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アメリカ帰りのチューナーが語るハーレー理論を知る。パワーアップではないチューニングの本質
取材協力/HRD Performance  写真・文/田中 宏亮  構成/VIRGIN HARLEY.com 編集部
掲載日/2015年7月15日

ABOUT HRD PERFORMANCE

現代ハーレーのあるべき姿とは
本場を知る男が紐解いていく

インジェクションチューニングのサービスを中心としたショップが多数存在する日本において、今回紹介する『HRD Performance』代表の田村弘章さんは、本場アメリカのハーレー専門学校(MMI: Motorcycle Mechanics Institute)でハーレーの構造そのものを学び、さらにアメリカのハーレーディーラーでメカニックとして経験を積み、その後、AIM Corp.(カリフォルニア州)でクラッチ開発・販売などを通してアメリカのハーレー業界に精通する“現代ハーレーの本質を知る男”として知られる人物である。「インジェクションチューニングのノウハウをプロショップに伝えることで、日本のオーナーに“ハーレーダビッドソンに乗る歓び”を知ってもらいたい」という田村さんの言葉ひとつひとつに、ハーレーライフのあるべき姿を紐解くヒントが隠されていた。

INTERVIEW

オーナーそれぞれに合ったセッティングを探ること
それが調律士である私たちの知識と技術による仕事

米テクノリサーチ社のEFIチューニングキット『DirectLink』(ディレクトリンク)の日本総代理店を務めるHRD Performanceを立ち上げたのは2011年、アメリカから帰国してすぐのこと。エンドユーザー向けではなくハーレー関連業者向けにチューニングキット・パフォーマンスパーツ販売、そして知識と技術を含めたテクニカルサポートを提供することを目的としていた。

 

「アメリカと日本とで比べると、ハーレーに関する技術差はまずないと思います。ただ、やはりコンピューター制御であるEFIに関しては、適切な知識と技術を学ぶことが必要です。チューニングキットがアメリカ製である以上、技術的な内容を英語でコミュニケーションできる必要があります。このEFIチューニングやエンジンパフォーマンスの分野は、私がアメリカで積んできた経験と知識、技術を活かせる場だと考えたので帰国後にHRD Perfromanceを立ち上げました」

 

田村さんが米モーターサイクルスクール「MMI」に入学したのが2000年で、未経験者ながら自身でハーレーをいじっていた田村さんだったが、MMIで本格的にハーレーの構造、システムについて学んだ。

 

MMIを卒業後、日本とアメリカのディーラーでメカニックとしてキャリアを積み、その後、クラッチの開発・販売などを手がけるアメリカの「AIM Corp.」に5年在籍した。クラッチを専門で扱っていたということもありスピードショップやエンジンマニュファクチャーとの関わりが深く、そして現代のコンピューター制御(EFI)されたハーレーでは、エンジンパフォーマンスを考える上でインジェクションチューニングは必然的に学ぶ必要があったという。

 

「100ページ以上あるマニュアルを読み漁りながらインジェクションチューニングに取り組んでいました。はじめはよく理解できないながらも、少しづつやっていくうちに“今自分が勉強していることは、エンジンの根底となるスゴい技術なんだ”という実感が湧いてきて、かなり興奮したことを覚えています」

 

その後、地元・愛媛へと帰郷。HRD Performanceとして起業。アメリカで培った独自のネットワークと他の追随を許さない知識&経験が盤石な土台となり、プロショップの信頼を勝ち得ている。

 

HRD Performance 代表
田村 弘章 氏

1976年生まれ/愛媛県出身。24歳で渡米し、アメリカのメカニックスクール「MMI」にてハーレークラスの卒業資格を獲得。その後、日本とアメリカのディーラーでメカニックとして勤務、アメリカのバイク関連パーツ開発&販売の会社勤務を経て、2011年に帰国。地元・愛媛にて「HRD Performance」を開業、2014年に神奈川・相模原へと拠点を移した。

アメリカのモーターサイクルスクール『MMI』(Motorcycle Mechanics Institute)の卒業証書がずらり。「ハーレークラス」をはじめ、計4部門で好成績をおさめた。

HRD Performanceのファクトリーでは、FLTRX/FXDLとタイプの異なるモデルを用いて、スキルアップのためのチューニングテストが行われている。ここで得た経験と知識が、プロショップへと還元されているのだ。

日本とアメリカ、それぞれのEFIチューニング事情にはどんな違いがあるのか。そんな問いを田村さんに投げかけてみると、「チューニングそのものを誤解されていることが多い」という答えがかえってきた。

 

「“EFIチューニング=パワーアップ”と捉えておられる方が多いです。でも、チューニングを日本語で表現すると『調律』という言葉が適切で、チューナーはいわゆる調律士。どんなに優れたチューナーでも、エンジンの持つポテンシャル以上のパワーを出すことはできません。チューナーは、そのエンジンの持つポテンシャルを引き出すのが仕事であり、パワーが上がったということは、そのエンジンにとってより適切なマップになったということになります」

 

日本では、ハーレーの鼓動を表す“三拍子”という言葉をよく耳にする。「アメリカでは、現行モデルでそれを求める人は殆どいません。そこで、HRDから米テクノリサーチ社へ提案をして三拍子を出せるようにテストを繰り返しながらソフトウェアを共同で開発しました。現在では、三拍子的な鼓動を出すことが可能となっています」と言う。

 

「EFI化したことで“ハーレー本来の鼓動がなくなった”と言われることがありますが、それは違います。EFIモデルはコンピューターで管理されているわけですが、各センサーを用いて数値化したことで、“エンジンの声が聞こえるようになった”わけです。もしこれをキャブレターモデルで同じことを行う場合は高額なデータロガーシステムやセンサーを取り付ける必要がありますが、インジェクション車には基本的にそれらの機能が備わっています。これは大きな進歩であり、バイクとしての正常進化に他なりません」

 

エンジンの声が聞こえるようになった──。そう言われると、確かに言い得て妙だ。

 

エンジンの状態が各センサーにより数値化されたインジェクション。それら数値はエンジンの状態を知る上で必要なものばかりであり、意味のない数値を出しているのではない。エンジンが、どういう状態なのかを私達に知らせてくれるものであり、それを理解することができれば、より高精度で重厚なマップを作成することができる。もちろん、この知識と技術はキャブレターモデルにそのままフィードバック可能。エンジンは一緒なのだから。

 

数値で表現されるインジェクションチューニングの世界。では、これという究極のマッピングデータがあれば、誰でもカンタンに最高のハーレーに仕上げられるのだろうか。その問いに対しても、田村さんはノーと答える。

 

「チューニングには大きく分けて2段階あります。バイクのセンサーを確認しながら行う数学的な部分と燃費などオーナーの希望を反映させる部分です。実際にバイクを走らせ走行データを記録しマップと走行データにズレがあれば補正していきます。これだけでも補正する箇所は数百ヶ所以上にも及びます。1台として同じエンジンは存在しません。だからこそ実際に走行させてデータを録る必要があります。

 

次にオーナーの希望に合わせて味付けをしていきます。これができるのも圧力で燃料を噴射できるインジェクションの優れた点です。街乗り、ロングツーリング、レースと、ハーレーの楽しみ方は多岐に渡ります。それぞれのオーナーに合わせたセッティングが無数に存在する。オーナーに合わせたセッティングのハーレーこそ、本当の意味でのオンリーワンバイクと言えるでしょう」

 

「純正ECMは、エンジンの状態を知る上で最も重要なMAPセンサー(インテクマニホールド内の負圧)を基に制御されており、細かく設定ができる非常に優れたシステムです。しかし、その車両の仕様に合わせたセッティングをしてやらない限り、コンピューターは“ノーマル状態のまま”という認識のもと、稼働し続け、これによってオーバーヒートなどの原因になったりもします。大切なエンジンを守るためにも適切なチューニングを行う必要があるのです」

 

「また、自己補正機能(オートチューニング)という言葉をよく聞くことがあります。確かに素晴らしい機能です。しかし、その自己補正機能が何に向かって補正しているのでしょうか? それは、チューナーが指示した数値に対してです。つまり、どんなに優れた自己補正機能を持ったチューニングキットでもチューナーの指示が間違っていれば意味がありません。指示を出しているチューナーの技量が最も重要なのです。EFIチューニングは、パソコンを使うのでスマートなイメージがあるかも知れませんが、事実はそうではありません。数多くのセンサーを通して、エンジンの状態を細かく把握して何万通りもある中から適切な数値を入力していく非常に泥臭い職人的な時間の掛かる仕事なのです」

 

進化しつつも、現代のハーレーダビッドソンが本来の魅力を失っていないことを現行モデルが証明している。ただ、秘められた本来の姿を引き出すには、その声を聞き取れるプロのチューナーの力が必要なのだ。全国に点在する『HRD Performance』プロショップは、チューナーとして日夜研鑽に励んでいる。自身のハーレーの潜在能力を引き出したいオーナーは、最寄りのプロショップへ相談に行ってはいかがだろうか。

2008年9月から、米ユタ州ボンネビルソルトフラッツでのスピードトライアルに参戦した『Hiro Koiso Racing』を全面的にバックアップ。自らはテスト走行のみであるが、以降、ボンネビルには日本から参戦する方のサポートも含め何度も足を運んでいる。田村さんと一緒に写っているバイクは、S&S 100 ci(1600cc)のスポーツスターエンジンを載せた1997 Buell S1 Lightning。

PICK UP SERVICE

優れた純正ECMを活かしつつ
エンジンのポテンシャルを引き出す!

米テクノリサーチ社の日本総代理店を務めるHRD Performanceがインジェクションチューニングに用いる機器がこちら、現行ハーレーダビッドソンの純正ECMを書き換えるリフラッシュタイプのEFIチューニングキットとEFI診断システムを備えたディレクトリンク & センチュリオン EFI 診断システム『VCM-TR3』だ。燃料噴射量やレブリミット、点火タイミングの設定変更をはじめとするEFIチューニング機能を有した『ディレクトリンク』と、新品のブランクECMへのデータのプログラムやABSのエア抜き & ポンプ/ソレノイドの動作テスト、電子スロットルやフューエルポンプの動作テストといったハーレーのデジタルテクニシャンに近い診断機能を有した『センチュリオン』がひとつになったフルキットだ。2015年モデルにも対応する最新システム、現行モデルオーナーは活用しないてはない。

 

※『VCM-TR3』本体は、プロショップ専用の機器となります。

 

ディレクトリンク『VCM-TR3』は、フューエルインジェクションのチューニングから故障診断およびメンテナンスまで、これ一台で対応できるというハーレーダビッドソン専用にデザインされたデバイスだ。

車両とパソコン、そして『VCM-TR3』を接続し、センサーから出てくる数値をチェックしてベストセッティングを見つけていく。そこには、数値を読み取れるチューナーの存在が不可欠とされる。

大きなアドバンテージは、高性能の純正ECMを活用できること。そしてリフラッシュタイプのチューニングキットでは数少ないアイドル回転数が600回転まで設定できることである。純正ECMのキャリブレーションを書き換えられる=信頼性が高いことにつながっている。

ディレクトリンクには、ワイドバンドO2センサーを利用した高精度のVEオートマッピング機能が備わっている。

ABSのエア抜き機能、トラブルコードの読み取り/削除、新品ECMへのプログラミング、EITMS / ACR等の有効 / 無効の設定をチェックする画面。

アイドル回転数の設定、キーフォブの設定、オーディオ/スピーカーの設定、TSM / TSSM / BCMとECMの同期設定をチェックする画面。

各センサーをモニタリングできるリアルタイム表示には、状況に応じて使い分けられる3タイプが備わる。また、『センチュリオン』ではフューエルポンプやクーリングファン等の各種システムの作動テストを行うことが可能。

HRD Performanceのデモ車である2010年式 FLTRX ロードグライド・カスタム。田村さんの手によってフルチューンが施されたモンスターマシンだ。

排気量2,212ccの米JIMS USA製エンジン『JIMS 135″』を搭載し、マフラーには米D&D製ボアジラ 2in1マフラーを、エアクリーナーには米S&S製インダクションシステムをチョイス。さらに米ナイトロスエクスプレス ウェットショット with ナイトロスコントロールモジュールを搭載し、155馬力オーバーというとてつもないパワーを引き出している。「パワーを上げれば上げるほどコントロールが難しくなるので、自身の技術アップのためにフルチューンしました」と語る。

HRD PERFORMANCE 取り扱い製品

ハーレー専門のパフォーマンスキットを
主に取り扱うショップ向けカンパニー

アメリカのマニュファクチャーとの独自のネットワークを持ち、本場のチューニングシーンに身を置いて研鑽を積んできた田村弘章氏が代表を務めるH-D専門ハイパフォーマンスカンパニー。エンドユーザー向けの販売等は行っておらず、米テクノリサーチ社の日本総代理店として、ハーレー関連パーツ&アイテムの卸や、契約を結んだチューニングプロショップへの講習会&サポートを主な業務としている。以下はHRD Performanceが取り扱っているハーレー関連アイテムで、気になる方は最寄りのHRD Performance チューニングプロショップに問い合わせていただきたい。

  • HPI ハイフロー大口径スロットルボディ、軽量アルミニウム製スイングアーム、ProCharger スーパーチャージャーキット。

  • 高いスキャベンジ性能を誇る3ステージスロットルボディ、ハイフローインジェクター、T-man 高出力ハイパフォーマンスエンジンキット。

  • D&D ハイパフォーマンスフルエキゾーストシステム。(Stubby Cat, Bob Cat, Boarzilla & Boss Fat Cat)

  • NX ナイトロスオキサイドシステム、AIM CF2 Performance Kit、クラッチを切ることなくギアチェンジが可能になる Pingel イージーシフトキット。