モーターサイクルの頂点
ツーリングファミリー
“King Of Motorcycle” ハーレーは古くからそう称されてきた。スポーツスターやダイナ、ソフテイルなど複数のファミリーを擁するハーレーだが、“King Of Motorcycle”と呼ぶにふさわしいのはやはりツーリングファミリーだろう。ファミリーごとの優劣を言っているわけではない。充実した装備はもちろん、見る者を圧倒し、誰が見てもハーレーだとわかる存在感はツーリングファミリーに顕著に見られる特徴なのだ。スポーツスターはスポーツライドを、ダイナはビックツインの中でもっともシンプルなスタイルを、ソフテイルはメーカーメイドのカスタムフレームなど、ハーレーはそれぞれのファミリーに特徴を持たせているが、ツーリングファミリーには「“King Of Motorcycle”であり続けること」が求められているのは間違いない。そこで今回はツーリングファミリーが持つ魅力、他のファミリーと何が違うのか、についてご紹介しよう。
ツーリングファミリー(以下、ツアラー)にはどういったモデルが用意されているのか、まずはその紹介から。現在、ツーリングファミリーには7種類のラインナップがあり(サイドカーは除く)、スタイルによって3種類にわけることができる。第一にフロントフェアリングがシンプルなロードキングタイプ、2点目はFLHX、FLTRに代表される、フェアリングを持つもののデザイン性も高いタイプ。そして最後がウルトラやエレクトラグライドに代表される、積載性・機能性・存在感のすべてを備えたタイプだ。エンジンなど、基本的な装備はどのモデルも共通ではあるが、スタイルの違いは機能性に影響してくる部分もあるため、違いについてご紹介しよう。
オーディオはなく、メーター類もシンプルなロードキングシリーズだが、ツアラーとしては必要十分な機能を備えている。パンヘッドやショベルヘッドの時代のツアラーの面影を残す、ノスタルジックなスタイルが魅力。 | フロントのフェアリングなどはウルトラにも劣らないモノを装備しながらも、従来のツアラーにはなかったデザイン性の高さも持つ。若い人からもツアラーが注目を集めるようになったのはFLHXがFLTRの登場が大きい。 | 乗り手に負担を感じさせないよう高いスクリーンやレッグガードを装備。タンデムライダーの乗り心地も徹底して追求されたシート、充実したオーディオ装備、積載スペースなど、求めうるすべての装備を備えたツアラーの頂点。 |
その名の通り、ツーリングに適した装備を徹底して追求されてきたツアラーは他ファミリーにはない装備が盛り込まれている。ツインカム以降のエンジンだと、カタログ上はダイナファミリーと同じエンジンが採用されている表記になっているが、ラバーマウントの点数がツアラーの方が多く、長距離走行で乗り手を疲れさせる不快な振動をより収束させることができるエンジンが採用されてきた。また、ロードキングとソフテイルのFLシリーズは見た目が似ているため比較されることが多いが、その乗り味は似て非なるモノとなっている。エンジンの違いで言うと、ソフテイルのバランサー付に対し、ツアラーは心地いいバイブレーションを楽しませてくれる。両者のフレームの違いも大きい。ソフテイルファミリーに採用されているソフテイルフレームは、フレーム下にサスペンションシステムを持つものの、スタイル面が重視されたフレームのため快適さやコーナーでの軽快さ、はツアラーのフレームには劣ってしまう。エンジン、フレーム、あらゆる機能において、ツアラーはツーリングに適した最高の装備を備えているのだ。ではその他、ツアラーの特徴について4点のポイントを紹介する。
ツアラーの大きな特徴は、風や虫を防ぐフェアリングやスクリーンが標準装備されていること。モデルによってフェアリングマウントがハンドルかフレームか、などの違いはあるが、高速走行を快適にこなすには必須の装備だ。最初から装備されているため、デザインに違和感はない。 | ツアラーと比較にされがちなソフテイルファミリーだが、その大きな違いはフレームとサスペンションにある。ツアラーに純正採用されているエアサスペンションは長期間の使用でもヘタりが出づらく、エアーの調整で硬さの調整も可能となっている。 |
左右のハードケースだけでも積載性は十分だが、エレクトラグライドなどに採用されているツアーパックはヘルメット2つでも楽に収納できる。降車時に荷物を一切持ち歩かなくても大丈夫な収納性の良さはツアラーの大きな魅力だ。 | 2008年モデルからツアラーにのみABSが採用された。重量のあるモデルだが、フロントのダブルディスクブレーキの利きは十分で、万一のフルブレーキング時もABSのおかげでタイヤがロックすることもない。ブレーキの安全性は各ファミリーでもっとも優れている。 |
以前はツアラーを購入する年齢層は今よりも高く、若い人でも30代後半くらいからでした。ただ、FLTRやFLHXが登場した頃から、ヤッコカウルのモデルを選ぶ若い人が増えていますね。それまでは若い人がツアラーに興味を持ったとしてもせいぜいロードキングで、エレクトラグライドやウルトラは他のモデルから徐々に乗り継いで手に入れることが多かったのですが、ツアラー人気は間違いなく盛り上がってきていますね。ツアラーは見た目の大きさのせいか、走れないと勘違いしている人もいるかもしれませんが、結構走ることができるんです。取り回しはさすがに重いですが、走り出してしまえば前後16インチのホイールサイズのおかげで、ビックリするほど軽快に走ってくれますよ。
生の声が聞きたい!
ユーザーインプレッション
この章では実際にツアラーに乗る4人のユーザーの声を紹介する。ツアラーに乗る平均年齢はまだまだ高く、男性が中心だが、今回はあえて年齢が若いオーナーと女性に絞って紹介してみた。ある程度ベテランのライダーであればツアラーに乗ることに不安を感じることはないだろう。そこでツアラー購入に踏み切るには不安が多かったはずのユーザーに話を聞き、購入に踏み切った経緯、乗ってみた感想を紹介する。オーナーの車輌のカスタム、お気に入りのパーツから、乗りやすくするためのポジションの工夫なども写真で紹介してあるため、これからツアラー購入を考えている人は参考にして欲しい。
偶然手に入れたFLHR 1995年式 FLHR ロードキング オーナー / 池野 祐樹さん 元々ハーレーには興味がなく、バイクは「日常の足」として便利に使っていただけでした。でも、知り合いにハーレーの良さを説かれて、このロードキングを手に入れることになったんです。このロードキングは友人のお父さんが大事にしていた車輌で、僕がロードキングを選んだのは偶然でした。お気に入りなのは積載性の良さ。僕は持ち歩く荷物が多いのでハードケースは重宝していますね。長距離を走るのも楽で、走っていても気持ちいいのですが、ノーマルのスタイルはちょっと野暮ったいと思っていました。それで、ブラックに塗り替えて、スクリーンも純正より少し低いモノに交換し、スッキリさせてみました。ノーマルから大きくスタイルを変えなくても、ちょっと手を入れてやればロードキングはカッコよくなりますね。 | |
女性だってツアラーに乗れる 2006年式 FLTR ロードグライド オーナー / 祐太ママさん もともと883に乗っていましたが、主人がウルトラに乗り換えたのを機に私もFLTRに乗り換えました。883でウルトラについていくのは辛かったんです。ただ、ノーマルのままでは身長が152cmの私では、足がつかず、ハンドルもフットポジションも遠すぎました。でも、どうしてもFLTRに乗りたかったのでハンドルはワンオフ、フットポジションはミッドコントロールに、シートはK&Hのモノに換え、私の体に合ったFLTRにカスタムしてもらったんです。体には何とか合ったものの、ちゃんと乗れるようになるまでは慣れが必要でしたけれどね。今は主人と一緒にロングツーリングにも出ますし、体に馴染んだ私だけのFLTRになっています。体格には関係なく、努力さえすれば乗りたいモデルに乗ることができる、それを知って欲しいですね。 | |
迫力あるモデルを求めて 2008年式 FLHX ストリートグライド オーナー / 鍋島 健太さん 以前はゼファー1100に乗っていましたが、職場の先輩にハーレー乗りが多く、一緒にツーリングに行くたびに、自分のバイクにはないハーレーの存在感に惹かれはじめていました。初めてのハーレーに求めていたのは「オーディオ付きのフェアリングを採用したモデルであること」でした。エレクトラグライドとで少し悩みましたが、あそこまでの大きさだと少し不安がありました。FLHXが僕には調度いいサイズですね。まだ納車されて間もないのですが、取り回しはさすがに重い…走り出してしまえば重さを感じることはありませんけれど。「ドドドドド…」と力強く回るエンジンも気持ちいいですし、フェアリングに整然と並ぶメーター類もカッコいい。ほどほどに顔に当たる風も気持ちよく感じられるバイクです。 | |
平成生まれのウルトラオーナー 2007年式 FLHTCU ウルトラクラシック・エレクトラグライド オーナー / 工藤 光平さん 16のときからずっとハーレーに乗りたくて…大型二輪免許が取れる18歳までは中型で我慢していたんです。18歳になったら絶対ハーレーに乗ると決めていたので、アルバイトでコツコツとお金を貯めていました。最初はもう少し手ごろな価格のモデルにしようか、と思いましたが、後から「やっぱりウルトラにしておけばよかった…」と後悔したくなかったので、憧れだったウルトラを手に入れたんです。お世話になっているディーラーでは平成生まれのハーレー乗りは僕だけみたいで、走っていても10代だと気づかれることはないですね(笑)。ディーラーのツーリングにも参加しますが、大きいからと言って走れないことはなく、どのファミリーの車輌にも十分ついていけるのがスゴイ。派手なカスタムはせずに、大事に乗っていくつもりです。 | |