VIRGIN HARLEY | ショベルキャブ事情 まつもと流ショベルヘッド入門

ショベルキャブ事情

  • 掲載日/2008年02月22日【まつもと流ショベルヘッド入門】
  • 執筆/ハーレー屋まつもと 松本 雄二
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まつもと流 ショベル入門コラム 第5回

ショベルのキャブレターの変遷
新しくなるほど性能は◎

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リンカート製キャブレター

今回はショベルヘッド(以下、ショベル)のキャブレターについてのお話です。ショベルのキャブは、年式順にリンカート製、ティロットソン製(1967年~)、ベンディックス製(1971年~)、ケーヒン製のバタフライキャブレター(1976年~)が採用されていました。ベンディックスまでのキャブレターはどれもアメリカ製でしたが、ケーヒンではじめて日本製のキャブレターが採用されました。ケーヒンが採用されたのは旧車乗りにはよく知られている「AMF時代」。ハーレーのコストダウンが進んだ…という印象をもっている方の多い時代ですね。しかしながら、キャブレターに関しては年式が進むごとにいいモノが採用されています。恐らく、ベンディックスよりケーヒンのバタフライキャブレターの方がコストは高かったはずです。「少々コストが上がっても、いいモノを」という意思が伝わってくる仕様変更でした。実際にケーヒンに変わってからトラブルは減り、燃費はよくなったと記憶しています。旧車の世界では古い機構が「味がある」ともてはやされがちですが、キャブレターに関しては新しいモノを選んだ方が無難でしょう。

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ベンディックス製キャブレター

70年代の記憶をたどると、当時はキャブレターの補修パーツがなかなか手に入らず、少々調子が悪いキャブレターであってもオーナーはそれに合わせた乗り方をしていました。今ではキャブレター内部の部品は個別に手に入りますし、オーバーホールキットも販売されていますが、昔は調子が悪いキャブレターは新品を買って交換するしか方法がなかったのです。HSR、FCR、S&Sなど社外のキャブレターが豊富にラインナップされるようになったのはエボリューション以降になってからでした。SUキャブは70年代にはすでにありましたが、ミニやロータスなど車に採用されていただけで、ハーレー用は恐らくなかったはずです。ちなみに、今ではSUキャブレターは「手はかかるものの、味わい深い、始動性がいいキャブレター」と見られていますが、70年代は最新のレーシングキャブレターと見られていました。

日本製パーツが採用され
はじめた70年代

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ケーヒン製バタフライキャブレター

日本製のケーヒンキャブレターが採用され、取り扱いと燃費も格段に良くなりました。それまでアメリカ製だったキャブレターをわざわざ日本製のモノに変更されたのは、1978年に始まったアメリカの排ガス規制がきっかけだったと思われます。ショベルヘッドの排気量が1340ccに拡大されたのも1978年でしたから、TC88がTC96に排気量アップされたのと同様、ショベルも規制で抑えられたパワーを排気量でカバーしようとしていたのかもしれませんね。キャブレターがケーヒンに変更された以降も、少しずつ仕様変更は行われています。内部パーツに改良を進めた仕様変更もあれば、規制に対応するため年式によっては、デチューンされたケーヒンキャブもありました。

ケーヒンに変更されてからはトラブルがグッと減りましたが、何かあればアメリカを通じてケーヒンに問い合わせなければならないのは、従来と変わりませんでした。しかし私の場合、当時勤めていたお店の近くにはケーヒンの大阪支店があり、技術者と直接交流することができてましたけどね(笑)。ただケーヒン側もハーレーにキャブレターが採用されて間もない頃は、早いタイミングで情報が欲しかったのでしょう。キャブレターが原因のトラブルが起こったときは、トラブルの報告と現物と交換で対策が取られた新しいキャブレターと交換してくれました。ケーヒン側は早い段階で対策を取れ、お店側はお客さんを待たせることなく、対応できるのでお互いに助かった記憶があります。70年代はハーレーに日本製パーツが採用されはじめた時期でしたから、ローターを納入していたサンスター金属(今のサンスター技研)など、国内のメーカーが同じような目的でお店を訪ねてくることがあり「こんなパーツも日本製なのか」と驚かされたことが何度かありましたね。

ショベルにもオススメ
CVキャブレター

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ショベルにもオススメ。CVキャブレター

ケーヒンキャブは多少の仕様変更はあったものの、非常に頑丈なよくできたキャブレターだったのは間違いありません。ショベルヘッドのレストアの際にケーヒンのキャブを再利用できなかったことはほとんどありません。キャブレター本体が使えない場合は、ほとんどはお客さんが自分で触って壊したケースでした。そのため、お客さんに他のキャブレターに思い入れがない場合はケーヒン以降のキャブレターをオススメしています。純正採用はされていませんが、SUキャブもいいキャブレターですね。また、エボリューション以降に採用された同じケーヒンのCVキャブレターをショベルに取りつける人が増えていますが、CVを取り付けるのは確かにメリットが大きいでしょう。バタフライキャブレターをさらに煮詰めて、進化させたキャブレターですからCVキャブレターを取りつけるだけでグッと乗りやすくなります。これはCVキャブレターだけではなく、SUキャブにも共通する話なのですが、負圧式キャブレターは扱いやすく、トラブルが少ないキャブレターなのです。ショベル以前のモデルでよくあるトラブルに「標高の高い山に登ったら調子が悪くなる…」というものがありました。

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SUキャブレターも安定した性能がいいですね

吸気に限ってこのトラブルを説明すると、標高が高くなるほどに空気は薄くなるのにキャブレターから供給されるガソリン量は変わらず、濃いガスがエンジンに送られてしまうことが原因です。CVやSUキャブレターは外気の気圧の高低に影響されず機能するキャブレターですから、標高が高いところを走ろうが走行に支障を及ぼすことはありません。「旧車はトラブルが多い…」そんなイメージを作り上げていることの1つがキャブレターの機構の古さからきています。しかし、これはトラブルなのではなく“そういう仕様だった”だけですから、キャブレター1つを変えるだけで調子はよくなるのです。またCVキャブレターは低回転でも安定した性能を発揮してくれるため、アイドリングを下げてもストール(エンジンが停まること)しづらくなります。アイドリングを下げすぎるのは好きではありませんが、ショベルでポテトサウンド(3拍子のこと)を楽しむには最適なキャブレターだと言えます。以前、CVを取りつけているショベルのオーナーが、他のキャブレターをつけているオーナーに「アイドリング勝負しようや」と声をかけ“アイドリングをどこまで下げられるのか”で遊んでいるのを見ました。もちろん勝ったのはCVキャブレター。それだけ優秀なキャブレターだったことがわかる話です。旧車には旧車らしいテイストがありますが、新しいモノを採用すれば気楽に乗れることがあることも知っておいてください。

プロフィール
松本 雄二

58歳。1971年よりハーレーに関わり“超マスターオブテクノロジー”と称されるほど、その技術力の評価は高い。複数のディーラーを経て「ハーレー屋まつもと」をオープンさせ、日々ハーレーの修理にいそしむ。なお不正改造車、マフラーのウルサイ車両は触ってくれないので注意!

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