VIRGIN HARLEY | 綿秡 幹哉(Devil Arrow) インタビュー

綿秡 幹哉(Devil Arrow)

  • 掲載日/2006年09月29日【インタビュー】

ハーレーインタビューの画像

オシャレに気楽にバイクを楽しむ
そんなハーレー乗りもアリでしょう

今回ご紹介するのは、東京都世田谷区のセレクトショップ「Devil Arrow」オーナー、綿秡 幹哉さんだ。「Devil Arrow」は、バイク好き・車好きの不良オヤジに向け「街を歩いてもカッコいい」スタイリッシュなタウンウェアを販売しているショップ。バイク乗りと聞いてイメージしがちな「革ジャンにブーツ」のようなファッションではなく、新しいバイク乗りのイメージを作りあげようとしており、その名はじわじわと洋服好きバイク乗りの間で浸透しつつある。そのショップコンセプトに惹かれ、お話をお伺いしようと取材にお邪魔してみたら…私と綿秡さんには意外なところで面識があることがわかった。綿秡さんの前職は「行列ができるラーメン屋」店主。しかも、店名を冠したラーメンが大手食品メーカーから販売されるほどの有名店だった。そんな成功を捨て、何ゆえ「Devil Arrow」を立ち上げたのか、その点をじっくりとお聞きしてきた。

Interview

40歳を前に新たな夢にチャレンジ
ラーメン屋からセレクトショップへ

ー綿秡さんがやっていたあのラーメン屋に、私は毎週のように通っていました。あれだけ繁盛していたお店をなぜ閉じたのでしょうか。

綿秡●32歳で開業してからの5年間、定休日にも仕込みがあり、365日ほとんどがラーメン漬けの日々でした。幸いにもお客さんに評価していただいて、TVや雑誌にも取り上げてもらえ、充実した日々を過ごしましたね。でも、あるときにそんな生活にふと疑問を感じはじめました。

ーと、言いますと。

綿秡●40歳が近づいてきた頃、まだ若いのに亡くなってしまう方が何人かいまして。それまでは自分が死んでしまうことなんて、考えたこともありませんでしたが「もし自分が50代、60代で死ぬとしたら…」と想像してしまいました。「経営は順調だけれども、趣味の時間がまったく取れない生活はどうなんだろう?」そう思ったんです。好きなバイクにも通勤でしか乗れていない、休みの日も仕込みでお店には出ている。「一体何のために働いているのか」と考えてしまいました。そう思ったことを機にお店を一度閉め、もう一度人生を見直してみることにしたんです。

ーラーメン屋からアパレルのセレクトショップ、異ジャンルへの転身ですね。

綿秡●僕はもともとアパレル業界出身なんですよ。ファッションデザイナーを目指して、アパレルメーカーに勤めていました。ラーメンの世界に飛び込んだときの方が「異ジャンルへの挑戦」でしたね。飲食業での成功を求めてラーメン界に飛び込みましたが、アパレルが嫌いで転身したわけではありません。「Devil Arrow」を立ち上げたときは、もとの世界に戻ったという感覚で、違和感はありませんでした。

ー飲食業で、長い修行を積んでのラーメン屋開業じゃなかったんですか。

綿秡●ラーメン屋は異業種からの転身組は多いんです。多くの人に認められる味を生み出すにはもちろん努力が必要ですけれど、他のジャンルに比べると長い修行が求められるわけではありません。だからいろいろなジャンルの飲食がある中で、私はラーメンの世界を選びました。

ー多くの人に認められる味を、どうやって創り出したのでしょう。

綿秡●味については繁盛店を日に何件も食べ歩き、研究を重ねました。心がけていたのは「自分の好み」のラーメンを作るのではなく、「お客さんに求められる」ラーメンを作ること。スープから具材に至るまでお客さんの好みを探りながら開発していきました。あと、スープでも麺でも具材でも、何でもいいのですが「ウチのラーメンはコレ!」という特徴を持たせること。ラーメン開発が終わった時点で、うまく行く自信はかなりありましたね。お店のオープン後は店内を清潔に、従業員は元気に、これを心がけていればお客さんは自然と評価してくれるはずです。

ー手を抜かず、真剣に取り組んだお店だったから、あれだけ繁盛したのでしょうね。ラーメン屋の方は従業員の方に任せて、綿秡さんは新しいことに専念する方法もあったのでは?

綿秡●周りの人からもそう言われました(笑)。でも、自分がラーメンに専念できない間に「味が落ちた」などと言われるのが嫌で。片手間でラーメン屋を経営し続けることには抵抗がありました。

ー「Devil Arrow」のアイデアは、ラーメン屋をやっていた頃から暖めていたのでしょうか。

綿秡●お店を閉じてしばらくの間は「Devil Arrow」のことは考えていませんでした。1ヶ月くらいは何もせず、ただのんびりと過ごしていましたね。5年間ほとんど休み無しで働いてきましたから、ゆっくりと休みたかったんです。でも、しばらくすると、じっとしているのに耐えられなくなりまして。大型ニ輪免許を取り、スポーツスターを手に入れました。

ーなぜスポーツスターを?

綿秡●ハーレーに詳しい仲間からは「どうせすぐに乗り換えたくなるから、ビックツインにしておきなよ」と言われました(笑)。けれど10代の頃からバイクで攻めるのも好きでしたから。のんびり走るハーレーとは言え、スポーツ性が高いものが欲しかったんです。ですから、大きくて重いビックツインではなく、スリムで走りやすいスポーツスターが僕には一番合っているかな、と。

ハーレーのカスタムだけじゃなく
乗り手の服装もカスタムしませんか?

ースポーツスターに乗り始めたことは「Devil Arrow」を立ち上げるきっかけにはなったのでしょうか?

綿秡●スポーツスターを買ってから、仲間とツーリングに行ったり、バイク用品店に行ったりする機会があり、ぼんやりと「バイク好きが集まるお店をやるのもいいな」と思いはじめました。次にやる仕事は「自分も楽しみながらできる仕事」と考えていたので、同じ趣味を楽しむ人と話ができるお店は理想的なアイデアでした。そうやって具体的なことを考えはじめ、過去に自分が関わったことがあり「いつかは自分のお店を」と思っていた洋服のセレクトショップをしようと心に決めました。

ー「Devil Arrow」にはバイカー系の洋服は並んでいませんね。

綿秡●僕の好みとはちょっと違うので。僕はバイクに乗るときに、バイク用の革ジャンやライダースジャケットを着ることはありません。バイクに乗っても、違和感のないタウンウェアで気軽に乗るのが好きなんですよ。あまりハード過ぎる洋服だとバイクを降りて街を歩くと浮いてしまいますから(笑)。

ー「Devil Arrow」に並べている洋服もそういう視点でセレクトされているのでしょうか。

綿秡●そうです。バイクって、屋根もドアもなく、走っているときも周りから見られていますよね。だから服装にもこだわって乗りたいと思うんです。いくらバイクがカッコよくても、乗っているオーナーがバイクに似合っていないと…ね。バイクのカスタムには湯水のようにお金を使う人は多いのに、何でみんな洋服にはお金を使わないんだろう? と、ずっと不思議に思っていました。せっかくカッコいいバイクに乗っているんだから、着るモノや小物にも気を遣ってくれたら、乗り手も含めてカッコよくなるんですが…。バイクはあくまで乗り手を引き立ててくれるもののはず。バイクだけがカッコいいなんて、おかしな話だと思いませんか?

ー洋服に興味があっても、服の色合わせなどに自信がない人も多いでしょうから。私もそうです(笑)。

綿秡●何を着たらいいかわからない、それは少しずつ学べばいいんです。お店に来ていただいてじっくりと話をすれば、僕がお客さんの専属スタイリストになって提案できますから。そうやって服に興味を持つようになると、初めは僕が提案したままの格好をしていた方でも、自分なりに服をセレクトするようになってくれます。カッコイイ服を着ると周りが褒めてくれ、嬉しくなって自分なりに考えるようになりますよ。そうやってカッコいいバイク乗りが少しずつ増えて行って欲しい。そのために「Devil Arrow」を始めたんですから。

ーハーレーを含めて大型二輪に乗っている人は30代以上の人が中心です。バイク乗りに限った話ではなく、そういう年代の方で洋服にはあまり気を遣わない人は多いでしょうね。

綿秡●普段の仕事が忙しいと、洋服を買いにいくのは億劫になってしまうようで。せっかくの休みにわざわざ人が集まるところまで洋服を買いに行きたくない、そういう方は確かに多いです。「Devil Arrow」を、渋谷や原宿ではなく世田谷通り沿いで始めたのは、気軽にバイクで来ることができるからなんですよ。まあ僕自身、落ち着いたところでやりたくて今の場所を選んだ、というのもありますけど。賑やかな街でお店をやると、一人ひとりのお客さんとゆっくり話ができませんからね。

ー「Devil Arrow」は、強烈なバイク乗りのお店といった雰囲気があまりないので、バイク乗り以外のお客さんも来店されるのでは?

綿秡●車好きの人や地元の人もいらっしゃいますね。ウチに置いているのはあくまでタウンウェアなので、バイクに乗っていなくても違和感なく着ることができます。オープン時に雑誌などに告知はしませんでしたので、カラーの偏りがなく、いろいろなお客さんに来ていただいています。ただ、初めはどんな方が来店するのかもわからなかったので、洋服の品揃えには悩みました。大きめのサイズも用意した方がいいのか、レディースの品揃えはどのくらい置いた方がいいのか…。実績がないので、さっぱりわかりませんでした(笑)。

ー今はお客さんをイメージしながら、洋服を仕入れているそうですね。

綿秡●ウチは気楽に遊びに来てくれる人が多いので、どんな洋服が好みで、どんなバイク・車に乗っているか、などじっくりと話す機会があります。ですから、展示会に仕入れに行くと「この服はあの人に似合うだろうなぁ」、「これはバイク乗りに合うだろう」と仕入れることはよくあります。お客さんやお客さんのバイクなどをイメージし、洋服を仕入れるのは珍しいことではありません。ただ、イメージ通りのモノが見つからないこともありますので、近いうちに「Devil Arrow」オリジナルの洋服も製作していく予定です。

ーお店をはじめて、気をつけていることはありますか。

綿秡●同じ洋服をたくさん揃えないようにしています。せっかく僕がオススメして買ってくれた服を、別のお客さんが着ていて、お店で鉢合わせになったらいい気がしないでしょう? 何度も遊びに来てくださるお客さんが多いので、少ない点数でいろいろな洋服をセレクトするようにしています。

ーバイク乗り向けの服装は防寒や転倒時の安全性など機能性を重視したモノが多いですよね。「Devil Arrow」さんでは、機能性を兼ね備えた洋服を仕入れることはないのでしょうか。

綿秡●機能的な服とオシャレな服の両立は難しいですね。機能性を重視しない洋服で、バイクに乗ってもいいじゃないですか。バイクに乗る人のすべてがロングツーリングをするわけではないですから、オシャレを楽しみながらバイクに乗るのもアリでしょう。バイクはあくまで趣味の1つ、ファッションの一部として僕は考えています。

ー極端な例ですが、ヘルメットはフルフェイス、ジャケットは丈夫なモノ、靴はブーツなどが安全を重視するバイク乗りの必須アイテムでしょう。それは綿秡さんの考えるスタイルではない、と。

綿秡●ガチガチの安全性を追求することは、必要ないんじゃないかと思っています。どこまでリスクに備えるか、の考え方の違いでしょうね。もらい事故の可能性がないとは言えませんが、ムチャな運転をしなければリスクは低くなります。それに万が一の事故を心配し過ぎると「ヘルメットは落としたことのないモノ」、「ジャケットは各部にプロテクター付」、「夏でもブーツ」など、世間一般から見ると「行き過ぎた格好」で乗らないとダメになっちゃいますよ(笑)。安全を中心に考えて、そういう格好でバイクに乗るのも理に適っています。でも僕は最低限の安全性を考慮しつつ、オシャレにバイクに乗りたい。バイクを降りて街を歩いてもカッコイイ服装で乗りたい。ベテランライダーの方からは怒られてしまいそうですけれど、別に悪いことじゃないと思うんです。ガチガチに考えてバイクに乗るのは…ちょっと息苦しいですから。

ーハードな格好で時間があればバイクで走り込む、ラフな格好でバイクを街乗りで楽しむ、いろいろな楽しみ方があるでしょうから、服装も自由に選ぶのはアリでしょうね。

綿秡●楽しみ方に合わせて、自由な格好をすればいいんです。僕はスポーツスターもファッションの一部として普段の格好で気楽に楽しんでいます。雨が降りそうだとスポーツスターには乗りませんし、寒い季節はほとんど乗りません。「ハーレー乗りなら365日乗れ」と、言われるかもしれませんけど(笑)、僕は無理をしてまでスポーツスターに乗りたいとは思わないんです。雑誌を見ているとハードな格好のハーレー乗りが目立ちますが、街で見かけるハーレー乗りを見ていると、僕みたいなハーレー乗りも結構いると思いますよ。

プロフィール
綿秡 幹哉

40歳。10代の頃からバイク、車をこよなく愛し、アパレルメーカーに長く勤務。30代で飲食業への転身を計り、ラーメン屋を開業、1年で行列のできるラーメン屋店主に。現在はバイク・車好きに向けた洋服のセレクトショップ「Devil Arrow」を主宰する。

【現在、店舗休業中にてウェブサイトのみで営業中】お問い合わせ:info@devilarrow.com

Interviewer Column

ラフな格好でバイクに乗る。議論を呼びそうなテーマだ。とことん安全を追求するなら「バイク用のウェアで全身を固めないといけない」それって格好はよくない。ハーレーに乗るのなら「全身革で固めなければいけない」それってちょっとやり過ぎの気がする。今回のインタビューで話をお聞きしていると、バイクの世界には変な「縛り」が結構あることに気づいた。楽しみで乗っているものだから、そこから外れたからと言って批判されるべきことではないだろう。最低限の格好は確かにあるけれど、それ以上の服装の中でオシャレに振って行くのか、安全に振っていくのか、それは各自が判断すればいいことだろう。オールドファッションなハーレーファッションもいいけれど、Devil Arrowが提案するようなバイクライフもカッコよくて、楽しそうだ(ターミー)。

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