VIRGIN HARLEY | 岡本 佳之(TRYJA) インタビュー

岡本 佳之(TRYJA)

  • 掲載日/2005年12月21日【インタビュー】

ハーレーインタビューの画像

デザインも、技術も、品質も
最高の一台をいつもお届けする

今回ご紹介するのは大阪府柏原市の「トライジャ」代表 岡本 佳之さんだ。多くの雑誌やショーで、トライジャさんの創り出したハーレーを目にする機会は多く、気になっている方は多いのではないだろうか。デザインの高さはもちろんのこと、細部まで丁寧に造り込まれた車両は同業者の方からの評判も高い。岡本さんが主宰する「トライジャ」とはどのような集団なのか、なぜここまで独創的で、完成度が高い車両を創り続けられるのか、その秘密を探りにお邪魔してきた。

Interview

バイクとの馴れ初めはカブ
銀行の外回りのカブでした

ー岡本さんはバイクに目覚めたのは遅かったとお聞きしましたが。

岡本●10代の頃は服や音楽、映画に夢中でした。自分で服をデザインして着てみたり、面白そうな映画を片っ端から見に行ったり、LPを買って集めたり、とバイクには無縁な10代でしたね。僕がバイクに目覚めたのは社会人になって銀行に勤め始めてから。実は初めて乗ったバイクはカブ、それも銀行の外回りに使っていたカブでした。仕事で「カブ」に乗っていると、これが実に面白い。カブがきっかけで、バイクに夢中になってしまいました。僕は興味を持ったモノには、とことん熱中してしまうタイプでね。カブをイジるようになったんです。そうしたらバイクのことをもっと知りたくなってきて、外回りでバイク屋さんを周るようになりました(笑)。

ーカブを皮切りにハーレーまで辿り着く、珍しいですね。

岡本●カブからハーレーまでは早かったですよ。当時、「ハーレーダビッドソン&マルボロマン」が劇場公開されていて。「ハーレーってカッコええなぁ」と興味を持ち始めました。偶然、僕のお客さんにハーレー乗りの方がいらっしゃって「岡本くん、ハーレーに興味があるんやったら一緒に乗らへん?」と声をかけていただいたこともあって、94年頃かな、ソフテイルカスタムを買ったんですよ。

ーということは、「マルボロマン仕様」にしようと思ったのでしょうか。

岡本●それも考えたのですが、周りの方がいろんな有難いアドバイスをくださって(笑)、結局エイプハンドルのチョッパーになってしまいました。でも、それから自分で勉強しながらカスタムをやり始めて、少しずつ別のスタイルに変わっていきました。自分でやるにしても、中途半端なモノでは性格的に我慢できませんでしたから、塗装を塗るときには塗料のこと、ペイント方法のことをじっくりと調べて塗装していました。パーツを換えるときも、どんなパーツがどのメーカーから出ているのか、徹底的に調べてからカスタムをしていましたね。根が凝り性なんですよ。そうやって好きなハーレーを触っていって、少しずつ知識も技術も身につきはじめました。

ーストックのままで乗ろうとは思わなかったのでしょうか。

岡本●「クールブレーカー」の前身の「ハーベストタイム」には毎年遊びに行っていて、カスタムハーレーをさんざん見てしまっていましたから。「こんなハーレーを造ってみたい」と思うのは当然だったんでしょう。初めは当時日本に入ってきたばかりの「アレン・ネス」のパーツをつけて楽しんでいましたが、だんだんと「こんなパーツがあったらなぁ」や「こんなペイントはカッコいいかも」とアイデアが湧いてくるようになってきて。お店にお願いすると時間がかかってしまったり、やってもらえないこともありましたから「じゃあ全部自分でやってみようか」と思い始めました。

ー理想通りのハーレーを創るのはプロでも難しいことでしょう。銀行に勤めながら、プライベートで一台のカスタムハーレーを創るのは大変だったのでは?

岡本●本格的にハーレーに夢中になり始めた頃には、銀行は退職し、デザイン会社を設立していました。もともとデザインに興味があって、実は銀行に勤めながらもデザインの仕事をやっていて、お店の内装や広告のデザインなどをいろいろなモノをデザインしていました。ですから、ハーレーをデザインすることは僕にとっては自然なことでした。自分が思い描くイメージ通りにハーレーをデザインしてみたい。納得がいくまで触ってやろうかな、と。

ーそのときはいずれハーレーを仕事にしたいとは思っていたのでしょうか。

岡本●まったく商売抜きでした。ただ自分のハーレーを触りたい、それだけでした。幸いデザインについては自信とノウハウがありましたから、自分でやってみようと思っただけなんです。ただ、それまで手がけたデザインと違って、バイクは動く乗り物でした。デザインを形にするためには、新たに学ばなければいけない知識、技術がたくさんあって大変でしたね。パーツをワンオフで造るにしても「素材は何を使うの?」、「下地処理はどこまでやってからメッキするの?」、「メッキの厚さはどのくらいにしたらいい?」などあちこち周って、その道のプロの方に教えてもらってね。「ハーレーをデザインする」ためには何を学ばなければいけないのか、自分のハーレーを通じて学びましたよ。趣味が高じてのデザインでしたから大変でしたけれど、楽しかったですね。

ーご自分のハーレーだけでなく、他の方のハーレーを手がけることになったのはどういう経緯だったのでしょうか。

岡本●自分のハーレーが仕上がってしばらくして、ハーレー仲間の方から「僕のハーレーも造ってくれへん?」と依頼が入るようになったんです。一台仕上げると、次はその方の友人から依頼が来て。そんな風にハーレーのデザイン依頼が増えてきたんです。ショップさんからもペイントのデザインの依頼も入るようになってきましたから、僕の会社にモーターサイクル事業部を設立し、お店を構えてやっていくことにしたんです。それが1999年のことですね。

イチから手がけたハーレーの納車
我が子を嫁に出す感覚でしょうか

ー岡本さんはハーレーの「ビルダー」兼「プロデューサー」という言葉で語られることが多いですが、それはデザインに強みがあるからなのでしょうね。

岡本●ちょっと勘違いされているかもしれません。昔、取材を受けたときに「僕はハーレーをデザインしたいんです」と話したことが、一人歩きをしているみたいで。ウチはハーレーをデザインするだけで、実際のモノ造りには携わっていない、そう思っている方もいるようで、ちょっと困っています(笑)。

ー表現が難しいですけれど、岡本さんは高い技術を持った人脈が豊富で、その方々の協力を得ながら他のお店ではなかなか造れないモノ、高品質なモノを造っている、とお聞きしていますが。

岡本●「お客さんには常にベストなものをお渡しする」。そのために依頼を受けた内容によっては外部のパートナーの方にお仕事を依頼することはあります。ただ、僕を含めたトライジャのメンバーで一台の車両を造り上げることも多々あります。でも例えば、やったことがない、経験が浅い作業については、お客さんのハーレーで試すわけにはいきませんよね。だから僕より経験が豊富で、最高のモノを造りあげてくれる人がいれば喜んでお願いします。それは、どこのお店でも変わらないことだと思いますよ。

ー確かに高品質なモノを求めると、塗装は塗装屋さんに、内燃機は内燃機屋に出されるのは珍しくありません。ただ、私が他のショップさんからトライジャさんの評判を聞いたときは「外に出すのは珍しいことではないけれど、他のショップと比べても仕上がりがスゴイ。高い技術をもったパートナーがいるみたいですね」と聞きました。そのネットワークはどうやって作られたのでしょうか。

岡本●自分のバイクをデザインし始めた頃からの積み重ねでしょう。いろんなところにお金を出して仕事をお願いしては、失敗して、その繰り返しです。自信を持ってお客さんに提供できるモノが上がってくるまで資金投資を惜しまなかったから、いいパートナーの方に巡り合えた、単純なことを積み重ねてきて今があるんですよ。たとえば、いいメッキ屋さんを見つけようと思えば、電話帳で何十件とメッキ屋さんを調べて、そのすべてにお仕事をお願いする、その中で一番いいモノを仕上げてくれたところにまたお仕事を依頼する、そうやってきたんです。

ーいいモノかどうかを判断する「眼」も必要になってくるのでは?

岡本●「眼」というよりは、相手の仕事の工程を知っておく、自分で経験しておく必要がありますね。仕上がりに不満のあるメッキが上がってきたとき「こんなメッキじゃなくて…」と曖昧に話すのでは品質は改善されません。「この番手でバフを当てて下地を作って、こういう風にメッキを当てて欲しいんですが」と具体的にお願いすることができれば、いいモノを造ってもらえるんですよ。まずお仕事を依頼する自分が、その工程を知って、実際に体験し、詳しく勉強しておくことで、高い品質が維持できるんです。ハーレーに乗り始めてからの11年、そうやって勉強してきたおかげで、外にお願いしなくても「TRIJYA」で提供できる技術レベルも高くなることができました。

ーその積み重ねが同業者からも評価される品質につながるわけですね。ではデザイン面で評価が高い秘密は何なのでしょう。デザイン事業をやっているのでデザインが素晴らしいのはわかりますが、オーナーさんの満足度とデザインの素晴らしさがずれてしまうと、独りよがりな作品になってしまいますよね。

岡本●そこには商業デザインでの経験が生きてきます。大まかなイメージがあって「あとはお任せで」という依頼はこの業界では珍しくないですよね。その「お任せ」の部分をお店の好きなように手がけてしまうと、オーナーさんの好みとずれが出てきてしまいます。たとえ具体的なイメージはなくても、そのオーナーさんが好きな服や好きな音楽、趣味、結婚しているのか、などを聞いてお客さんのライフスタイルを知ることで、僕がデザインするハーレーの方向性が見えてきます。

一見、同じような好みを持っている人でも、ほんの少しのライフスタイルの違いでデザインされるハーレーは違ってくるものなんです。ここに商業デザインの手法が役立つんですよ。そうやって品質だけではなく、お客さんの嗜好を知った上で、一台のハーレーをデザインし、造り上げますからオーナーさんは喜んでくれて、ずっとTRIJYAの造ったハーレーに乗り続けてくださるんです。既製品ではなくフルオーダーメイドで造り上げているから満足が高いモノを納車できるんでしょう。

ーそうやって時間をかけて造り込んだハーレーの納車の日は嬉しさもひとしおでしょうね。

岡本●我が子を嫁に出す感覚ですよ(笑)。納車の日にはオーナーさんと一緒につい走りにいってしまいます。納車されたばかりのハーレーと一緒に併走して、オーナーさんの顔を見るのが嬉しくて。「どう?」、「嬉しい?」、「大事にしてや」そうやって一台一台のハーレーを送り出してきました。だから、今まで納車したハーレーのことが気になって仕方がなくて。「あの子、調子良く走っているかな」と気になって電話してしまいます。「季節の変わり目やけどキャブレターの調子は大丈夫?」、「ちょっと様子を診てみようか?」って。

ー本当に親の気持ちになっていますね。

岡本●デザインも、技術も、品質も、一台一台のハーレーを最高の状態で納車していますから、大事に長く乗って欲しいんです。自分がデザインしたハーレーが、いい人のところに嫁いでくれて。今、そんな仕事ができて最高に幸せですね。僕は酒も飲まないし、タバコも吸わない、外食だってしないし、軽自動車しか持っていない。決して楽な仕事ではないけれど、オーナーさんにここまで喜んでいただけるモノを創れるんだから、辞められるわけはないですよね。

プロフィール
岡本 佳之
40歳。秀逸なデザインと高レベルな造り込みで同業者からも評価が高いカスタムハーレーを創り出す「構想集団TRIJYA」主宰。自らが手がけたハーレー一台一台に愛情を持ち、そこに一切の妥協はない。正に「創り手」。元銀行マンという異色の経歴を持つ、穏やかな紳士。

Interviewer Column

「お客さんのハーレーは大事に扱います」そう話すショップは珍しくはない。けれど、TRIJYAがお客さんから預かったハーレーの保管の徹底振りには驚いた。預かった車両は綺麗な布で覆われ、マフラーやエアクリーナー、タンクは保護ビニールで守られている。ここまで徹底されているお店は今まで見たことがなかったので本当に驚いた。「お客さんのために」という岡本さんの強い意志は店内からも伝わってくる。ハーレーの業種を飛び出したとしても、高級ホテルと比べても遜色がない、サービスを提供してくれるお店。TRIJYAはそんなお店だ。こんなショップが全国に増えてくれればいいのに、心底そう思った。(ターミー)

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