VIRGIN HARLEY | 横溝 学(THE HAWG HOLIC MOTORCYCLES) インタビュー

横溝 学(THE HAWG HOLIC MOTORCYCLES)

  • 掲載日/2009年06月01日【インタビュー】

ハーレーインタビューの画像

新しいバイクにはないリアルチョッパーの色
旧き良き時代を克明に再現するレストア屋

星の数ほどある国内のカスタムショップの中でも指折りの異色ショップ、それがホグホリックである。独自の発想やオリジナリティで、綺麗で斬新なスタイルのカスタムバイクではなく、今この時代にあるカスタムバイク…チョッパーという偉大なる文化を作り上げた、原点である旧き良き時代のリアルチョッパーを再現するハーレー屋だ。「(完成したバイクは)僕が作ったという感覚ではない、(当時の)再現に近い」とオーナーの横溝学さん。彼は自身をビルダーではなく、レストアラー(レストア職人)と呼ぶ。

Character

早い時代からハーレーダビッドソンのビンテージパーツ&車両の輸入を始め、その道に長けた知識と能力を持つ。2005年、それまでのブローカー業に終止符を打ち、以前から抱いていたオールドハーレーの製作を手掛ける。それと同時に、東京都大田区玉川に「ホグホリック」(ハーレー中毒の意)をオープンさせる。とにかく「当時(そのエンジンや車体が存在したリアルな時代)のそのままがイイ」という横溝的哲学を持っており、チョッパーだけでなく純正スタイルにも通ずる感性だ。あわよくば「当時のバイク乗りの格好をコスプレして走りたい」という願望を持つ、根っからの古いもの好きである。

横溝 学 / よこみぞ がく

  • 生年月日/1971年生まれ
  • 出身/東京都大田区出身/世田谷区在住

Shop Infomation

THE HAWG HOLIC MOTORCYCLES

ハーレーインタビューの画像

基本的にはオールドハーレー専門のカスタムショップとして見受けられる。店内にはフルカスタム、純正レストアを待つ車両をはじめとするオールドモデルばかりが陳列し、特にレアな古いモデルが目を惹く。豊富にストックされている当時のH-D純正およびカスタム用オールドパーツは、すべてが販売用ではなく、車両製作用に備えられているものだ。ストックされる外装パーツは古い時代に製作されたもので、ペイントも当時のまま。近年に作られたものではない。ただの古いハーレーではなく、当時のそのままの姿のハーレー。長き時間の中を生き抜いてきた本物だけが持つ、近代の技術では真似できないその風合い。ホグホリックは、そのリアルをとことん追求するレストアショップである。

ハーレーインタビューの画像
【左】キレイに整頓された店内には、珍しいレアパーツが豊富にストックされている【右】カスタムを待つバイクは、古いだけではなく珍しいモデルが多い
ハーレーインタビューの画像
【左】当時のバイクに装着されていた、当時に製作された趣あるパーツたち【右】ツイステッド、クロス、ピースマーク……オールド・チョッパーの基本アイテムであるシーシーバーは、まさしくその時代時代の背景を象徴するアイテムでもある
  • 住所/〒146-0095 東京都大田区多摩川1-11-10
  • 電話/03-3758-9727
  • 定休日/火曜日
  • >> ウェブサイト

Interview

高校生の時に始めた個人輸入
初めてのハーレーも同様のルート

ーお店を立ち上げる以前、もともとはハーレー用オールドパーツのブローカーをしていたと聞きました。

横溝 ●実は、僕が21歳の時に購入した初めてのハーレーは、アメリカから個人で輸入したものなんです。だから自分の中では、輸入というのは難しいものではありませんでした。

ーまだ通信関係も普及してないあの時代に、その若さですごいですね。

横溝 ●そうですね。でも、アメリカからの輸入というのは高校生の時に始めたことなんです。その頃すごくビンテージの服が好きで、でも日本ではすごく値段が高くて高校生にはとても買えるものではなかったんです。それでアメリカから直接輸入しようと思いました。その頃はファックスしかないから、向こうのバイヤーみたいな人たちとファックスでコンタクトを取ってやりとりをしました。

ー今でこそ、「高校生がインターネットを使って海外と…」なんてことは聞きますけど、横溝さんは高校の時から英語が得意だったんですか。

横溝 ● いえいえ、英語なんて全然できませんでした。でも、なんとかなるだろうって思っていました。当時は本当に服が好きで、しかも日本で売っていないようなのが欲しかったんです。アメリカから直接買おうって思ったのは、値段の問題もあるけど、そこが一番だったと思います。向こうのファッション雑誌を仕入れたり、ちょっとした知り合いからバイヤーの名刺をもらったりしましたね。それで何とかアメリカから仕入れていました。

ーハーレーに興味を持ち出したのも、その頃からですか。

横溝 ●当時はロッカーズへの憧れから、トライアンフとかBSAとかが好きで、ハーレーには興味がありませんでした。でも服のバイヤーとしてアメリカとコンタクトを取るようになってから、次第にハーレーが好きになってきて。初めてアメリカを訪れた時、その時に初めて見つけたハーレーを日本に送ったんです。

ー高校生の輸入もそうですけど、初めてアメリカに行って、いきなりハーレーを購入して日本に送るなんて、それもまたすごい話ですよね。

横溝 ●とりあえずアメリカに着いたらすぐにハーレーを買って、それで走ろうと思っていたから、日本からヘルメットを持っていったんです。そうしたら、購入してもすぐに乗ることができなかったんです。今考えれば当たり前ですよね。そのほか、英語ができなかったので言葉が通ず大変な思いをしました。幸いにも向こうのスタッフが優しくて、言葉がダメだと分かったら船の絵とかを描いてくれて、コミュニケーション対応をしてくれました。彼らがいろいろとサポートしてくれたおかげで、何とか日本に持って帰ることができました。

ーハーレーを買うお店は、事前に決めていたのですか?

横溝 ●いえ、まったく決めていませんでした。街角にあったフリーペーパーをいろいろ見ていて、ベニスという町のディーラーを知り、そこへ伺うことにしたんです。レンタカーが借りられなかったのでバスで移動しました。そこで「中古を見せて欲しい」って言ったら、1979年式のFXDローライダーがあったんです。即座に購入しました。本当はヨンパチ(1948年式パンヘッド)が欲しかったんですけど、そんなものがあるわけがなくて。そのローライダーが、確か当時で8000ドルくらいしたんです。予想よりは少し高かったんですけど、日本の値段に比べれば安かったのかな…。

ーそういう流れから、ブローカーを始められたんですね。

横溝 ●それだけではないんです。当時は自分の中で、「ビレットパーツを作りたい」という気持ちが膨らんでいました。その後すぐにマシニング屋に就職し、4~5年間そこで働いたんです。その間も服の輸入は続けていました。それで「自分で独立して仕事がしたい」と思って、28歳の時にマシニング屋を辞めて、そこから本格的にハーレー関係の輸入を始めたんです。最初は服とオールドパーツ、その後はオールドパーツだけになり、それから少しずつビンテージバイクも扱うようになりました。あの頃は今みたいなネットオークションがなかったので、販売方法がなくて大変でしたね。雑誌の売買コーナーに投稿するのがメインでした。そんな感じでなんとか4年くらいやっていました。

ー脱サラではないですけど、28歳で退職してブローカー業を始めるという行為に不安とかはなかったのですか。

横溝 ●正直言って、これしか仕事がなかったんですよ。僕ができる仕事はこれだけだったんです(笑)。

ーなるほど(笑)。でも、その流れが最終的にバイク屋をオープンさせたわけですよね。当初からそういう目標はあったのですか。

横溝 ●少しは作りたいという気持ちは以前から持っていましたけど、正直言って「バイク屋になりたい」といった思いは特にありませんでしたね。カミさんとか、いろいろな人に「いつまでもフラフラしているんじゃない」って言われたことが、店を立ち上げた一番の理由ですかね(笑)。

日々の研究は30年前のサビを作ること
“あの時代の本物”の再現を目指して

ーホグホリックの作るバイクは、とても個性的なバイクですよね。ショップとしてのコンセプトを教えてください。

横溝 ●オリジナルにしろチョッパーにしろ、僕は当時のままが好きなんです。1950年代、1960年代、1970年代、1980年代……。装着するパーツは、すべて当時のパーツを使って作りたいんです。

ーというと、リプロダクト(レプリカパーツ)ものではダメだということですか。

横溝 ●もちろんです。当時のやれたバイクに、ピカピカのウインカーが付いていたら不自然じゃないですか。だから表面処理でサビさせたり、新しく使うパーツは古く見えるように作ったりしています。例えばですが、日本のナンバーはアメリカとサイズが違いますよね。そこでナンバーのプレートを作る時に合わせるシーシーバーがいい具合にサビているのに、ナンバープレートがピカピカだとおかしいじゃないですか。そこでサビさせて質感を合わせていくんです。また、そのサビも今のサビじゃなくて、30年前のサビみたいにするんです。僕は、そういうのを日々研究しています。

ー……(絶句)。というと、横溝さんが作るバイク、好きなバイクというのは、過去からタイムスリップしてきたようなバイク、ということですか。

横溝 ●そうですね。「汚い」ということではなくて、「当時のそのまま」。別に汚れていなくてもいいんです、過去からそのままタイムスリップしてきたような、当時のままの姿なら。そういうリアルな趣のあるバイクが、自分の思い通りに完璧に作れたらいいなと思います。別にきれいなバイク、新車のバイクを否定する意味ではありません。ただ、僕自身が古いものが大好きなだけで、その良さを皆さんに提示していきたいんです。

ーそのスタイルは言い換えれば、ひとつのカスタムカテゴリーとして捉えても間違いではありませんか。

横溝 ●カスタムというよりは、レストアですかね。カスタムビルダーというと、自分のスタイルがあって、それを前面に押し出すじゃないですか。でも僕は、「自分が作った」という感覚はないんです。どちらかといえば、再現に近いもの。だから僕はレストアラーに近いと思います。ビルドするというよりは、当時のスタイルに戻すレストア。僕は自分を、レストアラーだと思っています。

ーチョッパーのレストア、そういうことですか。

横溝 ●レストアと聞くと、ビカビカにするという感覚もありますけど、そうじゃないんです。ギターの世界に似たようなカルチャーがあるのですが、フェンダーとかギブソンのカスタムショップで、ごく最近作り上げたギターのペイントをわざとひび割らせたりする手法です。古くからあるジャンルで、すごくレベルが高い。あれにすごく近い感覚ですね。僕は、同じことをハーレーでやりたい。そういう意味での再現です。自然な感じで、当時のチョッパーを再現したいんですよ。

ー理解できました。でもカスタムではなくレストアとしても、それなりのインスピレーションに加え、長けた感覚がないと格好の良いレストア車はできないと思います。

横溝 ●純正だったら当時のカタログだったり、チョッパーだったら当時のチョッパー雑誌などを見て研究しています。以前からそういう資料を集めてギャーギャー言っていました(笑)。最近手に入れたチョッパーがあるんですけど見てください(トップ画像に写っているナックルヘッド)。このチョッパーは1969年に作られて、1977年からずっと乗られていませんでした。この雰囲気は、手作りではできませんね。クロームがブツブツになってサビたり、あとは緑錆(りょくしょう/緑色に変色したサビ)がすごいんですよ。これは見た瞬間に「敵わないな」と思いましたね。

ー例えばこのタイプのチョッパーをカスタムショーに展示した場合、どんな反響が出ると思いますか。

横溝 ●一般の人には分からないと思います。でも、緑錆を出したり、クラック出ししたりする技術は、家具やギターの世界では高く評価されるんです。僕にそれができたら完璧だと思っています。ギターの世界では古くからあるジャンルなので、ハーレーであってもいいかな、と。

ーでも話を聞いていると、やっぱり横溝さんは新しいモデルにはまったく興味ないように聞こえますが。

横溝 ●興味がないわけではないんです。でも根本に「古いハーレーが最高だ」という思いがあります。新しいモーターサイクルに乗っている人も、ぜひ一度チャレンジしてもらいたいです。全然別物なので、絶対に人生観が変わると思いますね。最近ではツインカムからの乗り換えするお客さんもずいぶん増えてきました。

ー最後に、横溝さんのレストアに対する思い入れを教えてください。

横溝 ●年代やスタイルを考えながら、車体全部のパーツを集めるのはとてもハードルが高く、簡単ではありません。加工して作っていくのも大変ですが、やはり楽しいですね。強いて言うなら、今っぽくなってしまうのが嫌なんです。新しいものにはない、ツルシのものにないオリジナリティ。そして、ヤレです。

ーやっぱりヤレが大事だということですね。

横溝 ●緑錆が吹いていると、グッくるんです(笑)。決め手ですね、見た瞬間に「オォ~ッ」ってくるんですよ。

Interviewer Column

10年以上前の専門誌を閲覧していた人で、“横溝学”の名前を知らなかったらモグリ(死語?)である。気付いたら面白いチョッパーを作っていて、気付いたら店を立ち上げて頑張っている昭和46年生まれ組。私と同い年ということもあって、日頃から頻繁に会うわけでもないけど、会った時は馴れ合いな感じで話しができる友達的感覚、というか友達。旧いパーツもしかり、レアなパーツが大好きなのは3分も話せば理解できた。その突出した知識と感性に感化され、最近真似してきたバイク屋もチラホラと見受けられるが、国内の第一人者として、そしてその道の長として後輩たちを引っ張り、活性させてほしい。

文・写真/佐々木孔一朗

注目のアイテムはコチラ