VIRGIN HARLEY |  駆動系「取説とサービスマニュアルのチェック vol.01」スポーツスター基本メンテナンス

駆動系「取説とサービスマニュアルのチェック vol.01」

  • 掲載日/ 2010年03月03日【スポーツスター基本メンテナンス】
  • 文/栗田 晃 撮影/モトメンテナンス本誌編集部 2008年8月1日発行 モトメンテナンス No.78にて掲載
    取材協力/スズヤオート
スポーツスターメンテナンスの画像

ハーレーのプロが指南する是非ものチェックポイント

取説とサービスマニュアルは
伊達じゃない

10年以上昔のモデルとはいえ、新車として生み出されたのは1997年。日本製のバイクなら、オイル交換とグリスアップを続ければまだまだいけるはず。しかしプロの目はごまかせない。あっちも、こっちもと、気になるポイントをズバズバ指摘してくる。マニュアルが指示するメンテ内容は伊達ではないようだ。

タイヤを浮かすにはジャッキが必要
フロントスタンドはアイデア賞モノ

センタースタンドを持たないスポーツスターのタイヤを浮かせるために、スズヤオートでは2種類のスタンドを使用する。フロントを持ち上げるのは、老舗輸入車ディーラーの長田モータースで開発された、通称長田スタンド。ダウンチューブのエンジンハンガーに明いた穴を利用して、パイプで製作したスタンドを掛けるのだ。簡単な構造だが、リア側のパンタグラフジャッキとのコンビで、タイヤを揺すっても安定性は抜群。

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リア側のパンタジャッキは、右側をマフラーステー、左側をスイングアームピボットで支え、できるだけ広いピッチを確保する。本誌前号で紹介したように、左右のタンデムステップをひっくり返して、それぞれをジャッキで持ち上げても安定する。
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長田スタンドは、着脱可能なメインスタンドのようなもので、手前のパイプで上げ下ろしを行う。フロントまわりのメンテにきわめて有効なのだ。

使用説明書のグリスアップ頻度は
正しく守るべきなのか?

メーカーが発行する車両使用説明書を見ると、ステアリングヘッド、ホイール、スイングアームなど車体各所にかなり細かくグリスアップが指示されている。この年式のスポーツスターは、ホイールベアリングがテーパーローラータイプで、ボールベアリングのようにダストシール+オイルシールという構造が採れず、水や異物が侵入しやすいのだそう。いったんグリス切れとなれば、ベアリングの摩耗の進行は早まるから、取説には従ってほしいということだ。

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ホイールベアリングは年1回、あるいは1万6000kmごとにホイールベアリング用グリスを交換するよう指示されている。11年で4000kmしか走っていないこの883は、これまでに交換したことがあるのだろうか。
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スイングアームピボットシャフトの増し締めは年1回、24ヶ月あるいは1万6000kmごとのピボットベアリングのグリスアップが指定となる。

グリスアップとガタつきチェックは
ホイールがらみの必須メンテ

ホイールにセットされたテーパーローラーベアリングの遊びは、ベアリング間のスペーサーの長さによって変化し、この年式のスポーツスターには、純正パーツとして数種類の微調整用のシムが設定されている。ベアリングの遊びは、タイヤを浮かせた状態でホイールを揺すり、その際に生じるガタの大小で判断する。年式は古いが走行距離は少ないから大丈夫だと思っていたが、フロントのガタはちょっと多めとのこと。グリスアップした後に再確認が必要だ。

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【1】走行距離が少ないおかげか、今のところシリンダーベースにオイルのにじみはない。【2】ツヤのある右側がメタル製、左が紙製のベースガスケット。883/1200共用だ。【3・4】ロッカーアームカバーガスケットを含むガスケットセットが設定されている。

メンテ好き必携のサービスマニュアル
日本語版は高価だが情報も豊富

メンテやメカニズムに興味のあるサンメカにとって、サービスマニュアルは実作業の手助けをしてくれるだけでなく、楽しい書物でもある。ハーレーダビッドソンジャパンでは、日本語版のサービスマニュアルを発行しており、現在でも1997年スポーツスター用は入手可能。価格は1冊1万円台と高価だが、専用工具や作業の手順など、日本製バイクしか触れたことのないサンメカには新鮮だ。

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きるヘインズ製のマニュアルもあるが、細かいデータの掲載量では純正にかなわない。日本語なのも嬉しい。

燃料コックは負圧チューブや
ダイヤフラムの状態に注意

燃料コックのストレーナーは12ヶ月、8000kmごとの清掃が指定されている。実際はそれほどの頻度でチェックする必要はないが、年式の古い車両では負圧コックのチューブの硬化や抜けに注意が必要。この車両もホース表面がカチカチで簡単に抜けてしまった。また純正コックの中には、キャブ交換などで負圧が小さくなると、ダイヤフラムがうまく作動せず、燃料を十分に流せなくなるものもあるから注意して欲しいとのこと。

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燃料ホースやクランプが純正パーツでないことを指摘された。純正クランプはかしめタイプで、再使用はできないのだ。

グリスアップとガタつきチェックは
ホイールがらみの必須メンテ

ホイールにセットされたテーパーローラーベアリングの遊びは、ベアリング間のスペーサーの長さによって変化し、この年式のスポーツスターには、純正パーツとして数種類の微調整用のシムが設定されている。ベアリングの遊びは、タイヤを浮かせた状態でホイールを揺すり、その隙に生じるガタの大小で判断する。年式は古いが走行距離は少ないから大丈夫だと思っていたが、フロントのガタはちょっと多めとのこと。グリスアップした後に再確認が必要だ。

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【1】1997年のスポーツスターには、写真のようなテーパーローラーベアリングを使用する。その後、【2】のようなボールベアリングとなる。ベアリング部分のシール性の違いは明らか。【3】テーパーローラーベアリングは、軸方向にプリロードを掛けることで機能する。スズヤオートでは専用のジグを用意する。【4】ダストシールを外さず、ベアリングに給脂する自作工具。
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