VIRGIN HARLEY |  オイルの成分パパコーポレーション佐藤のオイルコラム

オイルの成分

  • 掲載日/ 2008年06月26日【パパコーポレーション佐藤のオイルコラム】
  • 執筆/佐藤 博之 取材協力/パパコーポレーション

オイルには何が含まれている?
今回はオイル成分をご紹介します

こんにちは、パパコーポレーションの佐藤です。エンジンの寿命を大きく左右するオイルについてもっと知っていただきたい、その思いからスタートした当コラムも3回目となりました。前回は「オイルが果たす役割」をご紹介しましたが、今回は「オイルの成分」についてです。一口にオイルと言っても複数の成分から成り立っています。オイルには一体どんな成分が含まれているのか、それを知ることでオイルへの理解がより深くなるかと思いますのでお付き合いください。

すべてのオイルには
添加剤が含まれています

各種オイルは原油から精製されるのですが、精製されたオイル(これをベースオイルと呼びます)をそのまま販売することはありません。市販されているオイルにはさまざまな「添加剤」が加えられています。この添加剤が各メーカーのオイルの違いとなっているのです。ベースオイルの原油産地も複数あり産地による違いも多少はあります。しかし、オイルの個性がベースオイルだけで決まるなら、どのブランドのオイルを使ってもそれほど違いはないはず。店頭にたくさん並んでいるオイルの銘柄による違いは、実は添加剤の配合によるものなのです。添加剤のテクノロジーが各オイルメーカーの腕の見せどころであり、その“味付け”がオイルの違いとなってくるのです。では、オイルに入っている添加剤とはどんなモノがあるのか、それをご紹介しましょう。

洗浄分散剤

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エンジン内部で燃料を燃焼させると、NOx(窒素酸化物)やSO(硫黄)が発生します。これらはエンジン内部を酸化させる、つまりサビの原因となります。洗浄分散剤はこうした成分を化学的に中和し、サビを防ぐ役割を持っています。また、エンジン内部には燃料の燃えカスやオイルの劣化物であるスラッジ、燃料が蒸発した残りの成分であるガム質がエンジン内部に付着します。こうした付着物を金属の表面から浮かせてエンジンオイル自体に取り込み、エンジン内を循環して洗い流す役割も洗浄分散剤が担っています。

洗浄分散剤はエンジン内のNOxやSOを中和し、燃料の燃えカスを洗い流す。

粘度指数向上剤

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エンジンが冷えているときにはネバッとしているエンジンオイルですが、エンジンが回り温度が上がると水のようにサラサラになってしまいます。粘度が高ければ(=粘りが維持されている)シリンダーとピストンリングの間をはじめ、金属同士がこすれ合う隙間にしっかり油膜があるのですが、粘度が下がる(=オイルがサラサラになる)と油膜が押しつぶされてしまいます。この粘度の変化を少なくするのが粘度指数向上剤の役目。この添加剤はエンジンオイルを交換し、走行距離が伸びるにつれて性能が低下していきます。「エンジンオイルがヘタる」と言われるのは、主にこの添加剤の劣化によるものです。

温度が上がるとオイルの粘度が下がり油膜切れを起こしてしまう。

流動点降下剤

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バターが冷蔵庫の中では固形に近い状態なのに、室温では溶けて液体のようになってしまうように、エンジンオイルも低温になると成分が結晶になりはじめ、氷点下のような極低温になると完全に固まってしまいます。しかし、バイクやクルマはそのような環境でも動く必要があります。もし、この流動点降下剤が入っていないと、寒冷地ではオイルが硬くなってしまいエンジンがかからなくなってしまうこともあるわけです。エンジンオイルが液体の状態でいられる最低温度を「流動点」といいますが、この流動点を下げて低温でもオイルが固まらないようにするのが流動点降下剤です。

温度が下がると結晶になり始めやがて完全に固まってしまう。

酸化防止剤

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オイルは時間と共に酸化していきます。酸化すると本来の性能を発揮できなくなります。オイルの容器のフタを開けて置いておくだけでも酸化は進みますが、エンジンを作動させるとさらに酸化を急速に進ませる要因が出てくるのです。エンジンの燃焼によって発生した熱は化学反応を加速させ、エンジン内部の金属が磨耗した粉が触媒となって酸化が進みます。さらに、燃焼で発生したNOxやSOは酸素を含むため、これらに触れることでも酸化が進行してしまいます。こうした酸化を少しでも抑えるのが酸化防止剤の役割です。

空気中の酸素、水分、さらに燃焼ガスやNOx、SOに温度が加わり酸化する。

消泡剤

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エンジンオイルはエンジンが回っている間は常にかくはんされています。すると、どうしてもオイルに泡が発生してしまいます。発生する泡は空気に触れる面積を増やしたり、熱を逃がしにくくしたり、オイルの酸化を促す要因になります。また、オイルはオイルポンプでエンジン各部に送られますが、泡があると圧力が伝わりにくくなりうまく循環できなくなります。こうした泡の発生を抑え、発生した泡を消す作用をもたらすのが消泡剤です。

クランクケースでかくはんされると泡立つ。泡はオイルの劣化と循環不良を起こす。

潤滑剤としてのオイル
その他のさまざまな添加剤

ここまでで紹介した添加剤はエンジンオイルに欠かせない基本的な添加剤です。それ以外にも個別の必要性に応じて添加する特徴をもった添加剤があります。それらは主に耐摩耗性や潤滑性能を重視したものであり、さまざまな種類の添加剤があります。現在、これらの後から注入するタイプの添加剤が氾濫していて、ユーザーはどれがハーレーにとって有効で、いったいどれを選んだら良いのか迷ってしまうことがあります。用品店の店員さんであっても、数が多すぎてそれぞれの特徴を把握しきれていないかもしれません。また、オイルの専門家ではありませんので、パンフレットに書いてあること以上の説明は難しいでしょう。この後から注入するタイプの添加剤については、その特徴と効能、それを使うことによるメリットとデメリットを回を改めて説明する予定です。

プロフィール
佐藤 博之

パパコーポレーション代表。クルマ・バイク好きが高じて、自らエンジンオイルに対する疑問を解決した金属表面改質剤「スーパー・ゾイル」を生み出す。エンジンを長持ちさせ、環境にも優しい性能を持つSUPER ZOILは、佐藤氏のオイルに対する深い造詣の賜物。

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