VIRGIN HARLEY |  サスペンション編ハーレーカスタムガイド

サスペンション編

  • 掲載日/ 2010年11月10日【ハーレーカスタムガイド】
  • 執筆/Glory Hole 小山 嘉隆氏
    ※この記事は過去にアップされたもので、2010年11月10日にリライトしました。
サスペンションの画像

ここの仕上がり具合で
走行バランスが決定づけられる

車体を支える前後タイヤとバイク本体を結ぶ重要な部位、サスペンション。自身がバイクライフを楽しんでいるシーンを思い起こしてほしい、天候や路面状況などバイクが走行するシチュエーションは刻一刻と変化していることをご理解いただけるだろう。なだらかなアスファルトがずっと続くなんてことはなく、段差の激しい悪路や橋の継ぎ目にタイヤが取られることが多々ある。サスペンションはどんな状況においても、タイヤと本体の間に介して地面から送られてくる衝撃を緩和し、ライダーの体への負担を軽減してくれているのだ。つまり前後サスペンション(ショックアブソーバーとも呼ぶ)の仕上がり具合で乗り心地はまったく異なるものとなる。

しかしハーレーダビッドソンというモーターサイクルの場合、ツインカムエンジン(またはエヴォリューションエンジン)が生み出すその独特の鼓動感もあって衝撃がかき消されてしまい、「ハーレーだからこんなもの」と思ってしまっている人が少なくない。実はそんなことはなく、サスの選び方や調整ひとつでハーレーであっても快適な走行を楽しむことができることを知ってほしい。

サスペンションの画像
軽視されがちなサスペンションだが、選び方や調整方法如何で今以上に快適にすることが可能なのだ。

サスペンションの役割

サスペンションの画像
前後サスペンションはご覧のとおり、誰でも知っていること。しかしその機能や役割を知ることで、自身のバイクライフに広がりを持たせられる。

スプリングだけでできちゃいない
緻密に計算された高機能パーツの役割

サスペンションの選び方を紹介する前に、まずはサスペンションの役割について整理しよう。役割内容を大きく括ると、以下の3点となる。

1. 路面からの衝撃を吸収する
2. 車体を支える
3. 車両の姿勢を変化させる

まず項目1「路面からの衝撃を吸収する」点についてだが、走行中にギャップを乗り越えるときなどにガツン!と来る衝撃を前後のサスペンション(フロントフォークとリアショック)で柔らげ、乗り手への負担を軽減することを目的としている。続いて項目2「車体を支える」とは、200キロ以上の重量を誇るハーレーの車体そのものを支えること。項目3の「車両の姿勢を変化させる」については、路面の状況に応じて車体とライダーの姿勢をコントロールし、不安なくコーナーを曲がれるようにすることを目的としている。

“サスペンション”というと、「ああ、バネのことね」とイメージする方が少なくないが、サスペンションの前後ともオイルを用いたり、場合によっては空気を利用して機能する仕組みになっていて、緻密で精巧な機能を有している。もしもサスペンションが伸び縮みするスプリングだけで構成されていたとしたら、縮んだスプリングが伸びる際に早く動きすぎたり、いつまでの伸びっぱなしになってしまうなど、車両の姿勢を安定させることは困難になる。そのためサスペンション内部にオイルを入れ、内部でオイルを流動させることでスプリングの過度な動きを抑制・制御している。この機能のことを「ダンパー」と呼ぶ。

サスペンションの画像
サスペンションのオイルは日々劣化しており、1,000キロ単位でこれほど劣化具合が変わってくる。オーバーホールなどメンテが必須の部位なのだ。

サスペンション選びのコツ

サスペンションの画像
サスペンションはメーカー別はもちろん、タイプも効果もさまざま。個人で取り付けるならば、それなりの知識を要するので注意が必要だ。

カスタムのキモともなるハンドル交換
自身のバイクライフを明確にイメージしよう

ハーレーのカスタムにおけるサスペンション交換というと、最も高い位置に来る理由としては「ローダウン」が挙げられるだろう。しかし、サスペンション本来の役割は前述したとおり非常に重要で、その点を考慮せず「短くしたい」というだけでサスペンション選びをしてしまうと、現状の走行性能を損ねることになってしまう。仮に短いというだけで選んだサスペンションを装着した場合、走行中のギャップから発生した衝撃によりサスペンションがフルボトム(スプリングが限界まで縮んでしまうこと)してしまうリスクが高く、その状態でさらなる衝撃を受けると、ライダー本体に強烈な衝撃が伝わってしまい、体への負担はもちろん、ハンドルが取られてしまうなど二次的な被害を生んでしまうことがある。また短いサスペンションだとスプリングがかなりハード(硬く)に設定されていることがあるのだが、硬すぎるとサスペンション本来の機能を果たさないケースが多々ある。ではどういう状態が良いのかと言えば、硬すぎず柔らかすぎず、ライダーの体格や体重、乗り方等に合わせて調整されたものがベストということになる。なぜならばライダーに個性があるように、乗り方も人によって千差万別だからだ。

とは言え、ライダーの背丈や目指すカスタムスタイルからローダウンを目的としたサスペンション交換をしたい気持ちは分からなくもない。「やはりローダウンして見た目のバランスを整えたい。でも走行時の快適性は損ないたくない」、そういう場合は経験豊富なショップに相談するのが最短距離。繰り返しになるが、サスペンションは「購入したものをポン付け」では済まない非常に重要な役割を担う部位である。理想とするスタイルに合う最適なサスペンションを選び出すには、プロの知識に頼るほかない。後ろだけ下げるとフロントが持ち上がってしまい、望んでもいないチョッパーライクになってしまう……そんな事態を避けるには、やはりプロのバランス感覚が必須。ここの交換ひとつでハーレーライフが楽しくなるかどうかが分かれてくるので、ここはひとつ自分自身が学ぶことを前提に相談を試みてみよう。

サスペンションの画像
コマメなメンテナンスを続けていれば、快適な乗り味を長持ちさせることは可能。まずはサスペンションがいかに重要なのかを知ろう。

サスペンションのメンテナンス

サスペンションの画像
オーバーホールすれば新品時の感触を取り戻せる。

サスペンションというのは距離を走っているうちにスプリングが伸縮を繰り返し、次第にヘタってくるもの。また走っていなくとも経年劣化を起こしてしまう。体感しづらいが、動きが“渋く”なってきたサスペンションはオーバーホールまたは交換が必要となる。

【オーバーホールを施す目安】
・走行距離:約20,000キロ
・月日:約2年

を目安にチェックすることを念頭に置いておこう。

サスペンションのオイル粘度

サスペンションを硬めにするため、ハードなオイルを注入する方もいるかと思うが、これはあまり推奨できない。オイルを硬くするとサスペンション内部でのオイルの動きが鈍くなり、スプリングの動きを阻害することにつながる。オイルの役割は「阻害」ではなく「コントロールする」こと。自身のサスペンションオイルを選ばれる際は、スプリングに合った指定粘度のものを使用するのがベスト。

代表的なサスペンションメーカー

PROGRESSIVE

比較的安価なことからハーレーカスタムの中でも人気が高いブランド。

KIJIMA

名高いカスタムパーツメーカーのサスペンション。信頼度も高い。

NEO FACTORY

ハーレーカスタムパーツのディストリビューターのオリジナルパーツ。

IKON

かつて“KONI”の名で知られたサスペンションブランドが名を改めて復活。

OHLINS

ハイグレードなショックを供給するスウェーデンのメーカーブランド。

NITRON

グレードの高さではOHLINSに匹敵するイギリスのショックメーカー。

ADVANTAGE

“SHOWA”ブランドのショックアブソーバー。性能は折り紙付き。

YSS RACING

多くのバイクメーカーに採用されるショックを開発するメーカー。

講師
小山 嘉隆

京都のカスタムショップ「Glory Hole」代表にしてビルダー。同ショップでは主にスポーツスターのカスタムやチューニング、メンテナンスを取り扱っているが、ドゥカティや国産バイクに関しても造詣が深く、バランス良く走れるバイクを手がけることに定評がある。スポーツスターでのサーキットレース経験も豊富な御仁。

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