VIRGIN HARLEY | 水谷 カズトシ(MARUMASU MOTORCYCLE LOUNGE&CAFE) インタビュー

水谷 カズトシ(MARUMASU MOTORCYCLE LOUNGE&CAFE)

  • 掲載日/2006年10月28日【インタビュー】

ハーレーインタビューの画像

走って曲がって停まる
ハーレーの基本性能を高める

今回ご紹介するのは、三重県桑名市の「MARUMASU MOTORCYCLE LOUNGE & CAFE」オーナー 水谷カズトシさんだ。「三重の4速」という名前で、ご存知の方も多いのではないだろうか。個人で4速スポーツスターを仕上げ、FXRのフルカスタムを完成させるその技術と情熱に、どんな方なのだろうと驚いたのを覚えている。水谷さんの経歴はフィッシングガイド、イラストレーター、生物系環境調査コンサルタント、Webデザイナーなど多岐に渡る。忙しい日々を送りながら、いかにしてハーレーに情熱を注げたのか、プライベーターではなくショップのオープンに至った経緯とは、そこをじっくりとお聞きしてきた。

Interview

安く手に入れた4速スポーツスター
まともに動くまで1年もかかりました

ー以前、アメリカのアラスカ州でフィッシングガイドをやっていたそうですね。

水谷●20代の頃、海外を長く放浪していた時期があって、僕は釣りが好きなので北米を中心に旅をしていました。釣り好きにとってはカナダやアラスカは憧れの地ですから。何度も現地に出向き釣りをするうちに、現地のガイドと仲良くなりそのままガイドをすることになったんです。小さい頃から海や山に近い環境で育った僕にとって、アラスカでのフィッシング・ガイドはまたとないチャンスでした。

ー日本に帰国してからは河川調査の仕事に携わったようですが、これも釣りに関わる仕事なのでしょうか。

水谷●河口堰やダムの建設といった生態系に影響を及ぼす可能性のある公共工事の施工前後には、生物は勿論のこと、土壌、水質などの複合的な要素をまとめたデータベースを作る必要があります。それが僕のやっていた環境アセスメントの仕事です。帰国してからは無職だった訳ですが、アラスカで知り合った仲間に誘われて上京し、手伝うようになりました。

ーなるほど。あとは…イラストレーターの仕事もやっていたんですよね。河川調査の仕事と掛け持ちでやっていたのでしょうか。

水谷●イラストは趣味でずっと描いていました。河川調査の仕事のため、東京で暮らし始めた訳ですが、ダメ元で出版社に売り込みに行ったら仕事をいただけるようになりました。河川調査は年中忙しい仕事ではなかったので両立するのはそう難しいことではなかったんですよ。しばらくすると、イラストの方でも順調に仕事が入り、少し認められて勢いづいたことと、当時アメリカの風景ばかりを描いていたことから「自分のイラストはアメリカでどこまで認められるのか、試してみたい」と考えるようになりました。

ーいきなりアメリカですか(笑)。現地にコネはあったのでしょうか。

水谷●まったくありません。「アメリカに絵を売り込みに行くから半年休みます。」と周囲に伝え、すぐ渡米しました。まずはLAに渡り、以前から自分の目で確かめたかった「ルート66」をLAからシカゴまで、クルマで旅をしました。そのとき立ち寄ったシカゴの街がすごく気に入って、そのままシカゴに1年ほど住むことにしたんです。貯金全てを叩いてアパートメントを契約し、現地のアンティーク・ショップで仕入れた古着やビンテージ・パーツなどを日本の個人や業者に売るバイヤーとして食いつないでいました。そうやって生活しながら、あちこちのギャラリーに売り込んだのですが、保守的な風潮を好むシカゴのギャラリーでは、僕のイラストを使ってくれるところはありませんでしたね。そこであっさり帰国して、環境アセスメントのコンサルタントとして独立し、三重で事務所を起こしました。

ー帰国して初めてのハーレーを手に入れたのですよね。

水谷●実は18歳のときにもハーレーを買おうとしたことがありました。当時は運転免許センターの試験で一発合格でしか大型二輪免許が取れず、何度もチャレンジしたんですが無理でした。結局それで購入を諦めてしまいました。しかし帰国後にひょんなことから古い4速スポーツスターを安く手に入れることができたので、良い機会だと大型二輪免許も取得しました。

ー4速スポーツスターがどんなモノなのか、知っていて手に入れたのですか? かなり手がかかったのでは?

水谷●詳しいことは何も知らずに手に入れてしまいました。車両の状態もひどいもので、まともに動かすまで1年はかかりましたね。ダメなところを直そうと純正部品の価格を調べてみたら、とんでもなく高価(笑)。仕方ないので海外からパーツを個人輸入してコツコツと直すことにしました。

ー修理はすべて自分でやったのですか?

水谷●僕はバイクに「乗る」ことよりも「イジる」ことのほうが好きですから、自分で直すことは全く苦になりません。バイクに「乗る」のは、自分が作業した箇所が正常に機能しているかどうかを確認するためなので、それほど距離を走る必要はありません。ですから荷物を積んでロングツーリングなんてしたことがありませんし、興味もありありません。

ー変わっていますねぇ(笑)。初ハーレーは触ってみていかがでしたか?

水谷●まず驚いたのは整備性の悪さ。本来交換したい部品をまでアクセスするのに、全く関係の無い部品まで外さなきゃならない、ということが珍しくありません。合理性や生産性の向上を常に考え、実践している国産車とは雲泥の差です(笑)。けれど、あのエンジン・フィールはハーレーにしかありません。その魅力があるからこそハーレーが嫌になることはありませんでした。但しフレームやエンジンなどはそのままに、ブレーキやサスペンションなど気になるところはできるだけ国産のモノに交換しています。

納得するまで妥協せず触る
3年かけてFXRは仕上げました

ー自分でメンテナンスや修理をする人は多いですけれど、水谷さんは1台のバイクにかける時間が尋常じゃありません。度が過ぎていますよ(笑)。

水谷●当時の仕事は忙しい時期は何日も徹夜作業になることもありましたが、暇なときはトコトン暇でした。三重に戻ってからも環境アセスメントの仕事を受けていましたが、忙しい時期はデータの上がってくる冬だけ。別にやっていたWebデザインの仕事も時間は比較的自由でしたし。ハーレーをイジる時間はたっぷりありました。4速スポーツスターが出来上がってからも、FXRを増車して3年かけてカスタムすることができましたね。時間の余裕があったから知人のハーレーのカスタムや修理も引き受けるようになり、ついにはショップまでオープンすることになりました。

ー今のお店は、もともとショップにするつもりじゃなかったんですよね。

水谷●単純にハーレーをイジるためのガレージを探していて、たまたま見つけたのがココです。初めはお店をやるための物件探しではなかったんです。今の場所を見つけるまでは屋外でハーレーをイジっていたため、天気の悪い日、暑い日や寒い日は作業ができませんでした。「天候や季節を気にせずにハーレーを触れる場所が欲しい」。それでガレージを探しはじめてこの店舗を見つけたんです。見つけた物件は元紳士服の老舗テーラーで、立地条件や一階店舗スペースのデザインが良かったため「ここならショップとしても問題ないのでは?」と欲を出し、ショップにしてしまったというわけです。「いつかはショップをやりたい」と考えていたものの、予想以上に早いタイミングでショップを出すことになりました。

ー水谷さんのハーレーの楽しみ方は他の人とは少々変わっています。ハーレーに対する想いも、他とやや違うように感じますが、ショップ『マルマス』を通じてどんなハーレーの楽しみ方を提案して行かれるのでしょう。

水谷●ハーレーを「走って、曲がって、止まる」バイクにすることを提案していきたい。日本車を越える性能を与えることはできませんが、標準的な日本車のレベルまでハーレーの走行性能を高めることは可能です。ハーレーはブレーキも足回りも本国ユースでのスタンスで設計されていると思います。ですから日本で使用するとそれなりの性能でしかありません。おおらかでまっすぐな道の多いアメリカでは、それはそれで充分なのでしょうが、日本の道路状況や今の交通事情を踏まえた場合、ストックの足では100%満足とは言い切れません。外観的なことに重きをおいたカスタムもやらないことはないのですが、もっと基本的な走行性能を高める部分でのカスタムの提案をしていきたいと思っています。

ーそこには、信頼性の高い日本車のパーツの流用も含まれるわけですね。

水谷●オーナーの希望があれば、です。日本におけるハーレーの業界では、日本車のパーツを流用することを“良し”とせず、見下した感があるのは事実です。しかし、日本車のパーツはどこでも入手しやすく、信頼性は高い。しかも値段は手頃です。悪いところがほとんどありません。日本でバイクに乗るのなら、いざというときにトラブルの対処がしやすいカスタムをするのもアリでしょう。アメリカのあの広い大陸を走るのに合わせてノーマルのハーレーは作られています。それが果たして日本という土地に合っているのか…。僕は合っていないと思っています。ですから、日本の道路事情に適したハーレーを提案したいんです。

ー偏見なしに「いいモノ」を取りいれ、ハーレーを水谷流に進化させて行くわけですね。今、賛否両論のインジェクションモデルについてはどう思いますか。

水谷●僕が今ハーレーを買うのなら、間違いなくインジェクションモデルを購入します。クルマの世界ではかなり前からインジェクション化されています。クルマのECUは燃料制御だけにとどまらず、アイドリングの回転数や空燃比、点火時期、ブレーキやアクセルコントロールなど多岐に渡り制御しています。現在のハーレーはまだそこまでのレベルに到達していませんが、フルコン化されるのも時間の問題でしょう。インジェクションは正常進化です。インジェクションの技術がもっと進めば、キャブレター以上に細かくチューンができるようになり、ハーレーの楽しみ方はもっと手軽になってチューニングの裾野が広がるはずです。

ー水谷さんもインジェクションチューンには手がけて行くのでしょうか。

水谷●やります。現在開発中のオリジナルマフラーにも現行ツーリング系に対応したスリップオン・マフラーがラインナップにあります。排気をイジれば当然吸気も合わせないといけませんから。僕が感じた06モデルまででのインジェクションは、以前のキャブレターモデルとフィーリングがかけ離れてしまわないよう、わざとキャブレター風の味付けをしているんじゃないかと思っています。しかし、本来インジェクションは最適な燃焼で効率的にパワーとトルクを引き出し、且つクリーンな排気で低燃費を実現するためのモノですから、きちんと調整して本来の性能を引き出してやれば…インジェクションモデルの可能性はこれからだと思います。

プロフィール
水谷 カズトシ
40歳、「MARUMASU MOTORCYCLE LOUNGE&CAFE」オーナー。20代にアラスカ州でフィッシングガイドとして勤めた経験があり、その他にもイラストレーター、Webデザイナーなど多彩な顔も持つ。

Interviewer Column

プライベートでハーレーを触る人は何人も知っているものの、それを仕事にしてしまった人にはなかなかお目にかかれない。趣味を仕事にしてしまうには思い切った決断が必要だからだ。しかし、水谷さんは自らのガレージ探しの過程で、この一線をヒョイと乗り越えてしまった。そこには当然悩みもあったのだろうけれど「興味を持ったら1歩踏み出す」水谷さんの性格が表れているように思える。フィッシングガイドやイラストレーターなどなかなか経験できない経歴を持っているのも、1歩踏み出した結果なのだろう(ターミー)。

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