあくまで趣味でやっているだけで、『Tramp』が作るカスタムは「走り重視」ではありません。まったくありませんよ。そういうバイクに普段乗るのは、やっぱりしんどいですから。バイクは「オーナーさんが乗りやすい」ものでなければ楽しめないんじゃないかな、と思います。ウチのお客さんには『ショベルヘッド』に乗っている人もいらっしゃいますが、だいたいのお客さんにはセルをお勧めするといった提案をしています。変にスタイルだけにこだわって「始動はキックオンリー」というようなこだわりは持っていません。実は僕、「気合の入ったハーレー」は苦手なんですよ(笑)。

ーでは、カスタムのスタイルについてはいかがでしょうか。『Tramp』カスタムは、決して派手ではないですよね。でもカッコいい。うまく私では表現できませんが。

長岡●「都会的なオートバイ」を作りたいんです。それがこだわりです。オーナーがオシャレをして都会の街に繰り出す。夜の街にさらっと停めて、それがすごくスマートに見えるような、そんなオートバイを作りたい。アスファルトやビルの多い都会の中に、自然に溶け込めるようなオートバイを作りたいんです。

ーハーレーだけが変に目立ってしまわないようにしたい、ということでしょうか。

長岡●そうですね。やっぱり乗っている人が主役ですから。だから、どんな服装でも乗れるバイクを作りたいんですよ。ハーレーだからって必ずジーパンを穿かなければいけない、僕の中ではそんなルールはありません。それこそ、白のパンツを穿いてハーレーに乗ってもいいと思うんですね。だからこそ、そういう服装でも乗れるようなカスタムバイクを作るように気をつけています。例えば、オイル漏れはご法度とかですね。僕は「バイクが壊れない」だけでは満足できない。「乗っていて楽しいし、服も汚れない」。そこまで意識してバイクを作りたいんです。そうすればお客さんも、もっと気軽にハーレーに乗れますから。

ー他のショップさんでは今まで聞いたことがないこだわりですね。

長岡●場所柄、ウチのお店のお客さんはクリエイティブ系のお仕事をされている方が多いんですよ。そういう方は打ち合わせなどの移動にバイクを使われる機会が多いんですね。そういう方には「革ジャンをきて、ブーツを履いて乗るハーレー」では、なかなか仕事に使えない。ハーレーが「気軽な足」にはなれないと思うんです。「週末にしか乗らないハーレー」であれば、そういう「非日常を演出してくれるハーレー」もいいかもしれませんが、ウチのお店のお客さんにはそういうハーレーは少し「重たい」んですよ。そう感じているので、僕は「都会的なオートバイ」を作りたいんです。だから、ウチのお店はたぶん他のお店とはノリがちょっと違うかもしれませんね。ハーレーに対してこうだ、っていうこだわりがあるわけではないですから。ハーレーに乗るオーナーさんを主役にして、街に映えるカッコいいバイクを造りたいな、という想いの方がどちらかと言うと強いですね。

ーモノはあくまで、人が使うものだと?

長岡●そのとおりです。人が常に主役であって欲しい、それはハーレーに限らず「デザイン」でも「音楽」の仕事でも変わりません。僕がプロデュースするモノはすべて『人を引き立てるモノ』であって欲しいんです。それが僕のスタイルであり、ものづくりの基本的な考えですね。「ハーレー」も「デザイン」も「音楽」も根底にあるスタイルは同じで、すべて繋がっているんですよ。

プロフィール
長岡 守
31歳。『Tramp』代表。音楽、WEBデザイン、そしてハーレーのカスタムと、彼の創造世界は刺激を求め続ける。そんな彼が作り出すハーレーは、都会的な雰囲気を放つ。その独特な雰囲気に惹かれて来店するのは、クリエイターの方々が多いという。

Interviewer Column

今回ご紹介した「Tramp」のハーレーを雑誌などでご覧になったことがある方はいらっしゃるだろうか。派手ではないがどこか人の目を惹きつけてしまう、そんなカスタムバイクを製作している。カスタムバイクのトータルでのバランスの良さで「なぜか気になるカスタム」を造り上げる、そこには本当のセンスが問われるはず。「Tramp」のハーレーを見る機会があれば一度じっくり眺めてみて欲しい、そこには緻密に考え抜かれたられた長岡さんのセンスが光っているはずだ。(ターミー)

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