VIRGIN HARLEY |  バイク盗難最前線二輪車研究室

バイク盗難最前線

  • 掲載日/ 2005年02月23日【二輪車研究室】
  • 監修/全国オートバイ協同組合連合会

バイク盗難の画像

減少する盗難車両台数
しかし、大型車両は微増傾向

盗難問題はピークだった10~15年前に比べて、大きく減少しています。実数で言いますと、1995年前後は年間に25万台の二輪車が盗難されていました。しかし、2004年はなんと15万台にまで減少しています。これにはわかりやすい理由があります。それは原付の盗難が減ったということです。一般的に、盗難車両はアジア方面に輸出されますが、ここ数年で原付市場は従来に比べて低価格の車両が相次いで販売されるようになりました。つまり、東南アジアを中心とした諸外国でも「新車で低価格な車両」が出回り始めたのです。わざわざ日本からリスクを負って輸出してくる意味がなくなりつつあるのです。

さらに東南アジアを中心とした諸外国での原付などの小排気量二輪車が人々に行き渡りつつあるということも大きな理由です。つまり、需要と供給の関係上、もはやリスクのある盗難車は市場に求められなくなり始めているのです。実際、原付などの小排気量二輪車は国内での「乗り捨て」盗難以外、減少しています。 盗難も「需要と供給」のバランス、「神の見えざる手」が働いているのです。では、大型二輪車はどうでしょう。残念ながらこちらは微増しているという考え方が支配的です。特に「ハーレー」、「BMW」、「ドゥカティ」などは警戒が必要です。というのも、これらの車種は東南アジアを中心とした諸外国での需要が高く(といっても爆発的ではありませんが)、日本の窃盗団に『オーダー』が入りやすいのです。

さて、今『オーダー』と申しました。そうです。窃盗団は無作為に盗難を行い、輸出をしているわけではありません。きちんとしたオーダーがあり、それらを受けて盗難を行っているのです。例えばこういう話です。「2000~2004年式のハーレー、車種はソフテイル、カラーはブラックが欲しい」といった形で、窃盗団にオーダーが入ります。窃盗団はこういった『オーダー』を受けて、街中でターゲットを物色します。ターゲットが決まれば、あとは尾行し、保管状況などを緻密に調査し犯行におよびます。窃盗団の手口は大体こういったものが主流です。まず、国内の業者オークションなどには出てまいりません。

国家レベルでの対策は
どうなっているのか?

残念ながら非常に遅れています。日本では警察庁において二輪車の盗難車データベースが不備であるのが現状です。その理由は、警察庁の盗難二輪車データベースには「排気量」、「車種」、「年式」などの区別は一切なくただ「二輪車」という記述と「車体番号」の記述があるのみです。これでは、盗難車両の台数しかわかりません。大型が微増傾向ではないか、と上述したのはこういったデータベースが整備されていないからです。

また、輸出ルートにも問題があります。通常の税関を通した輸出の場合は車体番号を調べますので車両チェックが入った場合は大体発覚します。ただし、それらは正規で輸出されるオートバイや車での話です。税関では貨物の中身を「X線」を使って調べ、自動車やオートバイであった場合は輸出品目が部品等ではなくオートバイ、自動車であることを確認します。しかし、オートバイの場合は貨物の中に車体ごと紛れさせてしまうと「X線検査」もクリアしてしまいます(貨物の中身がオートバイだとわからない)。「X線検査」は荷物と荷物の間にオートバイを入れてしまえば、それでX線には写らなくなってしまうのです。当然バラして送るならば、もう完全にお手上げ状態というのが現状です。

しかし、2005年3月より業者間オークションに警察からの盗難データ提供が始まります。これによって、盗難車がオークション流通に入った場合はすぐに摘発することができるようにはなります。ただし、前述したとおりプロの窃盗団はほぼ海外流通させてしまうので、こちらで圧倒的な効果を期待することは難しいといえるでしょう。ただ、盗難対策という面では確実な前進したといってもいいのではないでしょうか。

自動車の盗難が
激減している理由

自動車も、近年盗難が多発したため、平成14年1月に警察庁、財務省、経済産業省、国土交通省と民間16団体からなる「自動車盗難等の防止に関する官民合同プロジェクトチーム」が発足し、「自動車盗難防止行動計画」を策定しました。なぜ、自動車だけにプロジェクトが発動して、二輪車には発動しないのでしょうか。その大きな原因として、人口と保険が関係あります。

実は、自動車の盗難防止プロジェクトの中心的な発起人は損害保険会社なのです。自動車の場合、任意保険の車両保険は盗難が担保されていることが多いのはご存知でしょうか。自動車は人口が多いために、損害保険会社各社にとって自動車保険は重要な収入源となっています。しかし、盗難保険が担保されているために、盗難が増えた場合は経営に大きな打撃を受けるリスクがあったというわけです。盗難が増加したときに、損害保険会社がこぞってこの「自動車盗難防止プロジェクト」に身を乗り出したのはそのためです。損害保険会社が強く働きかけたことにより、官民プロジェクトが発足したのです。

一方、二輪車はそもそも人口も少なく、また盗難保険も任意保険にはほとんどついてきません。それどころか単品の盗難保険もほとんどないというのが現状です。損害保険会社としては、二輪車が盗難されることで経営的な影響は少なく、また莫大な資金を投下して自動車のような盗難対策を行う余裕と必要がないわけです。これが、二輪車の盗難が減少しない大きな理由のひとつでもあります。

盗難対策は
いったいどうすればいいのか?

盗難対策の細かい点はなかなか一概には申し上げられませんが、やはり「見つからない」というのが最大のポイントとなります。窃盗団の開錠技術の向上はめざましく、厳重なロックは当然ですが、そもそも見つからないというところが大切になります。窃盗団の立場からすれば「効率的に」、ターゲットを見つけたいがために都心エリアで物色を行っていることが考えられます。つまり、見つからないためには都心エリアではあまりウロチョロしない。

また、行っても帰宅時には必ず尾行の有無を確かめるようにしましょう。下見の形跡を発見した場合は、迅速に保管場所を移動してください。そのままにしておくことは論外ですが、ロック類を強化するだけではなく、保管場所自体を移動されることをオススメします。この「バージンハーレー」にも盗難対策コーナーがありますから、そちらをご参考にされるのもよいでしょう。

総括

盗難は減少していますが、大型二輪はまったく安心できません。今回は自動車との盗難比較をいたしましたが、やはり人工的な問題から二輪車は大変不利な立場にあります。しかし、このままではいけません。私ども全国オートバイ協同組合連合会としても、盗難問題を解決するために運動を続けております。自動車のように大資本(=損害保険会社)の強い協力が得られないからこそ、個人の力が大切になっていきます。安心できる二輪車ライフのためにも、盗難撲滅のための機運を盛り上げてまいりましょう。

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