VIRGIN HARLEY | 大坪 靖雄(ハーレーダビッドソン調布) インタビュー

大坪 靖雄(ハーレーダビッドソン調布)

  • 掲載日/2005年02月01日【インタビュー】

ハーレーインタビューの画像

ハーレーだけではなく
二輪車業界全体が、もっと盛り上がってほしい

今回ご紹介するのは東京都調布市の「ハーレーダビッドソン調布」大坪 靖雄さんだ。大坪さんは元々「HOT-DOCK」に長年勤めてメカニックの修行をしており、カスタムへの造詣も非常に深い。しかもつい最近まで「ハーレーダビッドソン沖縄」の店長として沖縄のハーレーシーンを引っ張っていたとも聞く。「ハーレーダビッドソン沖縄」は場所柄、米軍関係のお客さんも多い。我々の知るハーレーシーンとは少し違うであろう、沖縄のハーレー事情についてお聞きしたく、お邪魔してきた。

Interview

「ハーレーのクラッチは重い」
そんな感覚が、そもそもないんです

ー大坪さんは最近まで「ハーレーダビッドソン沖縄」の店長を勤められていたんですよね。モトギャルソンさんの他の2店舗は東京都内にあるのに、なぜ沖縄にディーラーを出店されたのでしょうか?

大坪●「ハーレーダビッドソン沖縄」がオープンするまで、沖縄にはハーレーディーラーがなかったんですよ。米軍の基地内では「ミリタリーセールス」と言って、軍人向けにハーレーの販売はやっていたようです。でも、ハーレーの販売しかやっていなくて、整備などは自分でやるしかなかったんですね。そういう事情があったので「沖縄にお店を出してくれないか」と頼まれまして。それで普天間飛行場のすぐ側にお店をオープンしたわけなんです。

ーやっぱり、お客さんにはアメリカの方が多いのでしょうか?

大坪●そうですね。日本人とアメリカ人のお客さんはだいたい半々くらいの割合ですね。

ーアメリカ人のお客さんが多いと、スタッフの皆さんは英語を覚えないといけなくて、大変でしょうね。

大坪●もちろん流暢に英語を話せるスタッフもいます。でも、全員が英語を話せる必要はないですよ。僕だって英語は得意ではないですから。仕事の上で必要な英語を話すことができたら充分です。仕事で話したり聞いたりする英語って、実はある程度限られているんですよ。それさえ覚えれば大丈夫です(笑)。

ーなるほど。アメリカ人のお客さんはハーレーの本国、アメリカから来ているので、英語でマニアックな質問などをされることが多いのでは、と思ったもので。

大坪●確かに、アメリカ人のお客さんには「専門知識を持っている」人が多いかもしれませんね。アメリカに比べると、日本ではハーレーについての情報源はまだまだ雑誌が中心ですよね。彼らも雑誌は読んでいますが、それをそのまま鵜呑みにせず、他からも情報を手に入れて調べている人が多いんです。友人がつけているパーツの情報や、いろいろなショップから聞いた情報など、本当によく調べてお店にやってきますよ。

ーアメリカ人の方が詳しい人が多い、と。

大坪●手に入る情報量の差、そこが大きいんでしょうね。たとえば、日本人のお客さんでもドラッグスペシャリティやカスタムクロームのパーツは手に入ります。でも、英語と日本語の言葉の壁があるので、そのパーツについての情報は日本国内の雑誌や人のつながりからしか入ってきませんよね。でも、彼らはアメリカ国内の友人、インターネット、ショップ、メーカーから直接情報を手に入れることができますから。

ーアメリカでは年間20万台以上、ハーレーが売れているんですよね。一方、日本は年間1万台ちょっと。オーナーの数の差からも、当然集まる情報量も違うでしょう。それは詳しくもなるでしょうね。

大坪●ほんと、自分のハーレーに詳しい人は多いですよ(笑)。トラブルが起こったとしても、彼らは自分で調べてきて「この部品を使って修理して欲しい」とか「この部品を使うのはどうか?」というように、専門的なことをよく知った上で依頼をしてくるんですよ。パーツを選ぶ際にも「このパーツは高価だけど、この材質でできているから」だとか「自分の乗り方だと、この材質でできているパーツの方が合っているよね」だとか、自分で調べて理解して、モノを選ぶ人が多いですね。

ーアメリカ人のハーレーの好みについてもお聞きしたいのですが、そこにも違いはありますか?

大坪●彼らはだいたいビックツインを選びますね。体格的な部分が大きいのでしょうが、スポーツスターを選ぶ人はほとんどいません。大きなアメリカ人がスポーツスターのハガーに乗っているのは確かに想像できませんから(笑)。峠を攻めるのが好きなアメリカ人はFXDXやFXDLを選ぶ人が多いのですが、ミッドコントロールのステップが窮屈らしく、わざわざフォワードコントロールに換えていたり、シートも着座位置がかなり後ろのものに交換したりと、彼らのカスタムパーツの選び方は面白いですよ。「手足の長さが日本人とは違うんだなぁ」とつくづく実感しましたよ。きっと、アメリカ人にとって、ビックツインは「Big」ではなく、「My Size」なんでしょうね。

ー体格以外でも、やっぱり腕力も違うんでしょうね。

大坪●まったく違います。基地横という場所柄、普段から体を鍛えている人が多いので当然なのかもしれませんが、彼らには「ハーレーのクラッチは重い」という感覚がないんです。以前、知り合いのアメリカ人に「このハーレー、クラッチ軽いだろ? 日本にはこんな便利なパーツがあるんだぞ」ってVPクラッチを装着したクラッチを握ってもらったことがあるんです。でも、握ったあとに「何が違うんだ?」って聞き返されました。そもそもノーマルのクラッチを軽いと思っているので差がわからないんですね(笑)。

ーVPクラッチの違いがわからない…同じ人類とは思えないです。

大坪●そんな話はごろごろありますよ。軽トラックにラダーレールなしでハーレーを持ち上げるアメリカ人だっているんですから。前輪を荷台に持ち上げてから、後輪をヒョイっと持ち上げて押し込んでしまうんですよ、信じられますか? それだけの地力があると、事故をしたときも転倒せずに踏ん張れるみたいで。その彼はフロント周りが大破するような事故にあったときも転倒もせず、怪我もなかったんです。

ー腕力でバイクを押さえ込んで、バランスを崩さなかった、そういうことなのでしょうか。

大坪●我々日本人とはそもそも体のつくりが違うんでしょうね。

ハーレーは「いかに楽しく移動できるか」を
追求して造られたバイクです

ー沖縄から東京に戻ってきて、何か違いはありますか?

大坪●まず、当たり前ですが東京は寒いです(笑)。あとは沖縄ではスプリンガーソフテイルが何故かよく売れていたのですが、東京ではそうでもないですね。

ー沖縄でスプリンガーソフテイルですか。潮風にやられてすぐ錆が出てきて、手間がかかりそうな気がしますが。

大坪●確かに沖縄には潮風が吹いているので、錆対策には気を遣いますね。沖縄では「走っているときに塩がつく」んです。錆びるのがバイクの前側だけで、ミラーやステップ、風の当たる側だけが錆びていくんですよ(笑)。だから、ハーレーに限らず、古くからバイクに乗っている人はツーリングに行ったあとは必ず洗車をします。洗車で塩が流されますから、そういうバイクは綺麗ですね。そこで洗車をせずに1週間でも放っておくと錆びちゃいます。

ー前側から錆びてくる、面白い話です。海が近いところに住んでいると、そこまで気をつかわないといけないんですね。

大坪●沖縄は島の周りすべてを海に囲まれているので、特に空気中に潮気が多いのでしょう。あと、沖縄は移動手段がバイクか車、という人が多いので普段からよく走って潮気に触れる機会も多いのもあるでしょうね。

ー沖縄には電車がないですから、車かバイクがないと移動は大変でしょうね。

大坪●そうですね。普段からバイクに乗っている人は多いですよ。女性のバイク乗りも多いですね。ですから、沖縄は他の地域に比べてバイク業界は元気なんです。

ーそうなんですか。最近、国産バイクは不況だと聞いていましたので、嬉しいですね。ハーレーだけが盛り上がっていても、小型・中型のバイクが盛り上がらないと、これからハーレーを乗ろうと思う人も出てこないでしょうから。

大坪●ハーレーだけではなく業界全体がもっと盛り上がって欲しいですね。僕個人の意見としてですが、ハーレーと競合するような国産のアメリカンバイクが出てきて、業界全体が面白くなってきて欲しいですね。ヤマハのV-MAXのようなオリジナリティに溢れるバイクが、ニューモデルとして出てくれば面白くなってくると思いますよ。

ー個人的にはもうすぐヨーロッパで発売されるヤマハの「MT-01」などにオリジナリティを感じてしまっています。ただ、ハーレー以外のオリジナリティに溢れたバイクが増えててくると「ハーレーらしさ」とは何か? というテーマが問われるようになると思います。大坪さんの考える「ハーレーらしさ」とはどういった部分でしょうか?

大坪●難しい質問ですね(笑)。僕は国産バイクやBMWなど、いろいろなバイクに乗ってきました。ハーレー以外のバイクに乗って思うのは、「いかに速く、快適に、安全に移動できること」を目指して造られているんだな、ということなんですね。でも、ハーレーは「いかに楽しく移動できるか」を追求して造られたバイクだと感じます。極端な話、別に時間はかかってもいいし、快適さも無くてもいい、乗っていて楽しいことが一番重要視されているバイクなんですね。100年以上の歴史があるハーレーの中でパンヘッドやショベルヘッドからツインカム・V-RODまで、どのハーレーも「楽しく乗れる」というスピリットは貫かれています。そこがハーレーのこだわりであり、ハーレーらしさなのではないでしょうか。

プロフィール
大坪 靖雄
33歳。カスタムショップの名店「ホットドック」からハーレー業界に携わり、「ハーレーダビッドソン沖縄」を経て、現在は「ハーレーダビッドソン調布」勤務。大坪さんのカスタムから整備修理までの多岐にわたる経験・知識を頼りに、お店にやってくる方も多いという。

Interviewer Column

今回インタビューでは大坪さんにいろいろなお話をお聞きした。子供の頃に見たカスタムハーレーに憧れ、ハーレーに乗り始めた話、ホットドックやハーレーダビッドソン沖縄で出会ったお客さんの話。インタビューでお届けする話題を絞り込むのに苦労をするくらい、大坪さんは話題が豊富な方だった。ハーレーに限らずさまざまなバイク、多くのハーレー乗りに出会い、経験を積んできた大坪さんだからこそ、広い視点からハーレーを含めたバイク業界全体のことを考えることができるのかもしれない。。大坪さんに出会えて、私もハーレー以外のバイク業界について少し考えることができた。(ターミー)

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