VIRGIN HARLEY |  小山 嘉隆(グローリーホール)インタビュー

小山 嘉隆(グローリーホール)

  • 掲載日/ 2004年10月02日【インタビュー】

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「走ること」に重点を置いたスタイル
なぜ、敢えてスポーツスターで追求するのか

今回ご紹介するのは、京都市伏見区の『グローリーホール』代表、小山嘉隆(こやまよしたか)さんだ。「グローリーホール」のスポーツスターのカスタムを雑誌で何度も拝見して、「走ること」に重点を置いたスタイルが気になっていた。今回やっと京都までお邪魔することができた。なぜ、敢えてスポーツスターで「走ること」を追求するのか、前々からの疑問をぶつけてみた。

Interview

ショップを持つという夢を
諦めかけたこともありました

ー「グローリーホール」さんは「小野商会」さんの「サイドワインダー」や「バランスマスター」などの個性的なパーツを早い段階から取り扱っていたので、前から気になっていたんですよ。東京からはさすがに遠いので気軽にお邪魔できませんでしたが、やっとお邪魔できました。

小山●某ハーレー雑誌の編集の人はわざわざ東京からオイル交換をしにやってきましたね(笑)。オイル交換をするために往復1000キロ近くを走ってきましたよ。さすがに関東から来られるお客様は少ないですが、「阪神高速の京都南インター」のすぐ横に引越ししてから、関西近県から来られるお客様が多くなったのは嬉しいですね。

ー「引っ越し」される前は、どちらでお店をやってらっしゃったのですか?

小山●今のお店から少し離れた『京都府久世郡久御山町』というところです。そこで、倉庫の一角を借りてショップをやっていました。ガラクタ置き場みたいな倉庫の一角でしたね。

ー小山さんは10代の頃からずっと、バイクショップをオープンする夢を持っておられたとお聞きしたのですが…。

小山●バイクショップをしたいとは思っていましたが、昔は普通の「国産スポーツ系のバイク屋さん」をイメージしていたんですよ。「カスタム」なんて言葉が、今ほど一般的では無かった時代ですからね。「好きなバイクに関わって、ご飯が食べれたら最高だな」、そういうぼんやりとした憧れがあった程度でした。そんな中で「ハーレーも扱えたらいいな」と思ってはいましたが、当時はハーレーなんて夢のまた夢の乗り物でしたからね。「年を取ってからは乗りたい」という気持は持っていたのですが、さすがに当時の僕が買えるような代物ではなかったです。だから、本気で「ハーレーを扱うぞ」とは考えてはいませんでした。今、僕がハーレーを中心に扱うカスタムショップをやっているのことを、昔の自分が知ったらビックリするでしょうね(笑)。

ー当時はどんなバイクに乗っていらっしゃったのですか?

小山●いろいろ乗りましたが、そうですね。例えば『SUZUKIの刀(GSX750S)』に乗っていました。ただ、自分のショップをオープンするために少しずつ貯金をしていたので、自分の乗るバイクは友人から安く譲ってもらい、それをメンテナンスしながら乗っていました。当時はロードレースの全盛期だったこともあって、峠を攻めたり、ロードレースの地方選手権に出たりしていましたね。

ーライセンスを取って、スポンサーを見つけて…といった本格的なレースでしょうか?

小山●そんなに大げさなものではないですよ。本気でレースをやっていたのは20代前半の数年間だけですし。当時、今で言う国内B級のライセンスを取り、自分のバイクを持ち込んで走っていました。当時の僕にとって、バイクと言えば「攻める」ものでした。「グローリーホール」のスポーツスターが「走り」に重点を置いたカスタムが多いのは、そういう僕の好みもあるんですよ。

ーレースを終えたことと、ショップを始めたことは繋がるんでしょうか?

小山●ないですね。実は、ショップを持つという夢を諦めかけたこともありました。ずっとロードレースをやってきて、二十代半ばの頃に「自分には才能がないんだな」と痛感したことがありまして。一時期「バイクへの想い」が薄れかかったことがあったんですよ。今思うと「レースで早く走る」ことと「バイク屋をオープンさせる」ことは、まったく別のこととして考えればよかったのですが。二十代後半はバイクには乗っていましたが、夢は忘れかけていましたね。

ー夢が再燃した、そういうきっかけがあった、と。

小山●ええ。実は、バブルが崩壊して、当時勤めていた金属加工の会社の経営が傾いたことがきっかけでした(笑)。今思うと、自分のやりたかったこと、かつての夢を思い返すのにはいい機会でした。30代に入ってから、昔の夢を思い出し、また夢に向かって走り始めたというわけですよ。それが出来たのも、その会社で学んだ金属加工に関するノウハウを身に付けさせてもらったからです。それは今も、大変役立っています。今でも機械加工は好きで自分で手がけますが、それはかつての経験のおかげですね。

「グローリーホール」のカスタムには
デザインなどの統一性はあえて持っていない

ーすぐにお店をオープンされたのですか?

小山●準備期間はありましたよ。カスタムショップで働いたり、開店資金を稼ぎに行ったりしていました。今、一緒にショップをやっている佐川とは、その修行時代に出会ったんですよ。私がハーレーの面白さに気づくきっかけになったのは、実は佐川の影響なのです。佐川に出会わなかったら「グローリーホール」ではハーレーを扱っていなかったかもしれません。昔から佐川はスポーツスターの面白さ、可能性にハマっていまして。周りには国産のレーサーレプリカやドゥカティなど、ノーマルでも高性能なバイクに囲まれていたんです。けれども、彼はあくまでスポーツスターで「走る」ことにこだわっていました。僕もバイクは性能だけじゃ面白くないことは、とっくに気付いてはいました。でも、ハーレーのエンジンに「味がある」上に「走る」ことができるとは、知りませんでしたね。佐川と親しくなっていくうちに、僕もその面白さに気づかされてしまいました(笑)。

ー具体的に言うと?

小山●「ハーレーのフィーリングに『加えて』のスポーツ性のレベルの高さ」です。もともと「走ること」に興味がある二人ですから、そこが一番の魅力です。ハーレーのあの独特のトルク感、排気音。「ハーレーらしい味」を感じさせつつ、スポーツ性能は高い。ハーレーでありながら走りを追求することできる、その絶妙なバランスが魅力的なんですよ。ちょっとした買い物にも気軽に使えますし、同じバイクで峠を攻めることもできる。ほんと面白いバイクですよ。

ーそれで「走り」を追求したオリジナルパーツがたくさんあるんですね。

小山●スポーツスターはノーマルでも十分面白いバイクですが、足回りなどをカスタムするとまた違った乗り味が楽しめるんですよ。そういう「楽しさ」を、お客様にもっともっとお伝えできたら嬉しいですね。スポーツスターを楽しむための「ウチなりの答え」を、オリジナルパーツとして販売しているんです。ただ、勘違いして欲しくなのは、ウチは「走りを追求したお店」ではないということです。私たちは、お客様の夢を実現させるお手伝いをすることを大切にしています。ですので、製作者側の好みや指向などをお客様に押し付けたくはありません。だから「グローリーホール」のカスタムにはデザインなどの統一性はあえて持っていないんですよ。

ーあくまで「お客様の要望に沿ったカスタム」を意識しているわけですね。ところで「グローリーホール」さんは、ハーレーに関してはエボ以降のものしか取り扱っていませんが、それには何か理由があるのでしょうか?

小山●単に、ショベル以前のエンジンに関しては、ウチのお店にはノウハウが少ないからですよ。確かに、触ったこともありますし、経験もあります。だけど専門に扱っているショップさんに比べると、社外パーツなどの充分な情報がない。そういう状態で、お客様に自信を持ってサービスなんてできません。だから、エボ以降のハーレーしかウチでは取り扱わないわけです。サービスを提供するのには技術や知識だけではなく、たくさんの情報も知っていないと「プロ」としてお金をいただけませんから。

ーなるほど、お客さんはショップを「プロ」として見ていますから、技術だけではなく、求められる情報量にも責任を持たなければいけないのですね。では最後に「グローリーホール」の名前の由来を教えていただけますか?

小山●最初のお店をオープンさせるときに、店舗として借りた倉庫の一角。お世辞にも綺麗なお店ではなかったのですが、自分たちにとって、そこは夢がスタートする場所だったんですね。「自分たちの夢がこの場所から始まるんだ」。そんな想いを友人にも相談しながら、素直に言葉にしてみたら「Glory Hole」という名前が一番しっくりきたんです。「Glory Hole」という言葉は「栄光ある家」という直訳もできますが、実は「ガラクタ部屋」という意味もあるみたいです、いい名前でしょ(笑)。

プロフィール
小山 嘉隆
41歳。若き頃は、国産ハイスペックマシンを操り、サーキットに通い詰めたという。だが、当時、同僚がスポーツスターでレースに参戦しているのを見て、その魅力を思い知る。そこからハーレーにハマり続け、30歳の時に一念発起。グローリーホールを設立し、現在に至る。

Interviewer Column

今回のインタビューの後、私は「グローリーホール」というショップに間違ったイメージを持っていたことに気づかされた。もともと持っていた「スポーツスターのカスタムショップ」というイメージは間違っていたことに。訪れるお客さんには国産レーサーレプリカの人も入れば、ビックツインのハーレーの人もいる。確かに小山さん、佐川さんは「スポーツスターを愛している人」ではあるが、それ以前に「バイクを愛する人」だった。バイクを愛する彼らの人柄に惹かれ、車種・メーカーを問わない「バイク乗り」が遠くから集まってくる。もし、あなたが「バイクが好き」であるならば、例え歩いてお店に行ったとしても「グローリーホール」は暖かく迎えてくれることだろう。(ターミー)

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